●ございます フッタ

 基本語は「ござる」という尊敬語です。それに「ます」を加えた「ござります」が生まれ、とても敬意の高い尊敬語として相手の動作に使われていました。

 殿がござりました (来るの尊敬語)
 座敷へござりませ (行くの尊敬語)

 「ございます」は「ござります」が変化して生まれた語です。江戸時代の終わり頃から使われ始めているようです。よくよく調べてみると、「ござる」→「ござります」→「ございます」というように、だんだん変化したという単純な流れではないようです。「ござる」は尊敬、「ござります」はとても強い丁寧な尊敬で、「ございます」はくだけた表現というように、使い分けられているのが用例からうかがえます。整理すると、それぞれの表現は似ていますが、別の言葉としてきちんと使い分けられていたことがわかります。

  
      ●ござる 「御座ある」が変化したもの。「ある」「いる」「行く」「来る」の尊敬語。ほかにも、空腹になる、夢中になる、恋をする、腐る、変化する、だめになる・・など多数の意味に用いられていたり、「身どもは京の者でござるか」などのように丁寧語としても用いられた。
●ござります 「ござる」+「ます」で、とても高い敬意を表す。「それは誠でござりますか」などの表現は、「ござる」を使う人よりも身分や地位の高い人にしか使わなかった。
●ござり申す 「ござる」+「申す」で、特に敬意を高めるのではなく、丁寧さを前面に出した表現。自分側に使うことも多かった。
●ございます 「ござります」から生まれたが、敬意はずっと低く、ちょっとした丁寧語としてだけ使われていた。さらに省略して単に「ござい。」と使うことも多かった。

 さらに時代が進んで「です」が使われるようになると、「ございます」は古風に感じられるようになり、口語ではあまりつかわれない表現になりました。しかし、「です」が広く普及するにしたがって「です」はだんだんあたりまえになって敬意が感じられなくなってきた。そこで、「”です”をさらに丁寧にした表現」ということで「〜でございます」が新しい丁寧表現の代表として再び広まりました。「特別丁寧体」や「御丁寧体」として特別扱いする学者も多くいます。このように、ちょっと込み入った経緯がある言葉ですので、尊敬か、謙譲か、丁寧か、正しいのか間違っているのかわかりにくいのです。単純にまとめてしまうと次のようになります。

 
 「ござる」「ござります」「ござり申す」「ございます」はそれぞれ発生の時期が違うが、別々の役割のある言葉として使われていた。昭和になって男性的、古めかしい表現だとしてだんだん使われなくなったが、「です」の敬意がなくなるにつれ、さらに丁寧な表現として「〜でございます」が普及しはじめた。
 一方で、やはり古風に感じられる表現であるということと、相手の動作に使うにははっきりとした尊敬の意を表した方がいいという流れの中で、丁寧と尊敬が混在している「ございます」より、明確な尊敬語である「〜でいらっしゃる」という表現が少しずつ普及し、置きかえられつつある。


困ったときには「ございます」の部分を、基本形に置き直してみるとわかりやすいと思います。

  1.なんでもございません。 (なんでもありません)
  2.私は中澤でございます。 (中澤です)
  3.あちらのテーブルにございます。 (テーブルにあります)
  4.村上様はあちらのテーブルでございます。 (テーブルです)
  5.2階でございます。 (2階です)
  6.書いてございます。 (書いてあります)
  7.その商品はございます。 (商品はあります)

どんな言葉に続いているかという別の視点から表現をみると

  A.〜でもございません。 (ありません)
  B.〜にございます。 (あります)
  C.〜はございます。 (あります)
  D.〜でございます。 (です)

となり、A.B.C.は尊敬語としての用法で、Dの「〜でございます」だけは、前に続く語には関係なく丁寧語としての表現なのだとわかります。


フッタ
奥義の巻メニューあははっホームページ