花々との日々
 



平成七年春

日脚のび 花びらの色 淡く見ゆ           舗装路の 煉瓦の継ぎ目 蓬萌ゆ         

               
水ふえて 佐保の流れに かも夫婦        増水を 確かむる如 かも夫婦

春雨や 濡れるに惜しき 一張羅          春暁や 犬の遠吠え 眠られず

ささ鳴きを 聞きし鶯 遂に来ず           酢味噌あえ うどに添いたる 山椒の香

                
開き行く 紅梅眺 む 硝子越し            盛り過ぎ 梅そよ風に 花吹雪

雨戸開け 朝の空気も 確かと春          日脚のび 川縁の藻の 緑めく

咲き初めし 美央柳の 風に揺れ  

橋のした 夏というのに 草はえず          雨上がり 椿の新芽 輝ける

花石榴 蕾も赤く 花は尚               成りすぎて 貰い手探す 青梅かな  

五月梅 盛り上がり咲き 鉢覆う           五月梅 散り敷く鉢の辺 ほの白き

平成七年七月

 
銀香梅 雨を小粒に して宿す            昼顔や 鉄条網に 添いて伸ぶ

               
梅雨最中
(さなか) 佐保の流れも 黄土色      佐保川も 音たて流る 梅雨末期 

ベゴニヤの 花をこぼして 蜥蜴(とかげ)逃ぐ    月下美人 何のせいやら また二輪(季も過ぎてしまったのに)


朝涼し 大文字草 蕾持つ               一茎の 白曼珠沙華 ひそと咲き

胡瓜もみ 隣も裏も 夕支度              地蔵盆 老いも幼なも 一つござ

水欲しと 言えず枯れ死せし 萩に詫ぶ      

ぺしゃんこの 蝉の亡き骸 バス路に         蝉時雨 短き命 鳴き続く

金柑に 揚羽蝶きて 虫食い葉            花魁草 夕べせまりて 紅をさす

                          
梅雨晴れや 結婚誓いし 孫の来て        雨降れど 半夏生活け 客を待つ
 

 

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