ためぐち
ていねいな言葉づかいをしないで、対等な口をきくこと。
 江戸時代の大坂。職人や商人の家につとめる奉公少年(丁稚=でっち)たちに手渡すお駄賃のことを「ため」といいました。

 番頭たちは、下働きの丁稚たちに対しては乱暴な口をきくのがあたりまえ。目下のものに対する乱暴な言葉づかいが「ため口」にあたります。
古い国語辞典には掲載されていないので、
最近多用されるようになった言葉だということがわかります。
一部の人が使っていたのが急に広まったのでしょうね。
確かに言葉の響きがなんとなく意味とぴったり合う、不思議な言葉です。

 ためぐち、といえば・・・

  学生のときの話です。
  夜、私の自宅に同じサークルの中村君から電話がありました。

  「中村ですけど」
    「おお、どうしたん?」

  「明日の予定のことで確認したいことがあって」
    「なんや、それならさっき会ったとき言えばよかったのに。」

  「今日顔会わせたか?」
     「しゃべってたやんか。何を言ってんねん。」

  「おまえこそ、何言うてんねん。」
     「はあ?」

  「まあ、ええわ。とりあえず明日、約束の時間1時間遅くしてくれ。」
     「約束って何?遅く?・・・・・」

  そのとき、ようやく気がつきました。
  サークルには、中村が二人いて、
  その電話は、気が短いことで有名な中村先輩からの電話だったのです!
  完全に同級生と思いこんでいて、声で気づかなかった・・・・
  これは、やばすぎるっ!

  「たのむわな!」
     「え、えっとですね、先輩。場所は○○でよかったでしょうか・・?」

  「そうや。急な変更でほんまに悪いなあ・・。」

  明らかに先輩は不機嫌です。
  私は、手のひらを返したように、わけのわからない敬語を使って、
  必死で応対したことは覚えていますが、頭の中は真っ白でした。

  ため口は恐ろしい。
  次の日、私は約束の時間の1時間も前からウロウロしていました。本当に怖かった。
  ほんとうに気まずい体験談です(苦笑)