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明 治 六 年
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第三十五号
三府を始人民輻湊の地にして古来の勝区名人の旧跡等是迄群集遊観の場所
[東京に於ては金竜山浅草寺東叡山寛永寺境内の類京都に於てハ八阪社清水
の境内嵐山の類総て社寺境内除地或は公有地の類]従前高外除地に属せる分
ハ永く万人偕楽の地とし公園と可被相定に付府県に於て右地所を択ひ其景況
巨細取調図面相添大蔵省へ可伺出事
明治六年一月 太政官
(奈良県発布は二月)
第三十八号
従来梓巫市子并憑祈祷狐下け抔と相唱玉占口寄等之所業を以人民を眩惑せし
め候儀自今一切被禁止候条於各地方官此旨相心得管内取締方厳重可相立事
明治六年一月 教部省
(奈良県発布は二月)
第四十九号
借宅転住或は寄留人等有之候節其町村々より旧弊に泥み餅或ハ菓子或は茶代
抔と唱無謂品を強て近隣へ配与致させ候向も有之哉に相聞甚以宜からさる事
に候今後右様之義決而不相成候条此旨屹度相心得可申事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年二月 奈良県令四条隆平
第七十二号
今般恊救社より添上郡若槻村に於て養豚場取立度願出差許候間有志之者共恊
心同力相倶に牧畜可致猶又家々食余之廃物又は米麦洗水等ハ恊救社より相当
の価を以可買集筈ニ付徒に不取捨様可致注意委細は猶掛り之者より談可及候
条此段相達候事
明治六年二月
第七十三号
戸長副戸長之儀は唯に人民之諸願伺奥印を押し又御布告御達書を配達する而
已之職務に無之総て 朝廷之御趣意に基き弊習を改め風俗を正しうするの先
導とも可申其任不軽ものに候得は些々たる自己之不便利を厭ひ容易に退役等
願出候ては忽ち其処之差支を生し随而官庁之手数に相成る義に候間此旨厚く
相心得可申乍然病気等にていかにも勤方出来難く不得已分は其区正副区長に
て小前一統ヘ篤と吟味をとけ奥印之願書可差出候事
明治六年二月
第七十四号
今般春日社前に鹿園を設け以群鹿を集畜し園の内外及ひ春日近傍へ桜楓其他
一切の花木植付候条嘉樹良木等献納致度者は大小に拘らす各部会議所へ可差
出候且有志之者鹿園工費之内へ多少によらす寄附献金致度者ハ是亦各部会議
所へ可申立候事
明治六年二月
第九十六号
市郡非人番之儀は相廃止候旨先年及布告候処今以山番又は野番抔と唱差置妄
に人を捕縛致し旧弊を不改村町も有之哉に相聞以之外之事に候尓来右様不埒
之者於有之者本人は固より戸長に至る迄急度所置可申付候条心得違之者無之
様可致候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年二月 奈良県令四条隆平
第九十七号
今般勧業所門前に於て恊力開路会所を設け兼て布告及置候通り追々水陸とも
取開候についてハ道路の便宜に倚り出張所相設け就てハ雛形の通り水陸のフ
ラフ{風易}候条兼て為心得相達候事
一右奈良会議所に目安箱差出し置候条水陸とも開路筋利害得失其他右件に付
難申出情実も有之者ハ無忌諱右目安箱へ差入置候ハヾ可及詮議候条是亦為
心得相達候事
但同事件に付差入候文章其者の姓名を顕す事を差支有之バ無名にても不
苦候事
右之趣管内無洩相達者也
明治六年二月 奈良県令四条隆平
(図略)
第百七号
諸願伺届等差出候節是迄其当人并村役人一同罷出て遠隔の村々に於てハ二泊
或ハ三泊の路金を費さゞれバ些少の事も許可を得る能はず自然営業の障碍と
も相成仍て先般以来各処に会議所を創立し部内割等相定候に付てハ向後書面
上にて相分り事柄明瞭なるハ当人并差添人等罷出るに及バず封状を以て部内
限各会議所へ差出し不苦候事
但封状を以て差出し候節書面疎漏無之様可致注意事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年二月 奈良県令四條隆平
心得書
一郵便其他幸便を以て差出し適宜たるべき事
一願書認方用紙及び戸長奥印等先般雛形を以て達置候通可相心得事
一許可之上願書会議所より差下ける節ハ脚夫へ賃銭可相払事
郵便幸便を以差出す部類大略
一改印届
一毎年八十八歳及ひ百歳の者調
一正副戸長他行願
一戸籍月々生死加除
一村町小入用調
一落し物拾物届
一諸社寺祭礼法事届
但官幣社ハ此限に非ず
一僧侶苗字届
一例月米相場書
一定免継年季願
一雑税継年季願
一官林損木届
一除地取調書
一官費普請願書
一水旱届
一種痘免状願
一諸雛形を以相達候類ハ悉皆
勧業所之部
一上地地面当分拝借願
但返上届
一諸出店
一諸市
但仕舞届
一諸車
一諸職業
一男女髪結
一屠牛
一所持馬并借馬
一宿屋
一炭焼
一松煙炷
一松根堀取
一揚弓大弓吹矢玉子吹扇落
但右拾口開業願休業届共
一諸興行
一為拝開帳
一落葉枯枝拾取鑑札
一諸船願并破損新造
一官林番人進退
一会商社
一新発明之物品
右之外たりとも些少事件ハ差出し不苦候事
第百十一号
別紙之通被 仰出候条従来令掲示候高札面不残取除其部内会議所へ便宜之節
差出し可申候事
一元高札場已来御布告類掲示場と可相心得候事
一元高札場道路之中央或は村外等不都合之地へ取設置候村方も有之右は断然
取払人民熟知し易き相当之場所へ相移し可申候事
一掲示場は必一村一ケ所に不限村続き之都合により二三ケ村或は四ケ村適宜
に申合せ人民多く往来便宜至当之地を撰一ケ所に取纏め可申候事
一掲示場致合併候各村は部内会議所へ早々其旨可届出候事
一已来総て御布告書二部ツヽ可下渡候間掲示用及ひ村用と可相心得候尤掲示
之義は被 仰出之通凡日数之間無等閑屹度可取計候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年三月 奈良県令四條隆平
第百十八号
今般春日社前両傍に新に鹿園取開略落成に付社前道筋并に園外掃除の為め来
ル四月五日より十日の間砂持差許候条志願之者は老若男女に不限賑賑敷参聚
可致尤兼々相達候通り献木其外等致度ものは其節持参可為勝手候事
但し右参聚の節疎暴の挙動無之様兼而戸長副戸長より注意可致事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年三月 奈良県令四条隆平
第百二十一号
病死禽獣を食料のため致売買候は兼て厳禁に候処天然老死或は尋常の病に斃
候ものは皮剥取骨肉等田園の培養に相用候義不苦候条於各地方右弁別厚可致
注意候事
但流行病死のものは焼棄勿論に候事
明治六年三月 太政官
第百三十九号
本寺本山を除之外無檀無住之寺院相廃し私立之分は当人共之処分に任せ公私
不分明之分は適宜之処分可致旨被仰出之趣昨壬申第二百一号を以布達及置候
処一体寺院へ寄進之儀は祖先追福之信志に出るものに付今更当人之手に取入
れ自己之用に宛候は其元之趣意に相反し決して快き事にハ有之間敷然るに学
校之儀ハ兼て相達候通人才教育之基礎たるが故何れとも入費募集之方法を立
一時も速に設置可致之際にして右廃寺并に附属品払代の如は畢竟幸之ものに
候間公私不分明之分は勿論学資之内に組入可申依而寄附主処分致とも可然分
も同様学校費に相備可申此段相達候事
但寄附主判然致候向と雖も伺出許可之上入札払取斗代金は戸長副戸長預リ
置別紙雛形之通証書差出可申事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年三月 奈良県参事津枝正信
廃寺院校費取計方伺
一堂宇 一ヶ所
但[間口何間奥行何間]瓦歟桧皮葺
此代価何々程入札高札を以売払之事
一坊舎 一ヶ所
但[間口何間奥行何間]瓦歟桧皮葺
入札高札を以此代価何々程
一鐘楼 一ヶ所
但[間口何間奥行何間]瓦歟桧皮葺
入札高札を以此代価何々程
一梵鐘 一ヶ所
但[周囲幾尺厚サ幾寸]重サ何程
入札高札を以此代価何々程
此外土蔵或は諸建物等有之候はハ一点書を以認むへし前書一点書の内と雖も
建物無之分は別段書載に不及候事
右払代之儀学費備金として正に御預り申上候以上
明治六年何月 何大区何小区戸長
何某
々々
第百四十二号
諸陵墓并古墳等堀発き候義不相成は勿論に候得共近々陵墓取調として教部省
官員出張巡視有之筈に付猶又右等心得違之者無之様可相心得候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年三月 奈良県参事津枝正信
第百四十三号
牛肉之人身滋養之最勝たるを以当今専食用とする者多し然るに奸商共血抜等
不致加之猥に不正之肉売買致し遂に悪病伝染等有之候ては実以不容易依而已
往当県より差許置候屠牛場へ日々取締番人立会検査之上売捌差許候条是迄牛
肉売捌店并請売之者共へ鑑札相渡置所持無之者は商業差止候条来月廿日を限
り市郡共各会議所部内一纏にして勧業所へ届出一人別金二十五銭相納鑑札可
申請尤右新規商業願度ものは其時々戸長の奥印を以同所へ可申出事
但本文之通規則相建候上は当県管下屠牛場より売出候屠肉之外他所におゐ
て売買致し候義は不相成若心得違之者於有之は屹度咎方可申付候事
明治六年三月
牛肉売捌鑑札
(図省略)
第百四十五号
道路の狭隘なるは啻に人民通行の自由を得すして出火等の節防禦の術を施し
難きのみにあらず第一車馬の往来に差閊物貨運輸の便をなさゝるより自から
物産蕃殖の障碍を生し実に不可然ものに候間往還筋は道幅五間其他の市在は
総て道幅四間に改正可致乍併一時に之を施行せは又人民の困却不少儀に付漸
を以引直し可申候間後来家作致候者ハ現今道幅の中央より軒下雨滴の所迄往
還筋は二間半其他の市在は総て二間を後そけ造営可致此段予て相達候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年三月 奈良県参事津枝正信
第百六十号
予而及布告置候通取締番人設置各地に大屯所取設候に付ては以来変死行倒水
縊死盗難等之届ハ左之通り大屯所へ可差出事
第一会議所部内ハ
并添上郡五小区より十三小区まて
山辺郡一小区より九小区まて
奈良大屯所へ
第三会議所部内ハ
竜田大屯所へ
第四会議所部内
第六会議所部内ハ
三輪大屯所へ
第五会議所部内ハ
御所町大屯所へ
第七会議所部内ハ
上市大屯所へ
第八会議所部内ハ
五条大屯所へ
第十二会議所部内ハ同所会議所へ可申出事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年四月 奈良県参事津枝正信
第百八十一号
寺院に於て従前開帳と唱へ許可を受開扉致し来候処抑仏体ハ平常開扉諸人に
参拝為致可然ものに付自今一般平常開扉致し別段開帳不相成候事
右之通寺院へ無洩相達もの也
明治六年四月 奈良県参事津枝正信
第百八十四号
奈良県管内郷社
添上郡
郷社[自第一小区至第四小区自第十四小区至第廿二小区]
手向山神社 [奈良鎮坐県社にて兼]
郷社 自第五小区至第十三小区
夜支布山口神社 大柳生村鎮坐
添下郡
郷社 自第一小区至第三小区
八幡社 郡山鎮坐
郷社 自第四小区至第九小区
菅原神社 菅原村鎮坐
郷社 自第十小区至第十四小区
矢田坐櫛玉彦神社
山辺郡
郷社 自第一小区至第三小区
神波多神社 中峰山村鎮坐
郷社 自第四小区至第十小区
都祁水分神社 友田村鎮坐
郷社 自第十一小区至第二十小区
石上神社 [布留村鎮坐官社にて兼]
広瀬郡
郷社 自第一小区至第六小区
広瀬神社 [川合村鎮坐官社にて兼]
葛下郡
郷社 自第一小区至第五小区
片岡神社 王子村鎮坐
郷社 自第六小区至第十六小区
葛木二上神社 二上山鎮坐
葛上郡
郷社 自第一小区至第五小区
鴨都波神社 御所町鎮坐
郷社 自第六小区至第九小区
御歳神社 森脇村鎮坐
宇陀郡
郷社 自第一小区至第四小区
九頭神社 神末村鎮坐
郷社 自第五小区至第八小区
宇陀水分神社 古市場村鎮坐
郷社 自第九小区至第十三小区
神戸神社 迫間村鎮坐
郷社 自第十四小区至第十七小区
水分神社 下井足村鎮坐
平群郡
郷社 自第一小区至第二小区
往馬神社 一分村鎮坐
郷社 自第三小区至第九小区
竜田神社 [立野村鎮坐官社にて兼]
郷社 自第十小区至第十二小区
菅田神社 八条村鎮坐
忍海郡
郷社 自第一小区至第二小区
笛吹神社 笛吹村鎮坐
式上郡
郷社 自第一小区至第四小区
穴師神社 穴師村鎮坐
郷社 自第五小区至第七小区
大神神社 [三輪山鎮坐官社にて兼]
郷社 自第八小区至第十小区
天満社 初瀬村鎮坐
式下郡
郷社 自第一小区至第六小区
鏡作神社 八尾村鎮坐
十市郡
郷社 自第一小区至第四小区
多坐弥志理都比古神社 多村鎮坐
郷社 自第五小区至第八小区
耳無山口神社 木原村鎮坐
郷社 自第九小区至第十一小区
談山神社 多武峰鎮坐
高市郡
郷社 自第一小区至第六小区
畝傍山口神社 畝傍山鎮坐
郷社 自第七小区至第九小区
天満社 根成柿村鎮坐
郷社 自第十小区至第十五小区
小島神社 下子島村鎮坐
宇智郡
郷社 自第一小区至第七小区
宇智神社 今井村鎮坐
吉野郡
郷社 自第一小区至第三小区
吉野水分神社 吉野山鎮坐
郷社 自第四小区至第六小区
吉野山口神社 妹山鎮坐
郷社 自第七小区至第八小区
蟻通神社 北村鎮坐
郷社 自第九小区至第十小区
丹生神社 迫村鎮坐
郷社 自第十一小区至第十二小区
丹生川上神社 [丹生村鎮坐官社にて兼]
郷社 自第十三小区至第十四小区
波室神社 夜中村鎮坐
郷社 自第十五小区至第十七小区
四社神社 中戸村鎮坐
郷社 自第十八小区至第十九小区
天河神社 坪内村鎮坐
郷社 自第二十小区至第二十四小区
池之神社 池峯村鎮坐
郷社 自第二十五小区至第二十六小区
天神社 阪本村鎮坐
郷社 自第二十七小区至第三十二小区
玉置神社 玉置村鎮坐
但郷社之外氏子有之神社ハ悉皆村社と可相心得事
右之通郷社確定候条管内無洩可相触もの也
明治六年四月 奈良県参事津枝正信
第百九十八号
昨壬申年八月中触達候諸宗現在之寺院開創の年歴及僧尼の履歴等取調に付一
郡に一名つゝ寺院惣代申付置候処今般成功に付てハ右取調中諸入費及筆墨紙
等償却方塔頭末寺庵室并無檀無住之無差別渾而軒別に金二十五銭つゝ課出可
致事
右之趣管内無洩相達する者也
明治六年四月 奈良県参事津枝正信
二百二十四号
従来居宅を取建るに伺を経すして適宜に営築する者不少甚敷に至てハ道路を
冒し取建る者も有之哉に相聞以之外の事に候已に道路之義ハ過日来相達候通
に付以来村町に係ハらす居宅新営又ハ建替共前以巨細図面相添願書其部内会
議所へ差出会議所役人及正副戸長立会検査相受け可取建此段屹度相達置候事
但会議所取建無之村々は本県へ可罷出事
右之件々管内無洩相達もの也
明治六年四月 奈良県参事津枝正信
第二百三十八号
第百八十四号郷社布告之内
矢田坐櫛玉彦神社 矢田村鎮坐の五字を脱
御歳神社 森脇村ハ持田村の誤
蟻通神社 北村の北ハ小の誤
波室神社 室ハ宝の誤
池之神社
天神社
右両社ハ前後の誤に付天神社を前とし池之神社を後とす
玉置神社 玉置村ハ玉置川村の誤
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年四月 奈良県参事津枝正信
第二百四十三号
先般管内道路里程を計り往還村々高札場へ標木建立相成候処今般御詮議之筋
有之右高札場に建立之標木ハ悉皆取除き更に左之駅々へ別紙雛形之通標木取
立可申候尤従前之高札場にて不都合之駅々ハ弁利之場所見斗可申出其部内会
議所へ何分指揮せしめ地替可申付標木認方ハ其駅々にて相認め可申候此段相
達候事
丹波市駅 三輪駅 初瀬駅
萩原駅 髪無駅 桜井駅
宇陀駅 田原本駅 二階堂駅
八木駅 土佐駅 戸毛駅
五条駅 上市駅 下淵駅
鷲家駅 郡山駅 竜田駅
高田駅 御所町駅 新庄駅
下田駅 竹内駅 小瀬駅
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
(図省略)
第二百四十七号
去ル辛未七月臣民一般守札之規則被仰出候処郷村社祠官祠掌等未定に付一般
施行相済不申然るに平常他出旅行之節差支ハ勿論自今年齢を計算するに何年
何月と記し且徴兵規則御発令に付而ハ総て出生年月不詳候てハ不都合に付今
般新任之郷社祠官へ右守札渡方申付候条四民老少男女とも氏神之称号并出生
年月日と父の名を記し各郷社祠官へ差出守札を可申受尤尓来出生之児有之時
ハ御規則之通取計可申万一守札所持無之者ハ相糺屹度咎め可申付候条末々に
至迄正副戸長より厚説諭可致候事
但受渡之義ハ戸長より祠官へ打合早々取扱可申尤旧県下に於て施行相済是
迄守札所持之者ハ此度別段受るに不及其旨戸長へ可届候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
第二百五十五号
種痘施術之義是迄施術相請候者私宅又ハ医生共自宅等に於て施術致し来候哉
に候得共昨壬申第八十二号布達之旨も候に付今般詮議之次第有之来ル六月一
日より各部会議所に於て施術為致候条各区戸長於て未だ施術不相済小児取調
可指出尤日割其外共会議所に於て可承合此段更に相達候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
第二百五十六号
牛馬牽方之儀近頃猥に相成往来の妨を不顧牽綱を伸し或ハ放ち歩ませ甚以不
埒之事に候以後牛馬扱ひの者往来通行之障碍不相成様且市在雑沓之場所にて
ハ片側に繋ぎ可置候此段屹度可相心得候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
第二百六十五号
従来斃牛馬之儀ハ角皮を用るの外悉皆捨埋致来候処今般斃牛馬脂肪を以蝋製
之儀願出候に付為試検聞届候間自今伝染病ハ勿論不意之病質之外死牛馬有之
節ハ所持主へ相対之上右稼方之者より相当之価を以可買取筈に候条此段為心
得相達候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
第二百九十号
第百六十三号
方今牛豚類の牧畜盛に行れ候所温暑の時に方てハ其臭気人身の健康を害する
のみならず近来獣類の伝染病流行往々人生の傷害を醸し候に付自今三府市街
の区内ハ勿論各地一般人家稠密の場所にて豢養の儀堅く禁止候条右区内に於
て従前営業の者ハ布令到達の日より三十五日以内を以て郊外便宜の地に立退
豢養可致事
但東京府下朱引内ハ仮令草野空間の地と雖も豢養不相成候尤乳汁搾取のた
め豢養候ハ被差許候得共不潔臭穢の儀も有之候ヘハ詮議の上可令取払事
明治六年五月 太政大臣三条実美
第二百九十三号
当今牧牛羊蕃殖試検之折柄悪犬之類牛羊柵内及鹿園等へ屡馳入傷害不少に付
てハ自今和洋犬共に飼置度者以後其飼主之姓名并町村等詳細相認夫夫木札を
附置員数取調無遺漏各会議所へ可届出無札之犬ハ見当り次第勝手に打殺可申
候尤札付之飼犬たりとも牛羊柵内又ハ鹿園其他にて暴害せしむる犬ハ見当り
次第打殺候条犬飼主共兼て可相心得候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
第二百九十八号
川々水道或ハ空地之隅等へ塵芥其他甚敷に至てハ産後の汚穢物をさへ猥に放
棄候者有之趣以之外之事に候抑腐敗物の臭気ハ大に人身を害し是か為め伝染
病を醸成するの患有之ものに付以後其所々に於て吟味之上適宜の場所を設置
臭気無之様屹度注意可致候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年五月 奈良県参事津枝正信
第三百二十号
一当一月より日曜日を以休暇と相定置候処本月十五日より毎月一六之日を以
更に休暇と相定候事
但大の月ハ三十一日此日ハ休暇にあらす
一毎年一月一日より三日迄六月二十八日より三十日迄十二月二十九日より三
十一日迄休暇之事
一本月十五日より来ル八月中官員午前第七時出庁午前十二時退庁之事
但諸願伺届共受付午前第八時限之事
右之通相定候条此段為心得管内無洩相達する者也
明治六年六月 奈良県令四条隆平
第三百二十一号
旧藩々士族邸并社寺上地内に居住の貫属其他とも渾て無税地住居之者共一般
取調更に払下げ或ハ其侭地券証相下げ夫々税額取究候に付てハ許多之貫属扱
方不一様加之此節郡市一般地券取調中用途多端之際旁取調運兼券証渡し方暫
可及延引候得共地税之儀ハ去壬申年より収入之筈追而渡済上ハ申酉両年分一
時取立候条予而相心得其期に至り不都合無之様正副戸長に於て注意いたし本
人共へ篤と取示置可申候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年六月 奈良県令四条隆平
第三百四十六号
先般守札授与之儀相達候処別紙之通更に御布令相成候に付而ハ其儀に不及候
条此段可相心得候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年六月 奈良県令四条隆平
(太政官第一八〇号(布)略)
第四百四十号
第二百五十三号
火葬の儀自今禁止候条此旨布告候事
明治六年七月 太政大臣三条実美
番外
斃牛馬脂肪を以蝋製之儀第二百六十五号を以及布達置候処売主之者に於て稼
人共之姓名相心得不申候てハ自然売買上に於て双方不都合之一端にも可相成
因て今般稼人共姓名為心得左之通相達候条余ハ総て先般布告之通相心得可申
事
奈良草小路町
藤岡貞三郎
同 奥子守町
鈴木藤七
同 油留木町
筒井政七
同 同町寄留
西京新河原町三条下ル
橋本町
高橋卯之助
同町寄留
西京新河原町三条下ル
橋本町
河原喜平
右之趣管内無洩相達する者也
明治六年七月 奈良県令四条隆平
第四百六十五号
今般小学区々画御確定相成候に付而ハ毎区或ハ聯区申合せ学校設立可願出ハ
勿論に候得共取立方之儀ハ官私設置之区別も有之候ニ付来ル九月五日限別紙
雛形に照準し取調可差出候事
明治六年八月 奈良県令四条隆平
別紙
雛形
一学校位置
何大区何郡何小区幾番小学区何村何町或ハ何[社寺]又ハ何某居宅何学舎
と唱ふ
一学科
一教則
一校則
一教員履歴
何[府県]貫属[華士]族僧侶平民
苗字名
当何年何ケ月
何某に従ひ何年何月より何年何月迄都合何ヶ年何学研究
同
同
何官省等何処にて何年何月より何年何月迄何役勤務或ハ何業等相勤
一教員給料
一ヶ年 何程
一ヶ月 何程
但一人ニ付 何程
一学校費用概略
書籍器械等入費 一ヶ年何程
一ヶ月何程
営繕入費并諸雑費[筆墨紙薪炭油等ノ物也] 一ヶ年何程
一ヶ月何程
世話掛校番等之給料 一ヶ年何程
一ヶ月何程
屋敷年貢 一ヶ年何程
一ヶ月何程
但仮設なれハ借料何程と記すへし
右費用総計 一ヶ年
一ヶ月 何程見積
一生徒員数
何百何十人
一生徒授業料
一ヶ年何程
一ヶ月何程
但一人ニ付何程
一学資金募集概略
寄附金 何程
但寄附人の姓名を記すへし
基礎金 何程
但講金或ハ従来の積立金等にて学資に備へて妨けなき金又ハ荒蕪地を
開き又ハ堤防等へ桑茶の類を植学費の備を成す類なり
割掛金 一ヶ年
一ヶ月 何程
但一人ニ付 何程
一戸ニ付 何程
右募集金総計 一ヶ年
一ヶ月 何程見積
右之通何郡何村何番小学区より何村 〃 何番小学区迄合併開業仕度候ニ付
見積取調奉差上候以上
何郡何小区何[町村]戸長
年号月日 苗字名 印
ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ
ヽヽヽヽヽ印
県令宛
第四百六十七号
従来太鼓台と唱へ若干の金穀を町村へ分賦し之を製造して神事式日多人数に
て縦横に荷行き前日出金を拒む家ハ太鼓台にて軒端を破損し或ハ酒興に乗し
争論を生し候様之弊習間々有之以之外之事に候畢竟神事祭日にハ恭敬粛然人
民共和社参可致処前条粗暴之所業よりして不容易儀引起し且無益之金銀を費
し終に土地之衰弊を招き候儀に付向後右太鼓台荷行き禁止候条心得違無之様
戸長副戸長に於て厳重取締可致事
(発令者・年月記載なし)
第五百二十四号
今般各会議所部内改正別冊条例規則之通事務取扱申付置候条小前末々に至る
迄此旨可相心得就てハ部内村小入用等追々減省之為め諸役人給料旅費向後会
議所に於て相渡候に付右予備金として昨壬申一ケ年元正副戸長給料夫代総計
金五千八百六十五円九十一銭七毛を[米ハ一石金三円三十七銭五厘立]目的と
して十二ケ月に割合此四ケ月分金二千三百四十六円三十五銭八厘部内各村よ
り第四会議所へ当月十五日限可差出此段相達候事
明治六年九月 奈良県令四条隆平
(これは「管内限布達」(明6-A-22)による。奈良市立史料保存館本では、同
じ五二四号でありながら、文中金額及び会議所への納付期限が異なる。奈
良県布達(旧辻村文書)では、ほぼ同文ながら(おそらく同一版木を一部
改正して使用)一一月付番外として、金額・提出日・会議所名が異なる。
掲載していないが、五二三号も同様の番外あり)
会議所条例并大小区諸規則
今般会議所ヲ管下ニ設立スルハ畢竟上下ノ便利ヲ主トシ官民ノ情状ヲ疎通シ
且人民ヲシテ開明ノ域ニ誘進セシメンタメ地方民間ニ関渉スルノ諸事ヲ会議
シ公平ニ基ントスル所以ナリ然リ而シテ是迄分部セル大区ハ曩日新置県ノ際
一時仮定スル所ニシテ土地ノ広狭戸口ノ多寡其当ヲ得ス正副区長ニ至テハ未
全員セサル区モアリ是ヲ以テ民間幸不幸ノ差ヲ生シ遂ニ自有ノ権利ヲモ妨碍
スル恐アリ加之事務猥雑ニシテ吏員ノ労逸モ均一ナラス因テ今般更ニ僉議ヲ
尽シ先ツ大小区ノ部分ヲ平等シ吏員ノ当否ヲ撰議シ其佗諸般ノ規則ヲ更定シ
其条例及区長以下職員ノ所務綱目給料日当ノ表箋上申書式等ヲ鏤シ以テ管内
各地ニ告示スル左ノ如シ
会議所条例
第一条
大小区置方ハ全管内ヲ分テ十二大区トシ一大区ヲ分テ十小区トスル事
第二条
戸数凡ソ一万ヲ以テ一大区トシ一千ヲ以テ一小区トスヘシ然レトモ実地ノ景
況便宜ニ随テ分括方取捨アルヘシ故ニ吉野郡ノ如キ方今水陸両道開拓ノ際ナ
レハ九十十一ノ三大区ハ他日成業ノ後確定致スヘケレハ姑ク之ヲ欠ク
第三条
会議所ヲ設立スル地ハ各大区内中央トスヘシ戸長役所ハ各小区便宜ノ地ニ建
構スヘキ事
但戸長役所ハ実地便宜ニ仍テ二三小区合併スルモ妨ナシ
第四条
会議所諸般ノ事務ニ服膺スルハ正副区長会計用掛ノ任タルヘシ戸長并補助ハ
各其小区ニ出勤シ又順次交番ヲ以テ会議所ニ奉務スヘキ事
但区長所労病気等引篭ノトキハ副区長ニテ代理シ副区長所労病気引篭ノト
キハ区長ニテ摂兼或ハ会計用掛ニテ補理シ以下此ニ照准補理スヘキ事尤何
モ両三日ノ所労引篭ノトキ必ス其調印ヲ要スヘキ書類ハ宅エ回シ検印セシ
ムルモ妨ナシ
第五条
吏員置方ハ一大区ニ区長一員副区長二員会計用掛二員一小区ニ戸長一員補助
[便宜之ヲ置ト雖モ二員ニ過キス]一村ニ副戸長一員検証役一員一町ニ検証役
一員ヲ置クヘキ事
但一村四拾戸以上七拾戸迄副戸長一員七拾戸以上二員ヲ置キ一村四拾戸ニ
満サルハ兼併スヘシ
一町六拾戸ヨリ九拾戸迄検証役一員九拾戸以上百八拾戸迄二員ヲ置クヘシ
百八拾戸以上ハ六拾戸毎ニ一員ヲ増加ス六拾戸以下ハ兼併スへシ
第六条
戸長同補助ハ実地ノ景況ニ由リ至当ノ方法ヲ立テサルヲ得サレハ人家稠密ニ
シテ市街ヲナス地ハ給料ヲ増シ山野僻境土地不便ナル所ハ概子人員ヲ増シ給
料ヲ減シ以テ労逸繁閑各其宜ニ適ス此故ニ二役トモ給料ヲ三等ニ分ツコト表
ノ如シト雖トモ其役柄ニ於テ固ヨリ等級軽重ノ別有ニアラサル者ナリ
第七条
区長副区長会計用掛ハ其身平素ノ行状履歴及能不能ヲ審詳明弁シ広ク公撰ノ
上任用スヘシ戸長ハ各村副戸長ノ入札ヲ会議所ニ於テ正副区長立会ニテ開キ
三番迄ノ札ヲ以テ区長ヨリ県庁ニ具状スヘシ副戸長ハ区内検証役ノ入札ヲ其
村ノ検証役戸長トトモニ会議所ニ於テ正副区長立会ニテ開キ三番迄ノ札ヲ以
テ区長戸長ノ連印ニテ県庁ニ上申スヘシ検証役ハ一村町人民ノ入札ヲ其村町
ノ正副戸長トトモニ会議所ニ於テ正副区長立会ニテ開キ三番迄ノ札ヲ以テ正
副戸長連印ニテ区長ヨリ県庁ニ上陳スヘシ
但本条ノ通リ撰挙方法ヲ立ルト雖トモ其任ニ堪ル人才アレハ臨時県庁ノ特
命ヲ以テ登庸スルモアルヘシ
第八条
会議所入費及正副区長会計用掛給料旅費等ハ其簿冊ヲ毎年両度宛総会議所ニ
於テ統理シ明細ニ査校ヲ遂ケ県庁ノ允裁ヲ経テ之ヲ管内各部ニ分賦ス戸長役
所入費正副戸長検証役給料旅費等ノ簿冊モ毎年両度各会議所ニ於テ部内限之
ヲ統理シ県庁ノ点検ヲ経テ之ヲ部内ニ分賦スヘシ
但給料旅費日当ノ差違ハ別紙表箋等ニ就テ詳知セシム尤区長以下常勤ノ者
病気ニテ百日以上引篭ノ節ハ給料四分ノ一ヲ給ス新任転免ハ日割ヲ以テ給
ス各自己ヨリ出ル過失ニ付糾弾尋問等ヲ受ルタメ欠勤スル日数間ハ給料日
当共支給セサルヘシ然リト雖トモ結局其事実明了ニシテ無質ノ寃ニ帰スル
ハ詮議ノ上支給スルモアルヘシ
第九条
会議所又ハ戸長役所ニ於テ若シ臨時金穀等ヲ分賦スル事アレハ必ス前条ノ順
序ヲナシテ施行スヘシ
但各村町ノ人民一己ノ身分限ノ事ニ付入費ハ仮令公事ニ関係スルトモ各其
本人ヨリ弁出スヘシ若其者格別貧窮ニシテ自給セシムヘカラサルトキハ其
区其村町ニ於テ評議シ至当ノ道理ニ帰スヘシ
第十条
左ニ掲記スル各科及其他国中ノ利益トナルヘキコトハ総テ会議所ニ於テ広ク
詢問衆議ヲ尽スヘキ事
一学校ヲ創立スル事
一病院ヲ施設スル事
一物産ヲ興隆スル事
一水利運漕ノ便ヲ開ク事
一道路橋梁ヲ修繕スル事
一諸工業ヲ勧奨スル事
一諸商社ヲ結構スル事
一義倉貯蓄ノ事
一窮民救助ノ事
一養蚕ノ事
一茶園ノ事
一牧畜ノ事
但右方法決議ノ上実際施行ノ儀ハ資本財主仮令民間私営ニ属スルト雖ト
モ結社以上ノコトハ仮令少人数タリトモ其事実一応県庁ニ具状シ裁下ヲ
受クヘキ事
区長所務綱目
第一章
官省県ノ御布告書類ヲ稽留セス区内エ相達シ総テ官民ノ間ニ於テ不都合無ラ
シムヘキ事
一布達書ノ文言分明ナラサル処ハ言葉ヲ以テ注解ヲ加ヘ之ヲ戸長エ附シ区内
ニ於テ領解セサル者無ラシムヘシ
一日数ヲ限リ調査スヘキコトヲ相達スル時ハ其日限ヲ誤ラス申報スヘシ若シ
事故アツテ其日限ニ調査相成ラサルモノハ予メ其趣ヲ具状スヘシ若シ之ヲ
具状セスシテ日限ヲ誤ル時ハ其責遁ルヘカラス
一布達書ニ於テ書損誤脱其外意味了解ナラサルモノハ之ヲ他人ト合議シ尚分
明ナラサルモノハ之ヲ県庁ニ正スヘシ
一諸布令書ヲ掲示スル事戸長所務ハ第一章ノ通リタルヘク事
但掲示場ニ板木ヲ釣リ布告書ヲ掲示セルトキ之ヲ打鳴シ以テ区内人民ニ
報知スレハ各人民布告書熟視スルコトトス
第二章
各区各村ノ地理経界ヲ知リ耕地反別貢額等ヲ詳ニスル事
一区内限リ地図ヲ製シ田畑山林原野川堰沼池秣場寄洲社寺屋敷地等ヲ色分ケ
ニシテ相認メ時ノ変更ニ従フテ之ヲ改正シ永年区内ノ地理ニ於テ錯乱無ラ
シムヘシ
一戸長各其関スル処ノ検地帳及名寄帳等時々熟覧シ其変更ヲ校訂シテ紛雑無
ラシムヘシ
第三章
正副戸長ノ勤惰ヲ監視シ若シ其事務ノ挙ラサルアレハ之ヲ督責スヘキ事
一戸長副戸長検証役等ハ各其人ヲ得サレハ其区其村内ノ人民之カ為ニ其弊ヲ
蒙ル故ニ其行状ヲ監視シテ其職ヲ怠ラシムヘカラス若シ行状不正ニシテ官
民ノ為ニナラサル者アレハ之ヲ私蔽セスシテ上陳スヘシ
第四章
諸願伺届共会議所ヲ経テ上陳スヘキ書類ハ総テ検訂考覈シテ式ノ如ク上陳ス
ヘシ
一戸長副戸長ニ於テ士民ノ情願ヲ壅閉スル事アラハ一応其次第ヲ説得スヘシ
然レトモ強テ之ヲ拒カ如キハ正副戸長検印ナシト雖モ之ニ加印シテ上陳ス
ヘシ尤戸長ノ捺印ナキモノハ其事故ヲ別紙ニ書副進達スヘシ
一県庁エ上陳セシ諸願伺等半ケ月ヲ経テ指令ナキモノハ其趣ヲ書取其遅緩ス
ル所以ヲ伺ヒ出ツヘシ
第五章
区内ノ戸籍ヲ集纂シテ年々ノ増減加除ヲ明ニシ牛馬ノ頭数ヲモ詳悉スヘキ事
一月々各戸長ヨリ報スル処ノ士民ノ生死入送籍ヲ調査シテ戸籍ヲ加除シ翌月
五日迄ニ式ノ如ク一ト括ニ記載シテ之ヲ上達シ又年々総計ヲモ式ノ如ク翌
年一月中ニ上達スヘシ
一寄留ノ戸数人員ヲ詳ニシテ遺漏ナカラシムヘシ
一牛馬ノ数ハ各戸長調査スル帳簿ヲ合併シ一村毎ニソノ増減ヲ明ニシテ毎年
一月中ニ上陳スヘシ
第六章
堤防橋梁ノ修繕及溝{サンズイ會}ヲ浚決スル等ノ事務ニ注意スヘキ事
一区内ヲ時々巡回シ堤防橋梁ノ廃頽溝{サンズイ會}池堰ノ決塞ヲ検視シ戸長ヲ
シテ其事 務ニ怠ラシムヘカラス
一堤防橋梁及溝{サンズイ會}池堰ノ修繕ハ正副戸長ト商議ヲ遂ケ実地ヲ検査シ
後害等ヲ深慮シ調度ニ冗費ナク其目論見仕様帳及清算帳ハ不明了無之様
精細ニ点検 ヲ遂ケ調印スヘキ事
一道路川敷ヲ詳ニシ時々其広狭ヲ正シ故ナクシテ転変アラシムヘカラス
第七章
孝貞善行ヲ表シ老衰貧窶ヲ憐ムヘキ事
一孝貞義僕及本業ヲ相励ミ或ハ善行衆ニ抽シテヽ郷隣共ニ感賞スル者アレハ
其履歴行状ヲ詳記シテ上陳スヘシ
一天災或ハ非常ノ難ニ逢ヒ目下困窮ニ逼ル者ハ上陳スヘシ故ナク窮迫ニ至ル
者ハ営業ヲ勉メサルヨリ生スルトス依テ之ヲ奨励シ力食ノ目的ヲ立シムヘ
シ徒ニ之ヲ救恤シテ後来ノ人民力食ヲ怠ルノ原ヲ開クヘカラス
第八章
放縦無頼ヲ監視シ奸盗兇賊ヲ摘発シ総テ良民ノ害トナルモノヲ大小屯所ニ打
合セ吟味スヘキ事
一党ヲ結ヒ衆ヲ集メ官ニ抗スルノ兆及妖説妄談ヲ以テ衆民ヲ惑ス等ノ所行ア
ル者ハ其実否ヲ探索シ速ニ県庁ニ申報スヘシ
第九章
凡区内ニ於テ非常ノコトアラハ正副戸長ヲ差図シ其処置ヲ失フヘカラサル事
一盗難火災其外非常ノ事ハ延滞ナク申報スヘシ且火災消防ノ予備ハ常々設ケ
置キ聊緩怠アルヘカラス
一変死行倒等ハ公則ノ通取扱ヒ検証ノ際ニ於テ不都合アルヘカラス
第十章
区内幼童ヲシテ学ニ就カシムヘキ事
一男女共ニ六才ヨリ十三才迄ノ間ニ於テ世事ニ欠クヘカラサル学業ヲ終ヘシ
ムル様注意シ其年月ヲ限廃セシメサル様勧誘スヘシ
一区内ニ於テ幼童ヲ教授スル者其行状正カラス却テ幼童ノ知見ヲ註誤スル類
ハ陰蔽スルコト無ク之ヲ上陳スヘシ
但学務ニ関スルコトハ総テ学校掛エ詢候稟議スヘシ
第十一章
物産ヲ殖シ荒蕪ヲ開キ住民ノ職業ヲ盛大ニスル事ヲ工夫シテ具状スヘキ事
一土地ヲ開キ産物ヲ製スル方法等ハ住民ノ試験或ハ識者ノ思量ヲ推問考究シ
巧益アル事明確ナレハ仮令願人無之トモ県庁ニ具状シテ其処分ヲ乞フヘシ
但住民ノ願ト雖モ他ノ関渉或ハ障碍ノ有無等ハ詳細取糺上申スヘキコト
第十二章
租税及諸上納ノ米金ハ其日限ヲ延滞スヘカラサル事
一本条ハ毎区正副戸長検証役等ニテ之ヲ収取シ副戸長検証役ヲ以テ貢納スル
ヲ定則トス故ニ其日限ニ至リ貢納致サヽルハ正副戸長検証役共ニ職務挙ラ
サルコトトス故ニ予メ区内ノ貧冨ヲ詳ニシテ諸税貢納ノ期ヲ誤ラサル様差
図スルヲ要ス
第十三章
区内諸入費ノ会計ヲ監督シ毎村ノ会計ヲモ検視スル事
一毎年一月ヨリ十二月迄ノ帳簿定期ノ通年々両度宛総会議所エ送達スヘキコ
ト
一区内ニ於テ年中諸入費帳簿ヲ展閲致シ度申出ル者アラハ之ヲ許可スヘシ
第十四章
区内ニ在ル官林官地及官普請等ノ場所ヲ熟知シ毎区正副戸長ヲシテ其取締ニ
任シ其区界ヲ誤認セシムヘカラサル事
第十五章
区内ニ在ル社寺ノ事務ヲ詳ニシ各社各寺ヲシテ其例式分限ヲ誤ラサル様注意
スヘキ事
第十六章
諸帳簿其外諸書類ハ各職務転免ノ際遺漏ナク後役エ附与スヘシ又新任ノ者ハ
受取タル書類ノ内了解シ難キモノハ幾度ニテモ尋問スヘキ事
第十七章
副区長ノ心得ハ輒チ区長ノ介副タル所以ニテ百般ノ事務区長ヲ補助シ以上ノ
綱目ニ悖ラサルヲ要ス
会計用掛心得書
一会議所内会計用度及一切ノ雑務ヲ管理シ冗費之ナキ様官民ノ責ニ任ス但シ
時宜ニ応シ正副区長ニ商議シ之カ方法ヲ立ヘキコト
一凡金穀出納ノコトハ総テ正副区長ノ検印ヲ請ケ細大トナク出入ノ際ニ於テ
尤注意シ毛髪モ不正ノコトアルヘカラス
一会議所内外ニ於ル諸用度供給ノ物品ハ受払トモ勘定ノ簿冊エ総テ正副区長
ノ検印ヲ請クヘキコト
一諸雑税ノ儀ハ一大区内取纏請納方不都合無之様可致事
戸長所務綱目
第一章
官省県ヨリノ御布告書類都テ遅延ナク区内エ相達スヘキ事
一布達ノ文言ニ於テ解シ難キ所ハ之ヲ区長其他エ問ヒ言葉ヲ以テ文言ヲ説キ
区内ノ者ヲシテ夫々ノ意味ヲ能ク承知セシムヘシ
一諸布令書ヲ掲示場[会議所并戸長役所ニ之ヲ設ク]ニ張出シ部内ニ通達スル
日ヨリ必ス五日ノ内ニ部内人民ヲシテ漏落ナク承知セシムヘク様注意シ各
村町エ配達時間遅滞スヘカラス
一諸布令書到著ノ時間ト掲示ノ時間トヲ詳記シテ前月分翌月五日マテニ会議
所ニ差出スヘシ
一日数ヲ限リ取調方ヲ相達スル廉ハ其日数ヲ誤ラス取調フヘシ若シ故障アツ
テ其日数ニ調ヘ方行届サル事アラハ兼テ其事ヲ申立ツヘシ
第二章
区内ノ耕地反別経界ヲ明知シテ租税諸上納米金ヲ取立ツヘキ事
一名寄帳ニ於テ変更有之時ハ区長ノ検査ヲ受クヘシ故ニ下札張紙等ヲ以テ書
改ルノ条ハ必ス戸長ノ調印アルモノトナス
一兼テ区内ノ景況ヲ熟察シテ諸上納米金取立ノ期限ヲ誤ルヘカラス
第三章
区内ノ戸籍ヲ詳ニシテ時々ノ増減ヲ正シ且牛馬ノ数ヲモ明ニスル事
一区内士民之生死及入送籍ヲ遺漏ナク時々区長エ報告スヘシ
一村中エ三日以上滞在スル者ハ其原籍ヲ取糺スヘシ
一牛馬ハ戸籍順ニ随ヒ毎年其飼主ヲ記シ其頭数及ヒ牝牡ヲ分ツテ之ヲ区長エ
報告スヘシ
第四章
堤防橋梁溝{サンズイ會}道路ヲ修繕スル事
一本条ノ破損ハ怠リナク是ヲ修繕シ各村ヲシテ大害大費ヲ受サラシムル様注
意スヘシ尤経費些少ト雖トモ戸別等ニ分賦スル修繕ハ其仕様目論見帳エ区
長ノ検印ヲ乞フヘシ
但五円以下ノ修繕ハ副戸長検証役ト商議シテ之ヲ取計フヘシ尤二人以上
ノ異議アル時ハ其趣ヲ区長ニ申出ツヘシ
一道路川敷ノ広狭ハ其間数ヲ帳簿ニ記シ若変更スル事アラハ区長ト連印シテ
伺ヒノ上之レヲ改ムヘシ
一溝{サンズイ會}ヲ浚ヒ道路ヲ掃除スル等御規則ノ通兼テ其請持ヲ定メ各戸ヲシ
テ之ニ怠ラシムヘカラス
第五章
区内ノ諸願伺届等エ加印スヘシ若シ本人ヨリ上達方依頼アラハ之ヲ会議所エ
送達スヘシ但訴訟ニ関スル事件ハ兼テ布告ノ通差添人名代人等取定ノ上申出
ツヘキ事
一願伺等区長ヲ経ヘキ品ニテ区長若シ其書面ヲ返却シ取次カサル時ハ其取次
カサル趣ヲ聞キ若シ取次ヘキノ道理アラハ弁解ヲ尽シ之ヲ取次カシムヘシ
尚取次カサルモノハ其趣ヲ別紙ニ書取戸長ノミノ加印ヲ以テ之ヲ上陳スヘ
シ
一願筋ニ於テ不条理無之トモ若シ他エ差響ク事アラハ能ク之ヲ取糺シ相手方
ヨリ差支無之段申立ルニ於テハ加印致スヘシ尤相手方ニ於テ申立ル処不条
理有之時ハ願人ノ為メニ之ヲ説得スルト雖トモ妨ケナシトス
一願伺諸届等兼テ相示ス処ノ書式ニ違フアラハ之ヲ其書式ニ改メシムヘク亦
其申立ノ趣意成規ニ戻ルモノハ何月何日被 仰出ノ御趣意ニ相反スル理義
ヲ懇ニ相諭シ其書面ヲ返却スヘシ若シ説諭ニ従ハス強テ上陳ヲ願フモノハ
其趣ヲ別紙ニ書取進達スヘシ苟クモ一己ノ権ヲ以テ願書等ヲ抑留スヘカラ
ス
第六章
区内ノ会計ヲ司リ可申事
一区内限ノ入費ト雖トモ反別等エ課スヘキモノ及其人口戸数エ課スヘキモノ
等区別スルカ如キハ其事ニ当リ副戸長検証役ト合議シ規則ニヨリ取計フヘ
シ若シ何等ノ分課致スヘキ歟ヲ難相決モノハ会議所エ稟議スヘシ
第七章
区内ニアル官林官地及ヒ官普請所ヲ総テ相管スヘキ事
一官林官地官普請所等各其箇所ヲ知リ土地広狭及ヒ竹木等ノ数ヲ明細ニシテ
一帳ニ記載シ材木或ハ土地ノ変更等有之時ハ正副区長副戸長検証役ト合議
シテ之ヲ県庁エ具陳シ然ル後之ヲ書改ムヘシ
一枯木倒木ハ之ヲ伺ヒ出テ入札払ニ取計フヘシ尚又官普請所破損等有之節ハ
怠リナク取調申出ツヘシ
第八章
区内ノ社寺ヲシテ総テ公布ニ従ハシメ新規ノ企ヲ致サヽラシムヘキ事
一祭式法会等是迄県庁エ相伺ヒ取計フ事件ハ何ニヨラス都テ其都度許可ナク
シテ之ヲ行ハシムヘカラス
第九章
区内ニ於テ孝子貞婦及ヒ其本業ヲ相励者ハ正副区長副戸長検証役ト合議シテ
上陳スヘキ事
第十章
放蕩無頼ノ徒及ヒ窃盗或ハ党ヲ集メ衆ヲ惑ス者ハ隠忌ナク合議シテ会議所ニ
申報スヘシ尤其時機ニヨリ合議スル遑ナキハ直ニ大小屯所エ申報スヘシ
第十一章
区内ノ幼童ヲシテ手習学問ヲ怠ラシメサル様世話可致事
第十二章
火災其外非常ノ事アル時ハ其取締方ニ於テ不都合無之様取計ヒ但其事件ニ依
リ委曲速ニ可申出事
第十三章
検証役不正ノ行状有之時ハ区長副戸長ト合議シ県庁エ上申スヘキ事
第十四章
諸帳簿其外諸書類ハ退役ノ節遺漏ナク後役エ相渡スヘシ後役ハ受取候書類ヲ
書取リ区長エ可届出事
副戸長心得書
一村内ヲ取締リ租税ヲ取立戸籍ヲ管主シ其外掛費用村小入用等ノ分課及村中
土地人畜大小ノ事務戸長ノ通達ニヨリ之ヲ所置スルヲ掌ル但シ金穀ノ事ハ
都テ検証役ノ証印ヲ以テ出納スヘシ
一村中ノ生死其外旅行等無届ニテ打過候者之ナキ様兼テ取糺又ハ潜伏ノ旅人
無之様注意致スヘキコト
一家作営繕分地別家其他瑣末ノ事件タリトモ願フヘキヲ願ハス届出ヘキヲ届
出サル等都テ違令違式ノコト之ナキ様注意スヘキコト
一戸主他行ノ節ハ留守心得ノ者ヲ相立双方調印ニテ戸長エ相届候様致サセ留
守心得ノ者他組他村ノ者タリトモ村中ノ者同様取扱ヘキコト但五日未満ニ
テ帰宅スル者ハ留守心得ヲ立ルニ及ハス
検証役心得書
一当役ハ村中人民ノ耳目ニ代ル任ニシテ副戸長ノ事務ニ於テ若不正ノコトア
レハ之ヲ質問矯正スルヲ得ヘシ但シ村中ヲシテ親睦共和ナラシメ互ニ其業
ヲ励ミ窮難相助ノ情誼ヲ勧ムヘキコト
一租税戸籍其外掛費用村小入用等副戸長トトモニ取扱ヘシ但シ金穀ノ事ハ大
小トナク副戸長ノ恊議ヲ受ケ稽校ヲ遂ケ調印スヘシ若其意ニ落チサルコト
アリテ証印シ難キトキハ戸長又ハ正副区長ニ詢問弁述スルコトヲ得ヘシ
一村中人民ヨリ差出ス諸願其他ノ書面連印ヲナスヘキコト但書類ニヨリ調印
ノ節小前ノ者共兎ヤ角ト否ムトキハ其趣ヲ戸長副戸長エ申立正副戸長之ヲ
承諾セサルハ其次第ヲ書面ニ認メ直ニ区長エ申出ツヘシ若シ其次第柄戸長
ノ方正当ナルヲ小前ノ者トモ様々言ヲ造リ非条理申立トキハ之ヲ説得スル
ハ検証役ノ任タルヘキコト
一正副区長戸長ノ差図ニ従ヒ村中ノ世話怠ルヘカラサルコト
旅費定則
第一章
旅費ヲ請取ルトキハ往返并滞留ノ日数及里数ヲ詳記シ区長ノ検印ヲ請ケ会計
用掛ヨリ之ヲ請取ルヘシ
但一ケ月取纏メ受取又ハ其都度々々受取ルハ本人ノ適宜タルヘシ尤書面明
瞭ニシテ調印アル上ハ代人ニテ渡スモ妨ナシ
第二章
並旅行一日拾里詰トシ巡回五里詰トス
第三章
一日二十里詰ヲ行クトキハ二日分トシ一日五里以上ハ並旅行ヲ以テシ五里以
下二里半マテハ巡回ヲ以テ之ヲ給ス
但十里以上ノ端里数ハ巡回ノ半数ヲ支給ス
第四章
二里半以下旅費無之事
但一泊スレハ滞留ノ日当ヲ給ス
第五章
居村内巡回居村集会等ハ日当無之事
第六章
県庁ニ於テ御用済ヲ申渡セシ翌日ヨリ譬何日滞在スルトモ旅費ヲ給セサル事
┌─┬────┬───┬────┬────┐
│ │ │ │会計用掛│二等戸長│
│給│区長 │副区長│ │ │
│ │ │ │一等戸長│一等補助│
│料├────┼───┼────┼────┤
│ │一月 │同 │同 │同 │
│表│ 十五円│ 八円│ 七円 │ 五円 │
└─┴────┴───┴────┴────┘
┌────┬────┬───┬───┐
│三等戸長│ │ │ │
│ │三等補助│副戸長│検証役│
│二等補助│ │ │ │
├────┼────┼───┼───┤
│同 │同 │一年 │ │
│ 四円 │ 三円 │ 十円│ 日当 │
└────┴────┴───┴───┘
┌─┬────┬──────┬───┬────┐
│ │ 役名 │ 並旅行 │ 巡回 │ 滞留 │
│ ├────┼──────┼───┼────┤
│日│区 長 │一円七十五銭│九十銭│三十銭 │
│ ├────┼──────┼───┼────┤
│ │副区長 │四十銭 │三十銭│二十五銭│
│ ├────┼──────┼───┼────┤
│当│会計用掛│同 │同 │同 │
│ ├────┼──────┼───┼────┤
│ │戸 長 │同 │同 │同 │
│ ├────┼──────┼───┼────┤
│表│副戸長 │同 │同 │同 │
│ ├────┼──────┼───┼────┤
│ │検証役 │同 │同 │同 │
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(書式略)
右之通会議所条例并区長以下所務綱目給料表旅費定則同表書式等発鏤施行セ
シメ候条違戻ナク遵奉致スヘク候者也尤官省ヨリ御沙汰之儀ハ勿論時勢ノ変
更ニ由リ右廉々ノ中改正添削スルコトモアルヘケレハ此旨兼テ相心得申スヘ
キ事
明治六年八月 奈良県令四条隆平
(この本文は奈良市立史料保存館本によった。奈良県布達(旧辻村文書)では最
終行に貼り紙があり、以下のように訂正されている
明治六年十一月 奈良県権参事小池浩輔 )
第五百三十六号
今般奈良第一小区元興福寺境内に於て別紙規則書之通り為試立市之儀当九月
二十六日より毎月一六の日を以開業差許候条望之者ハ右境内近傍に立市会所
取設申付置候条右会所へ篤と聞合売買可致候此段管内一般相達する者也
明治六年九月 奈良県令四条隆平
試商立市売買規則
第一条
元興福寺境内に於て為試立市開業毎月一六之日を以て定日とし立売商会差許
候条自他の貫民何人を不論物品携出売買勝手たるへき事
第二条
此立市ハ小民融通の便利を得るものなれハ一六之日ハ夜市を立て候儀不苦事
第三条
何品に不限売買勝手に差許すと雖とも左之廉々其他衆人の妨に相成候物品持
出し売買ハ堅く不相成候事
一仰山なるものにて衆人の妨となるへきもの
一小さきものにても多人数にて持運ひ道路の妨となるもの
一手かるきものにても都て衆人の妨となる場広なるもの
一臭気甚しきもの
一動物にて人の害を生すへきもの
一火気を生し妨害のあるもの
以上
第四条
物品を数種持運ひ売買をなし度ものハ立市会所へ届け其日の鑑札を請け銘々
勝手の場所へ当日限り莚を敷き又ハ床机を置き日覆等をなすの類ハ勝手たる
へき事
但売買の場所各々適宜に設くると雖とも当日限取払へき事
第五条
立市場鑑札左之雛形通り会所より相渡候事
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│第一番 │ │ 第何月 │
│ │ ├───┬───┤
表│○立市場掛店 │ 裏│ 日│ 日│
│ │ │ 日│ 日│
│ 会所 印 │ │ 日│ 日│
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此裏面の何日とある上へ押す印ハ譬ハ何月一日の立市日に渡す時ハ其一日と
ある処へ会所の印を押す又十一日の市日なれハ十一日とある処ヘ同様押印し
掛店の者ヘ渡すへし
第六条
立市当日境内にて見せ物其外其日限り諸興業いたし度ものハ会所へ届出鑑札
を請へき事
第七条
立市当日会所より相渡候鑑札ハ其場所引払候節ハ鑑札請主より会所へ返上す
へし若鑑札等自宅へ持帰り後の市日に持参し会所へ届出さる等の振舞せしむ
る者あらハ立市場立入堅く差止め可申事
第八条
立市中鑑札改として会所より見廻候節無鑑札にて莚席を設くる等の者有之節
ハ速に売買差止其場所立退き申付へき事
第九条
一人にて物品を携へ出るもの又莚席を設さるもの等ハ会所へ届出るに及はす
銘々適宜の場所にて売買勝手にせしむへき事
但境内の外ハ決て不相成候事
第十条
此立市ハ売買当日限りのものなれハ掛売等ハ致間敷候若後日取引の故障申出
るとも決て取揚裁判に不及候事
第十一条
此立市場之儀ハ何人を不論集会売買勝手たるへく事
第十二条
立市中にて盗みの物品を携へ出売買をなす等の者を見出す節ハ速に其当人を
引連会所へ届出へし会所にてハ其物品を預り置き其証書を渡し置くへき事
第十三条
立市にて盗物見当り候節ハ第十二条の手続をなし其趣書面を以て正副戸長の
奥印を請県庁へ処分の儀可願出事
第十四条
立市中売買をなすものハ通行の諸人牛馬車等の妨をなさゝるよう銘々注意す
へき事
第十五条
此立市ハ自他を不論多人数立会物品売買をなすものなれハ別て取引念を入可
申又喧嘩口論等不致様能々相心得へき事
第十六条
立市商業物品之概略
一古手着類 一絹類
一木綿類 一竹木之器具
一雑穀るい 一糸るい
一古道具 一食物
一古本類 一手遊ひもの
一小間物類 一綿るい
右ハ物種の概数を挙るのみ
第十七条
此立市ハ試商の事なれハ県庁都合により何日差留め又ハ規則変更する等の儀
あるへき事
右之通試業立市規則相定候条此旨能能相心得不都合無之様銘々売買せしむへ
き事
明治六年九月 奈良県
第五百四十七号
○文部省報告
明治六年九月十三日
コレラ病ハ必しも其毒を伝輸するものありて始て流行するのみに非す多くハ
動植二属の廃物腐敗欝蒸して終に此病因を醸成する事あり炎熱の時卑湿の地
に於てハ殊に甚しとす即今印度地方に此病流行するを以て各港海関に検病の
方法を設け以て病毒の伝染を防くと雖も亦内地人口稠密の地に於て空気を汚
し飲水を溷す等汚穢の廃物夥しけれハ病の外邦より波及せさるも却て内地に
於て病毒発生の患なきにあらす仮令直ちに其病毒醸成せさるも平素斯く腐敗
の気空気飲水等に混するときハ適伝染病の来る其症を険悪に進むるの害あり
是を以て其之を予防する道ハ先つ溝渠の疎通廃物棄場の施設便所の掃除等総
て市街居室の乾浄を第一とす各地方其便宜に応し其方法を施設せハコレラ病
耳ならす其他疫病醸成を防くこと少からす
右之趣管内無洩相達する者也
明治六年十月 奈良県令四条隆平
第五百四十八号
凡納税之儀ハ元来全国修治の要費に供するものなれハ既に明治六年一月第三
十一号を以公布有し税額ハ即是を大蔵省へ相納め尚亦今般更に設くる所の税
額ハ右公布に掲載せる僕婢税を始め之をして県下取締番人ハ勿論諸修治の用
費に充し為に其土地限り四民一般に分賦せしむへきハ素より当然なれとも凡
其成立功業の緩急も有之候条先差向之処左に掲たる規則之通り納税申達候条
当明治六年五月分より惣て規則に照準し毎月二十五日限り無遅滞取纏各会議
所へ可相納事
但し本文取締番人取設之儀ハ明治六年二月より設置候儀に付同月分より入
費分賦可申付之処其頃右番人未タ周く行届さる向も有之候に付更に用捨を
加へ則当五月分より納税申付候条別紙規則之通可相心得候事
右之通管内無洩相達もの也
明治六年十月 奈良県令四条隆平
諸税規則
一ヶ月売上ケ高五石以上 金三十銭
請酒渡世 同 三石ヨリ五石迄 金二十銭
同 三石以下 金 十銭
一ヶ月売上ケ高五石以上 金二十銭
請醤油渡世 同 三石ヨリ五石迄 金十五銭
同 三石以下 金 七銭
一ヶ月売上ケ高五石以上 金二十五銭
造酢渡世 同 三石ヨリ五石迄 金十六銭
同 三石以下 金 八銭
糀渡世 一ヶ月売上ケ高一石以上 金十五銭
同 一石以下 金七銭五厘
右一ヶ月毎ニ取纏納税可致事
製墨渡世 鋳物師
質貸渡世 綿商
木綿織屋渡世
右専ら商業致し居候者ハ 一ヶ月金二十五銭
傍ら外商業相兼居候者ハ 一ヶ月金十銭
古道具商
[右畳建具或ハ骨董類を相商ものハ] 一ヶ月金二十五銭
[外商業の傍ら古道具等相商ものハ] 一ヶ月金十銭
鍛冶并古鉄商 古手商
右専ら一店を構居者ハ 一ヶ月金二十五銭
傍ら商業を相兼る者ハ 一ヶ月金十銭
筆商 紙商
砂糖商
右専ら一店を構居者ハ 一ヶ月金十銭
傍ら商業相兼者ハ 一ヶ月金五銭
蝋燭商 煙草卸
売薬店 但請売ハ此員にあらず
右一ヶ月毎ニ 金十銭納税可致事
貸物渡世
専ら一店を構居者ハ 金十銭
傍ら商業を相兼者ハ 金五銭
穀類渡世
専ら米商之者ハ 金二十銭
雑穀類商之者ハ 金十銭
雑穀類の外に傍ら干物類を兼商ふ者ハ右定税之半高可相納候事
右一ヶ月毎ニ納税可致事
諸料理渡世 両替店
呉服太物商 膠炷渡世
物貨運輸所
右一ヶ月毎ニ金二十五銭宛納税可致事
湯屋渡世 薬湯渡世
右一ヶ月毎ニ金十銭ツヽ納税可致事
舶来物品店
専ら西洋物等を商ふ者ハ 金二十五銭
傍ら商業を相兼る者 金十銭
右一ヶ月毎ニ納税可致事
盆栽商 植木商
飼鳥商 上菓子卸売
雑菓子卸売 蕎麦温飩卸売
鮓屋 煮売店
錦魚商 但請売ハ此員にあらす
右一ヶ月毎ニ 金五銭ツヽ納税可致事
油請売 製茶商
右一ヶ月毎ニ 金七銭ツヽ納税可致事
奈良人形店 但請売之分ハ此員ニあらす
右売上ケ高五十分の一一ヶ月毎ニ納税可致事
団扇店 但請売之分ハ此員ニあらす
右売上ケ高三十分の一一ヶ月毎ニ納税可致事
魚市 青物市
菓物市
右上リ高二十分の一一ヶ月毎ニ取纏め納税可致事
但当今多少とも冥加上納年季中之分ハ此員ニあらす
椎茸卸商 氷豆腐卸商
素麺卸商
右仕切金高百分之二一ヶ月毎ニ取纏納税可致事
但請売之分ハ此員にあらす
荒物商
薬種商
右専ら一店を相構居候者ハ 一ヶ月金十二銭五厘
傍ら商業を相兼るものハ 一ヶ月金五銭
湯葉商 但受売之分ハ此員ニあらす
瀬戸物商
右一ヶ月毎ニ 金五銭ツヽ納税可致事
石灰 瓦焼 但右多少共従前より納税年季中之分ハ此員にあらす
右一ヶ月毎ニ 金七銭ツヽ納税可致事
紺屋渡世 十瓶以上 一ヶ月金十五銭
十瓶以下 一ヶ月金十銭
十碓以上 一ヶ月金十五銭
水車渡世 五碓以上 一ヶ月金十銭
五碓以下 一ヶ月金五銭
但右多少共従前より納税年季中之分ハ此員にあらす
上等 一ヶ月金十銭
宿屋渡世 中等 一ヶ月金七銭
下等 一ヶ月金三銭
右一ヶ月毎ニ取纏納税可致事
茶製所
炉上ケ 一本ニ付 金十銭
一選 一本ニ付 金十三銭
上選 一本ニ付 金十六銭
但右売上ケ高百分之一の見込に付其年の製茶代価により増減有べし
右毎年六月二十五日限納税可致事
但当年之分ハ右定額の一分通納税可致事
右請酒渡世以下諸商業之者ハ鑑札を請ケ渡世可致尤鑑札料之儀ハ一枚金十二
銭五厘ツヽ上納可致事
右鑑札を請け渡世致候者ハ来ル十一月十五日限り戸長奥印を以各会議所へ届
出鑑札申請規則之通り右料を相納来ル十一月十五日後無鑑札にて業体相営候
もの有之後日露顕致すに於てハ其業体差止め尚相当之咎可申付候事
但新ニ渡世相営み度ものハ其時々各会議所へ届出鑑札申請け休業之節ハ鑑
札返納可致尤右鑑札其侭他人へ譲り渡し或ハ貸渡等之儀一切不相成且火難
或ハ紛失等之節ハ鑑札番号等書認早々可届出尤転宅或ハ名前替等之節も無
洩可届出候
一新に渡世相始候者ハ其月十五日以内ハ全税十五日以外ハ定税之半高上納可
致休業致し候者ハ其月十五日以外ハ全税十五日以内ハ定税之半高上納之儀
と可相心得事
一華士族より平民に至るまて家事用向に使用いたし候従僕之類ハ其身分に関
らす十八歳以上十七歳以下左之通り其主人より納税可致事
但其月召抱候もの乃至一ヶ月未満にて暇さし遣し候類ハ其月十五日以外
ハ全税十五日以内ハ定税之半高上納之儀と可相心得事
十八歳以上一ヶ月金二銭五厘
十七歳以下一ヶ月金一銭三厘
一下婢ハ上仕下仕之差別なく十八歳以上十七歳以下左之通り主人より納税可
致事
十八歳以上一ヶ月金二銭五厘
十七歳以下一ヶ月金一銭三厘
一一時雇入之類三ヶ月以内ハ無税以外ハ納税之儀と可相心得事
一農工商其職業之為め使用いたし候分ハ男女とも無税之事
一自後僕婢抱替へ或ハ暇差遣し又ハ新規召抱候ものハ其都度々々区内戸長へ
可届出事
一華士族より平民に至る迄自分用之馬車人力車駕篭等左之通納税可致事
一四輪以上にて二疋立以上之馬車ハ一ヶ月金三十銭
一四輪以上にて一疋立之馬車ハ一ヶ月金二十五銭
一三輪以下にて二疋立之馬車ハ一ヶ月金二十銭
一三輪以下にて一疋立之馬車ハ一ヶ月金十八銭八厘
一四輪以上之人力車ハ一ヶ月金十八銭八厘
一三輪以下二人乗人力車ハ一ヶ月金十五銭
一一人乗人力車ハ一ヶ月金十二銭五厘
一駕篭引戸以上ハ一ヶ月金五銭
一乗駕篭以下ハ一ヶ月金三銭
一免許之上馬車人力車駕篭等を以渡世相営候ものハ左之通り納税可致事
但一人乗人力車冥加税ハ従前之通り可相心得事
一四輪以上にて二疋立以上之馬車ハ一ヶ月金二十五銭
一四輪以上にて一疋立之馬車ハ一ヶ月金二十銭
一三輪以下にて二疋立之馬車ハ一ヶ月金十八銭八厘
一三輪以下にて一疋立之馬車ハ一ヶ月金十五銭
一四輪以上之人力車ハ一ヶ月金十五銭
一三輪以下二人乗人力車ハ一ヶ月金十二銭五厘
一小車一輪一ヶ月金一銭五厘
一駕篭引戸以上ハ一ヶ月金三銭
一乗駕篭以下 一ヶ月金二銭
右新調之分冥加税納之儀其月十五日以内ハ全税十五日以外ノ半税上納之儀と
可相心得事
華士族より平民に至る迄自分用之馬ハ左之通り納税可致事
一総て乗馬一疋ニ付一ヶ月金二十銭免許之上貸馬を以渡世相営み候もの
左之通り納税可致事
一惣て乗馬一疋ニ付一ヶ月金十五銭馬買入之節ハ其都度々々区内戸長ヘ可届
出事
但新に買入候馬税之儀ハ其月十五日以内ハ全税十五日以外ハ半税上納之
儀と可相心得事
冥加税金を減少せんか為に現在之上り高を偽り或ハ無届して僕婢抱置其他不
正之儀有之後日相顕るゝに於てハ過料として一ヶ月定税へ夫々相当之増税為
差出候事
右之通相定候事
明治六年十月
第五百八十一号
来月三日天長節に付例年之通四民一般致休業可 奉祝嘉辰候事
但新暦御発行以来従前之七節等既に被廃候得者旧習に因循不可致ハ勿論之
事に候に付而者 紀元節 天長節ハ格別全国上下一般之御祝日に付村町
戸々随分賑々敷諧楽可致候事
右之趣管内無洩相達もの也
明治六年十月廿日 奈良県令四条隆平
第六百六十五(五十六)号
管下各地江大小屯所取設番人差置候処詮議之次第も有之廃止せしめ更ニ今般
改制之上各所ニ役員を差置候条是迄各屯所江申出候件々ハやはり其部内屯所
江可申出跡番人手先之儀ハ従前市郡ニおゐて抱置候者亦ハ他ニ望之者有之候
ハヽ市郡申合適宜之者取極取締為致可申給料附与方並人名等精細調至急取締
掛江可伺出事
右之趣管内無漏相達もの也
明治六年十二月 奈良県権令藤井千尋
(六百六十五号を六百五十六に訂正あり)
第六百六十二号
管内村々追々小学校設立可相成ニ付テハ村々ニ有之溜池之魚類蓄エ置キ其売
払代価ヲ以右学校入費之内ニ相充タク願出候向モ有之是迄勧業掛リニテ禁札
相認メ来候所以後ハ左之雛形之通其掛リ村々役人中ニテ相認メ建札可致候尤
其都度々々可届出事就テハ右建札有之溜池ニテ猥リニ漁猟致候者於有之ハ相
当之咎メ可申付候間心得違無之様可致候事
右之趣管内無漏相達する者也
明治六年十二月 奈良県権令藤井千尋
(図省略)