ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"

 ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
ベルナルト・ハイティンク ロンドン交響楽団 2005年
Bernard Haitink London Symphony Orchestra

ハイティンクの演奏は、1987年のコンセルトヘボウとの録音があるのに、再度ライブ盤での収録だ。仰天するほど乾いた硬いデッドな音で登場し、録音状態はあまり芳しくない。また、室内楽的で硬くて細め。抑制が効きすぎて老年になるとこうなるかのという感じがする。余分な脂身を落としたら、こんな感じになるのだろうか。痩せていても密度は高いと感じる。スピードがあり、流れがある。ひ弱そうに見えてがっしりしている。第2楽章は、さっぱりした悲しみの表現で、達観し、痛みを痛みと表現しないストイックな感じ。第3楽章は、迫力に欠けてしまうがホルンの三重奏は美しい。コンパクトだが小刻みで機能的。第4楽章は、壮大なコーダを期待していると肩すかしを食らう。機能的だが、厚みのないベジタリアンのようなエロイカで、肉食べたいっ。ここまで軽めに仕上げなくても。ティンパニーばかり聞こえて、弦がさっぱり~ ヴァイオリンからコントラバスまでホントにいるの? 木管もいるの?って感じで、音の重なり具体にモノ足らなさを感じてしまった。ハイティンクさんの演奏は、質実剛健で誠実だと思っている。世評は中庸とか言われるけれど、むしろ基準になるような演奏だと思っていた。75歳頃の演奏だと思うが、あまりにストイックで脂が抜けきって。う~ん、壮年のエネルギッシュなエロイカが、やっぱり聴きたい。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
ダニエル・バレンボイム シュターツカペレ・ベルリン 1999年
Daniel Barenboim Sächsische Staatskapelle Berlin (Staatskapelle Berlin)

バレンボイムの演奏は、元気の良い威勢の良い演奏で驚き。悪く言えば力任せの演奏で、ちょっとひいてしまった。スピード感はあるが、バンバンバンと鳴ってくるティンパニーの大きさ。木管のノビの少なさ。これでは、専制君主のような乱暴者の英雄だ。懐の大きさや寛容さ、偉大さなど、姿形もないと言いたい感じ。まあ、ロックのような英雄も嫌いではないのだが、いかんせん繊細さが見受けられない。ピリオドをまねているのか、それともフルベンさんをイメージしているのか解らないけれど、音が炸裂し続けて、紋切り調の荒々しい演奏だと思う。第2楽章は、超遅め。ボソボソ、ぷつりぷつりと旋律が切れ、隙間だらけに見えてくる。豊かな響きだと良いのだが、音に膨らみがないので響きに余裕も生まれない。第3楽章は、勢いで行ってしまうという典型的な演奏スタイルかもしれない。こんな演奏タイプのオケ、どこかで聴いた感じ。大きな音量になると威勢が良いのだが、緩楽章になると粗が見えてくる感じがする。音量調節だけで走っていく感じがするのだ。定期演奏会で聴く地元オケの方が、ずーっと巧い。(と、心の何処かでつぶやいてしまった。)まるで、路線バスに乗っているような感じ。前に後ろに、ぎこちないような気がする。弾力や厚み感が少ないので硬い椅子にずーっと座っている感じ。遅くなると音が残らず~ ライブ盤かと思ったら違っていた。交響曲全集を2ヶ月でセッション録音しているものだった。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
ヴォルフガング・サヴァリッシュ コンセルトヘボウ 1993年
Wolfgang Sawallisch
Royal Concertgebouw Orchestra

サヴァリッシュの演奏は、瑞々しく、ふくよかでバランスがとても良い。噛みしめるように聴きたい演奏だ。冒頭から馥郁した、かぐわしい音が鳴り響く。たった2つの音で参りましたって感じ。オケがコンセルトヘボウっていうこともあるのだろうが、期待どおりのまろやかな響き。勇壮な弦、金管が合わさった場面での馬力、木管の透明度の高い音。録音状態も極めて良い。情報量の多い、豊かな響きを余すところなく伝えてくれる。特に、弦の響きが心地良く聞こえる。コンセルトベボウの響きは、木質的だと言うが、それ以上、涼しげな滝の近くに入り込んだ感じがする。マイナスイオンたっぷりの演奏だ。フルートも、弦のピチカートも惚れ惚れしちゃう。金管のまろやかな歯切れの良さは、息を呑んでしまった。第1楽章だけで大絶賛。特段、何もしていないように聞こえるが、いやいや格調も高く、なかなかに熱い演奏だとお見受けしました。
第2楽章は、まず、オーボエが格調高く歌う。ファゴットもフルートも全ての木管のフレーズが、美しい。和音を構成する音が、調和し整っている。後半は、ティンパニーが、ごろごろ~っと鳴り勇壮さが加わる。広がりの大きさと、木管の透明さ、自然界の雄大さが、堂々と描かれているような感じだ。この楽章は、葬送だと思っていたし、英雄の死を悼むような痛恨さがあるように思っていたが、サヴァリッシュ盤は、人の匂いがしない。透明度が高く、空気の澄んだ世界観である。白磁・青磁の世界というか、辺りを払う凛とした空気感が漂っている。主人公は人ではない。もはや、神々の住む世界という感じだ。
サヴァリッシュ盤においては、英雄という副題は必要ない。柔軟で女性的なイメージだが、堂々として、若くて瑞々しく、耳のご馳走だ。大穴盤である。これで中庸、ツマランって言ってしまうと大間違いじゃーないかとワタシは思う。んじゃ、アナタは、どんな演奏が好きなのって、笑いをかみ殺して問いかけたくなってしまう。ふふふっ。ワタシ、これ大好きですねえ~ 当分他の演奏が、聴けません。


 ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
クラウス・テンシュテット ロンドン・フィル 1991年
Klaus Tennstedt London Philharmonic Orchestra

テンシュテットさんの演奏は、ライブならではの熱い、熱い、熱気の籠もった狂気迫る演奏だ。特に第2楽章は凄い。聴いたCDのカップリングが、英雄とムソルグスキー「禿げ山の一夜」なのだが、この禿山も、超恐ろしく眠れない一夜である。さて、英雄の方は、スポーティで軽快、ノリ感の良い演奏だ。ビートが効いてというよりは、弦のカシカシした音、ンタラ ラッタッタ~という小節を回した転がり方の面白い演奏で、弦の弓の返しが見えるようだ。軽めだがリズミカルに、ポップに弾んで、たららら らら たららら らららら~と、思わず歌える英雄となっている。
畳みかけが巧く、次から次へとフレーズが渡っていく。気づかない自然なうねる波、ライブならではの熱さを劇中劇のように繰り出していく。スパイスはティンパニーで、爆ぜるようにダダダダンっと一発入ってくる。花火のようにスパークしているのだ。絶望の淵に立たされているような感覚だ。凍りつくような世界が広がり、諦めきれない欲望が渦巻いているような気もする。逞しさと可愛らしさを兼ね備えた、聴き応え満載の演奏だ。ノリ感も良く、ノリノリ感そのままに走って第4楽章に間髪入れずに突入する。とりわけ良い演奏とは思わないが、迫力負けというところだろうか。思わず苦笑いしてしまった。ライブ盤なので最後に拍手が入る。


 ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団 1989年
Georg Solti Chicago Symphony Orchestra

ショルティの演奏は、彫像的でリズミカル。引き絞った矢が、まるで解き放たれたような冒頭の出だし。筋肉質で逞しい腕をイメージしちゃう。そのくせ流麗で、ミケランジェロの彫刻でも眺めている感じがする。大理石の白い磨かれた石の彫刻、そうまるでダビデ像のようだ。
3拍子で始まる冒頭1音の和音(2小節)で、これから演奏されるエロイカの全体イメージが決まった気がする。響きが豊かで、それぞれソロが合わさっていくところのハーモニーや弦の跳ねる調子が、快感すぎる。木管の付点のリズムにほろ酔い気分に。それにつられた弦が、ちょっと上向きにエネルギーを放出して、低弦の響きも、硬いくせに残響が柔らかい。ヴァイオリンが、駆け上がっていくところでの低弦のサポートも素敵だ。なんて伸びやかで開放的なのだろう。
第3楽章のホルンの響きにもやられた。角笛風のように吹かれている。スケールが大きく包み込むような暖かさ、器の大きさをじる演奏だ。第4楽章では、劇の幕開けのような展開となっている。主題は、「プロメテウスの創造」というバレエ音楽から転用しており、その変奏曲となっている。「プロメテウスの創造」って序曲だけ有名で、バレエ音楽が元になっているので舞曲風。ちょっぴり俗っぽく歌謡風で、チャーミングなのである。なによりリズム感が良く、各パートが楽しげに響いていることが、聴き手に訴えかけてくる。これは点数高いっ。単にいかつく骨太っていうわけではなく、綺麗な筋肉がみごとな造形を造っている。シンコペーションや付点のリズムが、ショルティらしく快活に処理されている。トータルで心地良いエネルギー移動に感じる。この盤を聴いてしまうと、しばらく他の演奏が聴けないや。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1987年
Riccardo Muti Philadelphia Orchestra

ムーティの演奏は、ひとことで言うと流麗だ。リズムは軽快、シャキ感があり、パンチも効いて、明るくて艶もある。颯爽としすぎるほど颯爽としてて格好の良い演奏だ。聴いてて、うっひょ~っと変な声が出てしまう。1985年から88年頃の交響曲全集の1枚で、古楽器を使った演奏やピリオド演奏とは異なるし、堅牢な演奏を求める方には、ベクトルが違うためお薦めしない。
言葉は悪いが快感っ!開放的な明るい響きと弾むテンポには、強い推進力があり彩りも豊か。弾む付点リズムに色香が添えられ、颯爽と踊るような英雄となっている。楽器によって異なる質感が、何層にも重なってて聞こえてくるので、ユニゾンでも立体的に響くし、特に、木管の明るい音が特徴になるだろうか。
スケルツォの第3楽章が真骨頂だ。弾んで、弾んで~ オペラの一節を聴いているかのようで、リズムが優先という方には、楽しんでいただけると思う。草書体だし、リズム第一で歌い、カラダを揺らして英雄を聴くというなら断然お薦めだが、まあ、少数だろうと思う。若い年齢層の方で、まあ、いちどベートーヴェンの英雄でも聴こうかという方ににはお薦め。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
クリストファー・ホグウッド エンシェント室内管弦楽団 1985年
Christopher Hogwood Academy of Ancient Music

ホグウッドの演奏は、軽快で爽やか。夏の少女のようなキュートさに微笑んでしまう。当時、古楽器演奏スタイルの先駆け的存在の演奏だった。冒頭のフレーズの鮮やかさに衝撃を覚える。なんて爽やかで華やか。若くて活き活きしてて嬉しくなる。軽い衝撃だ。さほど速いというわけではないのだが、軽やかでスキップしていくような軽快さ、弦の細かな動きと管楽器の軽快で明るい響きがあいまって、新鮮で楽しい雰囲気を周りにふりまいて走って行く。旋律のなかで、変わったフレーズが聞こえてくる。普段聴かない楽譜のようで~ 通奏低音パートを復元した演奏と言われている。
第2楽章は、さすがに軽すぎて、だは。重々しい打楽器のフレーズ、ダンダンと打ち込まれるティンパニーの響き、重量のある弦の響きが足らない。重低音が欲しくなってしまう。その代わり、中音域、いつも聞こえてこない木管のフレーズが、こんな風に鳴っているのかと初めて知る。第3楽章のホルン、ベーム盤のようにエレガントというわけにはいかない。が、古楽器のホルンって~鳴らすのとっても難しいと聴きました。第4楽章は、英雄というよりも、田舎のおばちゃんたちと思ってしまう。それは冗談だが、エロイカの主題は、夏への幕開け主題のよう。爽やかな勢い、軽快な躍動感、厳つい演奏は他盤で聴いてくださいね。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
クリストフ・フォン・ドホナーニ クリーヴランド管弦楽団 1983年
Christoph von Dohnányi The Cleveland Orchestra

ドホナーニの演奏は、キリッと引き締まった筋肉質な演奏で、いろんな旋律が聞こえてきて情報が多い。ドホナーニさんは、クリーヴランド管を振って、1983年から88年にかけてベートーヴェンの交響曲全集を完成していた。とてもスキッ、きりりっと引き締まった演奏である。冒頭の「ふぁっ ふぁっ」という音からして違う。このたった2つの音を聞くだけで聞き込んでいる方なら、英雄の全容が思い描けるほどではないだろうか。ベートーヴェンの交響曲は、運命しかり、英雄しかり、出だしが、とっても大事なのだ。この2つの音で、アタリと思うかハズレだと思うか、どっちかだ思う。このドホナーニ盤は大当たりという感じ。
ドホナーニさんとクリーヴランド管の演奏CDは、ブラームスやドヴォルザークなどがある。たった5年間だけのシェフだったが名演が多い。シューマンの交響曲もあった。いずれも、端麗辛口傾向の演奏で、ピリオドのような引き締まり方である。発売された当時はCDの全盛期なので、他にも選択の余地が多かったので。あまり目立つ存在ではなかったように思う。改めて聴いて、贅肉を削ぎ落としピュアさが感じられ、すきっとしてて熱く鳴っているので、演奏家さんたちが聴くと嬉しくなるのではないだろうか。いわゆる玄人受けするような演奏のように思う。複数の旋律に、通常なら主従があるが、ここでは対等に扱って調和を取っている。それぞれの楽器がマスを構成し、同じぐらいの音量で演奏している。なので、情報量の多い演奏だ。いつもなら聞こえない音が、あちこちから聞こえてきて新鮮に聞こる。


 ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
オトマール・スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン 1980年
Otmar Suitner Sächsische Staatskapelle Berlin (Staatskapelle Berlin)

録音状態は良い。細身で軽量級だが小気味よくリズミカル、精緻なアンサンブル。思わず引きこまれる響きがある。幸せ感が漂うエロイカの演奏だ。音色も綺麗で歌心もある。最初は、弦が細くシャキシャキしすぎかと思ったが、何度か聴いているうちにのめり込んでしまった。先に聴いたのが、ケンペとミュンヘン・フィルの演奏だったので、あまりの違いに驚いた。すいすいとフレーズを歌いながら、優雅に泳いでいく感じがする。滋味なのだが木質感があり、響きが立体的だ。柔らかすぎずほどよい硬さ、これが中庸という言葉で片付けちゃうのは、もったいないと思う。合奏力とでも言おうか、重層で横の流れも縦の線も感じられる楽しさ。オケの醍醐味が満載のような気がする。抒情的かつ叙事詩的なスケール感もあり、第2楽章は、葬送行進曲の重々しい悲痛な響きではなく、既に天使になって召されたという感じで、暖かくふんわりした空気感を漂わす。第3楽章は、ひとえに木管群の美しい音色に耳を傾けたい。ついに、第4楽章では、まるで妖精が踊るような軽妙さで、前半部分は、メンデルスゾーンのように聞こえる。真夏の夜の夢と言われても、そのまま納得してしまいそう。他の演奏は、重量感がありガンガンやってしまうが、スウィトナーの場合は、モーツァルトとかメンデルスゾーンのような雰囲気だ。特に、木管は絶品。押しの強い演奏に疲れたときはお薦めです。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
ヘルベルト・ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン 1976年
Herbert Blomstedt
Sächsische Staatskapelle Dresden(Staatskapelle Dresden)

ブロムシュテットの演奏は、まろやかに優しく包み込まれるような流麗なエロイカだ。歯切れ良く推進力もあって美しい。芯はあるが柔らかい音色で、かなり明るめに響きわたる。ルカ教会での録音で残響もあり、とっても心地良い。幾分細身だが、テンポは速めで、リズム感も良いし流麗だ。「英雄」にしては、ちょっと軽めでスイスイしているかもしれないが、木管の弱音部分に透き通るような美しさがある。筋肉逞しい男性の彫刻風ではなく女性っぽい。ティンパニーは、おとなしいかと思たった、なかなか~迫力がある。綺麗さっぱり切り落とすという感じで語尾は強め。女性っぽい雰囲気を持っていながら、スッパリ落として行く。そのくせ、弦を主体にしたフレーズは、しなやかに歌ってオーソドックス。爽やかでスマート。木管のフレーズが美しく歌われるので、全体的に響きが美しい。第2楽章は、葬送行進曲というイメージがせず、未来を予感させるような響きが広がってくる。
第3楽章のスケルツォは、リズミカルで軽快だ。ホルンの三重奏は、ここだけでも聴き応えの美音。第4楽章の冒頭は、まるで滝の飛沫を見ているようで優美だ。ブロムシュテットさんの演奏には、歌心がある。強いエネルギーを放出している盤ではないが、ナチュラル、ニュートラル的な演奏でありながら、楽しげで、つられてフレーズと一緒に鼻歌が出てしまう。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
カール・ベーム ウィーン・フィル 1972年
Karl Böhm Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

ベームの演奏は、 あまりにも優美でうっとり。時代遅れ的な演奏かもしれないが、やっぱ優美さを求めた貴重な時代の演奏。冒頭から、驚くほど柔らかい出だし。ベートーヴェンという厳めしい、がっしりしたイメージを持っていたのだが、ウィーン・フィルの演奏だからか響きが柔らかく広がっていく。残響にもうっとり。テンポはゆったり。金管と木管の響きが、まるでモーツァルトのように美しく優美な曲線を描いている。ふわ~っと弦が動いているのが見えるかのよう。弦の激しい動きも、身じろぎもせず、滑らかに流麗に転がっていく。クラリネットとフルートに受け渡しされていくフレーズは、驚くほどソフトだ。さすがVPOの木管の響きは華やかだ。なんて柔らかい羽毛のような英雄なのだろう。艶もあり、鮮やか華やか。低弦の響きにも、適度に重厚さがあり、みごとに響いている。クリップスさんの指揮するモーツァルトに匹敵する演奏だろうか。英雄という副題に、左右されるわけではないが、堂々と威圧的な楽曲だと思っていたイメージが崩れた。ちょっと優美すぎる演奏かもしれないし、反動で、もっと男臭いエロイカが聴きたい~っと叫ぶかもしれないが、贅沢な美音には抗しがたいものがある。


 ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
ルドルフ・ケンペ ミュンヘン・フィル 1972年
Rudolf Kempe Münchner Philharmoniker (Munich Philharmonic)

ケンペの演奏は、ごつい演奏で、突き一本槍のようにぐいぐい鋭く突いてくる。最後のコーダは、ガツンと殴られた感じ。同じ年に録音されたベーム盤とは異なり、冒頭から一直線、チャチャチャチャっと細かい弦の動きが強い。金管は小気味よくキリリ~っと吹かれている。低弦のボンボンとした響きで、厚みのある太いゴッツいイメージがする。槍を持ってぐいーっと走っていくようなテンションの高さ。目もくれず突き進む怖さがあり、ひたむき過ぎて怖い。英雄というより命がけの武士である。フレージングが短めで、上段に構えず、フェンシングのように突いてくる感じ。語尾が強く、シンコペーションや付点のリズムは、快活さより突き一本。旋律は、山型のフレーズが少ない。相撲で例えるなら張り手一本って感じだろうか。第3楽章のホルンの三重奏は、せわしなく、和音の持つ美しさに余裕が感じられない。ラストは、面食らうほどテンポを落として、コーダに突入してくるが、堂々とした演奏で、どや顔で終わる。


■ ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven: Symphony No.3 "Eroica"
オットー・クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 1959年
Otto Klemperer Philharmonia Orchestra of London

幾分、軽めに仕上がっており、弦のシャキシャキとした響きが大変心地良い演奏だ。リマスタリングの影響かもしれないが、低弦の響きが薄めだが瑞々しい。古くさい録音なのは仕方ないのだけど、雑音がないし難癖をつけるのは止めたい。クレンペラーさんの演奏は、構成力、安定感を武器、あるので、耳が足りない音を、無意識に補ってしまっているところもあるのかもしれず。きと評価しづらいですけど。特に、金管の威力が少なめで、もっと低い音域が欲しいというのがホンネです。


 ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
1957年 モントゥー ウィーン・フィル Dec 未聴
1958年 ワルター コロンビア交響楽団 SC 未聴
1959年 コンヴィチュニー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 DS 未聴
1959年 クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 EMI
1965年 S=イッセルシュテット ウィーン・フィル Dec 未聴
1971年 クーベリック ベルリン・フィル G 未聴
1972年 ケンペ ミュンヘン・フィル EMI 
1972年 ベーム ウィーン・フィル DG 
1973年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec 未聴
1973年 マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 V
1976年 ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン DS
1976年 ヨッフム ロンドン交響楽団 EMI 未聴
1977年 カラヤン ベルリン・フィル G 未聴
1980年 スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン De
1982年 カラヤン ベルリン・フィル G 未聴
1983年 ドホナーニ クリーヴランド管弦楽団 Telarc 
1985年 ヴァント 北ドイツ放送交響楽団 R 未聴
1985年 アバド ウィーン・フィル G 未聴
1985年 ホグウッド エンシェント室内管弦楽団 OL
1987年 ブリュッヘン 18世紀オーケストラ Ph 未聴
1987年 ハイティンク コンセルトヘボウ Ph 未聴
1987年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 EMI
1987年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI 未聴
1987年 シュタイン バンベルグ交響楽団 R 未聴
1989年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec 
1991年 C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン Ph 未聴
1991年 テンシュテット ロンドン・フィル EMI
1992年 ガーディナー オルケストル・レヴォリューショネル Ar 未聴
1993年 サヴァリッシュ コンセルトヘボウ EMI
1993年 バレンボイム シュターツカペレ・ベルリン T 
2002年 ラトル ウィーン・フィル EMI 未聴
2005年 ハイティンク ロンドン交響楽団(ライブ)Lso Live
2006年 インマゼール アニマ・エテルナ Zig-zag


 

YouTubeでの視聴

ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
Beethoven Symphony No. 3 in E-Flat Major, Op. 55 "Eroica"
シュターツカペレ・ドレスデン - トピック ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン
Staatskapelle Dresden - Topic
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=M9vfZWHe_s8
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=zoKXwARTe8c
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=4-S9nNBSEsQ
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=dYVUwv4fOcQ

Beethoven Symphony No. 3 in E-Flat Major, Op. 55 "Eroica"
ヴォルフガング・サヴァリッシュ - トピック  サヴァリッシュ コンセルトヘボウ
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=M17aQzbX1x0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=e5JR-PYj2yM
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jSptxh9cjls
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=wdbwKDNaBUk

Beethoven: Symphony No. 3 in E-Flat Major, Op. 55 "Eroica"
シカゴ交響楽団 - トピック  ショルティ シカゴ響
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=ZUH8gxLOQm4
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=JXr0fQq-uBA
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=SR2Ym7B0V50
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=RM70MpaxUJA

Beethoven: Symphony No.3 In E Flat, Op.55 -"Eroica"
チャンネル:Herbert von Karajan ベーム ウィーン・フィル
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jdf9mtfMuS8
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=N4uG4SjvBgY
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=SyfO-VX0KUU
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=I-RwwWs3RvA

Symphony No. 3 in E-flat, Op. 55, "Eroica:" III. Scherzo: Allegro vivace
クリーヴランド管弦楽団 - トピック クリストフ・フォン・ドホナーニ クリーヴランド管
第3楽章のみ掲載します。
https://www.youtube.com/watch?v=CB1c6856YZs






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