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明 治 九 年
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第二号
東京勧業寮出張所蓄牛昨年十二月廿三日比ヨリ不食ノ処眼口鼻孔ヨリ臭気ア
ル膿汁ヲ出シ水瀉数行外皮厥冷眼神鈍濁遂ニ斃ルヽモノ同月三十日迄ニ都テ
二十一頭其他同府下各所ニ於テモ往々前症ニテ斃牛多分有之候趣右ハ伝染ノ
病症ニ付自然当県下ヘ波及ノ程モ難計候間別紙牛疫予防方概略相示シ候条農
家其他豢牛ノ向々ニ於テ厚ク注意可致候事
右之通管内無洩相達スルモノ也
明治九年一月十四日 奈良県権令藤井千尋
牛疫予防方概略
一平常牛舎ノ上部ニ窓ヲ穿チ外気ノ流通ヲ良クスヘシ
一屎尿等ヲ時々掃除シ牛舎中ヲ清浄ニシ汚穢ノ臭気ヲ留ムヘカラス
一牛疫近隣ニ伝染スルニ至テハ務テ前二条ニ注意シ猶硫黄一斤ヲ舎中ニ薫ヘ
其後「コロールカルキ」半斤ヲ水六升ニ和シ普ク舎中ニ散布スヘシ
一数頭ヲ畜フ家ニ於テ若シ一頭或ハ二頭此病ニ罹ルモノアレハ直ニ病牛ヲ離
レタル別舎ニ移シ其牛触ルヽ所ノ芻秣飲水等ハ決テ之ヲ他牛ニ与フヘカラ
ス且病牛ヲ取扱フ牧者ハ決テ他ノ牛舎ニ入ルヘカラス
一前条掲クル所ハ畢竟牛疫予防ノ概略ヲ示スノミ若シ病発スルニ至テハ別ニ
治療ノ方法アリ追テ普ク公布スヘシ
第三号
夫博覧会之義者学術ヲ興シ知識ヲ開キ工芸ヲ盛ンニスルモノニテ人民不可欠
ノ会ニ付当年モ亦不遠一百日間大会開観為致候条有志ノ者ハ各新古所有ノ物
品並ニ産物製物等総テ人智発明ノ一助ニモ可相成モノハ其功用物質及ヒ製造
人並ニ持主ノ姓名等詳細記載シ本月三十日限リ東大寺境内博覧会社ヘ可差出
候事
右之趣管内無洩令布達者也
明治九年一月十七日 奈良県権令藤井千尋
食物にベレンス・アニリン等の毒物その他性質不明の物の添加禁止
第五号
凡食物ハ人ノ生命ヲ保養スルモノト雖モ食品ノ善悪ニヨリテ大ニ健康ノ損益
ヲナスモノナリ従来菓子屋或ハ料理屋或ハ飴屋等ノ如キモノ種々ノ染粉ヲ以
食物ニ彩色ヲナスハ畢竟美麗ヲ尽サンコトヲ要スト雖モ其染粉ハ何タル生質
ヲ問ハス猥ニ用ルモノ尠ラス然ルニ近来舶来スルトコロノ「ベレンス」[絵具
等ニ用ユルモノ]又「アニリン」[俗云西洋紅粉]ノ類ハ人身ノ健康ヲ害スルノ
ミナラス血液ヲ紊乱シ甚シキトキハ死ニ至ルトモ云フヘキ大毒物ニシテ食物
抔ニ決シテ用ユヘキモノニ非サレハ向後食物ヲ以商買致候向ハ尚更注意シ右
等ノ染粉ハ無論都而生質不分明ノ染粉類食品ニ相用候儀不相成万一窃ニ右様
ノ類食物ニ相用候者於有之ハ相当ノ処分可申付条末々ニ至迄心得違無之様可
致此旨布達候事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年一月二十日 奈良県権令藤井千尋
第六号
管内諸神社祭典執行願伺届等区々ニ相成不都合ニ付自今例祭執行之外神賑其
外水旱疾疫等臨時祭之儀者其都度事由ヲ記載致シ兼而願出許可之上執行可致
事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年一月十九日 奈良県権令藤井千尋
第七号
従来営業之医師医局成規ノ学科ニ適当ノ学業稀ナル故ニ学術ノ試験ヲ要セス
客歳十二月迄医局入学ノ上営業差許シ本年一月ヨリ右成規之学科試験ノ上ナ
ラデハ開業差許サヽル規程ニ候処一時他管ヘ寄留即今入学出願候者等之レア
リ不得已情実相聞候ニ付右試験開業之儀来ル三月中延期候条此旨為心得相達
候事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年一月十九日 奈良県権令藤井千尋
第九号
今般第一大区十八小区郡山ニ於テ医局第一分局ヲ開キ近傍医生ヘ医学ヲ講授
シ患者ヲ治瘉候儀ニ付最寄便宜ノ者ハ同局ヘ治療ヲ乞出可申尤薬価往診料等
ハ渾テ客歳十一月当県第百三十七号ヲ以テ相達候医局薬価往診料概表ノ通ニ
候条為心得此旨相達候事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年一月廿九日 奈良県権令藤井千尋
第十八号
道路ハ固ヨリ官有ニ属シ人民ノ私有地ニ非ルハ論ヲ俟サル義ニ有之候処往々
心得違ノ者有之路上ニ於テ種々ノ物品ヲ曝干シ往来ノ妨害ヲ為シ候義不少是
畢竟従来ノ習慣ニ泥ミ不条理ノ事柄トモ不心付迂闊ニ相過候儀ニモ可有之候
ヘ共右ハ甚以不都合ノ次第ニ候間本年六月三十日ヲ限リ農商等夫々営業ノ都
合ニヨリ自家ノ後園其他ノ私有地ニ於テ予テ相当ノ干場ヲ取設ケ候様可致就
テハ本年七月一日ヨリ自然右様ノ所為有之候ハヽ相当可及所分候条心得違ノ
儀無之様可致事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年二月十二日 奈良県権令藤井千尋
第廿一号
道路橋梁修繕規則別冊之通相定候条此旨可相心得事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年二月十九日 奈良県権令藤井千尋
別紙
道路橋梁修繕規則
第一条 道路ノ水吐ヲ善クセンガ為市在ヲ論ゼズ道路ハ必凸形ニ作ルベシ
第二条 建物三棟以上連檐ノ地ハ必道路ノ両傍即チ建物ノ雨落ニ小溝ヲ堀リ
雨水ヲシテ速ニ此小溝ニ流レ至ラシムベシ
但建物ナキ地ト雖モ現場ノ模様ニヨリ溝ヲ穿ツハ適宜タルベシ
第三条 路上聊ニテモ凹所ヲ見ル時ハ該所ニ係ル沿道ノ人民速ニ之ヲ繕フベ
シ人家ヲ離レタル地ハ第五条ノ手続ヲ以テ之ヲ修ムベシ
第四条 其費用ニ至テハ人民ノ宅前ハ該人民ノ受持トシ人家ヲ離レタル地ハ
該所受持村町ノ民費ニ課スベシ
第五条 人家ヲ離レタル地ト雖モ些少ノ修繕ハ予テ十人組毎ニ順番ヲ定メ置
キ当番ノ組合中ヨリ人夫ヲ出シ修繕スベシ
第六条 人家ノ有無ニ抱ハラズ人夫十人ニシテ日数三日以上ヲ要スベキ修繕
ハ必入札法ヲ以テ請負人ヲ定メ修繕スベシ
第七条 橋梁ハ道路ニ准ズル勿論タルベシ
第八条 当時補助銭ヲ収ムル道路橋梁ニ於テ損所ヲ生ジタル時ハ明治八年一
月第三十七号布達ノ通心得ベシ
第九条 各村町什長年番時々村町内ヲ巡廻シ損所ノ有無ヲ戸長役場ニ報ズベ
シ
第廿二号
区長戸長
今般淫売罰則別紙之通相定候条精々犯則之者無之様説諭可致若不相用犯ス者
於有之而者速ニ警察出張所ヘ可申出此旨相達候事
明治九年二月廿日 奈良県権令藤井千尋
別紙
売淫罰則
第一条 凡ソ許可ヲ得スシテ売淫ヲ為シ及ヒ媒号容止スル者初犯ハ拾円以内
再犯以上ハ弐拾円以内窩主初犯ハ拾五円以内再犯以上ハ三拾円以内之罰金
ヲ科ス
但シ父母等ノ指令ヲナス者ハ其罰ヲ指令者ニ科ス
第二条 若シ無力ニシテ罰金ヲ徴収ス可カラサル売淫者及ヒ媒合容止初犯ハ
二ケ月半以内再犯以上ハ五ケ月以内窩主初犯ハ三ケ月以内再犯以上六ケ月
以内ノ笞使ニ処ス
第三条 寄留ノ者売淫ノ罰ニ処セシトキハ其親戚又ハ雇主或ハ請人所役人等
エ責付シ本籍エ送還セシムルコトアル可シ
第廿五号
県税新賦之義ニ付八年[十二月]当県第百五拾号ヲ以相達置候処右税則及従前
ヨリ賦金ト称シ徴収致シ来候分共別冊之通相定本年一月ヨリ課税候条此旨相
達候事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年三月八日 奈良県権令藤井千尋
別紙
奈良県々税規則
一左ニ掲クル業体之者ハ県庁エ願出免許ヲ経テ営業致シ左之通税金可相納事
但壱家幾業ヲ相兼営業致シ居候共一々願出免許ヲ受ケ納税可致自然無免
許之侭密々営業候者於有之ハ相当之処分ニ可及事
一諸芸人 壱ケ年
但盲人ハ免税 金三円
一料理屋 壱ケ年
但上中下等級区別従前之通 上等金三円
中等金壱円
下等金五拾銭
一宿屋 壱ケ年
但右同断 上等金弐円
中等金壱円
下等金五拾銭
一質屋
但[壱ケ年質取高金千円以上ヲ上等トシ千円未満ヲ下等トス]
壱ケ年
上等金壱円五拾銭
下等金壱円
一呉服商 壱ケ年
但右同断 上等金壱円五拾銭
下等金壱円
一古着商
但[壱ケ年売上代金五百円以上ヲ上等トシ五百円未満ヲ下等トス]
壱ケ年
上等金壱円
下等金五拾銭
一古道具商 壱ケ年
但右同断 上等金壱円
下等金五拾銭
一女髪結 壱ケ年
金壱円五拾銭
一男髪結 壱ケ年
金五拾銭
一菓子商 壱ケ年
金五拾銭
一小間物商 壱ケ年
金五拾銭
一洗湯 壱ケ年
金五拾銭
一三味線商 壱ケ年
金五拾銭
一翫物商 壱ケ年
金弐拾五銭
一諸問屋 壱ケ年
金弐円
一馬車一匹立一輛 壱ケ年
金弐円
一人力車弐人乗壱輛 壱ケ年
金壱円
一同壱人乗壱輛 壱ケ年
金九拾銭
一牛車壱輛 壱ケ年
金壱円
一荷積大七八車壱輛 壱ケ年
金九拾銭
一同大六以下小車 壱ケ年
金五拾銭
右諸芸人税已下弐拾廉之税金上納之義者年々両度ニ区別シ半ケ年分宛正副
戸長エ取集メ其年前半ケ年分ハ七月五日限後半ケ年分ハ翌年一月十日限可
相納事
但新規免許之者六月已前ハ全年分七月已後ハ半年分営業税相納廃業之者
七月已後ハ全年分六月已前ハ半年分廃業願之節直ニ納税可致事
一芸娼妓 壱ケ月
金弐円
一芸娼妓席貸 壱ケ月
上等金三円
中等金弐円
下等金壱円五拾銭
一乗馬 壱ケ月
金六銭三厘
一[吹矢揚弓投扇鞠人]之類 壱ケ月
金拾弐銭五厘
一葭簣囲一時出店 壱ケ月壱坪ニ付
金壱銭五厘
一右芸妓已下四廉之税金上納之義者其月分翌月五日限正副戸長ヘ取集メ可相
納事
但新規免許之者十五日已前ハ全月分十六日已後ハ半月分税金相納廃業之
者十六日已後ハ全月分十五日已前ハ半月分廃業願之節直ニ納税可致事
一諸興行 上リ高
金弐拾分ノ一
一屠牛 上リ高
金三拾分ノ一
一古手古道具鳩市之類 上リ高
金弐拾分ノ一
一魚市 上リ高
金五百分ノ一
右諸興行已下三廉上リ高金ハ正副戸長ニおいて実際取調上納可取計事
一芸娼妓鑑札料 新規免許之節
金五拾銭
一芸娼妓席貸鑑札料 同
金壱円五拾銭
一牛肉売捌鑑札料 同
金弐拾五銭
一水車免許鑑札料 同 差渡壱丈已上
金五拾銭
同 壱丈已下
金弐拾五銭
右芸妓鑑札料已下三廉ハ新規免許之節而已鑑札料取立可申尤名前切替等之
節鑑札引換相渡為手数料鑑札料之半数取立可申事
右之通相定候事
第廿八号
伝染牛疫予防ノ義去明治四年辛未六月公布ノ趣モ有之猶本年一月当県第二号
ヲ以テ布達ニ及置候処右牛疫ノ義ハ実ニ難治ノ症ニシテ既ニ明治六年ヨリ七
年ニ至迄該症ニ罹リ斃ルヽモノ全国四万二千余頭ニ及ヒ農業牧畜等ノ妨害ヲ
ナス枚挙スルニ遑アラス然レトモ之ヲ療治スルニ至テハ到底徒費徒労ニ属シ
還テ人手ヨリ他ニ伝フルノ実害アルニ付速ニ患牛ヲ撲殺シ伝染ノ根原ヲ断チ
健牛ヲ予防スルヲ以テ古今良医ノ定論スル処ニ付右牛疫ノ徴候有之節ハ断然
牛主共ニ於テ撲殺スヘキハ当然ノ事ニ候ヘトモ一時姑息ノ情ヨリ因循時機ヲ
失ヒ終ニ疫毒蔓延候テハ不容易義ニ付特別ノ詮議ヲ以テ賠償撲殺法被取設候
旨内務省ヨリ達ノ趣モ有之候条管下人民ニ於テ厚ク相心得辛未年六月公布及
本年第二号当県布達牛疫予防方概略並ニ別紙疫牛撲殺心得書牛疫予防方斃死
後処置等ノ趣意ヲ守リ専ラ予防ニ注意致シ自然病牛有之節速ニ可届出ハ勿論
撲殺ノ際苦情等不申立候様区戸長ニ於テモ厚ク注意予テ説諭致置可申事
右之趣管内無洩相達スル者也
明治九年三月廿日 奈良県権令藤井千尋
疫牛撲殺心得
第一条 人民飼立ノ牛疾病アルトキハ其牛主ニ於テ最寄ノ医[予テ管内ノ家
畜
医ヲシテ牛疫診断ノ方法ヲ講習セシムヘキニ付該医ノ住所姓名等ハ追テ一
般ニ布達スヘシ]ニ診察ヲ請ケ若シ牛疫ノ徴候アラハ仮令夜中タリトモ直
ニ其旨ヲ正副戸長ノ中ヘ届出正副戸長ニ於テハ即刻警察出張所又ハ巡査屯
所等ヘ届出同所ノ立会ヲ受ケ速ニ病牛ヲ撲殺シ其旨県庁ヘ届出ヘシ
但医員懸隔ノ地等ニテ之ヲ迎フルノ際既ニ牛疫ノ徴候アルトキハ医員ノ
来ルヲ待タス直ニ戸長ニ届出ヘシ
第二条 牛疫感染ノ牛ヲ撲殺スルトキハ其牛ノ品位ニヨリ一頭ニ付金三十円
以内ノ代価ヲ其主ニ下渡スヘシ故ニ所有主ニ於テ之ヲ拒ムヘカラス
第三条 牛疫発見シタルトキハ其場所ヨリ凡方二里以内ノ地ヲ限リ直ニ道筋
ニ標札ヲ建テ病牛ハ勿論健牛タリトモ右限外ニ出ル事ヲ禁シ又他ヨリ限内
ニ入ルコトヲ禁スヘシ仮令病根全ク減却ノ後タリトモ猶三ヶ月ヲ経サレハ
其出入ヲ許サス
但四方十里以内畜牛無之場ヘ往復或ハ移転スルハ此限ニ非ス
第四条 牛疫起発ノ地ヘハ直ニ巡査ヲ派出シ該病ニ係ル諸般ノ取締ヲ為サシ
ムルコトアルヘシ
第五条 疫病ニ斃レ或ハ撲殺シタル牛ノ遺骸ハ辛未六月ノ公布ニ照準シ焼棄
スルハ勿論ナリト雖モ其地方ノ便宜ニヨリ一丈二尺ノ地下ニ埋没スルモ妨
ケナシトス
第六条 牛疫ノ徴候ハ大略左ノ如シ
牛大ニ沈欝シテ運動ヲ好マス食欲欠乏シテ反芻ヲ止メ頭ヲ伸ハシ或ハ垂
レ耳ニ痒ヲ覚ユル如ク揺カシテ又垂レ眼球紅色ヲ潮シ呼吸促迫頻リニ戦
栗シテ行歩跟蹌タリ眼鼻口中ヨリ粘液ヲ泄シ次テ臭気アル大便ヲ下シ咳
嗽シ齱齡シ上顎及ヒ口槍ニ於テ結膿シ多ク夕時ニ在テ呻吟シテ横臥セリ
第七条 第一条ヨリ第三条迄ノ趣意ヲ守ラスシテ或ハ届方ヲ怠リ或ハ撲殺ヲ
拒ミ或ハ牛疫ニ斃レタル牛ヲ密ニ売買スルモノハ相当ノ処分ニ及フヘシ
牛疫予防法
第一条 若シ一戸ニ伝染牛疫ノ徴候発顕スルトキハ直ニ之ヲ撲殺スルハ勿論
伝染病ニ紛ラハシキモノト雖モ直様其由ヲ近隣ニ知ラセ健牛ヲ所持スルモ
ノト互ニ往来出入スヘカラス
第二条 一戸数頭ノ牛ヲ畜養スルモノハ若シ一頭ノ牛疫病ノ徴候アルトキハ
直ニ健牛ヲ他ノ牛類無之地ヘ引移スヘシ尤其地ヨリ凡方二里以内ノ地ヲ限
リトス
第三条 一地方ニ伝染病発起ノ聞エアレハ一層注意厩舎ヲ清浄ニシ寝藁ナト
度々取替ヘ湿気ヲ乾カシ空気ノ流通ヲ能クスルコトヲ怠ルヘカラス且ツ左
ノ薬剤ヲ時々厩内ニ散布スヘシ[本年一月当県第二号布達見合スヘシ]
一石炭酸水[石炭酸二勺水一升五合]位
又ハ
一塩酸カルキ水[塩酸カルキ一合水一升五合]位
右ノ薬品ニ乏シキ地ニテハ生石灰ヲ散布スヘシ
第四条 飼料ハ和カニシテ消化シ易キ物ヲ与フヘシ但シ燕麦粉ノ得易キ地ニ
テハ常食ニ与フルヲ最良トス
第五条 干草ハ塩水ヲ振リ掛ケ潤シ与フヘシ但多分ノ青草ヲ与フルハ下痢ヲ
醸ス恐アレハ加減スヘシ
斃死後処置
第一条 伝染病ト覚シキ症ニテ斃ルヽモノアラハ厩舎ノ内外ヲ能ク洗ヒ硫黄
一斤ヲ薫シ石炭酸水ヲ散布シテ臭気ヲ去ラシムヘシ尤病牛ノ糞尿其外治療
ニ用ヒタル一切ノ物品ハ深ク土中ヘ埋ムルカ又ハ硫黄ヲ散布シテ焼キ捨ツ
ヘシ
第二条 病牛ヲ取扱ヒタル人ハ衣服ヲ取換ヘ身体ヲ清浄ニシ一周間ヲ経サレ
ハ健牛ニ近ツクヘカラス
第三条 総テ斃牛ヲ取扱ヒタル場所ヘハ石炭酸水ヲ散布スヘシ[生石灰ニテ
モヨシ]
第四条 伝染病牛斃死ノ厩舎ヘハ六ケ月ヲ経サレハ健牛ヲ繋クヘカラス
甲第二号
今般寧楽師範学校ニオイテ別紙入学規則ニ適スル者四十名ヲ限リ入学差許候
条志願之者ハ来ル四月十五日限同校エ出願可致此旨管内無洩相達者也
追而本文之義小学教員エハ別而無洩可相達様注意可致事
明治九年三月三十日 奈良県権令藤井千尋
入学規則
一年齢十七歳以上三十歳以下タルヘシ
一学区取締ト居村戸長ノ連署シタル行状善良ノ証書ヲ出スヘシ
一本県医局ニ於テ身体検査ヲ受ケ教員ノ職務ニ勝へ難キ疾病一切無之コトト
種痘或ハ自然痘ヲ経タルコトヲ記シタル医局ノ証書ヲ出スヘシ
一試験
歴史 日本外史 西洋綱記解義 十八史略和解
理学 物理階梯
地学 皇国地誌略 輿地誌略
算術 加減乗除ヨリ四則応用ニ至ル 作文
一試験上第ノ者入学ヲ許シ学資トシテ毎月金三円ツヽ貸与スヘシ
一在校ハ十ケ月ト定メ卒業試験落第ノ者ハ尚在校セシム
一入学ヲ許セシ者ハ直ニ父兄或ハ保証人ノ連署ヲ以テ学資ヲ成規ノ通リ償還
スルコトト卒業ノ後二ヶ年以上ハ必当県管内小学ニ奉務スヘキ由ヲ記シ所
役人ノ奥印アル証書ヲ出スヘシ但他県下ノ者ハ当県下ニ寄留スル其所役人
ノ奥印ヲ受クヘシ