「一緒に寝るか?」 しばらくの沈黙の後、進は突然言った。 指差されたのは2段ベットの上段。 「えっと・・・ここ2段ベットだし。1階の俺のベット空いてるし。問題ないよ?」 大体幽霊が眠れるかどうかも怪しいもんだし・・・。という言葉は飲み込んだ。 「二階で寝てみたいと言っていただろう。」 「あ、うん。」 戸惑っている俺をよそに、進はさっさと自分のベットへと上がっていく。 いくら進がホワイトナイツの中では小柄な方とはいえ、それは身長だけの話で、鍛えられた筋肉は大田原さんとタメをはる。俺はといえば、横幅はないものの、それでも一般男子と比べれば十分ガタイはいいほうだし、何より縦が長い。足を少し折り曲げて眠らないと寮のベットは少し狭い。そんな二人が二段ベットのしかも上段に二人で寝ようっていうのは冗談にしても無理がある。絶対に床が抜ける。 「でも二人じゃ・・・あ!」 そうだ!そうだった!俺幽霊だったんだ。 生身じゃないなら、身体は重なってもすり抜けるからぶつからないし、体重ももちろんないわけで・・・ってことは一緒に2階で寝るのも可能なわけだ。 「うん。じゃぁお邪魔します。」 なんだか変な感じだけど、二階の景色は気になる。 入学した時から大きかったから、二段ベットの1階が俺の定位置だった。 いつも見えるのはベットの床で。小さな進は二段ベットの1階が定位置だったから、おのずと、進の背中を見ている構図になった。 寝てる時まで俺って進の背中を見てるんだ。 そう思ったらなんだか泣きそうになったことがあるのを覚えてる。 そのせいなのか、夢の中でも、追いつけない背中だけを必死で追いかけて走ってた。 精神衛生上良くないよね?ほんと。 だから、一度でいいから、二段ベットの二階で進と同じ景色を見てみたかったんだ。 小さなはしごの階段を昇る。 初めて見る二段ベットの二階部分。 進の横に開いたスペースはほんのわずかで・・・ 「うへぇ〜狭い。」 「当たり前だ。」 「男二人は無理がない?」 「む・・・」 「寝返りもうてないよ?」 「確かに・・・ならば俺が下に行こう。」 「いや、いいよ。どうせ、俺実体ないから、進が寝返り打ってもぶつかんないしね。」 「俺は寝返りはうたん。」 「へ?」 「基本的に一度寝たところからは動かんから大丈夫だ。」 「・・・寝てる時まで律儀なんだ。」 硬直したように眠る進を想像してちょっと吹き出した。 「なんだ?」 「なんでもない。」 「なんでもないなら笑うな。」 進の太い眉が不機嫌そうに寄せられる。 「あはは・・・ごめんごめん。」 じゃぁ、遠慮なく。と、ベットにあがりこんだ。 広さは自分のベットと同じ(あたりまえか)だけど、目の前に迫るのはベットの床じゃなくって天井。 電気が近いからか、1階と違ってかなり明るい。 「あはは、天井が歩ける。」 天井に足の裏をくっつけて、てくてくと歩いてみせると、進は何が嬉しいのかと不思議そうに聞いた。 「面白いか?」 「うん。だって、俺の目の前って、進の寝てる床だからさ、蹴るわけにも行かないだろ?」 「蹴られたら困るな。」 まじめに答える進に、また思わず吹き出してしまう。進はといえば、そんな俺を不思議そうに横目で見てる。 それにしても・・・ 「明るいね。」 「うむ?」 「もしかして、俺が夜中に帰ってきて電気つけたときって、ものすごく眩しかったんじゃ・・・?」 「いや。カーテンを締めているし、基本的に一度眠ったら決まった時間までは目を覚まさないから大丈夫だ。」 「ならよかった。」 進の隣で桜庭は微笑んだ。
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