ベートーヴェン 交響曲第8番 Beethoven: Symphony No.8

 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
ミヒャエル・ギーレン 南西ドイツ放送交響楽団 2000年
Michael Gielen South West German Radio Symphony Orchestra, Baden-Baden(SWR Symphony Orchestra)

ギーレンさんの演奏は、ティンパニーと金管の音が圧巻で、無駄なく即物的、潔すぎて唖然としつつも圧倒される。ギーレン・アニヴァーサリー・ボックス5枚組BOX(レーベル:ヘンスラー)を聴いたが、冒頭のフレーズの速くて硬いこと。叩きつけるような音が主体で、木管も硬くて無愛想このうえなく、ティンパニーが破裂音として聞こえてくるほど強烈。スピード感のあふれる演奏で、仰天してしまった。最初からけんか腰で、怒鳴りつけようと家に押しかけられたような気分で、どりゃ~っと背負い投げで一本とられた感じがする。優美とか流麗とか、しなやかさとは、全くご縁がございません。休む暇なく、窮屈に旋律が奏でられていく。一刻の余裕もありませんという感じで、槍で突いて前に進んでいくようなタイプの演奏だ。戦闘的、挑戦的とも言えるかも。ある意味、ケンペさんの演奏と似ているかも。曲線的な膨らみがないので直線的。音の広がり感や硬めの音質、響きの厚みなども少し足らないようにも思うが、雷が落ちたようなティンパニーに驚かされること間違いなし。
第2楽章は、室内楽のように見通しの良い演奏だ。第3楽章は、前につんのめった感じで演奏される。金管の音は華やかではあるが、木管の音が強すぎて、硬いな~と思う。弦の引きも強く、髪をつかまえられ後ろにぐいっと引っ張られている感じでキツイ。第4楽章は、ヴァイオリンの旋律が主軸になれておらず、弦部全体が弱い感じがする。木管に焦点が行っていたり、主張が強すぎたりするので、全体の調和を欠いてしまっているようだ。他の楽器と溶け込んで欲しい感じがする。無骨なおじちゃんが、周りの空気が読めないまま、ガツンガツンと楽器を奏でているようで、ちょっと迷惑。


■ ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
ヘルベルト・ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン 1978年
Herbert Blomstedt Sächsische Staatskapelle Dresden (Staatskapelle Dresden)

ティンパニーを伴って序曲のように豪快に始まる8番の冒頭は、単純に言って、バンバンと叩いて出てくる豪快な演奏と、腰の柔らかい女性的な響きで行く演奏とに分かれているように思う。ブロムシュテットさんの演奏は、シュターツカペレ・ドレスデンの木質的で柔らかい音を楽しみに聞き始めたのだが、本気でノックアウトを狙って繰り出すパンチのように、熱くてバンバンっ! いきなりパンチをもろに受けてしまった。柔らかいかと思いきや、意外とカッチリ硬めで豪快。硬めの木質的な弾力があり、剛柔兼ね備えた演奏となっている。弦をかしげながら、鳴りっぷりよろしく、これでもか~っと突き進むタイプで。えっ。
8番は、小規模で地味な交響曲だと思い込んでいたが大間違い。音の刻みが鋭く、キレ良く「タタっ タぁ~ タタっ タぁ~」と歌っている。歯切れ良く弾みながら、見事に歌うのである。この質感はお見事です。硬いのかと思いきや柔らかく、外の皮はパリパリっ、中は、しっとりジューシーという感じだろうか。第2楽章は、メトロノームの刻みを参考にしたのか、ハイドンみたいな軽やかさと明るさがある。第3楽章は、メヌエットと言われている楽章で、重さが加わってくる。面白いのはトランペットとティンパニーの掛け合い場面だ。幾分キツメに、杭を打つような硬めのティンパニーの音。間合いを少しとって、ガンガンっと打ち込んでくる。木槌で杭を打つような、薪割りシーンのような、素朴なコミカルさが表現されている。第4楽章は、びっくり箱みたい。可愛く静かに、そろっと出てくるのに、唐突に「どれぇーっ!」と叫んで、シコを踏む。ガシっとしたリズムが刻まれており、堂々としている。まるで、あっかんべーっと人を食ったような演出だったのに、木管のフレーズにさしかかると、可愛い女性のようで~(要は振り回された)弦をうねらせて大きなスケールで踊る。
芯のある明るめの柔らかい音質と、重量感ある硬いクヌギのような木の肌、ゴツゴツ感がスパイスとして効いている演奏だ。ショルティとシカゴ響のような金属っぽい硬質で男臭い音でもないし、イッセルシュテットとウィーン・フィルのような、高音域の目立つ、しなやかで女性っぽい音でもない。驚かされつつも、楽しく聴ける良い演奏だと思う。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
オトマール・スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン 1983年
Otmar Suitner Sächsische Staatskapelle Berlin(Staatskapelle Berlin )

スウィトナーさんの演奏は、重すぎず軽すぎず、硬すぎず柔らかすぎず~ 見事に調和した演奏だと思う。ブロムシュテットさんの剛柔兼ね備えた演奏とよく似た傾向で、双璧なすものと思っている。冒頭の転がるフレーズが軽やかで綺麗だ。するっと快速で登場しているが、木管が透けたレースのようになびいている。最初のフレーズだけで、剛柔が整った演奏だと予見できちゃうところが嬉しいところ。リズムは歯切れが良いし、旋律の動きはスキッとした無駄のないもので、力強く、かつ、しなやかに感じられる。
落ち着いた弾んだリズム感、とても晴れやかに上に向かって響いている音の広がり感、木管楽器が綺麗に聞こえ、それが軽やかな風味付けをしているところ。録音状態も良いし嬉しい限り。楽章のラストは、全奏でバンバンバンっ力強く叩かれ、すわーっと木管が消えていく。何度も繰り返して聴いちゃいました。うふふ。第2楽章は、ハイドンの楽曲のように可愛い 弦のピチカートが、柔らかで、朝の目覚めのよう。メトロノームのように刻んではいるが、安定感のある中庸さで嫌みがない。各楽器の重さにバランスがとれているし、まるで素直なまま大人になったかのようなチャーミングさ。特に、均質に保っている木管が印象に残る。
第3楽章では、少し重めに弦を鳴らせており、まるで、昔の大きな振り子時計が動き出したみたい。ゆったり厳かにティンパニーが鳴っているところがミソ。ファゴットも渋い音を響かせており、オケ全体が、古色蒼然と懐の深さを醸し出す。ピリオドで演奏した場合は、きっとこの風合いは出ないと思う。ホルンのフレーズも、あらまぁ~ ホント、歴史的な風合いが漂ってくる。ある意味、時が止まったかのような、不思議な時空間に居る感じで、メヌエットだし、ロココ調の風景絵画を見ているかのよう。
第4楽章は、6連音符が連なっていく。ベートーヴェンの時代にとっては、斬新なリズムかもしれない。休止なしで、ずーっとリズムが刻まれていく。無窮動のようだが、間に歌うフレーズが入ってきて、軽やかで楽しい。全体的に品良く、剛柔をみごとに整え、跳躍感良く、筋肉質でかつ美麗。フォルムの美しさを感じさせるも演奏だと思う。匠の技でしょうね。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1977年
Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

カラヤンの演奏は、全盛期のとぎすまされた美音で流麗な演奏で、冒頭から、そのスタイルが滲み出ている。1970年代の録音は、カラヤン美学と称される華麗な演奏が特徴だが、感心しちゃうほど鮮やかで、優美な身のこなし。滋味な8番が、こんな華やかな楽曲に様変わりするとは、目から鱗状態である。序曲のように豪快に鳴るフレーズだが、序奏がないだけに圧倒的な勢いで、いきなりやって来る。 音を前に押し出すように演奏し、金管のフレーズが通奏低音のように鮮やかに鳴る。また、弦もカラフルで色艶のよい響きを出してくる。 それに一糸乱れず、見事なアンサンブルで聴かせてくれる。ふんわりした曲線美があり、高音域の弦の響きが多く聞こえ、中音域の弦は、音の層となって厚みがある。音質は、柔らかい女性的な響きにも聞こえるし、メリハリのある流麗で、スマートで鼻先の長い流線型のスポーツカーというか、格好良いヨットというか、なにせスマート。まあ、聴きようよっては、鼻から抜ける~って感じもしないでもない、イヤミなほどの優美さ。残響の多めの響きだが、教会の残響みたいだ。後半は、主旋律の低音フレーズより、高音域のヴァイオリンのフレーズが、みごとに入ってきて、こんな艶っぽいんだと改めて8番を見直しちゃう。
第2楽章は、ピチカートの弾んだ柔らかさ、メトロノームのような刻みを底辺にして、弦のフレーズが大きく膨らませて乗ってくる。しっかり変えておりテンポを変えて、歌うように弾む。トリルも可愛いし、脈打ってますという活き活き感がある。それに意外とオチャメなのだ。しっかり伸ばすところを伸ばして、くわ~っとオーバーなほど曲線を描く。身をかがめているところや、すばしっこく動くところもあって伸縮自在だ。第3楽章も、退屈になりがちなフレーズを微妙に伸縮させ、柔らかくも深みのある響きとなって楽しさが倍増する。3拍子の頭に、しっかり重さを持たせて伸ばしているので優美なメヌエットだ。また、ホルンが綺麗すぎ。耳のご馳走ですわ。いや~この3楽章、これだけ綺麗に演奏していた盤ありましたっけ。第4楽章は、ここまでやるかって感じの超快速で演奏される。ネズミ花火のようにアチコチにくるくる回って、パンパンっとはじけて鳴っていくよう機敏さに圧倒されてしまう。C・クライバーの演奏のように熱い演奏ではないが、綺麗さはダントツ一位の演奏である。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
ルドルフ・ケンペ ミュンヘン・フィル 1972年
Rudolf Kempe Münchener Philharmoniker(Munich Philharmonic)

ケンペの演奏は、熱くてツヨメだが、よく歌うしノビもあり、馥郁とした木管とホルンをはじめ瑞々しい演奏となっている。交響曲全集を聴いてて思うのは、すごく熱い演奏が詰まってて、ぐいぐい押してくるパワーに圧倒される。8番も同様で、綺麗なフレージングとは言い難いし美音でもないのだが、カーッと最初っから熱い演奏なのが印象的。古くさい表現になるかもしれないが、ガッツがあり太い線での一筆書きのような勢いがある。低音の響きも硬く、ティンパニーもバンバン叩いているのに、どことなく甘さもロマンティックな面もあって意外な面を見せてくれる。「タッタ タン タッタ タン タッタ タンっ」というリズムの刻みと「そぉーみ そぉーみ」という弦のノビがセットになって、右に左にと、大きく振れはじめるリズム感が楽しい。自然に高揚する。低音の響きとティンパニーを底辺として、ピラミッド的に構築され、びくともしない堅牢さを感じる。第2楽章では、アップテンポの刻みだが、メリハリを持ちつつ、まるでびっくり箱を開ける時のようなワクワク感を提供してくれる。第3楽章のメヌエットでは、カラヤンのような華麗さはないのだが、見た目はイマイチのくせに、パリっとした仕立ての良い燕尾服を着ている感じがする。特に、木管の暖かい響きは、馥郁としてかぐわしい。南ドイツのオケならではの、樹木が呼吸しているかのような風合いを感じる。アクセントと重みを1拍目に持たせた拍感覚は好ましい。第4楽章は、歌心があり響きが柔らかい。美しい織物を見ているかのよう。両翼配置なのだと思うが、ブレンドされた香りの高い響きと歌心で、ベートーヴェンって、こんなにロマンチストだったのかと。俄に信じられない演奏になっている。知情意のバランスが良く瑞々しい演奏が8番なんてね~ もう滋味なんて言わせないって感じでしょうか。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン 1993年
Colin Davis Sächsische Staatskapelle Dresden (Staatskapelle Dresden)

シュターツカペレ・ドレスデンというオケは、昔からファンが多い。1978年録音ののブロムシュテット盤も好きだが、1993年のコリン・デイヴィスさんの演奏は、どうだろうと興味津々で聞き始めた。デイヴィスさんにとっては2回目の交響曲全集で、このドレスデンとの全集は、1991年から93年にかけて収録されている。ルカ教会の録音なので残響が少し多めだが、この演奏では、 ティンパニーの音が地響きを立て、弦が芯まで硬めで、柔軟さよりも乾いた感じがした。テンポは、安全運転で手堅い演奏である。しんなりした柔軟さや弾力は少なく、弦の引きが強いというか圧が高いというか、音がストレートに飛び込んできて立体的には響いていない気がする。特に、ティンパニーは、目の前で炸裂するように鳴っており、う~ん。なんともいえない不快感に襲われた。第2楽章も愛想のない演奏だが、木管がチャーミングに変貌し、弦よりも木管に自然と耳が行く。落ちついた安定感にある演奏なのだが、気乗りがしないように淡々と進んでしまう。第3楽章でも弦が干からびて痛ましい。ホルンも木管も良いのに、肝心の弦がイマイチというのはどうもいただけない。第4楽章もリズム感がどうも。あちらこちらに音が散らばって、溶け合ってくれない。重くて乾いて四角四面のようで、ちょっと悲しい演奏でしたね。


  ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
セルジュ・チェリビダッケ  ミュンヘン・フィル 1995年
Sergiu Celibidache Münchener Philharmoniker(Munich Philharmonic)

チェリさまの演奏は、遅くて重くて硬くて、ゴリゴリ、ガツガツしていう。堅牢な造りというか音が硬直化しているというか、胸に石が積まれていくような苦しさがしてくるので、それなりの覚悟が必要になるかもしれない。8番の演奏も冒頭のティンパニーが、硬く、ガツンと一発入ってくる。ライブ盤なので流石にヌケは期待できないが、このティンパニーの響きは凄まじく全ての音をかき消してしまいそうな音である。また、テンポが超遅めなので、弾まないわ、進まないわで、悲壮感さえ漂う。ここはヴァイオリンが頑張ってくれないと生き残れないという場面でも低音にかき消されそうで、中音域の弦はどこへ行ってしまったのやら。建設工事で、基礎の鉄杭を打ち続けている現場に、ずーっと立ち会っているかのような気分で、アハハ~ 涙目になってしまう。まあ、少しオーバーな表現になってしまったが、外はパリっ、内はしっとりという面白さもある楽曲なのだが、このチェリさまの演奏は、ガラガラ石ばかりのガレ場を歩くツラい道なのだ。どうして、こうもティンパニーは、怒りに満ちた打ち込みをするのだろう。どうして、金管は、この苦しみを解放してくれないのだろう。がっくりである。
第2楽章も、透明度の高い弦が、それなりに可愛らしい音を出しているにも関わらず、ごろごろごろ~っ。第3楽章も、優美な舞踏フレーズの筈なのだが、柔らかさには遠く、カラダの硬いお爺ちゃんが、柔軟体操に挑む奇妙な風景となっている。ホルンとフルートの柔らかさはまずまずなのに、中音域がヌケて、骨粗しょう症状態に陥っている。第4楽章も同じ。弦のボーイングが強すぎるのと、ガッと一発目を叩きつけるエッジの鋭さばかりが目立っている。音が、凶暴に怒りに満ちた印象があり、また全てこの硬直感で8番を演奏されちゃうと、さすがに聴く方も疲労困憊する。チェリビダッケさんのテンポは、超遅めっていうのが定説だが、この演奏では普通だと思う。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
ダニエル・バレンボイム シュターツカペレ・ベルリン 1999年
Daniel Barenboim Sächsische Staatskapelle Berlin(Staatskapelle Berlin )

バレンボイムさんの演奏は、どうにもこうにも柔軟に弾まないリズムで、ドスコイ状態。力任せで愉悦性はほぼ感じられない演奏である。6枚組の全集BOXを購入してしまったので何度も聴いてみたが、どうもピンと来ない。ホントに何度も聴いたんですけど、弦にノビがなく、ババン ババンっ~っというティンパニーの音だけが異様に響く。音が底にぶち当たり、さらにドスンっと奈落に落ちていく。付点のリズムが面白い筈の楽曲なのに、その付点のリズムが全くもって面白くない。弦が、素っ気なさすぎて、色気も、なにもあったものじゃーない。硬直しきってて・・・という感じで、トリツクシマもなし。楽器が、いっぱいあるのがオケで~それぞれ質感が異なるものを、巧く調合して、ブレンドしてもらわないと困るんだけど。(って素人が偉そうに言う)
う~ん、甘いお善哉には、塩昆布がつきもので、塩をひとつまみ入れないと甘さが引き立たない。スイカに少しの塩をかけると、より一層甘さが引き立つのにねえ。これセッション録音の筈なのに、どうもダメでした。期待していたのに。せっかく全集を所有したのに超がっくりの演奏でした。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
アンドレ・プレヴィン ロイヤル・フィル 1989年
Andre Previn Royal Philharmonic Orchestra

プレヴィンさんの演奏は、まろやかな響きで、気持ちの良いハーモニーが聴ける。ゆったり、なだらかに歌わせるタイプの演奏で、十分に低弦を響かせ、残響を伴いながらなだらかに伸びる。弦の響きが多層的だ。付点をさほど強調しないで、どっしり安定している。どこが秀でているのかと言われたら、ちょっと困るのだが~ 一応平均点以上は採れているように思う。(という感触だ)
弦の響きが多層的なのが面白いほどよく聞こえる。チェロやヴィオラの旋律が、すごく綺麗に目の前に広がっていく。コントラバスの音は奥まったところから聞こえ、ホールいっぱい使った響きで、繰り返して聴いて楽しめる。なかなかに面白い。
第2楽章においても、和音を構成する音が綺麗に鳴っており、副旋律などの情報量の多さが、平凡さをぶっ飛ばしてくれる。第3楽章もラストの楽章も、平凡と言えば平凡だが、ホルンや木管、弦が寄り添い、絡みながら、全体としてシルキーな響きを造りだしている。いろんな音や旋律が聞こえてくるが、それが混濁もせず、決して嫌な感じを与えない。聴く人の気持ちを心地よくさせるだけでも大変な力量だ。ハイ、勉強になりました。


 ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8
ヴォルフガング・サヴァリッシュ コンセルトヘボウ 1993年
Wolfgang Sawallisch Royal Concertgebouw Orchestra

サヴァリッシュさんのコンセルトヘボウとのベートーヴェン交響曲全集は、8番と9番がライブ盤となっている。8番は、ゴツゴツしたがっつり気味の演奏が多いなか、軽やかで艶やかな演奏だ。豊かに広がるホールで芳醇な香りが漂っているし、EMIとしては良い方の録音なのではないだろうか。ちょっと大きめの音量で聴くと広がり感がまし、弦は艶があって柔らかく、木管もよく通った音で、ティンパニーも要所をおさえている。爽やかで軽やかな風合いで、どちらかというとモーツァルトのように羽根が生えて飛んでしまいそうな軽やかさ。暖かく陽気で、春の陽射しを浴びる喜びを感じるような演奏だ。(ちょっと違うんだけどな)
第3楽章は、1、2拍はゆったりしているが、3拍目でテンポをあげ、ちょっと速めのテンポ設定で、前のめり気味。弦のフレージングが柔らかく、まろやかに溶け合って美しいのだが、ちょっとせっかちかもしれない。木管は綺麗な音色で絶品だと思う。トランペットもティンパニーも安定した響きで、ご馳走状態だと思う。テンポ設定の違和感も、バラケタ印象を受ける場面もあるが、ホルンと木管のハーモニーに身を委ねたい欲望に駆られる。優美に絡まって演奏されてしまうと~泣けてしまう。コンセルトヘボウの最後の音色という感じに聞こえてしまう。第4楽章は、生真面な演奏で、壮大なスケールの演奏というよりは、横への流れが主体となってオケの音色に頼っている部分も大きいように感じる。最後の盛り上がりに、情熱が欲しかった気がする。8番のイカツイ演奏が苦手って方にはお薦めだろうか。また、コンセルトヘボウが好きな方には名残り惜しい気持ちで聴けるだろうし、ワタシも購入した際には、大穴のCDを見つけちゃった気分で喜んだ。結構、掘り出し物の演奏である。



ベートーヴェン 交響曲第8番
1972年 ケンペ ミュンヘン・フィル EMI ★★★★★
1977年 カラヤン ベルリン・フィル G ★★★★★
1978年 ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデンDS★★★★
1983年 スウィトナー ベルリン・シュターツカペレ D★★★★★
1988年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★
1989年 プレヴィン ロイヤル・フィル R ★★★★
1993年 サヴァリッシュ コンセルトヘボウ EMI ★★★★
1993年 C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン Ph ★★
1995年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI ★★★
1999年 バレンボイム シュターツカペレ・ベルリン Teldec ★★
2000年 ギーレン 南西ドイツ放送交響楽団 Hns ★★★★

ベートーヴェンの交響曲第8番(ヘ長調 op.93)は、7番と一緒に作曲されたのか、1841年同時に初演されています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、7番の方が人気が高かったようですが。ご本人は、「聴衆がこの曲を理解できないのは、この曲があまりに優れているからだ」と語ったそうです。古典的な形式に則っていますが、独創的な工夫と表現にあふれている楽曲です。

第1楽章 4/3拍子 ヘ長調 ソナタ形式(提示部反復指定あり)序奏がなく、いきなり華やかなトゥッティで始められます。第2主題が6度の平行長調であるニ長調を通り、ワルツ調に提示されるなど工夫が見られるもの。スフォルツァンドを多用し、ヘミオラでリズムを刻む展開部があります。ヘミオラって、3拍子の曲で、2小節をまとめて、それを3つの拍に分け、大きな3拍子のようにすることをいうそうで、もとの意味は「1足す2分の1」。シンコペーションによって、強拍が、本来の位置からずれるので、もとの4分の3拍子の拍節感は消え去って、突然、テンポが半分になってしまったように感じられるとのこと。運命の主題と同じく、「タタタタッ」の形をオクターブに跳躍させて、リズムをとっているのが特徴的なんだって。トゥッティが、fffで鳴り響く中、低弦が第1主題を再現するが、音のバランスをとるのが難しく、指揮者の腕の見せどころなのだそうです。

第2楽章 4/2拍子 変ロ長調 展開部を欠くソナタ形式
ハイドンの交響曲第101番「時計」の第2楽章と雰囲気が似ており、木管がリズムを刻むなか、弦で歌唱的な主題が登場します。8番には緩徐楽章がないので、ここを実質的なスケルツォとする解釈もあるのだそうです。

第3楽章 4/3拍子 ヘ長調 複合三部形式
メヌエットで、アクセントが付けられていたり、宮廷舞曲というよりもレントラー風です。トリオにおけるチェロの伴奏は、3連符でスケルツォ的。トリオのホルンとクラリネットの旋律は、郵便馬車の信号にヒントを得たとも言われているそうです。

第4楽章 2/2拍子 ヘ長調  自由なロンド形式(A-B-A'-A-B-A"-C-A-B-Coda)
ソナタ形式とか、ロンドとソナタの複合とも~ 解釈される場合もあるそうですが。ここでは割愛っ。6連符による「タタタタタタ」のリズムが、ずっと保たれたまま展開され、強弱が激しく入れ替わります。ティンパニーとファゴットが、1オクターブの跳躍、コーダでの転調、同じ和音を保持したまま、次々に楽器を変えていく手法も特徴的でしょうか。
メチャメチャ、リズミカルな楽曲で~ ロック調と言えば良いでしょうか。今に通じるものがあって面白い楽曲です。


 

YouTubeでの視聴

ベートーヴェン 交響曲第8番
Beethoven: Symphony No.8 In F, Op.93
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック  カラヤン ベルリン・フィル
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=TAAbWkLUXP0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=dtrTOE7vj-Y
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=QT66eMVt0B4
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-BH1_nruJ60

Beethoven Symphony No. 8 Op. 93 (1989 Remastered Version)
ルドルフ・ケンペ - トピック Rudolf Kempe - Topic  ケンペ ミュンヘン・フィル
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=t6CxftxdyYg
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=bk5Gl0OpFuw
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=QgvpXa2vvMs
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=ft-jVNp3x8A

Symphony No. 8 in F Major, Op. 93
ヴォルフガング・サヴァリッシュ - トピック 
Wolfgang Sawallisch - Topic サヴァリッシュ コンセルトヘボウ
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=YeNtpgf1jg8
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=u2dY4IWeBno
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=oTshEG4g1YY
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=6wZx3wOk9KY


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