故事成語

鶏鳴狗盗
 斉の国に孟嘗君(もうしょうくん)という賢い指導者がいました。孟嘗君の周りには、有名な学者がたくさん集まりました。その一方で、孟嘗君は身分や過去を問うことなくすべての人々を同じように待遇していたので犯罪者もたくさん集まってきました。隣国の秦の昭王は、そんな孟嘗君の人望の厚さに脅威を感じるようになり、殺してしまうつもりで捕まえてしまいました。

 捕らえられた孟嘗君は、昭王の愛人になんとか釈放してもらえないだろうかと頼んでみました。愛人は「わが昭王が大切にしている秘蔵品の狐の白い毛皮が私のものになるなら考えてもいいわ」と答えました。孟嘗君がなんとかならないだろうかと困っていると、いつもなかまから何の役にも立たないと悪口を言われていたが申し出てきました。「わたしはあなたに雇われるまでは悪い盗人でした。そんな私でもわけへだてなく大切にしてくださり感謝の気持ちは言い尽くせません。なんのとりえもなく他人から見下げられている私ですが今回はお役に立てるかもしれません。」そう言い残すと、はまるで狗(イヌ)のように宮中の蔵に忍び込んで、いとも簡単にその白い毛皮を盗みだしてきました。その毛皮を昭王の愛人に手渡すことで孟嘗君は無事に釈放されることとなったのです。

 ところが、昭王は釈放したことを後悔して、再び追っ手を向けました。孟嘗君は、関所までなんとか逃げてきましたが夜は通り抜けることができません。早く朝になってほしいと焦っていると、いつも孟嘗君のなかまから何の役にも立たないと悪口を言われていたものまねの上手な男が、「私に任せてください。」と申し出て、鶏の鳴き真似をしました。役人たちは朝だと勘違いして孟嘗君たちを通してしまい、無事に逃げきることができました。

 孟嘗君がこの二人をなかまとして迎えたとき、他の人々は「なぜこんな奴らをなかまにして大切に扱うのだ・・」と納得しませんでした。しかし、個性を見抜いて二人を待遇していた孟嘗君の眼力にみんな感服することとなったのです。
■どんな人物が役に立つかわからない。

<例> 鶏鳴狗盗という言葉があるように、彼らはこれからどうなるかわからないさ。