Les histoires des Gateaux       お菓子の話





Meringues



初めて見た時はあまりの大きさに
発泡スチロール?
って感じでしたがやっぱり食べてみると
なるほどおいしいんです。


 
 フランスのお菓子屋さんでよく見かけるこの大きなゴツゴツ。
私が見た中で最大のものは枕ぐらいあって、袋に入れられ天井からぶら下がっていました。大きすぎて棚に置けないんですね。そういうのを見るとフランス人の甘いものへの執着は日本人とは違う。と感じます。
 
 卵白を泡立てて乾燥焼きしたムラングセッシェは日本人には「甘過ぎる」と敬遠されることが多いのですが、上手に作られたメレンゲはただ甘いだけではなく糖分がキャラメル化してサクサクと香ばしく口解けは滑らかで後味はまるでミルキーかキャラメル。材料は全然違うのに不思議です。
口の中でサクサクからトロりに変化する瞬間が劇的。ブラックコーヒーにとても合います。しぼり出しで形も色も自在なので最近よく作っています。

  ただひとつの大きな欠点は、・・・湿気にはことのほか弱い・・・・・。
フランスのお菓子を日本で作る時には、この湿度の違いに難儀させられる事が多いのです。
左の写真のようにむき出しで売られるのはフランスならでは。
日本ではケースに乾燥剤を入れて大事に売られていますね。これもまたフランスではラフなおやつ菓子。近所のお菓子屋さんに行っては、ガナッシュがサンドされたげんこつ大のムラングを、必ず他のガトーと一緒にひとつ入れて貰いました。

 滞在した街ヌーヴィルには忘れられない味が沢山あって、それが今の私のお菓子作りの原動力となっています。今、私が作るメレンゲはあのお店のが目標。あの味を再現したい、あの味を広めたい、という思いに突き動かされて今日も厨房に立っています。

(2012.4.27)

Pralulines

見た目はゴツゴツの大きなメロンパンみたい!
でも味はバターの風味と卵の香りの
優しい味です。


特大・大・中・小・さまざまな大きさの
プラリュリーヌを作っていました。
 
 
プラリュリーヌとは、プラリネ(糖衣がけアーモンド)入りのブリオッシュの事。
フランスには、パンとお菓子の境目のようなものがたくさんあって、ブーランジュリ(パン屋)でもパティスリでも両方で売られています。これはその中でもとても配合がリッチで、かなりお菓子よりのもの。 初めてフランスで見た時は、その見慣れない形と色に驚きました。
日本とは違うフランスの色彩感覚。お菓子作りにもそれははっきりと現れています。
フランス人が「美味しい」と感じるものには、ナッツとお砂糖の組み合わせがとても多いように思いますが、このプラリュリーヌもそのひとつ。アーモンドに固いお砂糖が結晶化した糖衣がかけられています。柔らかいブリオッシュ生地にカリカリとしたプラリネ。歯応えのアクセントもあってとても美味しいのものですが・・・。(さて、この歯ごたえのコントラストが作る時にはアダとなります・・・・・・。)
 私が滞在していたローヌ地方の名物菓子でしたので、街中のパティスリでこの派手なブリオッシュを目にする機会は多かったのですが、見慣れぬその形に最初は敬遠していました。しかし、一番最初に割り当てられた私の仕事はこのプラリューリーヌのブリオッシュ生地にプラリネを包む役目。朝一番に、前日に仕込んでおいたブリオッシュ生地を全員で一気に成型します。開店時間に間に合わせなければならないので、それはそれはすごいスピードでの作業。伸ばした生地が飛んできて私の前でどんどん溜まっていきます。「クミコ!!アレ!ビアンビアンフェルメ!!」(生地の綴じ目をしっかり閉じろ!!早く!!)綴じ目を強く押さえると糖衣の鋭く尖ったカケラが手に刺さり、痛くて手間どる私に容赦なく激励(?)の言葉が飛んできます。山のようになっていく生地と格闘しながらも、なんとかみんなの作業を遅らせまいと頑張っていました。
そんなプラリュリーヌ作りは、初めてのフランスでの仕事に戸惑いみんなの作業についていけなくて辛かった時の、ちょっと苦い思い出。にもかかわらず、慣れてきた頃にはそんな経験もトラウマとならず、仕事終わりに売れ残りのパン類をシェフがくれる時、グロ(特大)のプラリュリーヌが残っていた時は思わず「やったー!!」と。(笑)(売れ残って喜んではいけませんよねぇ。シェフは厳しくも寛大な人でした。)
大きなパンを見ると喜ぶ私を面白がってか、何度もパン入れから出して見せてくれるパティシエ達。
トースターで焼きなおしたプラリュリーヌは甘い香りがして起きぬけの体にチカラが湧いてきます。出勤前の朝の3時に特大プラリュリーヌにかじりつく私。
 懐かしい思い出とちょっぴり涙の味です。
(2011.2.7)


ビュッシュドノエル


Buche de Noel

年間最大のイベント、ノエルに欠かせないのがこの薪型ケーキ、ビュッシュドノエル。
なぜ薪型なのか?には諸説ありますが、寒い国で大切な薪は命を繋ぐものとして
神聖な意味を持つようです。
 フランスではクリスマス時期にはパティスリーではもう、これしか作りません!売りません!っていうくらいの完全態勢(笑)。でもご心配なく。フランボワーズ、ショコラ、プラリネ、マロン、洋梨、キャラメル、などなど、ありとあらゆるビュッシュが作られます。ビュッシュ専用の回転台(上が丸いお皿ではなくて、長い棒にケーキを乗せるようになっている!)までありました。日本人から見ると薪型ケーキはどことなくメルヘンチック。ロールケーキにクリームを塗ってフォークなどで筋をつけて樹皮に見立て、クリームの線描きでツタやヒイラギを描いてメレンゲのキノコを飾って・・・・・とまるで絵本の森の中の世界のようです。これを作っていると、ローストしたスライスアーモンドは枯れ葉に見えるかしら?とか細いチョコレート(ニードルチョコレート)は枯れた小枝みたい?とかどんどん付け足したくなって困ります。他に山ほど仕事が待っているのに!?
 日本では生クリームといちごの丸型ケーキタイプが主流ですが、たまにはこんなフランスらしいメルヘンなクリスマスはいかがですか?ココアがほろ苦く、見た目より大人の味ですよ。
(2010.12.12)

ビューニュ

Bugnes


謝肉祭(カルナヴァル)に食べられる揚げ菓子です。

キリスト経で最大のお祝い行事復活祭(イースター)の、40日前の謝肉祭には
パティスリでは沢山のビューニュを作ります。リヨンでは特に
このビューニュ作りが盛ん。ドーナツより軽く、パイみたいにサクサクしています。
たっぷりと粉砂糖をふって食べればいくらでも食べられそう。
でも揚げ菓子ですから食べ過ぎるとお腹にもたれますが・・・・。

私が働いていたパティスリでも、これまた山のように揚げました。
粉砂糖を振る係りの見習いアポランティエは忙しくて真っ白になって・・。
フランス人パティシエはフォークを片手に1本づつ持って両手で
油の中のビューニュをひっくり返します。私はどうしてもそれがやりにくいので
フォークをお箸のように持って片手でビューニュをひっくり返していました。
「すごい!両手で出来たらもっとすごい!」って・・・・。そ、それは無理。

キレイに揚がったビューニュも、薄い生地なのでどうしてもたくさんの割れが
出来て、パティシエとアポランティエの奪い合いが始まります。自分達で作っているものなのに相手が自分よりたくさんつまみ食いするのが許せないそうで・・・・・。
フランスではこういうお菓子は量り売りされますが、
お店でも、割れビューニュがいっぱい出来ます。それを今度はお店の
売り子さん達が奪い合い!ここにも子供みたいな人たちが!

フランス人って本当に大人もお菓子好き。
パティスリにはマカロンやショコラ、パートドフリュイなど上等なお菓子も
いっぱいですが、こんなおやつ菓子も楽しいです。

(2010.3.8)
Valentine's day
2.14



これはクラシックな感じの
ローズのケーキ
バレンタイン限定の
発売以来ずっと人気のケーキです。

¥1400-
フランスのバレンタインデーは、恋人にプレゼントを贈ります。(男性から女性へ)
プレゼントは特にチョコレートを、というわけでもなく花束なんかがお決まり。

花束って、日本ではあんまり男性がプレゼントに使ったりしませんね。
フランスでは男性も女性も花束をよく買いますので、街には素敵な花屋さんや
屋台の花屋さんもいっぱい。用事もないのに花を買いたくなってしまいます。

フランス人はチョコレートが大好きなので、人に貰わなくっても
いつでも自分で買って食べてるわよ!って答えがかえってきそう。
だからパティスリでは普段からチョコレートが売れること売れること!

日本のバレンタインは皆様ご存知のように、女性が愛を告白する日。
年に一回のこの日には勇気を出して女性の方からチョコレートに
気持ちを込めてプレゼントするなんて、なんかいいですよね。 おそらく、
よく言われているようにお菓子メーカーが考え出した商法なんだと思いますが、
なかなかのアイデアです。
普段は奥ゆかしい日本女性にはできないからこそ!?

これってなかなかドキドキするイベントで楽しいですね。
(2010.2.11)
ガレット デ ロワ
Galette des Rois


こんなに綺麗に仕上げるには
生地も成型も焼きも
シクテも
すべて完璧でないと・・・。

クレムダマンドとパイだけのシンプルな
お菓子ですが、シンプルなものほど
基本が大切。

日本でもわりと

人気のお菓子です。
フランスではノエルに薪型のケーキ、ビッシュを山ほど作ったら、その次がこれ。
新しい年が明ける頃に合わせてこれまた山ほど作られるのがこのガレット デ ロワ
(王様のガレット)。
お店のショーケースが全部このガトーの大小で埋め尽くされます。
このお菓子は面白いゲーム付き。中にフェーブと呼ばれる可愛らしい
陶器が入っていてそれが当たった人はその日一日王様や女王様!
その他の人たちを召使いのようにアゴで使うことができます。
だから紙で出来た金色の王冠もついています。

元々は1月6日にキリストが公に姿を現したとされる公現説(エピファニー)を祝う行事に食べる伝統菓子です。幾層にも折られたパイ(フィユタージュ)でアーモンド粉末をたっぷり入れて作られたクレムダマンドを包み焼き上げた黄金色の美しいお菓子。
このお菓子をさらに美しく見せるのは象徴的な切り込み模様。
この切り込みは製菓用語でレイエ、シクテと言って、仕上がりを大きく左右します。。
均等な深さ、幅、角度を保たなければ焼き上がりに線がゆがんで見栄えが
悪くなります。美しいレイエが入れられるようになればパティシエとしてちょっと一人前に近づいた気分。 でも実際は山ほどのレイエ待ちのガレットに追われていっぱいいっぱいでした。

フランスでは行事には必ずその時に食べられるお菓子がありました。
(2010.1.8)



Macaron


色によってまったく印象が
変わるマカロンパリジャン

フランスではなにげない
プチフールデュミセックの類でも
ハッとするほどおいしいです。
 今や日本でもすっかりおなじみになったマカロン。
正式な名前は、マカロンムー(柔らかいという意味)や、マカロンリス
(つるっと滑らかな、の意)、マカロンパリジャン(パリのマカロン)など。
一口にマカロンと言っても、カリカリ固いマカロンナンシー、
ココナツを使ったマカロンココ、北フランスのマカロンダミアン
などなど、フランス各地にたくさんの種類があるためです。

日本で大人気になったマカロンパリジャンは、マカロンの中でも少数派の
柔らかいマカロン。色がキレイで形がコロンと愛らしく、様々なクリームを
挟むのが特徴。いかにも昔のパリの貴族が愛した美しいお菓子、という
感じがしますね。映画「マリーアントワネット」でも効果的に登場し、
興味を持たれるきっかけとなったようです。
 現代のフランス人達もみんなこのマカロンが大好物!
良質のアーモンドパウダーと砂糖、卵白だけで作られる生地は
シンプルながらメレンゲの立て方や混ぜ方、オーブンの火加減に微妙な
コツがあり、実はなかなか作り手泣かせのお菓子でもあります。
私がフランスの製菓学校で教わった先生は、マカロンの名人。
あまりにもあっさりと作られる様子を見て、マカロンが難しいなどとは
全く感じていませんでした。うかつでした・・・。

マカロンの特徴のひとつ、ふちのギザギザはピエ(pied:足)と言います。
上手に焼けたマカロンはピエが均等にでて、ちいさなフリルをつけたようです。


 私が初めてマカロンを目にしたのは15年前のフランス。
当時は、その後の日本でこんなにもマカロンがヒットし、私自身もこんなにたくさん
作るようになるなんて思いもよりませんでした。
フランスのパティスリで売られていたマカロンは、全然気取ったお菓子じゃなく
量り売りでポンポン口に入れられるお菓子。それでもアーモンドの風味が
しっかり濃厚で、お菓子文化の奥深さを感じました。
(2009.10.20)
お菓子のひとつひとつには、それぞれ物語(背景)があります。
知らないで食べてもおいしいのですが、物語を知るとお菓子の魅力がより
身近なものになって楽しくなります。
歴史的やら社会的背景はちょっと横へ置いといて、
コラムとして気軽に読んでいただければ幸いです。