故事成語

漁夫の利 鷸蚌の争い
 燕(えん)の国と趙(ちょう)の国が争っていました。あるとき、趙の恵文王(けいぶんおう)が燕の国に一気に攻め込もうと決断しました。それを聞きつけた燕の昭王(しょうおう)は思いとどまらせようと、外交家である蘇代(そだい)を趙に派遣しました。

 派遣された蘇代は、恵文王に語りかけました。 「今日、私がこちらの国にまいります途中に、易水という川を渡りました。その川のほとりでどぶ貝(蚌/ぼう)が日向(ひなた)に出て、殻の中の肉をさらして、のんびりと日向ぼっこをしていました。そこにお腹をすかせたシギ(鷸/いつ)が飛んできて長いくちばしでその肉をつつきました。驚いたは貝がらをぴったりと閉じて、シギのくちばしを挟んでしまいました。そこでシギが 「今日は雨が降らない。もし明日も雨が降らなければ、おまえは死んだ貝になってしまうぞ」 と言いました。 も 「今日くちばしをここから引き出せず、明日も引き出せなかったら、死んだ鳥になってしまうぞ。」 と言い返しました。両方とも全く譲ろうとしませんでした。そこに漁師が通りかかって、もめている両者を何の苦労もなく捕らえてしまいました。
 今、恵文王さまは燕の国を伐とうとしています。このまま趙と燕が争い続けるとどちらの国も人民は疲れ切ってしまうでしょう。両国とも長年の敵対関係によって明らかに国力が落ちています。もともとは趙と燕とはバランス良く調和を保ち支え合って平和を保ってきたのではありませんか。私が恐れているのは、このまま両国が争うことになったときにそれに乗じて強国の秦が漁師となって利益を得てしまうのではないかということです。恵文王さま、今は十分考えてから行動なさるほうがよろしいと思います。」
 それを聞いた恵文王は 「もっともな話だ」 と納得して、燕を伐つことを取りやめたのです。
■ 争っているときに関係のない者が利益を得てしまうこと。

<例> 漁夫の利で両方とも手にすることができてラッキーだった。
● 「漁父(ぎょほ)の利」 ともいう。