こうぞ  : クワ科

万葉名 
多久・栲 (たく)  (たえ)
 


水沫(みなわ)なす 微(もろ)き命も たく縄の 
千尋にもがと 願い暮らしつ

山上憶良 万葉集 5-902

水のあわのようにすぐに消えるはかない命も、コウゾでなった縄のように、千尋にも長くと願って暮らすことよ。

春過ぎて 夏来るらし 白たへの 衣干したり 天の香具山

持統天皇 万葉集 1-28

敷たへの 枕ゆくくる 涙にそ 
浮き寝をしける 恋の繁きに

駿河采女 万葉集 4-507

たへの枕から流れおちる涙でまんじりともできませんでした。恋のつらさに耐えかねて。
 


こうぞの実:集合果


山地に自生し和紙の原料にする落葉低木。「たへ」はこうぞの繊維で織った布。「たく」「ゆう」ともいう。 花は4・5月、葉と同時に花をつける。雌雄同株。 葉はハート形で縁に細かい鋸歯がある。若木では2〜5裂。6月集合果は赤く色づき、桑の実に似て甘くておいしい。


 



2004.4.15  こうぞの雌花 春日大社神苑


こうぞの雄花