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エントロピーと地球環境問題 初出:24th Aug. 2004

私は文系です.前半の語句・概念説明の部分では間違えたことは書いていないはずですが,説明を簡単にするためにだいぶ端折(はしょ)ってあります.興味を持ったら自分で勉強してください.また,後半の部分でも,ただの文系大学学生の意見ですので,その点を予めご了解下さい.

 まず,エントロピーについて概念だけ勉強しましょう.エントロピーは「無秩序さ・乱雑さ」といわれます(モノではないです).具体的に例を出すと,タバコに火をつける前は灰の量はゼロですが,やがてすべてが灰になってしまいますが,その灰は二度とタバコに戻ることはありません.この場合の灰がエントロピーだと考えてよいでしょう.そしてこの不可逆性を,エントロピー増大の法則といいます(熱力学第2法則はこれに含まれる).熱力学第2法則は,熱は熱い所から冷たい所へのみ向かう,という不可逆性を表していますが,熱力学第2法則は,エントロピー増大の法則の中のひとつであり,イコールではありません.よくごっちゃになってる人がいるので,ご注意を.たとえば煙突から出た煙は空気中に拡散(=エントロピーは増大)してしまいますが,それが再び一点に集まることはありません(そんなことが起こったらある日突然自分の周りだけに有害な物質が凝縮して死んでしまう,なんて事件が起こってしまいます←怖〜).この場合には熱の移動は起こっておりません.
 熱力学第2法則は経験則から生まれた法則です.100度の水と0度の水を同量混ぜると50度の水ができますが,そこから70度の水を得ようと思うと,100度の水からは容易に得られますが,50度のの水から得るのは他のエネルギーを使わない限りは不可能です(何もしていないのにその水が突然熱湯と氷に分離したら,危険すぎてうかうかお風呂にも入れません).エネルギーにも質があり,熱の移動は不可逆なのです.このためエクセルギー(利用可能なエネルギー)は減少,アネルギー(利用不可能なエネルギー)が増大します(だから永久機関は不可能).電気エネルギーは熱エネルギーよりも高質ですので,電気エネルギー→熱エネルギーは100%変換可能ですが,その逆は50%ですら難しいでしょう.
 で,地球環境問題について考えましょう.ここで,地球,とつけているのは,地球は近似的に「閉じた系」であるからです.閉じた系でないと,エントロピー増大の法則は使えませんので閉じた系でも使えません.使えるのは「閉鎖系」のみです.まず,閉じた系,とはなんでしょう.閉じた系とは,外界とは物質の交換はせず,エネルギーの交換のみ行う系のことです.系とはマクロな系の事を指しますが,そこら辺は「そんなもの」として見て下さい.閉鎖系は外界とは物質もエネルギーも交換しない系です.開いた系とは,外界と物質・エネルギーの自由な交換をする系のことです.地球の宇宙空間とのエネルギーの交換は大部分が太陽からのエネルギーの流入です.また,地球からの熱放射もあります.しかし,かつて恐竜絶滅の原因となったとされる隕石(小天体?)の地球衝突のように,物質の交換がないわけではないので,その意味では地球も「開いた」形であるといえますが,ここでは,「近似的に」閉じた系であるとしておきます.いずれにしても地球は「閉鎖系」ではありませんから,エントロピーが減少するという可能性を捨て切れませんが,いずれにしても下を見てください.

―――ここから後半です.意見をしている割には稚拙ですが貴方or貴女も考えてみてください.
 では地球環境問題を考えましょう.
 スチール缶のリサイクルは,新品を作るよりもエネルギーを75%も削減できるそうです.何と省エネでしょう.ただ,やっぱり25%を使っているわけです.発電には石油や石炭,天然ガスなどの火力か,水力か,原子力を使うでしょう.火力を挙げますと,燃やしたら石油や石炭は熱に変わって元には戻りません.原子力だって高レベル核廃棄物が出ますがそれは「安全な処理」と称して地中深くに埋めています.この廃棄物は元のウランとかプルトニウムに戻るわけではありません.これらの資源は有限であるのでいつかはなくなります.スチール缶のリサイクルで25%の省エネをしても,いわば延命しているだけで根本的な解決にはなっていません.
 クリーンエネルギーといわれている太陽エネルギーを見てみましょう.確かに太陽電池で発電すると,何らの物質もも発生しませんから,クリーンに見えます.しかし,ここに厳然たる事実があります.太陽電池は発電効率がすこぶる悪く,太陽電池“を”作り出す電力の方が,寿命を迎えるまでに太陽電池“から”作り出される電力よりも多いのです.すなわち,電力を使ってそれより少ない電力を発電しているに過ぎません.つまりエコロジーでも何でもありません.結果エントロピーは増大します.
 「究極のクリーン」エネルギー「燃料電池」を見てみましょう.水を電気分解すると,水素と酸素ができますが,この反応を逆にすると,水素と酸素から電気を取り出すことができます.このとき出るのは水だけですので,究極にクリーン,な訳です.エネルギー効率も具体的な数値は知りませんが,かなり高いと聞いています.が,です.このとき使う燃料の水素はどこから持ってくるのでしょう? どっかで沸いてるんでしょうか? そんなわけはありません.結局,水や石油などからエネルギーを使って,水素を取り出しているわけです.つまりエネルギーを使ってエネルギーを生み出しているわけで,当然ながら無から有は生まれていません.水素を取り出すエネルギー,すなわち電力です.前段と同じ展開になります.結果やはりエントロピーは増大します.
 温暖化問題だって,京都議定書は90年に比べ数%減らす事を定めていますが,数%減らすことは,経済活動には大打撃であるにもかかわらず,環境にとってはちっぽけなことであります.正直かなりしんどいでしょう.経済活動をすること=二酸化炭素(他の温室発生ガス)を発生させることであるため,それを減らすのは,経済活動を縮小することに直結するからです.
 長くなってきましたので無理やり終わりますが,結局エントロピー増大則がある限り(ってなくなりませんけど),エントロピーは増大し続けますので,(結局地球の寿命という超絶長いスパンで見たときに,それを少し延ばしているに過ぎず)地球環境対策は奏功しない,ということになります.

 だからといって私はエネルギーを浪費するのに賛成しているのではありませんよ.ただ,エントロピーの概念を使うと,こういう展開にならざるを得ない,という話です.

 部屋の掃除をしろといわれて「確かに部屋のエントロピーは減少するけど,総合的にはエントロピーが増大するから掃除しちゃだめ」とか言ったらオカンにしばかれますよ! オカンがエントロピーを知っていればですけど.
※解説:つまり,部屋の掃除をすると部屋のゴミは隣の部屋へ行くか,ゴミ箱に捨てられるか,いずれにしてもその部屋からはなくなります.それだけだと移動しただけですからエントロピーは増えていないようにみえます.しかし,掃除をするのには電力や労力が必要ですし,ゴミを出せばパッカー車が焼却場まで持っていくにはガソリン(天然ガスかも)が必要です.燃やすのも燃料が必要です.燃やされた灰は埋められるかセメントの材料にされます.埋められればそれは再利用不可能ですし,セメントになった所でいつか壊され産業廃棄物になります.だから掃除をしてはいけない,なんていったら屁理屈ですからオカンにどつかれます.

ここまで読んでいただいて大変有難うございました.
貴方or貴女が興味を持って下されば私は嬉しいです.


ちなみにこの知識は私が自主的に学んだものであって,大学で習ったものではありません.ですので間違っている可能性もありますのでご了承下さい.

今年の夏休みの集中講義に「エントロピー入門(概論だったかな?)」ってのがありました.新大学の学生向けだったのですが,受講したかった…….エントロピーはインセンティヴと並んで私の中では激ホットですよ.

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