率川 ・ 浮見堂


春日大社から新薬師寺に至る道は「馬酔木の森」「ささやきの小道」。率川は春日山に源を発する小川で、静寂の森をさらさらと東西に流れ、浮見堂のある鷺池から猿沢の池の南を西流して、奈良の町を暗きょうで抜け佐保川に注ぐ。

 

葉根かづら 今為る妹を うら若み いざ率川の 音の清けさ

はねかづら いまするいもを うら若み いざいざ川の 音のさやけさ

 万葉集 7-1112

葉根かづら(髪飾り)をつけたうら若い恋人をいざいざと誘いたくなる、
そんな率川の川音の清らかなことよ。

池水に 影さへ見えて 咲きにほふ 馬酔木の花を 袖にこきれな

大伴家持 万葉集 20-4512

池の水に影さえ映して咲きにおう馬酔木の花を、 しごいて袖に入れましょう。

   
鷺池の鷺 魚を食べているのかな

池神の 力士舞かも 白鷺の 桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて 飛び渡るらむ

長忌寸意吉麻呂 万葉集 16-3831