はなむけ
 旅立ちや別れのときに、別れを惜しんだり祝福するために、会を催したり、金品を贈ったりすること。
 別れの時に渡す「餞別(せんべつ)」の餞が、「はなむけ」と読む漢字です。昔の風習によって生まれた言葉で、

 旅立つ人に馬に乗って餞の品を渡すことから、旅立つ人に馬の鼻を向けた
 馬に乗って旅立つ人のために、その馬の綱を引いて、旅立つ方に向けた

 という説があります。そして「馬」という言葉がとれて、単に「はなむけ」というようになりました。
有名な古典、紀貫之の 『土左(佐)日記』 に、
「船旅ではあるが、馬のはなむけをする」という一文があります。

 紀貫之、といえば・・・

 
 彼は、日本で最初の勅撰和歌集(天皇の命令で作った公式な和歌集のこと)である
  「古今和歌集」で序文を書いています。
  「仮名序(かなじょ)」といって、
  当時の男性としては珍しい「ひらがな」で書かれた文です。
 
  その冒頭の書き出しは
  「やまと歌(和歌)は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞ成れりける」
  です。人の心が種となって、葉のようにことばが生まれる・・・
  なんとすばらしい表現でしょうか。
  私は、この文をおとなになってからもう一度読み直したとき、
  始めて「言葉」ということばの重みを感じ、感動しました。

  子どものころ、学校で意味もわからず無理やり暗記させられて
  何とも思わずにいたものが、歳月を重ねることによって心に響くようになる・・
  歳をとることは決して悪いことではない、と思えるようになりました。

  これだけ感動している「仮名序」も、高校時代には「へい!かなじょ!」
  (・・仮名序と彼女のかけことばです)という単なるギャグの対象だったのですから、
  私も立派に成長したものです(笑)