ブルックナー 交響曲第3番 Bruckner: Symphony No.3

 ブルックナー 交響曲第3番
Bruckner: Symphony No.3
ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団 1992年
Georg Solti Chicago Symphony Orchestra
1877年 ノヴァーク版 Edition Leopold Nowak

ショルティの演奏は、異論もあるだろうが、ワタシ的にはリズミカルに処理されているので聴きやすい。冒頭、弦と金管があわさって、うわ~っと膨れあがってくる。唐突なフレーズでケッタイな音が続くなか、トランペットのフレーズが吹かれる。第3番は晦渋な交響曲でどうも馴染めない。同じような音型が執拗に鳴ると思いきや 不安定な和音が流れ続く。リズムが出てブルックナーらしく 3+2 2+3 のリズムになるが、この第3番の1楽章と2楽章は渋する。トランペットが突出して、半音あがったり下がったり転調したり、神秘的というより凸凹した脈路もないフレーズで、唐突に頂で金管が咆吼するという感じなのだ。ショルティの演奏は、難しくてとらえどころのない楽章を、幾分かは見通しよく演奏してくれていると思う。2楽章のアダージョは、穏やかだ感じていても、フレーズが途切れたりする。

第3楽章は、このスケルツォの楽章だけ面白みを感じる。自分の尻尾を追いかけている犬のように、ぐるぐる巡る。弦と裏の金管の拍感覚はおもしろいが、ジャカ ジャンジャンジャン ジャカ ジャンジャンジャン・・・いつものことながら目の回るような旋律と穏やかな旋律と、どうして交互に鳴らすのだろうと首をかしげたくなる。ワルツ調になるが長続きせず、目の回る旋律が再現されたりする。後半には小春日和のような可愛い旋律も出てくるが、分裂気質かと思ってしまう面もあり、何度聴いても超現象だ。まるで酔っぱらいの舞曲みたい。
第4楽章は、風変わりな和音が続く。うねうね。くねくね。スケールの練習をしているみたいで、う~ん。主題は鐘が鳴り響いた残響を描いたものなのか、オルガンの音を再現しようとしたものなのだろうか、わざとずらした感じがする。コーダ部分は格好良く書けているのになあ。とりあえず、ショルティの演奏のラストは、第2稿なので「みぃ~しぃ~し みぃ~」で終わっているので終わった感がある。シカゴ響は、金管が明晰で鳴りっぷりの良い音が出ている。録音状態も良いのでスカッとして聞こえる。歯切れ良く、独特のリズムもすっぱりと演奏されているようだ。メタリック系でテカテカしたところもあり、明るく開放的な音の広がり感もある。回転度数の高いトルク音、鋭く快速な無窮動に引き込まれる。この楽曲は、もっさりチンタラ演奏されると、うぷぷっ、やめてくれ~っとなってしまいがちだと思う。


 ブルックナー 交響曲第3番
Bruckner: Symphony No.3
エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団 1984年
Eliahu Inbal Radio Sinfonie-orchester Frankfurt
(Frankfurt Radio Symphony Orchestra)第1稿(1873年版)

今ではさほど珍しいわけではないのだろうが、このインバルの演奏は、第1稿をCDに収録した最初だったと思う。愛称にされている「ワーグナー」という意味が、この盤には詰まっている。だって、その後の稿では、ワーグナーからの引用がばっさり削除されているようだから。冒頭、「みぃ~しぃ~ みみぃ し~どぉれ そどぉふぁ~」「そぉふぁ~ そぉふぁ~ そぉふぁ~」と、原始霧のように出てくる金管で、いきなり出たぞぉとばかりに、「そぉ~ ふぁみれ み れぇ~ どしらぁ~」と大きな音が出てくる。ブルックナーを聴いて、随分と時間が経つので驚かないが、最初は、どうも取っつきづらい変な曲だで終わってしまう。今日は、2020年お正月なのだが、ホント、お正月に聴くような曲ではない。(つくづくケッタイな曲だ)

「しっしし ふぁ~ れっしし ふぁぁ~」てな信号のような音型が続く。金管の厳つい咆吼と、ふわ~っと柔らかい木管と弦のフレーズは、ブルックナーの特性で、最後の第9番までなんにも作風は変わってないのではと思う。彼はカメレオンのように作風を変えていく作曲家ではない。これは、作風というより、もはや習癖の域なのだろう。全合奏し休止するを繰り返し、ぶっとい荒々しい金管の咆吼と、美しい金管の和音と、ふわっと上昇していくフレーズの対比。確かに、金管の和音を描かせれば超絶美しい。オルガンの響きをオケに移植したかのような響きを堪能できる。インバルの演奏は、テンポは幾分速め、弦の柔らかいフレーズは幾分硬いものの美しい。フルートやホルンは言うまでもなく、シルキーに響く。金管の音響は、芯の硬さが感じられ、特に、低音のチューバの響きは青黒く響いているかのようだ。ホルンが加わると、まろやかに変わるところが、すごいっ。クーベリックのような荘厳さは感じられないが、熱く推進力を持って演奏されている。

第2楽章は、劇のなかの伴奏のような幻想的なアダージョとなっている。ブルックナーの眼には、舞台が見えていたのではないかと思うほど夢幻さがあり、清楚でありながら穏やかな楽曲である。ただ、つかみ所が少なく、どう聴けばよいのか、瞑想的な和音に身を委ねたら良いのだろうか迷う。ワーグナーからの引用が垣間見られるが、だからって何なの?とも思う。

3楽章は、「ふぁ~ みふぁみれ みっ みふぁみれ みっ みみみ みみみ」ジャカ ジャンジャンジャン ジャカ ジャンジャンジャン・・・というフレーズは、拍として面白みがあるが、これがずっと続くと、へえぇぇ。 一度聴いたら耳に残ってしまうような音型の繰り返しで、階段を転がり落ちてくる感じがする。転がり落ちる印象で、どこか痛痒いような感覚が残る。金管のふっんっ~とした短いパッセージが、何度も何度も吹き出されてくると、鼻がむずむずする。無味乾燥的な演奏だが、引き締まって淡々と演奏されていることがむしろ幸いなのかも。このスケルツォは、灰汁が強く癖になる、病みつきになりそうだ。

第4楽章は、カラダの周りを蜂が飛んでいるかのようなフレーズ、華やかなコラール風の金管が登場する。綺麗な響きで背中がゾクゾクしちゃうが、ヴァイオリンは忙しく短い音階を上がり下りし、唐突にワルツ風に主題が変わる展開となっている。別の模様をパッチワークする手法は、どうも慣れない。極端すぎる2つの主題、こんな異なる素材を、少しの休止を挟んで繋いでいこうとする強引な手法は、慣れないと受け付けない。唐突に金管がつんざく咆哮が鳴り響く。まるで目の前で世界が裂け、お裁きの場面に連れ出されたかのような不安な心境に襲われる。最後は、金管で派手に裂けたファンファーレが鳴る。それもエコー付きで鳴り響く。う~ん。なんとも汚い音で響くことよ。チャンチャンで終わる。はあ~ なんという終末観なのだ。やっぱり疲れてしまった。この楽曲、超苦手です。インバルの演奏どころではない。冷静には聞けない。


 ブルックナー 交響曲第3番
Bruckner: Symphony No.3
ラファエル・クーベリック バイエルン放送交響楽団 1980年
Rafael Kubelik Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
(Bavarian Radio Symphony Orchestra)1878年改訂版(エーザー版)

クーベリックの演奏は、録音状態が極めて良く、奥行き感もあり、金管・弦・木管のバランスが整っている。大変上品な演奏だと思う。1878年っていうと第2稿が出来ているので、その改訂版ってことになるんだろう。いわゆるエーザー版である。ブルックナーの交響曲って、冗長的で同じ音型が続き、退屈極まりないってところが一般的な感想かもしれない。オマケに、版がイッパイあってヤヤコシイ。お弟子さんたちも含めて改訂魔なのだ。3番って、メチャ地味で解りづらい。ブルックナーのなかで、4番、7番、8番あたりは、よく聴かれるが、それ以外はちょっと・・・避けて通りたい気分だ。

冒頭、原始霧らしきモノが出てくるが、じわじわ蠢き、畳みかけて、弦と金管があわさって、わ~っと一気に膨れあがってくる。綺麗な和音でもないし、地味で静かなくせに、いきなり切れたみたいに爆発するという変わり者。第一印象っていうのは強烈で、今でも、さほど変わらず3番は晦渋な交響曲である。よく飽きもせず、同じ音ばっかり使うよねえ。ぶっとい金管が好きで、ぶぉ~ぶぉ~ぶぉおお・・・やっぱ相当につきあいづらい。この人は、いったいどんな人なんだ? 独特の灰汁と習癖があるのだが、これに馴れると自分の方に映り、自分の習癖になりまして、いわゆるオタクになります。
さて、クーベリック盤が、どんな演奏をしているか。曲が、とっつきにくいので、なんとも感想が書きづらいが、初めは退屈でも、1楽章の中間部荘厳なフレーズまでは、ぐっと我慢して聴いた方が良いと思う。クーベリックの演奏は、和音の響きが上品で群を抜いている。歌えないフレーズだし、半音あがったり下がったり、神秘的というより不可解。難解。けったいなフレーズが、ボコボコ突出したフレーズで、なんの脈路もない。山道で、虎か熊にいきなり出くわした気分のトッティ。切迫感のあるリズム、突然のコーダ。荘厳な和音で鳴っている。クーベリックの演奏は、ラストが荘厳だ。一糸乱れず威風堂々としたもの。3+2 2+3連符の組み合わせが、綺麗キッパリとした口調で演奏されている。

第2楽章は、天の邪鬼な楽章で、ホルンと中音域の弦の柔らかなフレーズが出てきて、天上に唸りつつ昇天する。かと思ったら、金管が、大きな音で魔王が降り下りてくるかのようなフレーズを吹く。逡巡する聖職者が天国と地獄を見ているような楽章である。しかし、ホルンと弦の絡みが美しくて惚れ惚れ。金管が上品なのだ。周りの音と調和が取れ、金管の音が、構成されている和音の1つの音だということがわかる。

第3楽章は、ブルックナーのスケルツォは、一風変わっているけれど癖になりそうな音型を持っている。ヴァイオリンの「しどしら っしっしっ しどしら っしっしっ・・・」「みふぁみれ みふぁみれ みっしっしっ・・・」悪魔が踊っているのか、おっそろしいスケルツォだが、クーベリックだと、空恐ろしい反面、優美である。弦のつま弾く音色と、シュルシュル シュルシュルと、風が舞うようなフレーズが交互に表れ、階段を下りてくる。この下降旋律は特徴があるし、中間部には優美なフレーズが表れる。相反する性格の主題が、クーベリックにかかると、品良く端正に演奏され上質に料理されている。

第4楽章は、翳りのある優美さがある。異質なものを組み合わせた、性格が違いすぎる主題が突然現れ、すぐに消える楽章だ。まったく正反対の性格の人が同居して、あっちいったり、こっちいったり。勧善懲悪世界を描いているわけでもないのに心理的に揺れ動くというか。どうやって結論を導きだすのか、ロジックがあるのかどうかも不安になる。多様性という言葉では収まりきれない要素がありすぎて~ ホント困るのだ。耳障りのファンファーレが鳴り、強烈な盛りあがり方をするところは病的だ。まあ、この楽曲には馴染めないが、弦と金管のバランスが良く、バイエルン放送響の音色、品が良い演奏となっている。



ブルックナー 交響曲第3番
1980年 クーベリック バイエルン放送響 SC ★★★★
1984年 インバル フランクフルト放送交響楽団 Teldec ★★★
1990年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★★


ブルックナーの交響曲第3番は、1873年に最初の稿が完成しています。「ワーグナー交響曲」の愛称を持っています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると
1872年に着手して翌年73年に初稿(第1稿または1873年稿)が完成しています。で、73年8月、バイロイトのR・ワーグナーに面会して、この第3交響曲と2番の両方の総譜を見せて、 どちらかを献呈したいと申し出たそうですが、この時、ワーグナー夫人のコジマは、物乞いと勘違いしたそうです。(そのときの模様は、詳しくウィキに掲載されているので、ご覧ください。)
1875年には演奏不能として初演できず、76年改訂しはじめて77年に完成(第2稿、または1877年稿)して初演した際には、ほとんど、お客さんは残っていなかったそうです。78年、出版に合わせて一部修正、88年~89に大幅改訂(第3稿、または1889年稿)しています。改訂の経緯等や、各楽章においての稿の違いは、他サイト等をご覧ください。

第1楽章 ニ短調 2/2拍子 ソナタ形式
弦の下降する音型を背景に、トランペットによって第1主題が奏でられ、経過句で膨らんで行き、頂点部分で特徴的な旋律を力強く演奏しフェルマータで休止する。曲は静まり主題を確保した後、繰り返す。再度静かになると第2主題の登場です。 第2主題は、3+2、2+3のブルックナーリズムによって対位法的に構成されるもので、変化しながら展開されます。第3主題は、金管で提示され、エコーの効果を示しながら進んでいく。提示部終わりには、 ミサ曲第1番グローリアのなかのミゼレーレの部分が奏されます。展開部の初めは第1主題の反行形が木管で、段々と発展し、第1主題を使ってクラマックスを築きます。

第2楽章 変ホ長調 4/4拍子 A-B-C-B-Aの形式
第1主題(A)は内面的な旋律で、第2主題(B)はヴィオラが奏で、中間部(C)は、神秘的にと書かれた楽想で、第1主題の再現で頂点となります。ワーグナーの影響が反映され、ワルキューレの眠りの動機が引用されています。

第3楽章 ニ短調 イ長調 3/4拍子
ヴァイオリンの旋回モチーフと、低弦のピッツィカートとが交互に現れる序奏、最強音で主題が開始されます。中間部は6度の下降を特徴とする歌謡的な楽句が現れ、ワルツ的な伴奏になり、ピッツィカートをおりまぜたワルツの雰囲気の濃い曲想になります。

第4楽章 ニ短調 2/2拍子 自由なソナタ形式
第1稿、第2稿では展開部と再現部とが分かれ、第3稿ではブルックナーが晩年に用いた展開部と再現部が合体した形で、再現部は第2主題から始まります。コーダ最後は第1楽章の主題が戻って全曲をしめくくります。 第1稿では、その部分は省略され2小節前で終わるので、中途半端で終わったように聞こえます。


 

YouTubeでの視聴


ブルックナー 交響曲第3番
Bruckner: Symphony No.3 in D Minor, WAB 103
シカゴ交響楽団 - トピック Chicago Symphony Orchestra - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=kd7UB6fys1k
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=aDqOslbu6BA
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=HyfJNDbIIg4
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=PVIWClrFEuQ

Bruckner : Symphony No.3 in D minor
エリアフ・インバル - トピック Eliahu Inbal - Topic
Provided to YouTube by Warner Classics International
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=07tp6ouE8KY
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=GXSMScdJhS8
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=mEeY8SQeQLs
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=0KgvJ7P2Sns


ページトップに戻る