●過去形と現在形
部屋に入るときに「失礼します」、部屋を出るときに「失礼しました」と使う。この場合は「現在」と「過去」という時制での使い分けですが、敬意を表すときの過去形と現在形の使い分けは単に時制の問題でなく、あくまでも「距離感」の問題だととらえるべきです。 「現在形」は、 「相手との心理的距離が近い」「簡潔」「明確」「強く主張」 「過去形」は、 「相手と心理的距離がある」「より謙虚・丁寧に」「弱くやわらかく」 という印象で使い分けることになります。退室時には「失礼します」も「失礼しました」も使えます。さらに「失礼いたします」「失礼いたしました」の方がより丁寧です。つまり、「現在形」「過去形」両方が使える場面では、その場に合わせてどちらを使ってもいいということです。あとは、その場にあわせて、どちらの雰囲気があうのかを考えるべきでしょう。 よく問題になっている「ご注文は、以上でよろしかったでしょうか」という表現も、過去形にすることで相手との距離が遠くなる=遠慮=丁寧という構図から生まれた表現でしょう。ただ、一般的には時制の感覚でとらえるものなので、違和感を強く感じる人も多いようです。「過去形の敬語」は若い人が接客でよく使うというデータがありますが、みなさんの周りではどうでしょうか。さらに過去形を重ねた 「これで、よろしかったでしたか」 という表現は、ほとんどの人に違和感があるようです。しかし、言葉は「正誤よりも感覚的に使われる」ものです。丁寧さを高めるために、いずれ使われるようになるかもしれませんね。 |