故事成語

和氏の璧
 楚の国の和氏(かし)という人が、楚山で玉=宝石の原石を見つけました。「とてもすばらしい玉になるのは間違いない」と思った和氏は、さっそく、脂、(れいおう)に献上しました。ところがなぜか「どこにでもある石だ」と鑑定されてしまい、だました罰として左足を斬られてしまいました。

 玉の原石を理解してもらえなかった和氏ですが、脂、が亡くなったあと、次の武王に献上することにしました。ところが、同じように「たいした価値のない原石だ」と鑑定されてしまい、だました罪として、今度は右足を切断されてしまったのです。

 またもや玉の原石のすばらしさを理解してもらえなかった和氏ですが、その次の文王の天下になっても、その原石を大切に抱えていました。血の涙を流し、泣き続けていたある日、和氏の噂を聞きつけた文王は彼を呼びよせて、「体の具合が悪いのか」と、泣いているわけを尋ねました。「私は足を斬られたことを悲しんでいるのではありません。これほどの宝玉をありふれた石だと決めつけられ、うそつきにされてしまったことがあまりにも悲しくて、こうして泣き続けているのです」と答えました。そこで文王が、玉造という職人にその原石を磨かせてみると、なんともすばらしい世界一の宝玉が誕生したのでした。この玉は、代々の王に受け継がれる宝となり、後に秦の昭王が15の都市と交換しようと申し出たこともあったので、「連城の璧」とも呼ばれています。

  <参考 完璧
■天下の宝玉(ほうぎょく)。

<例> これはまさに、和氏の璧ともいうべきすばらしい宝石ですね。