紫は、やや乾燥した草原に生える多年草。乱獲や開発により自生のものは今ではほとんど見られない。 紫の根は染料に用いられた。いわゆる古代紫。紫の栽培される野が紫野で、立ち入りの許されない禁野であった。 |
あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き 野守りは見ずや 君が袖振る
額田王 万葉集 1-20
天智天皇蒲生野に遊猟したまう時、額田王のつくる歌
あかね色にそまった紫草の野を行くあなた。
袖を振ったりなさったら野守りがあやしむじゃありませんか。
紫の にほえる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに われ恋ひめやも
大海人皇子(天武天皇) 万葉集 1-21
皇太子(後の天武天皇)の答えましし御歌
紫がにおい立つようにように美しいおまえ。おまえが憎いのであればどうして恋などしようか。
2004.6.6 春日大社神苑
託馬野に 生ふるむらさき 衣に染め いまだ着ずして 色にでにけり
笠郎女 万葉集 3-395