■「垂直世界の戦士」■

K・W・ジーター(1998年10月31日発行/冬川亘訳/ハヤカワ文庫SF1248)


場所が地球であるかすら定かでなく、過去の歴史もほとんど失われてしまった遙かな未来、 雲の遥か上部にまで突き出した「シリンダー」と呼ばれる巨大なビルディングが人々の知る 全てである世界。
普通の人々はシリンダーの内部である「ホリゾンタル」で暮らしていたが、上下にどこまで も続くシリンダーの外壁「ヴァーティカル」では、その垂直な壁を住み処とし、ハイテク登攀 ツールやヴァーティカル専用のバイクで垂直な壁を自由に活動し、戦争や略奪を 生業とし、またその活動が投資対象として巨大な市場を持つ「軍事部族」が存在した。

そうした軍事部族に戦士の飾りや軍用アイコンを提供する「意匠師(グラフェックス)」である アクセクターは、ヴァーティカルの生活に憧れ、フリーランスとして困窮した生活をしなが らも、いつか大きな仕事を手に入れ名前を挙げる事を夢見ながらなんとか食いつないでいる始末だった。

そんなある日、代理人から内密に大きな仕事のオファーが入る。
ヴァーティカルに君臨する二大部族の一つである<ハヴォック・マス>が大攻勢に出るにあたり、 意匠を一新しようとしており、その仕事にアクセクターが抜擢されたというのだ。しかし有名部族 の意匠は「デスピックス」という大手のグラフェックス集団が独占しており、無謀にもその仕事 の縄張りに踏み込もうとするフリーランスには、それ相当の報いがあると言われていた。
いぶかしみながらも、これこそ待ちに待った一攫千金のチャンスだとアクセクターは仕事を受ける のだが・・・。