象の小川 ・ 桜木神社 


青根が峰を主峰とする吉野の山々に降る雨は、北に流れ集まって象谷となり吉野川に流れ込む。
万葉の香り高い象の小川のほとりに鎮まる桜木神社は天武天皇をお祀りしている。天武天皇が大海人皇子と言われていたころ、天智天皇の近江の都を去って吉野に身を隠した。あるとき大友皇子の兵に攻められ、かたわらの大きな桜の木に身をひそめて難を逃れたという伝説がある。後大海人皇子は勝利し(壬申の乱672)飛鳥に都を定め、天武天皇となられる。その後吉野の宮(宮滝)に行幸されると、篤くこの宮を敬われ、天皇なきあと桜木神社にお祀りしたと伝えられる。
 
 
 

昔見し 象の小川を 今見れば いよよ清けく なりにけるかも
 
万葉集 大伴旅人 3-316
 
大和には 鳴きてか来らむ 呼子鳥 象の中山 呼びてぞ越ゆらむ
 
万葉集 高市連黒人 1-70