「サラワク・プナンの森は訴える静岡集会」でのサラワクの先住民の訴えが、「ゴミゼロ通信」に掲載されましたので、ここに転載します。
2001年10月31日
10月22日(月)雨の中、マレーシア・サラワク州から熱帯雨林に住む先住民族プナン人とイバン人(プナン人は狩猟民族、イバン人は農耕民族)を迎えての「サラワク・プナンの森は訴える静岡集会」が50名以上の参加で行われた。昼間は記者会見、静岡県選挙管理委員会・静岡市選挙管理委員会への選挙掲示板使い捨て熱帯材使用中止の申し入れを行いました。 下記は集会での2人での講演をふまえて、まとめた報告です。(T)(一部削除 米澤)
●サラワク・プナンの森は訴えた! |
| ┏━↓●↓━━━━━━━━━━━━━┓ ●サラワク先住民族の悲劇 マレーシア・サラワク州(ボルネオ島北部)は面積約125万km3。人口200 万人のうち半分の90万人が森の先住民族である。先住民族は先祖伝来、森林の自然 と共に静かに暮らしてきた。ところが60年代に森林伐採が始まり、1986年まで に280万ha、今では年間40万haもの先住民の森林が破壊され続けている。 伐採は先住民族に何の断りもなく行なわれることが多く、彼らのお墓までもが荒ら されることがある。プナン人は森の民として狩猟をしながら、移動生活を送っていた が、70年代から政府の政策によってロングハウスに定住を始め米作も行なうように もなったが、今でも生活の大半は森に依存している。森を守ることは彼らの生活を守 ることである。そのため森林伐採に対し、政府への申し入れなどを行なったが、事態 は一向に改善されなかった。87年4月、森の民プナン人を始めとする先住民族は遂 に立ち上がった。伐採道路の封鎖等、非暴力・平和的な抗議行動で。ところが森林伐 採を進めるマレーシア政府は、彼らを助けるどころかこれまで実に500人以上の先 住民族が逮捕したのだ。 91年静岡にも先住民の方が来られ、その被害を訴えた。92年のブラジル地球サ ミットもあり、熱帯雨林の危機が叫ばれ、世界最大の熱帯材輸入国日本の責任が問わ れた頃だった。しかし、いつしか人々から問題が解決したかのようにその記憶が消え かかっていた。 だが、森林破壊は更に進行し、森の生態系は完全に破壊されようとしていたのだ。 プナン人を始めとするサラワク先住民の森を守る戦いは続き、マレーシア政府による 弾圧や逮捕事件が相次いでいた。パスポートも没収されたり、再発行を拒否されたり して、日本に来る事が難しい状況であったのだ。この度そういう厳しい状況の中、 やっと来日が実現したのだ。 ●熱帯林破壊の最大の責任者は日本 世界人口の2%の森林国日本は世界一の熱帯木材輸入・使用国で、世界貿易の中で 丸太の5割以上、加工品の3割近くを占める。60年〜70年代にフィリピン、イン ドネシアから、最近ではパプアニューギニアからと熱帯木材を大量に買い付け、森林 破壊に大きな責任を負ったままである。特にマレーシア・サラワクでは85年頃より 92年まで日本は熱帯産丸太の8〜9割,サラワク州産出の木材の約半分を輸入して いる。 「木を輸入しないで欲しい」と彼らは訴えている。「あんな莫大な面積に生えてい た木を日本という小さな国が求めていること」が彼らには不思議でならない。「あん な多くの木をいったいどこに貯めているのか」と彼らは尋ねる。 その熱帯材は日本国内で5割が建設・土木に、3割が家具に使われるが、コンク リート型枠になっては2〜3回で使い捨てられたり、家具になっては引越しのたびに 捨てられたり、ほとんどが使い捨てされているのが現状だ。貯めているのではなく、 「日本という小さい国」はその処分場の困っているのだ。何たることだろう!? ●生態系の最終破壊・油ヤシプランテーション 今切り尽くした感があるサラワクの伐採。「用済み」となった森を再利用する手段 の一つとして油ヤシ・プランテーションがある。先住民に「伐採の方がまだましだ」 と言わしめる森の最終破壊である。伐採なら太い木だけを運び去るが、油ヤシプラン テーション開発は、一箇所につき最低3千haを草一本残さずに伐採し、油ヤシとい うただ一種類の木を碁盤の目のように植林する。だからその土地の生態系は完全に消 滅する。油ヤシの油は食品だけでなく、洗剤、化粧品などに使われ、植物性=地球に やさしいと言われる。防護服などつけないで農薬を扱うこともある。農薬をかついで 坂を登っていた女性が転倒、全身に農薬を浴びて死亡した事故もあった。搾油の効率 化のため、畑の近くに大規模な工場が近くに必要とされる。ベトナム戦争の枯葉剤が 農薬として使われている。今現地では、開発に反対する先住民に対する強硬な開発や 弾圧が散発している。そんな中でウルニア事件が起きた ●豊かだった森の生活 10月22日「サラワク・プナンの森が訴える静岡集会」が行なわれ、プナン人の 長老プダパアンさんとイバン人の若い女性ジェッキーさんの話しの要約が以下。 伐採が入る前、森にはたくさん動物がいた。伐採が入っていなくなってしまったと 思ったら、先日上野動物公園に行った時そのうちのいくつかと出会った。森での生活 では時計が要らない。朝になれば、鳥たちが鳴いて時間を教えてくれる。(こういう ふうに鳴くんだよと、鳴きまねを披露。)犀鳥(さいちょう)はサラワク州のシンボ ルであり、プナンにとっても象徴的な大事な鳥だったがもういない。森が荒らされる 前、川はきれいで、魚をはじめとする様々な生物がおり、川の中にいるものを全て目 で見ることが出来るくらい川は澄んでいた。魚は簡単に獲ることができた。でも獲る のは1匹だけだ。私達は動物達や魚を獲り過ぎる事はしない。森へ狩りに出かけると き歩いて行く。鍋はいらない。猪を捕まえても、料理する道具は自然の中にある。自 然の植物を利用して、食器や鍋の代わりになる。他にも鹿、リス、鳥なども吹き矢を 使い狩り、食料とする。矢には毒が付いていて大きな獲物も倒すことができる。森に は多くの種類の藤がある。それを使って様々な日用品や民芸品を作る。森にはサゴヤ シも豊富だった。サゴは調理して、餅のようにして食べる。 とにかく森は豊かだった。皆さんは銀行にお金を預けているのでしょう。皆さんが お金を預けて、銀行から引き出すように、私達も必要なだけ森から恵をもらってい る。もちろん、けっして獲り過ぎないように。私達にとって森は銀行であり、スー パーマーケット、レストランだった。でもそれが今はない。 ●生態系が破壊された森林 森林伐採によって、動物もいなくなり、土砂崩れが起こり死んだ人もいる。その土 砂で川は汚され、魚もいなくなってしまった。栄養失調、皮膚病や眼病など病気にな りやすくなった。皮膚病などになっても、昔は森で薬草を見つけ簡単に直せたが、今 はその薬草もみつけられない。集会の前に上映した昔のビデオの森を見ていると涙が 出る。あの頃は美しい森があったから。森の文化の話しは1日でも語り続けられる。 でもその森の豊かさはもうない。森をいっしょに歩いて動物を見つけたら、賃金を上 げよう。吹き矢をプレゼントしよう。それくらい今は森には動物がいなくなってし まった。 伐採業者が「我々がこれらの木を必要としているのではない。外国の企業が欲して いる」と言う。とにかく、森林伐採は年々ひどくなっている。最初は太い木だけだっ たが、だんだん細い木まで切り尽くしている。 ●破壊された先住民族の生活 首相と州主席大臣は先住民族のためのプロジェクトを実施するから、もう悩まなく てもよいと言った。500万リンギを先住民の生活向上のために当て、使用してい る、と言われているが、私達はまったく受け取ってもいない。州政府は全てのプナン の村平等に開発プロジェクトをもたらしてくれるわけではない。事実、私たちの地域 にはプナンの子供が通えるような学校はないし、病院も近くにない。 プナン人は今、定住をしながら、米作りもしているが、あまりうまくいかない。何 も獲れないが、若者も含め今でも毎日森へ出かけて、何かを捜すのが習慣だ。森の木 で民芸品を作って、町で売って細々と生活している。学校はカヤン族と同じ学校なの で、プナンの子は落ちこぼれ、やめてしまう。(森の移動生活と比べ、すべてバラン スが崩れているのだろう) ●プランテーション開発での悲劇 97年12月、プランテーション開発に反対デモを行なっていた村人に警官が発砲 し、一人が死亡する事件が起きた。そうした緊張の中でウルニア事件が起きた。 最初は軍、警察、機動隊が開発業者の安全性を確保するために雇われていたが、最 終的にギャングも雇われた。99年9月1日ブルドーザーと大勢の開発業者がウルニア地 区の土地に侵入しようとしたので、村人はその侵入を阻もうとした。その中のギャン グが日本刀、棍棒、銃で威嚇し始めたので、村人たちは防戦しようとした。その衝突 でギャングの4人が死亡する事件が起きてしまった。その事件の事情聴取のためと警 察に出頭した人を含め22人が逮捕され、2年近くも拘留されたが、取調べの中で物 的証拠を提出できず証拠、21人は釈放されたが、75歳の目も耳も不自由な老人だ けが懲役12年の有罪判決を受けたのだ。これがウルニア事件だ。 ●どこまで続く森林最終破壊 ジェッキーさんは集会で訴えた。村人たちはここに長年住み、先住慣習権を申請中 だったにも関わらず、開発業者は土地の権利を持たないで強引にプランテーション開 発を行なうとしたのだ。一方警察は、何度も開発業者の土地への不法侵入を村人が訴 えていたにもかかわらず見逃していたというのが事件の背景である。そもそも警察に 出頭したひとつの理由は、与党議員が自首をするように、半ば脅迫めいたことを住民 に言いにやってきたからだ。政府も警察も、2つのロングハウスが開発業者と仲が悪 く、言い争いを何度もしてきたことを知っている。今回自首しなければ、政府は2つ のロングハウスを破壊するぞ、と言った。また、自首をすれば財政面での支援をして やる、一家族2000リンギし払うし、子供の教育費も、食費も、自首をした人間の面倒 も見てやる。また、自首をしても警察に拘留されるのは長くて2週間だろう、とその 与党議員が言った。 開発業者は、死亡者まで出した強引な最終森林破壊=土地開墾=プランテーション 開発を推し進める姿勢を完全には崩していないようだ。焼畑農業を伝統的に行なって きたイバン人は10年20年のサイクルで同じ土地に戻り、森と共生しながら先住民 族である。生態系を完全に破壊するプランテーション開発との問題は今後も続くよう だ。 ●サラワク・プナンの森は訴える ある老婆(写真ホット=ヨックさん)はこう訴えた。「森を守るためなら、私の命 はいりません。森は私達にとっては、恵みの全てをくれる場所なのです。水、サゴ、 猪や鹿、薬草、果物。どうかお願いします。どうか、日本の政府にこれ以上、私たち の森から木を持っていかないでと頼んでください。この老婆は数年前に亡くなった。 最後まで森を守ることを訴えて。 --------------------------------------------- <比較表> 伐採とプランテーションの何が問題か? ●☆●自然破壊度 ☆伐採 ・択伐方式であるが、森が荒れる。 ☆プランテーション ・造成工事の段階で皆伐。 ●☆●生態系への影響 ☆伐採 ・大型動物は姿を消す。生態系の悪化。 ☆プランテーション ・あらゆる動物が姿を消す。生態系の消滅。 ●☆●企業の操業期間 ☆伐採 ・太い木が無くなった時点で企業はその土地を去る(10年くらい)。 ☆プランテーション ・一度操業が始まれば、土地と土地の権利は半永久的に奪い去られる ●☆●川への影響 ☆伐採 ・川は土砂で汚れる。魚の減少。 ☆プランテーション ・川の土壌の農薬汚染が危惧される。労働者への影響は無視できない ●☆●日本での用途 ☆伐採 ・丸太は、7割が建設現場の建材(コンクリートパネルなど)で、3割が家具などに使 われる。 ☆プランテーション ・生活への浸透度は木材をはるかに超えている。即席めん、マーガリン、スナック菓 子、冷凍加工食品、外食での揚げ油、、化粧品、石鹸、洗剤、シャンプー、医薬品な ど (ゴミゼロ通信2001年10月28日号より) |