ブルックナー 交響曲第4番 Bruckner: Symphony No.4

 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
サイモン・ラトル ベルリン・フィル 2006年
Simon Rattle Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)ノーヴァク版

ラトルの演奏は、録音状態がイマイチで、ぬるい感じがする。冒頭のホルンに音の広がり感が少なく平板な感じがする。他盤だと、大音量で瀧のしぶきを浴びるがごとく、音が激しく落ちてくる感じだが、金管が咆吼しつつも神々しさが降り注ぐような雰囲気がない。ホール感が少ないのは悲しい状態だ。ダイナミックに構築して緩やかに次の楽章に引き継がれるが、険しく鳴らず風ではない。また、コラール風のフレーズの金管は、開放的で、明るく華やかに歌ういう雰囲気から遠く、中途半端な軽いティンパニーのトコトコトコと鳴るロールの音と弦のトレモロが主体となっており、金管は遠ざけられているようだ。
第2楽章は、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロをつまびく楽章だが、テンポは遅めで、午睡に持ってこい状態になっている。睡魔に襲われ、避けることはできないようだ。不束者のワタシは眠い。

第3楽章は、「狩のスケルツォ」として有名だが、寝てしまった眠り姫の前に白馬の騎士が登場だぁ~となれば嬉しいのだが、姫は、まだまだ寝てしまいそう。ホルンの響きにトロンボーンが絡むが、重低音でバカバカと戦車が走って行くわけでも、戦闘機が急降下して降りてくるわけでもない。金管が弦に遠慮しているかのごとく迫力が不足している。3連符の「パンパン パパパ パーン」のフレーズの切れが悪いし、メリハリ感が少ない気がする。

第4楽章は、短い金管のパッセージが集約されて、エネルギーを放出するような楽章だ。あちらこちらの教会で鐘が鳴っている感じがして、素朴な舞曲のような歌として、ハレの日のような幸福感に満ちている。しかし、最後の楽章だけは、どどどどぉ~っと怒濤のようなエネルギーを重厚に描こうとしているようで、厚塗りの響きとして聞こえる。ラストだけ、物語風にストーリーを描こうとしているようで違和感を感じた。陰陽のような明暗が、楽章のなかで、また楽章間で組み合わさっているのに、それを無理して均一化しようとしているのか、凹凸をならすかのような演奏に聞こえる。2+3連符が続くシンプルなリズムの連続を、おしなべて均一化しているような気がする。凸凹の方が面白いのではないかしらん。


■ ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ ザールブリュッケン放送交響楽団 1998年
Stanislaw Skrowaczewski
Saarbrucken Radio Symphony Orchestra

スクロヴァテフスキの演奏は、ゆったりと聴かせ、物腰の柔らかいライブ演奏だ。冒頭、靄の中から旋律が浮き出てくるが、さほど自己主張が強いわけでない。金管が合わさってきても、ゆったりまろやか、自然に音量とテンポが膨らんでくる。膨らんだ後に急激に萎む演奏だと、極端すぎて疲れる場合があるが、スクロヴァチェフスキの演奏は自然体だ。さほど威圧的でもなく奥ゆかしい。冒頭の主題が戻って木管と絡む場面は、もの悲しい雰囲気すらする。和音はすこぶる美しく、しおらしい女性的な演奏と言えば良いだろうか。響きもフレージングも柔らかく暖かく。抑制された美意識を感じる。楽章最後では、ホルンのぱぁ~ぱぱ ぱぁ~んというフレーズ後の和音を大事にして、木管の合いの手も浮かびあがらせてくる。

第2楽章は、オブラートに包まれたような柔らかさがある。金管がまろやかで芯が欲しいほど。美しく溶解しそう。中間部で弱音になり、弦が、時計の振り子のようにチャカチャカチャンチャンと聞こえてくると、目覚めろと言われているみたい。金管が和音を奏でるところは、また、ゆったり。第3楽章から以降は、森から馬が走ってくる感じがするスケルツォ。もう少し迫力が欲しいところだが、ここでは、ソフトに演奏されている。低弦の刻みがもう少し厚みがあって欲しいかも。少し曖昧模糊としているかもしれない。最終楽章の演奏は、盛りあがるが迫力に欠け、靄のかかった世界から抜け出せない。低弦の響きが、幾分ボコボコしており、弦のピチカートが明瞭に響けば嬉しかったかも。蛇足ながら、ザールブリュッケン放送交響楽団と記載しているが、現在このオケは、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団という。1990年代末頃に放送局が統合され、放送局に付随するオケも名称変更になったようである。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
クルト・ザンデルリンク バイエルン放送交響楽団 1994年
Kurt Sanderling Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks(Bavarian Radio Symphony Orchestra)

ザンデルリンクさんが、1994年、ミュンヘンのヘルクレスザールで振った時のライブ盤(ハース版)である。冒頭の原始霧は、ホルンの音がストレート気味で吹かれている。木管があわさってくると光が射し込んでくる感じで、最初は短めだが弦があわさってくると、太陽が勢いよく射し込んで世界が変わってくるような感じがする。ふわーっと広がり初め、音が立ちあがってくるにつれて、横にいっきに広がってくる感じがする。そこに、低弦のリズムが、重厚で膨張してくる。タンタン タタタ タンと繰り返すにつれて、重厚さを増し、ぐいっと引き締まったリズムになる。なんと堂々とした演奏なのだろう。 息が深く広がっていく感覚は、自然感たっぷりに演奏されている。息づかいが深々として、木管の音色が乗っかってくる。透き通っていく光のような木管と、全体的に木質感のある音色で、明るい雰囲気を醸し出してくれるところには、絶品だ。しなやかな金管の音色に惚れ惚れ。バイエルン放送響の金管は美しい。ゆったりしたブルックナーで嬉しい。ホルンが吹かれるところは、なんとも言えない至福の時間だ。

第2楽章は、アンダンテの楽章として低弦の響きが素晴らしい。手のひらに木漏れ日が射しこんでいくような、慈愛に満ちた演奏で、カラダ全体が、ふわっと柔らかい光に包まれ舞い上がれそう。これで寝たらバチがあたります。自然のなかに神が宿っているというのが信じることができるような世界だ。単なる遅めの演奏じゃん、これはツマランで終わりそうにも思うが、ワタシ的には、ここのオケの金管は、すごーく神々しさを感じさせ、一筋の光が射しこんでくるかのような気がする。16分19秒というクレジットだが、時間が止まりそうな感覚でしょうか。
第3楽章は、霧のなかから、ホルンの音色と共に、鬱蒼とした森のなかから白い馬が走り出すような、そんな情景を描いているような感じがする。付点のついたリズムが、活き活きとリズミカル。柔らかく、適度なまろやかさでよく響く。低弦のコントラバスの響きが、すごく聞こえてくる。堅牢でもないし筋肉質的でもなく、ガツンっと演奏しているわけでもないが、オケの響きが幻想的ななか立体的に立ち上がってくるという感覚があり、とっても楽しく面白い。

第4楽章は、川のせせらぎが集まってきて、放出されるダムのような感じがする。金管の音はエネルギッシュで、低弦の響きは地響きのような感じで蠢く。穏やかではあるが、クネクネと動いている様が描かれ、地響きを立てなくとも熱が感じられる。柔らかく優しくうねるようなエネルギーだ。勢いに任せて一気に勝負をつけようって感じの演奏もあるが、金管の柔らかな響きのなかで、弦が動き、木管が優美に歌っており、背中がゾクゾクするほどに美しい。さっぱりした歌い方だが和音が美しく、響きに幅を生むように、そっと寄り添うように鳴ってくる楽器群がいる。最後のコーダに入ってくるところは、力強く演奏されるが、あくまでも慈愛に満ちた柔らかさがある。あ~ダメだっ、こんなに美しく鳴らされると涙目になってしまうではないか。豪快に鳴らしてくる演奏も大好きだが、この演奏にはやられました。涙なしでは聴けないほど大きい。じっくり聴く方にはお薦めの演奏。いついかなる場合でも、いくらでも、次々と扉が開いて、ふんわり招き入れてくれる懐の深さを感じさせてくれる演奏だと思う。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ギュンター・ヴァント ベルリン・フィル 1998年
Günter Wand Berliner Philharmoniker (Berlin Philharmonic Orchestra)

ヴァントの演奏は、硬質、堅牢、強烈なパワー。有無を言わさない押し出しの強さに圧倒されるライブ演奏である。巨匠と仰がれていたヴァントさんのブルックナーのライブ盤で、1998年1月から2月のベルリン・フィルとの演奏。ライブとして、数種類が発売されていた。4番だけでも、ケルン、北ドイツ、ミュンヘン・フィルの演奏があった。わかる範囲で書いておくと~ 1976年 ケルン放送響、1990年 北ドイツ放送響、1998年 ベルリン・フィル、2001年 ミュンヘン・フィル、2001年 北ドイツ放送響、ほかにもあるかも。このベルリン・フィルとの演奏は、真打ち登場かと思って聴いた。
冒頭のホルンは、ふわ~っとした雰囲気があり、早い段階から奥まったところで弦の響きが感じられる。ヴァイオリンの軋み感のあるフレージングは硬質で、チューバが入ってくると金管のストレートな音が全開となり、めちゃめちゃ力強い響きで圧倒される。キツイな~と感じる堅牢さで、ぐぐっと圧をかけて出てくる音のパワーには、タジタジ状態になってしまうが抗えない。特に、強奏部分の金管の押し出しは、相当なもので、弦がオルガンのように響く場面にも遭遇する。賛美歌を歌うかのような金管は神々しいというより神々が怒っているような、和風で例えると閻魔大王のごとく屹立している。怖すぎ。

第2楽章は、牧歌風の柔らかい香りのする楽章だ。ピチカートの響きはソフトフォーカス的に響き、ホールの奥行き感を感じ、残響もやや多めのようだ。フルート、ホルンは柔らかく、中音域の弦が動きかけると、穏やかで緑豊かな草原を歩いているような爽やかさが生まれてくる。この楽章も、ラストに向けての盛りあがりは、猛烈で、トロンボーンとチューバの迫力のまえに、ひれ伏さんばかりとなる。目の前に、垂直にそびえ立つ、絶壁が存在しているかのようだ。

第3楽章は、ワクワクするスケルツォの楽章だ。だが、狩りを楽しむという余裕はない。ホルンのトリオが吹かれると、ガンガ ガガガ ガガガ ガンと鞭を打たれ、猛牛たちが、どどどどーっと走って行くかのような光景となる。ホルンの柔らかいフレーズを覆い被さるかのようにトロンボーンの太い音が鳴らされる。特に3連符の「パンパン パパパ パーン」の勢いには参ってしまった。ティンパニーが大きく、低弦の響きとともに、どどど どぉ~っと叩かれている。憎たらしいほど野生的な演奏で驚かされる。

第4楽章は、打楽器を中心に、短い金管のパッセージが集まって一気に爆発する。あふれんばかりの大洪水なのだが、短いパッセージは、渦を巻いているかのように響いており、地面に叩きつけるかのように打ちおろす。コーダ部分の迫力は、荘厳というより、峻厳な感じで、やっぱり、ヴァントさんの演奏は厳しいという言葉が相応しいと思う。舞曲風のフレーズにも、ヴァイオリンはエッジが立っており、クールな顔が隠れている。ティンパニーのロールは、もう底が抜けそうになるほどの強烈な音。オリエンタル調の風変わりな旋律は、テヌート気味に、まったり演奏されているが、う~ん、なんと言う二面性。まるでヤヌス神のごとく、腹立たしいほどに両極端に位置している。いや極端から極端に走って行く。ヴァントの演奏は、2つの世界をあからさまに描き、柔らかい主題は神のごとく柔らかく。強烈に叩くところは圧倒的なパワーで打ちのめす。顔の表情が一変させる強烈な怖さ。久々に聞き疲れてしまった演奏である。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
クラウディオ・アバド ウィーン・フィル 1990年
Claudio Abbado
Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

アバドの演奏は、ふわーっとした演奏で始まり、最後は、華麗にド迫力で終わる。第3楽章のスケルツォは、まるで戦闘機なみの勢いがあって驚かされる。ハイティンク盤と同じウィーン・フィルの演奏だが、アバドの演奏は、スタイリッシュだ。冒頭の原始霧は息が長く、想定以上にまろやか。低弦のアクセントも効いており、ブラスが入ってくると重厚な響きを発する。テンポは遅めだが、重さと軽さを持ち合わせて、一気に天上に昇らせてくれる。第2楽章は、疲れた英雄が休んでいるかのごとく、力果てた感じで、老体という感じで、のどかな楽章となっている。実は、何度となく寝てしまったことがある。

第3楽章は、遠くで戦闘ラッパが鳴っているかと思ったら、いつの間にか戦闘機が急降下し、爆音だけ残して上空に去ってしまったかのような迫力がある。スピードがあり幾分軽めで金属音的な響きがする。中世時代とか、森林地帯というイメージではなく、かなりメタリック系の雰囲気がする。このアバドの演奏は、高音域は良く透っているが、ややもすると重量感が欠けていると言われる要素に繋がる鴨しれない。この爆音の間に室内楽的に弾かれる箇所があり牧歌的ではあるのだが、遠くでホルンが鳴りはじめると、またまた爆音が飛来してくるという案配で、平和なのか戦闘状態なのか忙しく、そして極端だ。
第4楽章は、メチャ重い出たしで、あまりにも重々しいが、艶っぽい音色で重厚で華やかな響きを放出する。金管類もたっぷり吹かれており、弦の表情も豊かで極楽極楽~という状態だ。また、絹糸たっぷりの雰囲気で、どことなくアラブ的というか中央アジア的という香りがする。アバド盤での第4楽章5:16すぎの和音が好きだが、いったい何音重なっているのだろう、聞き惚れてしまった。おおっ、今度は、閻魔大王のような厳めしい形相に変わった。さきほどまでは天上に居たのに、太い杭を打たれるような感覚で別世界行きとなる。音量、音圧が十分で、豊かさと畳かける迫力があり、微妙な変化もよく聞こえ、和音の重なりも、たっぷり重厚で、かなり素敵な演奏である。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
クリストフ・フォン・ドホナーニ クリーヴランド管弦楽団 1989年
Christoph von Dohnányi The Cleveland Orchestra ハース版

ドホナーニの演奏は、音に濁りがなく極めて端正でクールだ。金管の和音はピュアな美しさを描く。それでいて、じわじわ~っと地熱のように熱い。ドホナーニのブルックナーは、クリーヴランド管とフィルハーモニア管の演奏がある。クリーヴランド管とは3番から9番がCDが発売されたが全集にはならなかった。この89年録音の4番は、見通しの良いバランスの良い演奏で、隅々まで光が当たっており、全ての音が綺麗に出ているという感じで聞くことができる。あまりにもスッキリしているので、面白みに欠けると感じることがあった。あまりにも明晰に響き、声部の濁りなくスマートで、機械化されたかのような近未来的な演奏だと感じたわけ。でもまあ、ブルックナーの楽曲で情感たっぷりという演奏も気持ち悪いし、田舎くさい演奏も、どうも~ぱっとしない。分厚く堅牢すぎるのも、聴く時によっては疲れ果てる。で、ドホナーニの演奏は、淡々と時間が流れるような、ナチュラルな気持ちをベースにして、ところどころ凸凹しているので、まあ、聴きやすいのかもしれない。無口でいながら、しっかりアプローチされ構築していく手腕は、的確だし綺麗な響きとして、蒸留水を味わっているかのような気がする。音の響きの美しさ、ピュアな感覚で、喉ごしすっきり~とした味わい(CM的で俗っぽいが)で美しい。

第2楽章は、しっとりと木管のフレーズが聞こえる。音に密やかさがあり静かな祈りのようだ。響きがオブラートに包まれたかのような柔らかさ。わずかな木漏れ日を探しているかのよう。まるで修道院の一室で、若い修道僧が祈っているかのよう。つまらん淡々としすぎた演奏にも感じるが、いやーっ、なかなかに深い気がする。論理的というより、客観的で、静かな瞑想をしている雰囲気がある。楽章の最後の方で、金管が大きく吹かれるところがあるが、決して強奏していない。
第3楽章は、遠くからホルンが聞こえ、一気にはじける。上品で弱音の美しさがあるが、う~ん、もうちょっと迫力が欲しい。他盤で聴くと、まるで重戦車軍団が疾走しているか、急降下してくる戦闘機のような迫力満点の演奏がある。俗っぽいワタシにとっては、このド迫力も大好きだ。でもまあ、さすがにドホナーニには激しさはない。白馬に乗った騎士が現れるわけでもない。キッパリ、さっぱり金管を吹かせている。スケールが欲しいが、そのかわり音に濁りはない。楽章の最後は、ボリュームが出てくるが、金管の和音の綺麗さにはうっとりさせられる。じわっと熱くなり、納得させられちゃう。ブルックナのスケルツォの面白みが、浮き上がってくるかのようで、玄人好みだろうと思う。

第4楽章は、穏やかだが、じわっと地熱のように熱い。金管の響きが中心に据えられているが、弦の動きもしっかり感じとることができる。リズムをきっちり刻んでぶれない。オリエンタル風の旋律も過剰な演出はしない。ねちっこく粘るフレージングで演奏する場合もあるが(これも好き)、スッキリ演奏している。味付けは淡泊だけど、立体感が浮かび上がってくるので美しい演奏に仕上がっているように思う。なかなかに新鮮で、ブルックナーの楽曲が、こんなにスッキリ綺麗に聞こえてくるのは驚き。スッキリしているが、密度の高さを感じさせる演奏なので、豊かさも新鮮さも感じられるってことかもしれない。奇をてらった感じは全くせず、素材を生かした料理のようで、ある意味、かなりの上級者向けで、解る人には解るって感じの演奏なのかもしれない。もし、他の演奏で雑味を感じたら、このドホナーニの演奏を聴いてみてはどうだろう。


  ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ジュゼッペ・シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン 1987年
Giuseppe Sinopoli Sächsische Staatskapelle Dresden(Staatskapelle Dresden)

シノーポリの演奏は、ホルンを初めとした金管が、まろやかで軽やかな響きを出してくる。綺麗に立体的に広がる演奏だが、どこかマーラーのよう。録音状態は良いのだが、ボリュームの調整に手間取ることもあった。繊細で女性的な演奏で貴婦人のような雰囲気があるのだが、テンポが変えて歌うようなフレーズに仕上げていっるので、悪く言えば船酔い状態になるかもしれない。ブルックナーの演奏って、かったるいぐらいに、同じテンポで刻んで刻んで、地道に構築していく石組みの建物のようなものだと思っているのだが、シノーポリの演奏するブルックナーは、縦横無尽に自由に扱って、ところどころ糸引き納豆みたい粘る。とても綺麗な演奏なのだが、旋律の伸び縮み具合にはドン引きしてしまう。ブルックナーで、劇的に振らなくても良いんですけど。これは、いくらなんでもやりすぎで生理的に合わない。
第2楽章は、まるでマーラーのアダージョ楽章のようで、かなり異質だ。マーラーだと振幅の大きさ、恍惚感、陶酔感のあるエロティックさ、フレージングのねちっこさは許容範囲なのだが、でも、ブルックナーは・・・真逆じゃーないだろうか。個人的には、ブルックナーを聴きたい時は、どこか永遠に続くかのような錯覚、大きなものに包まれたい気分で、疲れている時なのだ。マーラーを聴きたい時は、自分自身が、とっても元気な時で、エネルギーがブツブツと隆起して放出したいような時である。まあ、身勝手な聴き方だが、シノーポリの演奏は、ブルックナーがマーラーのように変貌しており、うーん、目眩がしてしまう。

第3楽章からラストまでの演奏は、ホルンをはじめとする金管群の響きは醍醐味だ。女性的ではあるが、綺麗だし格好も良い。ブロムシュテットさんとカペレの演奏を、ちょっとスタイリッシュにしたような感じに聞こえる。耳に馴染むまで聞き込めば、面白い風変わりな演奏なのかもしれないが、ワタシ的には、無窮動でやってほしい。そんなに、ブルックナーに劇的な要素を入れ込まないで欲しいと思ってしまう困った演奏である。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
リッカルド・ムーティ ベルリン・フィル 1985年
Riccardo Muti Berliner Philharmoniker (Berlin Philharmonic Orchestra)

ムーティの演奏は、高音域に透明度があれば良いのだが、剛柔あわせもったしなやかな演奏だ。冒頭の原始霧は、ふわーっと出てきて、まろやかさが感じられる。ベルリン・フィルだとヴァントの演奏を聴くことが多いが、硬質でカチカチキチキチ、しかしムーティの振るオケは、ふんわりとした膨らみの多い、しなやかなフレーズだ。弱音と強音のメリハリが大きく、鳴らすところはダイナミックにならす。恐ろしい音で鳴って雷みたいに響く。盛りあげ方も巧く音圧を伴って、ぐぐっぐぅ~とあげていく。さしずめ 高級スポーツカーのエンジン・トルクのようで加速の度合いが大変心地良い。癖になりそうなほどの快感がある。金管も弦に埋没せず、しかし、突き抜けた感じに鳴らないところも絶妙なバランス。特に、ホルンが本当にまろやかに響いており、楽章のラストは聴き応えバッチリ。

第2楽章は、語りに似た楽章で、楽器が入れ替わりに旋律を受け継いでいく。 やっぱりアンサンブルが巧い。歯切れの良さ、テンポの設定、間合いのとりかたが、ベテランの妙技という域に達している。この時、ムーティは、まだまだ若いのだが天性としか言いようのない巧さがある。ぐぐっ~っとテンポを落として盛りあげていこうとする手腕は、これは天性だろう。ぐいぐい引き込んでくる強みがあり、三次元的な彫像、立体的に鳴る響きに気持ちが鷲づかみにされる。
第3楽章は、テンポよく進み推進力がある。ごごごーっと、地下から這いあがるほどではないし、重戦車が走るという感じでもない。威圧感や重圧感は、さほどリアルではないのだが、頭の上を天馬が駆けていくという感じに近いだろうか。どこか、ふわっとした空間を描いている。おそらく、金管が遠くから響いてくること、3連符の「パンパン パパパ パーン」のフレーズの最後の音が短く、はっきり聞こえること。ティンパニーが快速トリルであること。まろやかに響く金管の残響のせいだと思う。教会での録音なのだと思うが、響きが、上の方に高くに舞いあがっていく感じがする。それに、低弦の推進力があり、下支えをしているおかげで、響きが弾力を持って上にあがるのだろう。とても楽しい演奏だ。

第4楽章は、ぐぐーっと「G」をかけてテンポを落としたり、微妙に加速したりする。アバドやシノーポリの演奏ように、劇的ではなく、ブレーキを掛けたりアクセルを踏んだりして、速度を変更しているわけではない。自然な感じなのに、「G」がかかる。う~ん。不思議な感じがする。微妙にするっと加速したり、しれっと減速したりしている。伏線になっている旋律や低弦、別の推進するリズムを、微音ではあるのだが耳に届くのが嬉しい。耳が、そばだつ嬉しい演奏である。開放的で歌うブルックナーというのも、なかなか格好が良く、ものすごく新鮮に聴こえる、別のアプローチから企画提案されたような嬉しい演奏だ。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ベルナルト・ハイティンク ウィーン・フィル 1985年
Bernard Haitink Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

ハイティンクの演奏は、ホールトーンがあり、壮大で優美な絵巻物を見ているような視覚的要素を感じる。テンポは遅めで冒頭のホルンには余韻がある。大きなスケールで低音が堂々と鳴り、ゴツゴツしたダメ押しのような感じでティンパニーが長く響いたあと、極めつけの怖い一撃が鳴る。しかし、勢いがなくフレーズが流れていかない。ちょっと重い感じだ。弦の伸びは、ウィーン・フィルだかあ壮麗さを感じさせるもの。和音がの響きうっとりするほどの美しさ。中間部の美しいメロディーは遅く、音のボリュームや音の上り下りに勢いがないため弛緩しがち。諦め気分になってきた後半で、ようやく2拍子連続で推進力がついてくる。
第2楽章は、温和しく、瞑想的に逍遙している感じがする。この楽章は速め。第3楽章は、派手でも豪快でもなく、マイルドなスケルツォだ。個性に欠けて、パワーも不足気味。

第4楽章は、旋律を膨らませ、杭を打つ感じの演奏となっており、ちょっと身が引き締まる感覚で、チューバとトランペットの音が、まろやかでありながらも粘り強く吹かれ、木管と弦が天上の世界を描いていく。ようやく、最終楽章でもりあがってくるようだ。内省的であり、精神高揚もあり、いかにも清潔な演奏だ。歌うところは歌ってくれ、上下2つの世界に分かれた壮大な宗教的壁画が広がっているかのよう。この上下の世界の岐路に立った迷える魂。天上に昇りたい魂が、行きつ戻りつしているようで、 いささかまどろっこしい演奏だが、慟哭もせず情感過多にもならず、淡々と誠実で真面目に人生をやってきました。その結果を待っていますという感じで、最終のコーダを迎える。結論的には、迷いながらも、なんとか救済されたらしい・・・という安堵の気分で終わるのだが、う~ん、それまでがねえ。待たされ続けた感じがして長すぎる。最後になって、壮大な絵画が目の前に広がってくるのだが、そこまでの過程が長い。ラストでは、美術館で絵画を見ているような気分になるのだが、オケに助けられた感もする。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ハインツ・レーグナー ベルリン放送交響楽団 1984年
Heinz Rögner Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin (Berlin Radio Symphony Orchestra)

レーグナーのブルックナーは、超快速バージョンである。幾分残響が多めで、当時の東ドイツの録音は、水分量が高いというか潤い感があるようだ。森林浴気分のような心地よさを感じつつ、これは違うだろうと思うほどの快速バージョンで演奏される。原始霧から始まるが、霧が一気に晴れてきてハイ快晴ですよ~と言われる。快速だが、ポンポン切っては投げという乱雑さは感じない。音がのぼりくだりするところは一気に行くが、しなやかで柔軟性が高いためか強引さは感じない。ブルックナーを聴き始めた頃、ワタシ的には、このレーグナーの演奏で、楽曲に馴染むことができた。若々しいリズムで、マイナスイオンたぷりの木々の間で、ハンモックをぶらさげて寝ているような森林浴の気分だった。
第2楽章は、テンポよく進むが、これはどうやら森林のなかを散策しているようだと思うことができる。京都の哲学の道ならぬ思索の道なのかもしれない。自然の風景と瞑想シーンのようで、回想的な雰囲気で穏やかになれる演奏だ。

第3楽章は、ホルンの音色とトランペットが、はるか彼方から聞こえてくる。ティンパニーと共に膨らんでくるのだが、ある意味緩いかと思うほどのソフトな響きだ。重い演奏もあるなかで、かなりソフトな風合いだ。狩りでも始める合図としてホルンが吹かれるが、小さな小動物が走り回っているように、パンパン パパパ パーンという2+3の拍子が続く。ティンパニーは、このソフトな感覚を引き締めてくれる存在となっている。
第4楽章は、難しいテンポで幕が開く。劇的な雰囲気のする楽章で、天上的な美しさがあると思ったら悪魔的な響きがあり、迷い、錯綜するかもしれない。パッチワーク的に主題が切れ替わり人生模様を織りなしているよう。平凡な表現かもしれないが耳障りの良い演奏でわかりやすいので、初めに聴く方が良いかもしれない。ちなみに1楽章15:10、2楽章13:33、3楽章10:50、4楽章18:23 トータル58:07。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団 1981年 ノヴァーク版 
Georg Solti Chicago Symphony

ショルティの演奏は、勇壮豪快な演奏で、重戦車軍団のように荒野を走り回っているような演奏だ。独特のリアル感がある。冒頭、原始霧が一気に晴れるダイナミックな立ち上がりで、付点のリズムが明確に響く。口調のはっきりした2+3連符で、「た~らら らったった た~らら らったった」と勇ましい。金管バリバリの一辺倒ではなく、マイルドな響きもあり、歯切れ良く、小気味良い演奏だ。アクセントのついた先頭と、語尾が弱くなる金管の吹き方、活き活きとエネルギーが放出される。特に、金管が綺麗で、勢いの良さにやられる。聴くものにとって、活き活きした音は喜びが大きい。たまに音量の大きさに度肝を抜かれるが、コラール風の金管のハーモニーには、華麗な音色で揃っており思わず拍手したくなる見事さ。開放的で明るく華麗。

第2楽章は、テンポはゆったり~ 「ららら~ れ~ら~どしら そ~ら~ れ~ら~みれど~しら らそふぁ~」このフレーズが、各楽器に受け継がれていく。 「ららふぁ~みふぁれ~」この短いフレーズが繋がっていく。息の深い和音が、敬虔な気持ちにさせるアダージョで、フルートをはじめとする木管の響きが優しい。鳥が鳴いているような「れみれっれ れみれっれ」チャカチャカチャチャ・・・ 楽しいフレーズで彩りを添えている。最後、大きなクライマックスを形成するが、弦の響きに金管に被さって、あまり綺麗に聞こえなかったのは残念。

第3楽章は、スケルツォの楽章で期待大なのだが、綺麗に揃っていない。白馬に乗った騎士が、城から走って出てくる前に、馬から転げ落ちてしまった感がする。尻上がりに迫力が出てパワフルに決めてくれるのだが、中間部分の牧歌的なフレーズは、さらっと流してしまった感じがする。5回程度、冒頭の主題を繰り返す。ようやく最後になって、重低音で猛烈な勢いで圧をかけて、ぐぐぐい~っと走れたような気がする。走り去った後、猛烈な砂埃が舞いあがった感じで。ぐふっ、ごっつい太い足の馬のような、アフリカ大陸のムーの河渡り軍団のような~ そんな走り方だった。なにせ馬力あるシカゴ響、強烈な軍団である。
第4楽章は、金管のパッセージが集まって音が飛んでいる。ものすごいエネルギーの高揚があり、たまりかねて「み~み~どぉ~ どどれ みしっ~み ふぁ そ ら~っし~」と放射される。壮麗なファンファーレが鐘のように鳴り、派手で荒々しい。主題が替わりオリエンタル風の旋律になるが、ちょっと硬め。戦闘的なフレーズになると、俄然、燃えるオケだ。整然とした丁寧さには欠けちゃうが、熱さにほだされるから、まあ良いかぁ。ショルティの演奏は、豪快で鳴りっぷりが良い、スケールの大きいことは認めるが、まるで、重戦車軍団が荒野を走り回っているような感覚で、若い頃に聴くのにはお薦め。でも~ ある程度聞き込んでくると、馬脚が表れ、敬虔さなどの心理面が欠けていると言わざるを得ないかも。その点は、惜しい気がする。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ヘルベルト・ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン 1981年
Herbert Blomstedt Sächsische Staatskapelle Dresden (Staatskapelle Dresden)

ブロムシュテットの演奏は、柔軟で、まろやか、のびのびした演奏だ。木のぬくもりを感じさせてくれる。原始霧が静かに沸き起こると心が安まる感じがする。厳しくなく自然体で穏やか、のびやかである。朝の風景が自然と目に浮かび、湖面に靄がかかり、それが、ふわ~っと、しずかーっに風が吹いて晴れてくる印象だ。幾分、テンポは速めだが、無理強いしないので、さらりと流れる。金管は柔らかく、 ティンパニーは遠くで、じわーっと響く。しかし、天上の音楽を奏でるという感じではない。自然という言葉しか見あたらない。第2楽章は、ブロムシュテット盤は、瞑想的で心地よい。第3楽章は、穏やかなスケルツォで、強烈な演奏を聴いた後だと、拍子抜けするほど。上品で、のびやかで、威圧感ゼロに等しい。

第4楽章は、あくまでも優しく、あるがままに受け入れてくれそうな懐の太い寛容を感じる。一言で言うと「慈悲深い」というか。ブロムシュテット盤は、壮大な宇宙や宗教観ではなく、観念的でもなく別世界にも飛んでいかない。普段の身近な、ほんのちょっとした事象のなかで、じわじわーっと気づかせてくれる演奏で、肉親の愛情が籠もっているかのよう。 敬虔で控えめな感じの演奏だが、最後には、じわじわーっとくるものがあり、背中をポンと押されて、さあ次の劇の幕が開くわよ。がんばりなさい~と言われ、後ろ押しされたことに感謝する気持ちが湧いてくる。この演奏を聴き終わった感想は、ありがとう~という心境に。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ラファエル・クーベリック バイエルン放送交響楽団 1979年
Rafael Kubelik
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks(Bavarian Radio Symphony Orchestra)

クーベリックの演奏は、端麗辛口タイプではあるが瑞々しい。弦の張りつめた感覚が心地良く、これだけでも満足度が高い。冒頭 ぼわーっとした原始霧から始まるが、すでに静謐な空気が張りつめていて、見通しが良くなる。質実剛健で端麗辛口タイプで、歯切れが良く硬い感触がする。ぼわーっとしていないで、きりりと張り詰めているというか、凜としている感じだ。思わず唸って拍手したくなる柔軟性もあり、音の膨らませ方とか、聞こえないようで聞こえてくる低弦の音とか、微妙なバランスで整っている。テンポに勢いがあるため、推進力もあり聴いていて気持ちが良い。音の形が見えてくるような、声部が透けて見えてくるような、音の構成に対して見通しが良い演奏だ。また、奥行き感がありオルガンのように和音が聞こえ、クリアーに立体的に音が立ち上がってくる。

第2楽章は、いかにも姿勢の良い無駄のない演奏で、金管がストレートに吹かれる。太めの響きではなく、すーっと直球が投げ込まれてくるような印象で、弦の音も細身で、しなやかで明るい。第3楽章は、狩りをイメージさせるのホルンに勢いがあり、スピード感のあふれる演奏となっている。まるで、森のなかから白馬が走り出してきたような感じ。低弦の響きがしっかり下支えをして、リズム感あふれ、弦と金管が爽快に奏でられる。バイエルンの音色が最大限に生かされているという感じがする。木質的な響きで芯のあるしなやかさ。う~ん。素晴らしい。両翼配置なのだろうか、弦部に広がり感がある。スマートなくせに素朴さが残り、緊急降下してくるジェット機のような爆音状態の他盤の演奏とは次元が異なる。

第4楽章は、細身のくせに、まあ。なんて堂々としているんだろう。各パートの見通しの良さと共に、重層的に響くブルックナーの音楽が、しっかりとした厚みになっている。オリエンタル調なフレーズが、軽やかな舞曲で楽しく、アクセントも、スパイスも、たっぷり味わうことができる。しっかり歌って、しなやかにフレーズが入れ替われる。身のこなしがスムーズで鮮やかだ。ヴァイオリンのピチカートが女性的で切ないような音を出し、無骨なオリエンタルなフレーズと合体する。大変美しく惚れ惚れするような演奏である。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ルドルフ・ケンペ ミュンヘン・フィル 1976年
Rudolf Kempe Münchener Philharmoniker (Munich Philharmonic Orchestra)

ケンペの演奏は、身をよじってでも進む強さがあり、かなりタイトで厳しい演奏だ。1878年版 冒頭の原始霧は、弱音で緩やかに登場しているものの硬く、腰高く、金管が強く吹かれておりタイトだ。立ち上がっていくスピードが速く強烈な印象を与える。かなりのコワモテというのが第一印象だ。切れ良く、尻あがりにピンと跳ねる弾力がある。音が堅いので少し違和感を感じるほどに強い。リズムの刻みは明確でハッキリしており、特に、トランペットとトロンボーンの音が、直接的に耳に届くため強く感じる。その昔、ブルックナーの楽曲が苦手で、ベーム、ケンペ、ヨッフムを聴いてみたが苦手意識が定着し、ずーっと後年になってレーグナーとブロムシュテットの演奏を聴いて、これならなんとか聴けるかなと思った演奏だ。第一印象というのは、 後々まで印象に残ってしまうので、ロマンティックを聴く際には、ほとんど手が伸びない演奏となってしまっている。第2楽章は、マイルドな印象を受けるが、きっと金管が息を潜めているからだと思う。第3楽章は、細身でありながら意思が強く、硬質感の漂う弦の音で占められる。ホルンはマイルドだが、トランペットとトロンボーンが強すぎてつんざくように響く。跳ね回るような木管は軽快感を与えてくれる唯一の存在だ。フレーズも、軍隊調に聞こえる第一音、最後のダメ押し強いアクセントが気になる。細身でありながら、身をよじって進むような強靱なイメージを受けるので、凄みがあって怖い。
第4楽章は、口調がハッキリしているため明晰な感じがするが、あまりにも決然とした強い演奏なので、相容れない世界が、はっきりと分離して屹立しており、互いが融和せず対峙し、最後に火柱が立ちあがってしまうような感じがする。何かに取り憑かれたような、角張って突き進む特攻のようなスタイルで、どこか悲壮な感じを受ける。


 ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1975年
Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker (Berlin Philharmonic Orchestra)

カラヤンの演奏は、演奏自体が激しく、怒濤のティンパニーと、甲高い高音域のヴァイオリンの音色に圧倒される。冒頭の原始霧は、ホルンが朝日が射し込んでくる感じだが、抑揚が少なく単調気味だ。しかし、フルートが重なってくると輝き度が増してくる。でもね~ どどどどーっ、ティンパニーの強烈な洗礼を浴びてしまう。完全な確信犯だと思うほどの激しさ。真夏の日射しのように、焼けつく太陽を浴びてしまう。この演奏のLPジャケットは、白い羽根が美しく掲載されていたのだ。しかし、あれはイカロスの羽根だったのかもしれない。こりゃ~丸焦げ状態で墜落する。唖然とする一発をくらったあとは、柔らかく歌ってくれるのだが、なにせ、ヴァイオリンが、キンキン声できつい。怒濤のようなティンパニーが続き、金管の炸裂音が勃発すっる。1楽章だけで、もう十分というぐらいのトンデモない演奏だ。少なくとも心穏やかに、ふわーっとしたブルックナーを聴きたいなという場合には、止めておいた方が良いと思う。フルートや穏やかなホルンとか、奥行き感もあって美しい場面はあるのだが、柔らかくて、いいな~って思っていると恐ろしティンパニーがやってきて、雷のごとく叩き破壊してしまう。落差の激しい演奏なのだ。今、聴いても相当に疲れます。

第2楽章は、美しく牧歌的に歌ってくれるので生き返るが、傷口を癒やしてベッドで寝ていないとダメな状態だ。
第3楽章は、白馬に乗った騎士が駆け出してくるシーンを思い浮かべるが、カラヤンの演奏は、タカラヅカみたいで華麗な舞台芸術を見ている気がする。とても煌びやかで華やかだが、いかんせん、どや顔で騎士が登場してくるので、ドン引きしてしまう。ティンパニーは、相変わらず仰々しく、賑々しく舞台を設定し、金管が炸裂してくれる。奥行きのある残響の豊かな響きに、うっとりさせられるシーンもあるが、まあ、真逆の世界が並立しているので、ちょっと疲れ気味。

第4楽章は、音が集約され速くなって、一気にダムの放流のように吐き出される。厳しい音で直線的に描かれ、コーダ部分の迫力は、荘厳で金ぴか、彩度の高いハレーション状態のような音が出てくる。舞踏風のフレーズでは、残響を生かして幻影のように描かれており、テヌート気味に歌う。うっとりしていると、唐突に、凍り付くティンパニーが入ってくる。ひとつひとつのフレーズは、美しく調和されているのだが強烈すぎて怖い。夢や希望、シアワセを打ち破る悪魔が降臨する感じで、ある一瞬でキレマシタ・・・という異常心理の世界のようだ。ぞっとする二面性があり、 天才と狂気は紙一重って感じで存在する。ある意味現代的な演奏だとも言えるが、まあ、激しくて穏やかには聴いていられない。ここまでやると確信犯で、とても個性的である。


 出典:YouTube
ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner: Symphony No.4
オイゲン・ヨッフム ベルリン・フィル 1965年
Eugen Jochum Berliner Philharmoniker (Berlin Philharmonic Orchestra)

ヨッフムの演奏は、達成感を感じるような壮大な演奏だ。この演奏は65年の録音だが、1975年のシュターツカペレ・ドレスデンとの録音もあるので旧録にあたる。原始霧の出だしは、ゆったりしているが、一気にテンポをあげる。繰り返して奏でる旋律は、歌いたくて仕方ないって感じで、微妙にテンポが変わる。なんだか落ち着かないが、どど~んっと怒濤のように波しぶきをあげて、畳みかける迫力があり、急流くだりかと思ってしまうほどスピード感がある楽章になっている。
ヨッフム盤の旧録は、自然の大きな営み的な、堂々とした動かないという描写ではなく、山から清流が流れ出してきて~ だだっ~っと下ってきて、一気に滝になって落ちていく~ってな感じで、最後、滝壺にハマッタ感じのようで動かなくなってしまう。劇的な演奏で、ところどころで蠢き吠え、細くなったり太くなったり、エキサイトする面があったり想定外の行動が多い。なんだか落ち着かず、これだけ自由自在に演奏されちゃうとトンデモ盤に聞こえる。

第2楽章は、ここはメチャクチャ丁寧で、沈静しており、テンポが滞っているようにも感じられる変貌ぶり。こんなに遅いと、なんだか、はぐらかされたような気分になる。凄烈で推進力のあった前楽章との関わりは、いったいどう考えたらよいのだろう。
第3楽章は、ふわっと霧のかかった森のなかから白馬が出てくるとはいかないが、カッシリしたスケルツォで、リアル感がありながら、柔らかい演奏だ。弦のカシカシしたボーイングがあり、ホルンは柔らかい響きで、雰囲気のある牧歌的なフレーズである。弦に揺らぎがあり、フルートの響きが木漏れ日のようだ。音質は明るく、いつもの硬質的ではなく、バイエルン放送響のような木質的な響きである。

第4楽章は、クライマックスの作り方が速く、軽やかに進む。シンバルの一発、シャーンっとした響きで頂点を築く。ティンパニーの存在は圧倒的で、一本芯を通す役割を持っている。金管と打楽器でメリハリをつけて、いることは間違いない。頂点手前で、ちょっと間合いをとって、ガツンと一発かまされる。二面性を持つ楽章のなかで、この不思議な間合いは、氷河でクレパスを覗いたような怖さとなる。それでも、木管、特に、フルートとオーボエの響きにはうっとり。甘美な映画音楽のワンシーンみたいで官能的ですらある。自然的な響きで森林や高原に座っているよう空気を感じて、ラストに向かう。このラストの演奏は力強く、達成感を感じさせるものとなっている。後半の2つの楽章は、大変優美で壮大な演奏だ。


ブルックナー 交響曲第4番
1965年 ヨッフム ベルリン・フィル G ★★★★
1973年 ベーム ウィーン・フィル Dec
1975年 ヨッフム シュターツカペレ・ドレスデン EMI
1975年 カラヤン ベルリン・フィル G ★★★★
1976年 ケンペ ミュンヘン・フィル BASF ★★★
1979年 クーベリック バイエルン放送響 CS ★★★★★
1981年 ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン De★★★★
1981年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★★
1982年 インバル フランクフルト放送響 Teldec
1984年 レーグナー ベルリン放送交響楽団 DS ★★★
1985年 ハイティンク ウィーン・フィル Ph ★★★★★
1985年 ムーティ ベルリン・フィル EMI ★★★★★
1987年 シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン G ★★★
1987年 ホルストシュタイン バンベルク響 R
1988年 スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン DS
1988年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI
1989年 ドホナーニ クリーヴランド管 Dec ★★★★
1990年 アバド ウィーン・フィル G★★★★
1998年 ヴァント ベルリン・フィル R ★★★★★
1994年 ザンデルリンク バイエルン放送響 Profil ★★★★★
1998年 スクロヴァチェフスキ ザールブリュッケン放送響 OEHMS ★★★
2006年 ラトル ベルリン・フィル EMI ★★★


 

YouTubeでの視聴

ブルックナー 交響曲第4番
Bruckner Symphony No. 4 in E-Flat Major, WAB 104 "Romantic"
Simon Rattle  ラトル ベルリン・フィル 2006年
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jGGIUloy1rc
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=pTl3sLJbXak
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Zjnnbusrwyg
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=1gUq8nHEFw8


Bruckner Symphony No. 4 in E-Flat Major, WAB 104 "Romantic
ブルックナーの交響曲全集(00番~9番)が、一挙にまとめて掲載されているページがありますのでご紹介しておきます。https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kNSULhaCkqViXBtz1o9WIrYAIdMj2nFTw


Bruckner Symphony No. 4 in E-Flat Major, WAB 104 "Romantic"
(1878 Version, ed. W. Carragan) 動画は1878年稿・キャラガン版
バイエルン放送交響楽団 - トピック ザンデルリンク バイエルン放送響
Provided to YouTube by NAXOS of America
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Gi4iiM-GQpQ
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=PLM4juzCTXc
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=P7AbMQ3kJ14
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=IVPPdCmI-KI


Bruckner: Symphony No. 4 in E-Flat Major - "Romantic", WAB 104 - Version 1878/1880
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック  アバド ウィーン・フィル 1990年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Z1jmOIUKteQ
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=8xMlR-yrsvA
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jvB3RwXO8Ew
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=_5_dtASRK54


Bruckner: Symphony No.4 in E flat major - "Romantic", WAB 104
クリーヴランド管弦楽団 - トピック Cleveland Orchestra - Topic  ドホナーニ クリーヴランド管 1989年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Gybeenk-ClA
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=93CHYxaAZLE
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=SNx_m441ko4
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=v_7yxJhD0Jg

Bruckner: Symphony No.4 in E flat major - "Romantic"
シュターツカペレ・ドレスデン - トピック シノーポリ
Staatskapelle Dresden - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=_Y3YHgvRYJs
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=kWtwN02SGZI
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=10VPqbGMKls
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=2OT2UOl-3jk


Symphony No. 4 in E flat 'Romantic'
リッカルド・ムーティ - トピック Riccardo Muti - Topic
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=6np1QJm2KFs
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=mLoTXLTm5lQ
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=4ieHvx9WJW4
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=39nm5wI91R8


Bruckner: Symphony No. 4 In E Flat Major - "Romantic", WAB 104 - Version 1878/1880
Herbert von Karajan  ハイティンク ウィーン・フィル
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=5SO_CciBV6U
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=zK10c9sn-h0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Cnc_D2Faq8c
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=uf0qsUeXCac


Bruckner: Symphony No. 4 in E-Flat Major, WAB 104 "Romantic"
ハインツ・レーグナー - トピック Heinz Rögner - Topic
Provided to YouTube by Kontor New Media GmbH
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jQ2IO2Us5UI
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-CFudEyXHEA
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=KVGM8Tr8HpQ
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=KsjgDg7icEs


Bruckner: Symphony No.4 In E Flat Major - "Romantic", WAB 104
シカゴ交響楽団 - トピック Chicago Symphony Orchestra - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=7xPOskdMOb0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=uTvYeoVQ-Es
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=5uig9F6Teds
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Hyzw4xuMbPs

出典:YouTube
Symphony No. 4 in E-Flat Major, WAB 104 "Romantic" (1878 Version)
Munich Philharmonic - トピック  ケンペ
Provided to YouTube by NAXOS of America
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=S85_kTEdRGY
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=bKKi1wTheFs
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=uJ2JQdiAnYA
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Ms5nfER-Zl0

Bruckner: Symphony No.4 in E flat major - "Romantic"
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック カラヤン
Berlin Philharmonic Orchestra - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=GIHvGZ344FM
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=gtDz8fZFAdQ
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=_NbBQbvVFGM
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=p_bXkRN_pGE


Bruckner: Symphony No. 4 in E-Flat Major "Romantic", WAB 104
オイゲン・ヨッフム - トピック Eugen Jochum - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=6YS-3JK1dQs
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=dysuajT5VDo
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=d56hJJYtmj8
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=B_EZjgtqx_s


ページトップに戻る