ベートーヴェン 交響曲第7番 Beethoven: Symphony No.7

 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
サイモン・ラトル ウィーン・フィル 2002年
Simon Rattle Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

ラトルさんの演奏は、これは、再度聞き直さないと~ あっけにとられるほどに驚いてしまった演奏だ。これが21世紀に演奏されるベートーヴェンになるのかもしれない。聞き慣れた冒頭のフレーズは、スピードと軽やかさ、そして頂点に立つ前にすっと力を抜いて、さぁ~っと引いていく変わり身の変化に驚かされる。その後も、全体にふわっとしているというか、カラダが液体というか、自由自在に姿を変えられるというか、打ち寄せる波、さっと引いていく波のように、余計な重力が無い。
確固たる自信で、堂々とガシガシ硬めに響く演奏を多く聴いてきたためか、えっ へっ? 拍子抜けしてしまった。まるで、太極拳をしているかのように、浅く深くコントロールされた息づかい、常に呼吸を整えているようだ。また、見通しが良いという言葉では表現できないような新鮮な音が浮かび上がる。また、間合いのなかで深い息を吸って上昇するのではなく、いたって普通に一気に昇っていく。弦のフレーズも、間合いを十分にとって跳躍するのではなく、ほぼ、間髪入れず、その場で跳躍する感じ。呼吸法が他の人と違うのかもしれない。付点のリズムは、スリリングだが決して熱くなりきらないところがミソ。フレーズのなかの直線的なところ、曲線的のところを明確に区分し、曲線を描くなら、これぐらい優美にしなきゃ~と言わんばかりに大きな曲線を描く。特に、下降線が美しい。このなんとも言えない力の抜き加減に、むははぁぁ~ どこか不思議ちゃんの演奏である。


■ ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
ジョン・エリオット・ガーディナー オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク(ORR)1992年
John Eliot Gardiner Orchestre Revolutionnaire et Romantique

ガーディナーの演奏は、キビキビとした活きの良い演奏だ。ベートーヴェンが、暗くて固くて重くて難しくて、嫌だ~っという人にはお薦めできるが、運動機能重視なので、愉悦性にはちょっぴり乏しい。
冒頭の迫力は、オリジナル楽器(ピリオド楽器、演奏)とは思えないほど、パンっと勢いよく叩かれている。ひ弱な楽器だと思っていたので想定外。音色も明るい。弦の上昇音階にも力がある。ティンパニーの音をアクセントにして、テンポは速いし、軽やかにスムーズに奏でられている。コントラバスの低い響きに、弦がガシガシ奏でる演奏が多いが、音の層が薄め。でも貧相ではない。オリジナル楽器だというので渋い音が出てくるとイメージしていたが、明るい。特に管が明るい。それにフルートの音色が抜群に良い。爽やかに巻き巻き踊っているようだ。語尾がクルリンっと跳ねている。奥行きがあり立体的に響いている。第2楽章も、弦に艶があり明るい開放的な響きなので、美しい宗教曲を聴いているよう。第3楽章も、しなやか。ティンパニーと弦の刻みは硬め。木管は柔らかめ。この柔と剛のサンドウィッチ状態が好ましい。まあだけど、速い速い。もう少しエレガントに踊っていただいても良いのにと恨めしい気分に。自動振り子状態を楽しむ雰囲気ではなかった。第4楽章は、見通しのよく、普段聞こえない中音域のフレーズが良く聞こえてくる。上品な和音が、それを気づかせてくれた。弦が合奏するところのパワーは物足りないが、瑞々しく清潔で、音色が明るいことから、若い情熱の伊吹のようなモノを感じることができる。複眼的で、演出上手。ライブの延長線のようなテンションの高さもあり、愉悦性は低いものの運動機能が良い演奏なので、聴き応えがある。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
クリスティアン・ティーレマン フィルハーモニア管弦楽団 1996年
Christian Thielemann Philharmonia Orchestra of London

ティーレマンさんの演奏は個性的。木管のフレーズが、段々と遅くなり止まるかのようなテンポで、弱音になって主題を繰り返す。あまりの遅さにのけぞってしまう。ティンパニーを打ち込み、階段を上り下りしながらスピードアップするのかと思ったが、さほどあがらず。テンポ設定の異様さに船酔いした気分に。デビュー盤で、超変わり種の演奏のためお蔵入り状態だったのだが、今聴いても第一印象と、さほど変わらない。どうも相性が悪いようだ。モダン楽器を使いながら、弦にはピリオド風の演奏のように仕上げている。金管に対しては、ワザとぶっきらぼうに、短く汚く吐き出すように吹かせている気がする。そうかと思えば、ゴリゴリ~ごごごぉ~っと低音を怖いぐらいに響かせる。副旋律を、これ見よがしに浮かばせているような気がして違和感を覚える。
勝手な思い込みかもしれないが、演出過剰に演奏しているというか、前時代の指揮者の良いとこどりを組み合わせた演奏というか。(フルヴェン+クレンペラー+クナ+カラヤン)/4= って感じに聞こえる。露骨すぎて大笑いしそう。個人的には、この演奏は阿漕な感じで鼻につく。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
ヴォルフガング・サヴァリッシュ コンセルトヘボウ 1991年
Wolfgang Sawallisch Royal Concertgebouw Orchestra

サヴァリッシュさんの演奏は、ふくよかでバランスが良く、この豊穣感はぜひ噛みしめるように味わいたいもの。冒頭の響きからして、おほほぉ~っ、悲鳴をあげたくなるほど美しい響きで充満している。久々に嬉しくなる馥郁たる香りの高い響きで舞いあがってしまった。コンセルトヘボウの常套句のように言われ、讃えられる木質感のある豊穣な響きは、ホント嬉しい限り。テンポは、ゆったり繊細で控えめ、落ち着き払った礼儀正しい演奏といえるだろうか。序奏部分が終わって、主部に入ってくると、なんと繊細なフルートの響きだろう。弦の受け答えと共に隅々まで神経が行き届いて、そして走っていく。アスリートのしなやかな体躯を見ているようで、走る前の準備から加速して行く過程を、つぶさに見ているかのようだ。清しく晴れやか。
ティンパニーの打音も適切で、大きくもなく小さくもなく、爽やかで輪郭のはっきりした構成を下支えている。弦も木管もとても均整の取れたバランスの良い響きで、むふふぅ~ シアワセ。低弦の蠢く響き、ごごごぉ~っという響きは、堅くゴリゴリしてても良い感じはするが、いやコンセルトヘボウを聴くなら豊穣感だろうと思う。
第2楽章は、物悲しい息づかいを感じるほどに、弦のささやく響きは淡々としている。リズムの処理は軽めにしてあるようだ。フレーズの語尾がとても美しい。爪先まで神経が行き届いているというか、ピシッとノビている。こうでなくっちゃー。格調の高い美意識の基本を見ている感じがする。佇まいを感じさせる演奏だとも思う。感情を高ぶらせて演奏しなくても、姿を見ているだけで絵になる、そんな演奏だといえるだろうか。第3楽章は、軽やかな木管の響きが天空に舞う感じで、とても美しい。「たぁ~ら たぁ~ら」のフレーズが柔らかいのに腰があり、柳の枝を見ているみたい。木管のリズムと響きを楽しむことに耳を傾けた方が良いかもしれない。ごごごぉ~っと、一斉に強奏するところも、ファゴットの響き、金管の音も、しっかりブレンドされてて、生きる鞴(ふいご)のように聞こえちゃう。ラストの楽章も、弦の艶ぽっさ、なめらかさ、中音域が厚めでしっとり。端正で礼儀正しい演奏に物足らなさを感じられる方もおられるかもしれないが、いろんな演奏を聴いて、また戻ってきて欲しい。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
クラウディオ・アバド ウィーン・フィル 1987年
Claudio Abbado Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

冒頭こそ全員で強く出てくるものの、その後、天女の羽衣みたいに柔らかく、軽やかに演奏される。弾力性があり、のびやかに旋律をのぼりっていく。低弦もしなやかで、その軽やかなステップにまず驚かされる。録音のせいかもしれないが、幾分、高音域が勝って聞こえ、ソフトフォーカス気味。序奏の後、付点音符が刻まれていくが、全体的に硬くないので腰砕け風に聞こえてしまう。明瞭に構築されていないようで、音が混濁する嫌いもある。低弦に力がなく、圧倒的に迫ってくるモノが少ないのでインパクトは弱め。全体的に優しく、のびやかな歌いまわしという感じだ。なめらかに流れていくのだが、ちょっとコクが足らない。
第2楽章も、このうえなく綺麗なのだが、柔らかすぎて表面的に感じてしまった。エレガントで、弦の柔らかさが強調される。低弦が、もう少し重みを持って活躍してくれたら幅が出るような気がするのだが、ちょっと残念。第3楽章はこの演奏の白眉だ。アバドさんの演奏がこの楽章に生きている気がする。溜息が出そうなほどエレガントで、まるでウィンナーワルツのように聞こえる。女性の溜息のように聞こえてくるフレーズもあるし、恋の語らいのようにオーボエも歌っている。第4楽章では、「たた~たららら たた~たららら たた~たららら らししー」のフレーズの語尾がかなり長い。尻尾が長い猫のようで、これが回転軸のようになって踊る。これが優雅さの秘訣だね。まるで、足のすら~っと長い西洋猫の尻尾みたい。最終楽章は、エキサイトする。テンションがあがってティンパニーの連打の強烈な響きは、まるで鬼の形相のようだ。思わず、ひぃーっとドンビキ。品を保ちつつ低弦がうねる。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
ルドルフ・ケンペ ミュンヘン・フィル 1971年
Rudolf Kempe Münchener Philharmoniker (Munich Philharmonic)

ケンペの演奏は、最終楽章に火柱が立つ。これは強烈っ。原盤は、EMIだが、ワタシがCDを所有した際には廃盤状態で、全集は「Disky」より出ていた。冒頭、明るい音色で出てきたが、余韻がものすごく続く。そしてメチャ遅い。このテンポ設定に、のけぞるほど驚いた。この後、金管がティンパニーを伴ってと吹いていくのだが、弦の上昇がある。これが、また相当にテンポが遅い。長い階段が、何度か繰り返されるのだが、永遠に続くかと思うほど、ガシガシガシと演奏し続けるのだ。それもテンポを変えず。この間3分25秒なり。はあ。なんぼど長いんやろ。この階段。しかし、息が詰まるかと思ったら、そうでもないんだよねえ。アバドのようなふわふわ感なんぞカケラもないが、伸びが良いことと、ほどよく余韻があるため、息苦しいわけではない。それでも、やっぱ長い。フルートの「ぱぱ~ ぱぱ~っ」が聞こえてきて、5分10秒頃から、ようやく通常の演奏に近くなる。付点のテンポは歯切れが良もので、とても滑らか。全体的に明るい伸びやかな音色で、特に金管の音色が良いようだ。それにしても、どうして冒頭部分だけ、あんなに遅くしたんでしょうねえ。推進力はあるし、のびやかさを感じるし良いんだよねえ。あの冒頭さえ、超スローでなきゃねえ。あの遅さは、すごい突飛な表現だ。
第2楽章は、ひらっぺったい感じがするのに良い。フレージングに膨らみがある。第3楽章は、テンポを几帳面に刻み、語尾にアクセントを設けて振り子のようにリズミカルに動く。テンポは遅めだが、アクセントがあるためリズミカルに聞こえる。第4楽章も、リズミカルで、なめらかに、たたた~ ららら~ の最後にアクセントを強く持ってきて、振り子状態に仕上げている。地味だが流麗に聞こえる。金管が入ってくると回転率があがり、それでも平凡だとなめていたら、最後、超重低音がド迫力で迫ってくる。コントラバスが、「どーふぁ どーふぁ」と巨大な鞴を吹き始め、以降、どーっ どーっ ぐわーっ バーン バーン。 最後は、まるで火柱が立ち上ったようになってしまった。ひぇ~っこわっ。
コントラバスの音が、まるで鍛冶場の大きな鞴(ふいご)のように動き、風を送りつける。燃え上がる火種はあったのだろうが、熱き思いは隠れていたらしい。恐れおののく。


  ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
ラファエル・クーベリック ウィーン・フィル 1974年
Rafael Kubelik Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

クーベリックさんのベートーヴェン交響曲全集は、9つのオケと録音した(オケがバラバラ)全集の1枚で、7番のオケはウィーン・フィルである。録音状態は良く静寂で透き通るような演奏だ。テンポは遅めで揺らさず、幾分小粒だが歯ごたえがある。流麗なウィーン・フィルというイメージより、カッチリした楷書体。透明度の高い響きで、清々しい空気感を漂わせる。冬の凜とした空気感というか背筋がピンっとするような演奏。第2楽章は、まるで宗教音楽のような雰囲気がある。レクイエムのような感じがするので、驚いてしまった。中間部から暖かさを感じ、木管が天使の羽根のよう。降りてくるフレーズでは、珍しく弦の生き生きとした艶を感じる。音が小粒で、コロコロしているが、リズミカルではなく、控えめに輝いている感じ。総体的に、レガートが効いて色っぽく、ホルンはもちろん音色は良いし、中間音域がよく響いている。最終楽章を、酒に酔ったおっさんが踊ったようなディオニソス風の7番をイメージすると、完全に真逆なので、これじゃ~盛り上がらないと怒る人もいるかも。ちょっと抑制が効きすぎたかもしれないですねえ。地熱のような熱っぽさ。端麗辛口、静かに瞑想するような気配が漂う。他盤とは異なる空気感だ。
ちなみに、クーベリックのベートーヴェン全集は、次のオケで構成されている。
第1番 ロンドン交響楽団、第2番 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、第3番 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、第4番 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、第5番 ボストン交響楽団、第6番 パリ管弦楽団、第7番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、第8番 クリーヴランド管弦楽団、第9番 バイエルン放送交響楽団


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
カール・ベーム ウィーン・フィル 1972年
Karl Böhm Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

ベームさんの振るベートーヴェンは、ソフトで綺麗で優美。現代のビートの効いたリズム感を味わった後で聴くには、緩いと感じるかもしれない。74年のクーベリックの演奏とは、これまた違ってて~ まず思ったのは、昔風の流麗な演奏に終始しており、確かに綺麗な音なのだが、遅いなあと思ってしまったこと。テンポに慣れてしまうと、やっぱり綺麗な演奏だと思わざるを得ない。ベートーヴェンの演奏ってピリオドが流行っていたこともあって、あっさりスッキリした演奏や、すこぶる素っ気ない演奏が主流になったような気がする。まるで木で鼻を括ったような演奏だと思うこともあり、しっくりこない時期が続いた。古風なベーム盤は、コクがあるというか、しっとりしているというか、ふんわりとした雰囲気を持っていて、相当にクラシカル。熱ぽっく情熱的に演奏しているわけでも明晰でもなく、ガツンとかますタイプでもない。上品だと思いつつ、意思の強さとか、迫力が有るわけでもないし、訴えてくる力強さも、他盤と比べてしまうと感じない。まあ。なんとも表現が難しい。爛熟した世紀末模様というか、また別の世界のような気がする。特に、弦が柔らかい。撫でるようなフレーズで、長めに奏でられる。ショルティやクレンペラーの演奏を聴いた後に聴いちゃうと、その違いにかなり驚く。もう少し芯になる音が欲しい。ラストの第4楽章も、これほど滑らかでよいのやら。さっぱり解らなくなってしまった。大円団になって終わるんだけど~ 綺麗すぎるというのも罪なモノです。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団 1988年
Georg Solti Chicago Symphony Orchestra

ショルティさんのベートーヴェン交響曲全集は、1972年~74年シカゴ響、1986年~90年シカゴ響デジタル録音がある。
ぼけ~っとしていると、冒頭、ばーん!と、ゴツイ音で一発かまされます。オーボエのソロの余韻は残るが、ゴツゴツとした重低音で始まる。長い上昇音階では、1歩1歩足下を確かめて昇るし、コントラバスの音がすごく大きい。ティンパニーも硬く、ガツンと一発入ってくる。オケのみんなで岩を削っているような感じだ。ヴァイオリンの旋律もゴリゴリ。フルートは可愛い声で鳴いているというのに、すごくドスのきいた声だ。可愛い小鳥と厳ついオジサンという構図である。ショルティの演奏は、強烈なアクセントがつきまとう。シコを踏んでいるみたいで笑いそうになるが、全編、緊張感が漂っているので大声では笑えない。呆然としつつも快感になりそう。で、これだけ重いのにも関わらず、筋肉質でキビキビ、動きが俊敏で、野性味たっぷり。とにかく、この運動量には圧倒されっぱなし。アバドさんの演奏は、天女の羽衣を纏っていたが、ショルティさんの演奏は、チャンピオンベルトが相応しい。
第2楽章も同じ傾向で、フレーズによって音の強弱がはっきりしており、ガシガシ、ガチガチ。岩山から転落しないように、しがみついていないといけない緊張感がある。第3楽章も、まるで図体のデカイ恐竜のように感じてしまう。振り子状になっている「たぁ~ららら たぁ~ららら」というフレーズは、やっぱり相当に重い。振り子が飛んでいってしまう心配はないが、木管が素っ気ないので繊細さが欲しいと思う。ティンパニーとコントラバスの重低音で、最後になると、耳がキツクなる。聴いた後の爽快さは、少ないかもしれない。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
アンドレ・プレヴィン ロイヤル・フィル 1987年
André Previn Royal Philharmonic Orchestra

プレヴィンの演奏は、伸びやかでリズミカル。聴きやすく瑞々しい演奏だ。おおらかでテンポと音の伸びが、ガチガチに硬くもなく、柔らかすぎることもない。ティンパニーと共に低弦が奏でるところは力があるし、木管のフレーズを聴いているとオケの色合いが明るいことがわかる。艶もあり少女のように可愛い。暖かい春風の香りが漂ってくるようだ。素朴だが心地良い。穏やかで、適度にゆるやかな音の膨らみと、まろやかさがあり、弾力性、柔軟性と曲線美がある。しなやかなベト7である。ヴァイオリンと中音域の弦の響きが良く、中間層の音に厚みがあるので、中抜けした締まりのない演奏には、決してなっていない。失礼ながら、あまり期待せずに聴き始めたが、なかなか良い演奏だ。低弦が唸ってくるところはゴリゴリ感、歯ごたえもあるし、押し出しも力強い。音符がピチピチしてて、活きの良いサカナちゃんという感じ。素直に良い演奏だと思う。第4楽章も、美少女が春風に乗って、若々しく舞っているという感じがするし、低弦のオスティナートも圧巻だ。最初に聴くのにお薦めかもしれない。


  ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
オットー・クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 1955年
Otto Klemperer Philharmonia Orchestra of London

クレンペラーさんの演奏は、予想どおり冒頭の和音は硬め。弦の上昇は硬いが、高音域がよく響いているためか、さほど重いとは感じない。想像していたよりは、しなやかな印象を受けた。木管の響きがスマートだ。弦とフルートの呼吸も合っているし、中音域の木管類の音色が優しく柔らかい。感心するほど美しいフレーズを残していく。楽章の終盤に低弦が入ってくると、苦みが増してくるのだが、木管が弦に負けじと存在感を出している。木管と弦の絡みのシーンでは、ヴァイオリンが控えめに奏でており、木管がスポットライトを浴びている。ひとときの安らぎを得る。弦のうねりに迫力があるし、金管が入ってきても低弦が相当に唸る。ぶっきらぼうに見えて、クレンペラーさんの演奏って、実に繊細なのだ。これには舌を巻く。
第2楽章は、硬いのだが、じわーっと熱い。地熱のようにホコホコしてくるのだ。ドラマチックに演出されている。高音域のヴァイオリンの下の弦の響きに厚みがあり、ところどころ、さっと重さが変わるのだ。 きっと第二かヴィオラの響きに厚みがあり、その厚みが変わるのだと思う。第3楽章は、重すぎ硬すぎで、これじゃ踊れないとブツブツ思ってしまうが、そんなことはおかまいなし。
第4楽章は、重くて遅く、慌てず騒がす。我関せずマイペースで、飄々としている。辛抱しきれず、走り出しそうなところがあって、ところどころ~ はやくしてぇ~と、テンポが揺れそうになっている。でも、仕方なく戻るんだよね。我慢比べだわ。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
セルジュ・チェリビダッケ ミュンヘン・フィル 1989年
Sergiu Celibidach Münchener Philharmoniker (Munich Philharmonic)

チェリさまのライブ演奏は、やっぱり遅い。冒頭こそ通常だが、上昇していくと空中にぽっかり。浮遊感さえ漂う。ベートーヴェンの演奏で浮遊感だって? いや嘘ではない。ホントだ。心理の裏をかくように、ゆったりと奏でられていく。パ~ンという派手な金管やティンパニーの強い打音もない。低弦だって柔らかい。この柔らかさのうえに、フルートの優しいフレーズが聞こえてくるのだから半端ではない。柔らかい舞踏会のようなフレーズで、あっけにとられる。案の定、相当に遅い。ハーモニーは美しい。残響はとろけている。とろけるベートーヴェンの7番なんぞ聴いたことがない。ベト7が、まるで天上の音楽、いや液状化現象を起こしているように思えてくる。第2楽章は、消えるような弱音で「ふぁーふぁふぁ ふぁーふぁ」ここは彼岸なのだろうか。三途の川は渡ってしまったのだろうか。そんな感じだ。う~ん。第3楽章も踊るどころか睡魔に襲われる。第4楽章、そろそろアップテンポでお願いしたいところだが、無重力空間に放り出された気分に陥る。ラストのラストで、ようやく盛り上げてくれる。最後のうねりは、極上の響きがしている。ホント凄いとは思うのだが、最終コーナーまで持ちこたえられず、ワタシはへばって動けなくなっていた。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
レナード・バーンスタイン ウィーン・フィル 1978年
Leonard Bernstein Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

レニーさんのVPOとの演奏は、正直言って、あまりお薦めしない。ライブ盤で録音状態もイマイチだし、これがウィーン・フィルの演奏とは、どうも思えない、思いたくないという心情に駆られる。恐れ多くもウィーン・フィルなので、めったなことで下手とは言えないが。自由闊達というか熱にうなされたように精緻とは言えない。同じウィーン・フィルを振った演奏は、山ほどある。ファンの方もおられるので、めったなことも言えないが、崩壊しそうなほどの荒っぽい演奏で驚いてしまった。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィル 1964年
Leonard Bernstein New York Philharmonic

このレニーさんの演奏は、ワタシとの相性が悪いのか、テンポが合わない。なかなか加速しないし、結構、まどろっこしい演奏だと思う。低弦の重くて硬めの響きと、高い弦の旋律、木管の呼び水的なフレーズなど、全体的にバランスが整っていないのかもしれない。木管の響きが痩せており、オケの中心的な役割を担ってない。サンドウィッチのパン部分が、カサカサに乾いてしまって、中の具が、ハム1枚って感じで寂しい。個々に音は聞こえるが、分離して痩せてて魅力的に響いてくれない。最後、帳尻合わせ的に低弦が熱くなり唸ってくるので面白いのだが、やっぱり、オケ全体で加速して欲しい気がする。ギアを速めにチェンジして欲しい。なかなか加速しない、もどかしく感じるのが長いので、聴いててちょっとツライ。


 ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven: Symphony No.7
ダニエル・バレンボイム ベルリン・フィル 1989年
Daniel Barenboim Berliner Philharmonike (Berliner Philharmonisches Orchester)

1989年11月12日 ベルリンの壁開放記念コンサート・ライヴ盤
カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番、交響曲第7番
当盤は、ベルリンの壁開放記念コンサート・ライヴである。東ベルリンの人々のために無料で行われた特別コンサートで、東西ドイツを分断する壁が崩壊した数日後のコンサートである。開催したのも凄いけれど、収録したことも凄い。11月9日~10日に壁が壊され、コンサートは11月12日に開催されたというから即断即決、速攻実施! 演奏者の興奮や熱気が、聴いててジンジン伝わってくる演奏である。


 ベートーヴェン 交響曲第7番 リスト編曲ピアノ版
Beethoven: Symphony No.7
シプリアン・カツァリス 1982年 
Cyprien Katsaris

リスト編曲のピアノ版は、交響曲がピアノに変身するという、理屈抜きに楽しめる演奏である。
カツァリスさんの馴染みのある7番、冒頭は、寂しい出だしである。だって余韻が続かないんだもん。仕方ないか。タタタタ タタタタと上昇していくところは、低音を伴って昇っていくので迫力があり、繰り返して転んでいくフレーズは可愛く、威厳を持って演奏されている。木霊のように呼応しているフレーズは、迫力がないが、ピアノで弾くとこんなものだろう。交響曲をピアノ1本で弾いていくのだから、右手と左手しかないわけで。最後のノリノリになる酔っ払いのような第4楽では、ピアノだけで充分聴かせてくれる。むしろ、ベートーヴェンの交響曲って、こんなシンプルな音が続いているだけなんだと驚く。そして、付点のリズムが楽しいと感じさせるベートーヴェンの手腕に気づくことにもなる。それにしても、休みなしで、一人で弾ききるのって大変そう。カツァリスさん、お疲れさまでした。


ベートーヴェン 交響曲第7番
1955年 クレンペラー フィルハーモニア管 EMI ★★★★
1958年 ワルター コロンビア交響楽団 CS
1959年 コンヴィチュニー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 Ph
1964年 バーンスタイン ニューヨーク・フィル SC ★★
1969年 S=イッセルシュテット ウィーン・フィル Dec
1971年 ケンペ ミュンヘン・フィル EMI ★★★★★
1972年 ベーム ウィーン・フィル G ★★★
1974年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec
1974年 クーベリック ウィーン・フィル G ★★★★
1975年 ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン DS
1976年 C・クライバー ウィーン・フィル G
1977年 カラヤン ベルリン・フィル G
1978年 バーンスタイン ウィーン・フィル G ★★★
1981年 スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン De
1987年 プレヴィン ロイヤル・フィル R ★★★
1987年 ヴァント 北ドイツ放送交響楽団 R
1987年 アバド ウィーン・フィル G ★★★★
1988年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★
1988年 ブリュッヘン 18世紀オーケストラ Ph
1989年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI ★★★
1989年 バレンボイム ベルリン・フィル SC ★★★
1991年 サヴァリッシュ コンセルトヘボウ EMI ★★★★
1992年 C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン Ph
1992年 ガーディナー ORR Ar ★★★★★
1996年 ティーレマン フィルハーモニア管弦楽団 G ★★★
1998年 インマゼール アニマ・エテルナ Zig-zag
1999年 バレンボイム シュターツカペレ・ベルリン Teldec
2002年 ラトル ウィーン・フィル EMI ★★★
2005年 ハイティンク ロンドン響(ライブ)Lso Live

◆ リスト編曲ピアノ版
1982年 シプリアン・カツァリス Teldec ★★★★


 

YouTubeでの視聴

ベートーヴェン 交響曲第7番
Beethoven Symphony No. 7 in A Major, Op. 92
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック  ラトル ウィーン・フィル
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=35z37PVPFLY
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=olPG8IHfmwo
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=LeN92vjEzbY
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=mh6NnBakCPs


Beethoven Symphony No. 7 in A Op. 92 (1989 Remastered Version)
ルドルフ・ケンペ - トピック ミュンヘン・フィル
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=8CINWgCpAtg
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=ElZ9WGrm1Wo
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Tee0N2DrszQ
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jb_GFmAAJss

The 1989 concert for citizens of the GDR / Barenboim· Berliner Philharmoniker 
Berliner Philharmoniker 1989年、東ドイツ市民のためのコンサート 
ベルリンの壁の開放直後、バレンボイムさんが東ドイツ市民のためにベルリン・フィルと無料コンサートを開催した際のドキュメンタリー映像が掲載されています。交響曲第7番の終わり部分です。

https://www.youtube.com/watch?v=9_WXJyhQnLE
ご覧になるには登録が必要ですが、「トレイラー」をクリックすると、3分弱の抜粋映像を見ることができます。涙ぐんでお聞きになっている方もおられます。
https://www.digitalconcerthall.com/ja/concert/22093




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