■「貝覆い」のことを、現在では「貝合わせ」と混同している人がいますが、両者はルールが全く違います。「貝合わせ」は、中世貴族社会で盛んだった「合わせもの」の流れを汲んだ室内遊戯です。左右に分かれてお互いが持ち寄った珍しい貝を出して、形や色彩等を比べて、それらにちなんだ和歌を詠み「貝と和歌との総合で採点される」という遊びでした。持ち寄る貝の種類は、巻貝だろうが二枚貝だろうが形が美しければ何でもよかったのです。一方、「貝覆い」はハマグリだけを用いた遊びで、ハマグリが対の殻以外とは決して重ならない事を利用してぴたりと合う貝を探すという遊びです。この「必ずお決まりの一対」というハマグリの特徴は、貞節の象徴や夫婦和合の印とされ、近世では貝桶が輿入れの調度品として準備されて嫁入り行列の最初に運ばれるようにもなりました。