平成十一年一月
師の賀状 よれよれ文字も なつかしく 祝うらし シスターからも 賀状来る
寒波きて 飛ばされそうに 橋渡る
鯉九ひき 緋鯉も交じる 寒日和 鯉九匹 佐保の淀みに 春日射し
曾孫抱き 胸温かし 寒さ中
アメリカの 曾孫帰りて 冬の旅
膝をける 力も増して 曾孫の春
おちこちに ひび割れのして 芽のきざし
読まぬまに 次号の届く 霜の朝
友逝けり 淋しさ極み 寒の佐保 お山焼き 一日伸びて 人少な

年末に 活けし紅梅 ふくらめる 花少な 二月は梅の 独り占め
初雪を 見るだけ拭う 厨窓 下萌えや 名は知らねども いつくしむ
犬ふぐり バス停椅子の 下に群れ

石蕗の 花のほほけて 散る日中 したき事 終えて呆然 庭ながむ
硝子越し 木々の揺れ見て 春を待つ 山焼きの 跡も少しく 青めける
鶯の 下枝伝い しきりなり 初鳴きや 朝食の跡 そのままに

水ぬるみ 小白鷺来て 春はじめ 金柑の 余りに小さく 活け花に
四月

化粧する 鏡に写る 白椿 いちはつの 一斉に伸ぶ 雨止みて
土筆採り はかまのとり手は 婆一人
花冷えに 行き先かえて 孫発ちぬ 下げ止まり 景況判断 すこし春
空青く 暮れなずむ春 影流し
木苺の 枝伸びすぎて 切り取られ 桔梗の芽 石陰故か まだ出でぬ
じょうびたき 佐保の川原を 石伝い 小手毬の 激しく揺れて 雲走る
をちこちに 苧環(おだまき)の芽や 色違い

紫木蓮 白より永く 花期たのし 誰が掃きし 歌碑立つほとり 入り日輝る
いちはつの すっくと伸びて 影長し
献立の 決まらぬままに 胡瓜切り 雨止みて 桜しべ散る 通い道

一人静 花芽を抱き 芽の出ずる 遠近に おだまきの咲き 色違い
芹つみの 帰ろ帰ろと 言いながら 鯉影を うつして泳ぐ 五月晴れ
初蛙 聞きし昼時 夏近し ブロック塀の 穴より伸びる 赤芽樫
朴の花 落ちてかすかに 香りけり ひらひらと 肌着のゆれる 子沢山
川底を 小魚の走る 夏昼間
鉢植えの 木苺熟し 児に採らせやる 風雨きて 白木蓮の 汚れたる
夜べの雨 こぼして落ちる 夏椿 花筏 ほんに筏師 のる如く |