茜(あかね) ・ 紫草(むらさき)

大海人皇子 ・ 額田王 ・ 十市皇女


茜は山野に生えるつる性の多年草。赤黄色の根はあかね染めの染料として用いられた。 茎は四角で細かい棘があり葉は4枚が輪生する。万葉集では茜そのものを詠んだ歌よりは、茜色に照り映える意味から日・月・ 照る・紫等にかかる枕詞として多く使われている。

紫は、やや乾燥した草原に生える多年草。乱獲や開発により自生のものは今ではほとんど見られない。 紫の根は染料に用いられた。いわゆる古代紫。紫の栽培される野が紫野で、立ち入りの許されない禁野であった。

 

あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き 野守りは見ずや 君が袖振る

額田王 万葉集 1-20

天智天皇蒲生野に遊猟したまう時、額田王のつくる歌 あかね色にそまった紫草の野を行くあなた。
袖を振ったりなさったら野守りがあやしむじゃありませんか。あなた。


あかね

紫の にほえる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに われ恋ひめやも

大海人皇子(天武天皇) 万葉集 1-21

皇太子(後の天武天皇)の答えましし御歌

紫がにおい立つようにように美しいおまえ。おまえが憎いのであればどうして恋などしようか。今も愛しているんだよ。

河上の ゆつ岩群に 草生さず 常にもがもな 常処女にて

吹ふきの刀自 万葉集 1-22

十市皇女、伊勢神宮に参りし時、吹ふきの刀自の作る歌

十市皇女は大海人皇子と額田王に生まれた皇女です。天智天皇の皇子大友皇子に嫁しましたが、
壬申の乱で父(大海人皇子)に敗れました。

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