復 刊 に あ た っ て

 

『大和志』は、奈良県出身の碩学、故田村吉永博士が昭和九年より十数年にわたって主宰した大和国史会の機関誌として発刊され、日本歴史の中心たる大和地域の研究と、その文化普及とに多大の任務を果しながらも、太平洋戦争の激化にともなって、昭和十九年におしまれつつ廃刊のやむなきに至った学術雑誌であります。

 一方、大和路を縦横に結ぶ近畿日本鉄道株式会社(当時、関西急行鉄道)は、この会の趣旨に賛同し、種種協力・援助を致してまいりましたが、戦後の混乱期を迎え、我が国復興への精神的なよりどころとして、更に深まる大和の歴史・文化財の重要性を認識し、かねて当社が運営してきた大和聖地顕揚会とこの会を統合、昭和二十四年に「近畿文化会」と改称、再発足したのであります。以来、本会は全国的な規模の会として三千名を超える会員を数え、今日に継承しております。

 本会は、大和に関するあらゆる事項を網羅・収録した貴重な資料である本誌が、まったく入手困難である今日、その復刊を願っておりましたが、この度、吉川弘文館の御好意により、多年の念願であった復刻版を刊行することを得ました。各方面の要望に応えた『大和志』の復刊を、同好の方々とともに喜びたいと存じます。

   昭和五十七年九月十日

            近畿日本鉄道株式会社      

                 近畿文化会

 

(復刻版昭和57101日、吉川弘文館)