天皇の、香具山に登りて 国見したまう時の御歌
大和には 群山(むらやま)あれど とりよろう 天の香具山
登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は かもめ立ち立つ
うまし国ぞ あきづ島 大和の国は
大和には多くの山があるが、とりわけて立派な天の香具山、 その香具山に登って国見をすると、
国土には炊煙が立ち、海原はかもめが翔んでいる。うつくしい国よ、 あきづ島大和の国は
舒明(じょめい)天皇 万葉集 1-2
鴨君足人 香久山の歌1首あわせて短歌
天降つく 天の香具山
霞立つ 春に至れば 松風に 池波立ちて 桜花 木のくれ茂に
奥辺(おきへ)には 鴨妻呼ばい 辺つ方に あぢむら騒ぎ
ももしきの 大宮人の 退り出て
遊ぶ船には 梶棹も 無くて寂しも 漕ぐ人無しに
都を奈良に遷した後で旧い地を懐かしんで作歌したもの
万葉集 3-257
ひさかたの 天の香具山 この夕べ 霞たなびく 春立つらしも
万葉集 10-1812
香具山に 雲居たなびき おほほしく 相い見し児らを 後恋ひむかも
万葉集 11-2449