パソが修理できたので、データを見直してたら、いっぱいアップしてない文書や落書の山が出てきました。 そんなかの1つから。大田原さんの落書があるとよかったんですが、無かったんでイラストは高見さんで。 少し、練習の成果がでてきたか???眼鏡と髪型がホント慣れないです。難しい・・・。でも好きv高見さん大好きv ***
「あのバカ。」 大田原はいつも言われ慣れているセリフを口から吐き出した。 いつもなら、あいつが溜め息とも苦笑ともとれる小さな息を吐き出して言うセリフなのだが、今日は完全に立場が逆だった。 隣りに座る一つ年下の、だが自分より格段にしっかりしている後輩に声をかける。 「進、悪いが桜庭をたのむ。」 高見に殴られた桜庭は無言で床にうずくまったままだ。 らしくない。 殴った高見も。殴られた桜庭も。 いつもの二人ではなかった。 特にあいつは。 まぁ、今まで待ってた時間が長かったからな。 大田原は思う。 長すぎたのだ。 桜庭が入って5年。 それからずっと高見は桜庭を待ち続けていたんだから。 いや、出会う前から、クォーターバックのポジションを選んだその時から、ずっと待ち続けていたのだから。 「高見。」 非常口の階段に腰掛けた長身を見つけると大田原は歩み寄った。 呼ばれた高見は少し右眉を下げて笑った。 「見つかったか。」 「ここ(合宿所)は狭いからな。」 「お前にとってはどこだって狭いだろ。」 「む?そりゃそうだ。」 ガハハ・・・ッと大田原はいつもどおりの豪快な笑い声をあげた。 「心配かけてすまない。」 「それは俺に言うことじゃないだろ。」 と大田原が返すと 「そうだな。」 と高見は苦笑にも似た小さな笑みを浮かべて、軽く眼鏡を持ち上げた。 「だいたいお前は気が長すぎるんだ。で溜込みすぎる。 俺ならもっと早くに言うなり怒るなりして自分の気持ちをぶつけてるぞ。」 我慢しすぎなんだ。お前は。と続けると 「だからといって、殴っていいわけじゃないよ。しかも他の部員の前でなんて。」 「む。まぁなぁ。」 今の王城は進に支えられているように見られがちだ。 先日出たアメフト雑誌にも『進と防御だけの王城』などと書かれていた。 実力的にも、ディフェンスの要という意味でもそれは確かに事実ではある。 だが、それは個人の能力でおよぶ範疇の話だ。 アメフトは一人で勝てるものでも、出来るものでもない。 チームワークや団結力がなければ、決して勝てるものではないのだ。 ディフェンス内の団結力とオフェンス内の信頼関係、そしてデイフェンスとオフェンスの一体感、それらがあってこそ、あの過酷なトレーニングや、激しく厳しい試合をこなしていけるのだ。 そして、そのチームのムードを作りだしているのが高見や大田原だった。 明るく豪快な父=大田原と繊細ででもしっかりした優しい母=高見がいてこそ、黄金世代が卒業した後を引き継ぎ、レギュラーの大半が抜けた穴を埋め、今も強豪として存在してこれたのだ。 だからこそ・・・ 「自分の勝手な望みで後輩を殴るなんて最低だな。しかも、チームメイトの目前でなんて・・・」 「高見。」 「周囲の過度な期待に苦しめられていることを他の誰よりわかっていたつもりだったのに、所詮、俺もそのうちの一人だったんだ。 自分の夢をあいつに勝手に押しつけた。」 迷惑以外の何者でもないな。と肩をすくめ自嘲する高見は泣くのを必死で耐えているように見えた。 「お前は待ってただけじゃないか。桜庭がやる気になってくれるのを、じっと待って。」 桜庭が入って5年。 その間、ずっと、桜庭がやる気を出してくれるのを待ちつづけていたのだ。 「その間に止める機会は幾度もあった。あいつはやめられたんだ。 それなのに、俺がそれを引き伸ばしたんだ。 相談に乗るフリをして、自分のエゴのために続けるように唆して。親切な先輩を装って、本当は桜庭のためじゃなく、ただ俺のために、俺の夢のためだけに、桜庭を引きとめたんだ。 そして、5年。引き伸ばしつづけて、とうとう、桜庭にあんなセリフを言わせてしまった。あいつの5年間を無駄にしたのは、俺の・・・。」 ゴツン。 大田原の大きな拳骨が高見の頭に落ちた。 「大田原!?」 「なんでも自分のせいにするな。 あいつは・・・桜庭は、お前が引き止めなくても、やめなかったさ。人に、ただひきとめられただけで、5年もの間続けられるほどうちのチームの練習は楽じゃない。 そうでなきゃ入部者のうち五分の一まで減りゃあせん。」 そう、入部して一年も立たないうちに同級生は半数以下になる。そして、練習のつらさやレギュラーになれない焦り、同級生に置いて行かれ後輩に追い抜かれる焦りによって、中学から高校の6年間の間に、年々減って行くのだ。 それでもやめないのは、やめられないのは・・・ 「桜庭もアメフトが好きなんだよ。」 そう、桜庭も、俺も、そして高見も・・・ただただアメフトが好きなのだ。 高見は、入部した年に、その足ではクォーターバックは無理だと言われた。 それでも、ひたすら努力をつづけた。 自分の努力で鍛えられる事はすべてやった。 だが、人間の身体的な能力には限界がある。 まして、子供の頃のケガが原因で高見の足が速くなることは決してなかった。 自分の能力の限界を知った時のこいつの衝撃はどんなだっただろう? だが、高見は諦めなかった。 自分の足のことをチームメイトにも言わず、努力を続けた。 身体能力を伸ばすのに限界があるならと、その分を知能でカバーした。 相手チームのデータはもちろんのこと、自チームの選手のクセ・長所・短所。そして様々な戦略。 ハードな練習の後に、毎晩、机に向かって努力を続けていた。 どんな努力をしても、もしかしたら報われないかもしれない。 そんな過酷なスポーツだというのに、それでも、皆、止められないのだ。 「なんでこんなに好きなんだろうな?」 「ん?」 「アメフト。」 「さぁな。なんでかはわからんが、俺はこのチームが好きだよ。 監督や、進や、桜庭や、高見、おまえに会えてよかったって思ってる。」 「・・・大田原お前変な物食ったのか?」 「お前な〜!」 「あはは・・・冗談冗談。ありがとうな。」 「あぁ。で、どうする?」 「何が?」 「桜庭。」 「待つよ。」 「!?」 「5年、いや6年待ったんだ。あと数か月待てないわけがない。あいつを信じて待つよ。」 「そうか。」 「あぁ。」 高見はいつもの穏やかな笑顔を浮かべた。
空には暁の星が浮かんでいた。
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