日本人はひらがなとカタカナをもっているのに
  なぜわざわざ漢字を勉強するの?
 日本語は中国語の文字を取り入れ、それを使いこなすことによって、豊かな表現力を持つことになりました。はじめは漢字だけで日本語を表現しました。

 「作久矢己乃波奈」 (=咲くやこの花)

 そのうち漢字を思い切って崩したり省略して、音だけを表すひらがなやカタカナを生み出しました。

 「安」=あ 「阿」=ア
 「以」=い 「伊」=イ

 音だけを表現する「かな」が生まれてからは、難解で複雑な漢字を使わなくても文が書けるようになりました。

 人々が教養というものを考えるようになるまでは、文字はごく一部の貴族だけのものでした。特に中国文=漢文を読み書きできることが貴族男性の教養の証明でした。最初は”かな”は、「非公式に女性が使うもの」という扱いでしたが、しばらくすると、日本語表現にはなくてはならないものとなっていきました。誰もが使えるようになったのは、平安時代の紀貫之(きのつらゆき)が公式に使うようになってからだ、と言われています。

 文字で何かを伝えるときの最も大切な原則は「正確でわかりやすいこと」です。漢字を使うことによって日本語の意味を正確に伝えることができますが、一方で読めない場合には全く何も伝わりません。漢字ばかりの文章でも、かなばかりの文章でも、良し悪しがでてきます。

 やはり、日本語の最もすぐれた表現方法は、漢字とかなを組みあわせて表現する「漢字かなまじり文」だということになります。音だけをあらわしている「かな」(表音文字といいます)と、意味もあらわしている「漢字」(表意文字といいます)のそれぞれの良さを生かして表現できるからです。

漢字表記の良さをいくつか取り上げてみます。

 1.表意文字なので言葉の意味がはっきりする。
    ■くも→ 雲 蜘蛛

 2.知らない言葉でも文字から意味が読みとれる。
    ■すずき→ 鱸
     たぶん魚かな?と想像できる

 3.漢字を組みあわせて新しい言葉を作ることができる。
    ■ごがく→ 語楽
     語学(ごがく)と娯楽(ごらく)を合わせた私の造語。

 4.文の切れ目がわかり読みやすくなる。
    ■ははははははいしゃにいかないと・・・
     → 母は歯は歯医者に行かないと・・・

 5.文に味わいがでる。
    ■あなたにあいたい 
     → 貴女に逢いたい

 6.言葉におもしろみを加えることができる。
    ■ごみ箱
     → 護美箱  美しさを護(まも)る箱とは、おみごと。

 まだまだあるでしょうが、私が漢字を理解することのすごさを感じたのは、漢字のお家元、中華人民共和国を旅したときです。

    ■買物中心→ ショッピングセンター
    ■電脳死機→ パソコンのフリーズ
    ■病毒→ ウイルス
    ■微軟→ マイクロソフト

 読むこともできない中国語の意味が、漢字からなんとなくわかってしまうのです。それも、外来語のカタカナ表記より、意味がずっとわかりやすかったりするのです。表意文字のすごさを実感しました。

フッタ
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