■日本では、明治5年以前は不定時法を用いていました。この時刻制度は昼、夜の長さをそれぞれ6等分して1刻(いっとき)としましたが、季節によって昼と夜の長さがちがいますので1刻の長さも変化しました。
例えば、夏至の頃には昼の一刻が2時間40分、夜の一刻が1時間20分となります。同じ一刻でも季節や昼夜で違うのです。時刻の数え方や和時計の表示も次のように表現していました。十二支の「えと文字」を時刻にあてて、子(ね)−九ツ、丑(うし)−八ツ、寅(とら)−七ツ、卯(う)−六ツ、辰(たつ)−五ツ、巳(み)−四ツ、午(うま)−九ツ、未(ひつじ)−八ツ、申(さる)−七ツ、酉(とり)−六ツ、戌(いぬ)−五ツ、亥(い)−四ツと、それぞれの数字にあてられていました。日の入りの頃を暮れ六ツ、日の出の頃を明け六ツといいました。一ツ、二ツ、三ツは用いられませんでした。
■有名な落語「時うどん」(関東では「時そば」)で、この時刻が登場します。夜の屋台でうどんを食べた熊さんが支払いの時に一文銭を一つ、二つ・・と数え、八つめを数えたときに「今、何時(なんどき)だ?」と屋台のおやじにたずねると「へい、九つで。」と答えます。そのまま「十、十一、十二。これで十二文。」と支払いを一文ごまかしてお客の笑いを誘います。この落語の九つは真夜中の12時頃になります。おやつどきの午後3時は、正午の頃(九つ)の一刻後、つまり八つのころとなります。