「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

11191821

     ボロディン 交響曲第2番
Borodin: Symphony No.2


チェクナヴォリアン ナショナル・フィル 1977年
Loris Tjeknavorian  National Philharmonic Orchestra

ばっちグー!

録音状態は良い。もっと派手だと思っていたが、意外と、色彩豊かに、すっきりした、潔よい風情の演奏になっていた。
カップリング:ボロディン交響曲第1番、3番(交響曲全集)
1楽章
冒頭の重々しい印象的なフレー 「ど〜 どどれふぁみど〜みっど〜」は、確かに重いものの、何度か繰り返しをするなかで、勢いがついてくる。
重低音で、ぎっしり密度が高い演奏というよりは、頃合いの密度で、少し乾いた爽快な演奏。
音色は明るめで、色彩感もたっぷり〜。
がっしり〜弾いているが、ヤルヴィ盤(エーテボリ交響楽団)のように、硬くて重すぎ〜という印象はない。金管がメロウな響きであることと、スピーディなので若々しく感じる。
金管の「うっぱ〜 うっぱ〜」の合いの手は、のびがあって開放的で、草原の広がりを感じさせる。
弦と打楽器と、金管の掛け合いは、これはみごと。
体重移動が巧いので、リズミカルだ。
弦が高いところから降りてきたり、弦がスピードをあげて、軽やかに身をよじってみたり、主題が替わるところも巧いと思う。重さと軽やかさが、いい意味で交差している。
ヤルヴィ盤のような、執拗なダメ押し的な重みがないので、開放的に聞こえるのだと思う。
「タタタ〜タタ タッター」というリズムが繰り返されているが、馬がパカパカと走っているフレーズのようだ。
おおっ これだっ。
文字で書いてしまうと「タタタ タタ タッター」なのだが、「たたら たた たったぁ〜」という巻き舌風に聞こえながらも、たたっらったぁ〜と、弾みがあるのだ。
このリズムって、文字に書きづらいが、木管の踊るようなコミカルな吹き方と、力強さと、颯爽とした速さに、スゴイや〜っ 思わず飲み込まれてしまった。
最後、雷が軽く落ちたような響きで終わる。

2楽章
ピチカートの速いこと。なんて、すばしっこい動きなのだろう。直線的ではなく、縦糸ギシギシ〜でもなく。捕まえられないような動きをしており、まるで、追いかけてもつかまらない、すばしっこい小動物のようだ。
低弦のピチカート 「れそし みれど しられ・・・」と、木管の「たら〜たらら〜らら〜」と優しいフレーズ部分が色を添えているのだが、ホント、コミカルなほど動きが速く、うしろから、煽られてるような気分だ。
主題が変わると、ほっとするような、「たらら〜ら〜ら〜」と色彩豊かに歌われる。
ここは、エキゾチックで〜 女性が腰をくねらせて踊っているかのようで、酔ってしまう。
草原の親父たち(勇士)も、きっと、ほろ酔いなんだろう。
チェクナヴォリアン盤は、粘りがあって、コクがある。弦のエッジも鋭い。この楽章は、高音域のヴァイオリンは、主旋律を奏でるというより、合いの手の存在にまわっており、フレーズの語尾を強めたり、リズムをつける役割を担っている。

3楽章
う〜ん。ここは、誰の盤でも白眉なのだが、チェクナヴォリアン盤は、甘さには欠けるが、ちょっとした間合いが良く、郷愁をかき立てられる。
ハープの甘い調べに乗って、ホルンが活躍するのだが、この甘いフレーズを奏でる演奏者が、巧いっ!とは、ちょっと言い難い。
「れ〜み ふぁ〜れら〜しふぁそらしふぁ みそふぁ〜みふぁみれ〜しれみ〜れ・・・」
ちょっと頼りないのだが、でも、良い風情なのだ。
その後、フルートとクラリネットかな。巧いと1本の旋律に揃うんだが、ちょっと、ばらけてる。
でもねえ〜 素朴な味わいがあって、雰囲気が良いんだなあ。
なんだか、ほろ酔い気分で吟遊詩人が歌っているかのようで・・・ 
緊張感ばかり強いられているより、ほっと気の抜けさせてくれるところが、この楽曲に似合っているような気がするのだ。アンサンブルは、おみごと〜とはいかないものの、憎めない。
で、「たら〜たらら〜ら たら〜たらら〜ら〜」という旋律の力加減が、なんとも絶妙だ。
金管と低弦があわさって、ぐわ〜っとパワーが出てくると、底力のあるオケだなあと、その豪快さに感心してしまう。この演奏は、勇士の有終の美を飾る。そんな演奏になっている。

精緻さには欠けているのかもしれないけど、おおらかな楽曲で良い。
少しヴァイオリンの音色が浮いたように響くのだが、ピッチが高いのかもしれない。
甘いフレーズの歌い方が、東洋風というか、中央アジア風に聞こえる。う〜ん。どうしてなのか。
ちょっと表現しづらいが、妙にフレーズを膨らませず、平板でありながらアクセントをつけず、すっと、音の伸しがある。
弦のボーイングに、変にヴィブラートがかかっていないのだが、それが、かえって素朴だ。
横笛的、演歌的に聞こえて親近感を感じさせるのかも。

4楽章
これは、独特の舞曲風フレーズが、一杯詰まっている。
弦は、ちょっとイマイチ精緻ではないのだが、「タララ チャチャ〜 タララ チャチャ〜」と転がるようなフレーズでは、「チャチャ〜」とアクセントが置かれて、次から次へと展開していく。
「タタタぁ〜タタ タタタぁ〜タタ」のフレーズを繰り返しているうちに高揚していく。
とても、レアに聞こえてくる。立体的に聞こえてくるのは、多分、大太鼓やシンバル等のパーカッション群の効果だろうが、それにしても、活き活きとしてて、う〜ん。血湧き肉躍るって感じ。
粗野で野性的というよりは、見通しもよいし、すっきりとしたフレーズの処理で小気味よい。
イワユル、ロシア的な汗くささは少なく、金管だけがいたづらに咆吼する演奏でもない。
熱いのだが、オケの厚みはないものの、音量があって、音が濁らないのって、なかなか無い。
フレーズを引き継ぐときの各パート間に、ちょっとした隙間が見えるのだが、これが、踊るようなフレーズのなかで、かえって、次の出てくる音が生きて聞こえる。
ブラスに力があるし、音量たっぷり。甲高いストレートな音が出ているが、この舞曲では、高揚感を生み出す素材になっているし。ふふっ。ちょっと荒くれてた方が、この楽曲に良いんだろう。
甘いメロディを間に挟んで、スピードアップし、木管の舌がよくもつれないな〜と思うほど、最後を盛り上げて、シャン!と終わる。なんとも潔い終わり方だ。

チェクナヴォリアン盤は、東洋風に聞こえてくる。
ヤルヴィ盤は、ごつくて酒臭くて、髭もじゃのコサックの勇士が、馬に乗って草原で決闘・・・というイメージだったのだが、チェクナヴォリアン盤では、なにやら、日本の武士が、荒野で決闘・・・って感じだ。
コンドラシン盤のように甘みはないし、ヤルヴィ盤のように描写力も豊かではないが、色彩豊かで、躍動感がたっぷり、それでいて、涼しげで、虚無感すら感じさせるほど、すっきりとした潔よい風情の演奏となっている。
感覚が偏らず、バランスが良いというか。聴き手の要望が、みごとに溶け合っているというか。
とても不思議な演奏だ。オケがイマイチだという意外に文句なく、私的には大変親近感が湧く。
ロジェストヴェンスキー ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団 1993年
Gennady Rozhdestvensky
Kungliga Filharmoniska Orkestern
(Royal Stockholm Philharmonic Orchestra)

ふむふむ。

録音状態は良い。残響が柔らかく繊細だ。
シャンドス原盤のブリリアント(Brilliant Classics)レーベル盤
2枚組 カップリング:交響曲第1番〜3番、バリトンと管弦楽のためのロマンス、小組曲(グラズノフ編曲)、メゾソプラノと管弦楽のための「よその家では」
1楽章
冒頭の「ど〜 どどれ ふぁみど〜 みっどぉ〜」は、柔らかく響いている。
柔らかすぎるんじゃーと思うほど、ソフトフォーカス気味だが、残響の豊かさと、ふわっとした感覚がある。
へえ〜 これじゃロシア臭くないやん。と文句を言いたくなってしまうほど。
まあ。ヤルヴィ盤が重々しすぎるのだが、ありゃ、やり過ぎでしょ。
ロジェストベンスキー盤は、意外と、爽やかなボロディンだ。
しかし、たっぷりとした響きが充分にあり、金管のノビも良いし、奥で、びぃ〜んっと鳴っているミュート付きの金管だと思われる響きも良く聞こえる。
もう少しだけ、体重移動が、「みっどぉ〜」の語尾について来てれば、もう少し面白かったかもしれない。
しかし、弦が鳴り始めると、透き通るような透明度と、爽やかに弾かれてくるので、反対に金管がめだってくるようだ。ボロディンのこの曲には、もったいないようなレース状の弦だ。
チェクナヴォリアン盤は、若々しい勢いがあり、スピード感がたっぷり感じられるが、ロジェストベンスキー盤は、誠実そうな丁寧さが感じられる演奏だ。
もちろん、テンポもあがってくるが〜 熱気までには至らず、金管の「うっぱ〜 うっぱ〜」の面白いフレーズは、汗くささや、泥臭さ、豪快な、はったりに欠けている。
その代わり、弦が柔らかく、「ふぁ〜 (れみふぁ れみふぁ) そっそふぁ〜」 美しい。
最後、「どどれ ふぁみど み み どぉ〜」というフレーズは、荘厳な響きで終わる。
 
2楽章
「ふぁ〜」という金管の後、低弦のピチカートが入ってくる。
このピチカートに乗って、弦が、「れれ そそ らら しし らそ ふぁみれ みどらそど」 木管の短いフレーズも重なってくる。
「れそらし ふぁしどれ・・・」と金管が呼応して、弦の歌謡風のフレーズに繋がっていく。
テンポは、さほど速くない。弦や木管、金管のバランス、フレーズを楽しむには良いが、ただ、もう少しスピード感があれば良いのにな。と思ってしまった。
「しみ〜ふぁ そふぁ〜 み〜れど そ〜」
「み〜し そ〜れ れ〜ふぁ し〜ふぁ み〜し ら〜れ れ〜られ〜ら」
優しいなあ。もう少し、ごっつく、ぶっとくフレーズを奏でて欲しい気がする。それに、金管に迫力がないのと、無骨な逞しさが欠けており、かなり女性的で線が細め。腰が強くないのか、粘りが無い。
木管、特にフルートは綺麗で、歌謡風のフレーズは、大層美しく響いている。
儚げな憂いを含んだ美女風で、動物が走り回っていたような印象を持った他盤とは、大違い。

3楽章
前楽章の歌謡風のフレーズが、そのまま生かされており、儚げな夢を見ているような響きがする。
ハープに乗って木管が吹かれてくると、鳥肌たちそうなほど。
ホルンが、「れ〜み ふぁ〜れ らしふぁ〜そらし みそふぁ みれどみれ〜 しれみそふぁ〜みれ・・・」 
あ〜 こりゃ、たまらん。
壮大なスケールで描かれた〜という風でないし、朗々と歌いあげるタイプじゃなく、草原で1人、ぽつんと立っている感じ。儚げで、頼りなさそう〜
低弦のユニゾンの旋律は、ちょっと、とってつけた感じがして、しっくりこない。回想シーンのように、主題が廻ってきたのに、あまり擬人化されていないのかな。 パワフルに強烈に汗くさく闘う男のイメージを、適度に植え付けてくれないと、郷愁感や情念としてのパワーには、少し欠けてしまう。
熱き男だからこそ、という、この落差が欲しい。まあ。もっと、ねちっこく、粘りを持たせて、汗くさい男の歌として仕上げる方法もあるけど、ロジェベンさんの演奏は、わりと淡泊で、さらり〜 としている。
「そぉ〜らしそ〜 られ〜 れ〜みふぁ〜」という金管のフレーズが剛毅、豪壮って感じではないので、どうしても、ヤサオトコに聞こえちゃうんだろうけど。まあ。普通の男性って感じですかね。
演奏としては、和音の響きも良く聞こえ、じっくり、フレーズに耳を傾けやすい。

4楽章
舞曲風のフレーズが、柔らかく始まってくる。ものすごく、しなやか。
遠くから、「タタタぁ〜タタ タタタぁ〜タタ」と、繰り返してリズムが聞こえて、「っどど〜 どれらそ みそれふぁ みれどっ〜」と言う舞曲が繰り広げられる。
このリズムは、う〜ん。DNAなんでしょうか。血湧き肉躍るという感じには、到底ならず。タメも少なめで、もっと〜 もっと ねばって〜ぇ。と言いたくなる感じだ。
弦は綺麗なんだけどなあ。もっと重量感があれば嬉しいんだけど。
なにせ、金管の語尾に粘りがなあ。最後の音を抜いちゃうと〜 モノタランよなあ。
「っどどぉ〜どれ らそみ それふぁ みれどっ〜どどぉ〜らそみ れふぁ みれどっ」

最後、大宴会という感じではなかったし、泥臭い、汗臭い、いわゆるロシア臭さは、ロイヤル・ストックホルム・フィルには無い。しかし、ぶっとい金管にはお会いできなかったけど、とても丁寧で誠実そうな演奏で好感は持てる。
郷愁を感じさせるフレーズは、人として等しく感じるモノだし、2楽章は良いと思う。
ただ、やっぱり、豪快に鳴らして、勇壮果敢に、汗くさく演奏するヤルヴィ盤が、すごく印象深く残ってしまっているので、モノ足らない感じがしてしまうのは ・・・ う〜ん仕方ないかも。ごめんなさい。
1977年 チェクナヴォリアン  ナショナル・フィル ★★★★
1980年 コンドラシン コンセルトヘボウ Ph  
1991年 N・ヤルヴィ エーテボリ交響楽団  
1993年 ロジェストヴェンスキー ロイヤル・ストックホルム・フィル Brilliant Classics ★★

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

Copyright (c) mamama All rights reserved