漢字の起源について教えて!? | |
1899年、北京での話です。 古代の青銅器や石碑の銘文を研究する「金石学」を専門としている王懿栄(おういえい)という学者がいました。王懿栄にはマラリアという持病がありました。「マラリアには漢方薬の”竜骨”というものがよくきく」と友人が勧めたので薬屋でそれを買ってきました。竜は想像上の動物ですから、竜の骨は実在しません。「竜骨」とは、実は地中から見つかる脊椎動物の骨の化石のことです。 たまたま王懿栄の家を訪れていた劉鉄雲(りゅうてつうん)という弟子が、部屋に置いてあった「竜骨」をなにげなく見ると、骨の表面にナイフで刻んだような小さな文字らしきものがありました。そこで、王懿栄と二人でよく調べてみると、とても古い文字らしい・・・ということがわかったのです。さらに調べてみると、「竜骨」は黄河(こうが)の下流にある河南省安陽県の小屯(しょうとん)という村で農民が畑を耕すと出てくる、ということがわかりました。 そこで1928年から、中央研究院によって発掘が行われた結果、ものすごい数の奴隷の殉葬をともなう大きな墓が出現して、世界をびっくりさせました。それは「殷(いん)」という王朝の遺跡でした。発掘では、数十万点を超える甲羅や骨が見つかりました。 「竜骨」というのは、実は牛の肩こう骨と亀の甲羅で、殷王朝の卜師(ぼくし)という人たちが、占いに使っていたものです。裏側を火であぶって、表面にでた割れ目によって吉凶を占い、そこに占いの内容を彫りつけていたのです。 発見された文字の数はおよそ4700です。 甲羅や骨に書かれていたので「甲骨文字」と名づけられ、漢字の原形であることが確認されました。これが、現在確認されている最古の漢字ということになります。それらを解読したり、一緒に発見された青銅器類などを調べることにより、「殷王朝」があった時代は、紀元前1700年頃〜紀元前1100年頃とわかりました。今は西暦2000年を過ぎたところですから、約3500年くらい前のことです。 甲骨文字の調査で、漢字を組みあわせる基礎となる部首(ぶしゅ)らしきものが100以上も確認されました。かなり形ができあがっていたので、漢字の原型がつくられたのは、今からおよそ4000年前くらいではないかと言われています。そういえば、中国四千年の歴史・・とよく言いますね。 あくまでも神話ですが、 「倉頡(そうけつ)という人物が鳥の足あとをみて発明した」 という起源にまつわる話があります。その他にもたくさんの起源説がありますがはっきりしたことは今ではもうわかりません。「甲骨文字」や、青銅器に彫られていた「金文(きんぶん)」は、字というよりもいわゆるイラストです。とても純朴で自由奔放な筆致なので、まるで小さな子どもたちが描いた素朴な絵画をみているようです。 |