「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ヒンデミット 交響曲「画家マティス」
Hindemith: Mathis der Maler


ヒンデミットの「画家マティス」は、1934年に作曲されています。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、ヒンデミットは、1895年生まれの作曲家で、指揮者として、また、ヴィオラ、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノなど様々な楽器を弾きこなす多才な演奏家だったそうです。
交響曲やオペラだけでなく、オケを構成するほぼ全ての楽器のためのソナタを作曲しており、初期の作風は、後期ロマン主義や表現主義の影響が濃厚でしたが、1920年代より、新即物主義、新古典主義へ移行したと言われています。しかし、バッハの対位法を好み、グレン・グールドは「ヒンデミットは現代の数少ない真のフーガの名手である」と彼の対位法技術の高さを評価していたそうです。

画家マティスは、同名のオペラも作曲していますが、その素材を生かして交響曲として作曲しており、「画家マティス」とは、16世紀の画家、マティアス・グリューネヴァルト(Matthias Grünewald)のことです。3つの楽章で構成され、各楽章には、「イーゼンハイム祭壇画」(Isenheim Altarpiece)に、ちなんだ題名がつけられています。

第1楽章「天使の合奏」(Engelskonzert )
オペラの前奏曲に当たり、序奏付きのソナタ形式となっています。トロンボーンで提示される第1主題は、ドイツ民謡である「3人の天使が歌う」から引用されたもので、フルート、ヴァイオリンにより第2主題が演奏されます。

第2楽章「埋葬」(Grablegung )
オペラの第7場にあたり、最終場面への間奏曲にあたります。

第3楽章「聖アントニウスの誘惑」(Versuchung des heiligen Antonius )
オペラの第6場、マティスが見る幻影の場面の音楽を自由に再構成しているものだそうです。

ちなみに、グリューネヴァルトのイーゼンハイムの祭壇画は、フランスのアルザス地方にあるコルマールという年のウンターリンデン美術館が所蔵していますが、ワタシは、フランスまで飛んで観に行くことができないので〜 徳島県鳴門市にある大塚国際美術館で、陶板で再現された祭壇画を拝見して、大感動っ。

ケーゲル ドレスデン・フィル 1980年
Herbert Kegel   Webpräsenz der Dresdner Philharmonie
(Dresden Philharmonic Orchestra)

けんかうっかぁ〜


録音状態は良い。う〜ん 美しいハーモニーとは言えないようで、ちょっとお粗末。
←2枚組BOX カップリングは下記のとおり。
カップリング:
ディスク1
1〜3 交響曲「画家マティス」1980年
4〜6 トランペットとファゴットと弦楽のための協奏曲 
  トランペット:ルートヴィヒ・ギュトラー Ludwig Guttler
  ファゴット :エッカルト・ケーニヒステット Eckart Konigstedt
7〜9 組曲「いとも気高き幻想」1980年

ディスク2
1〜4 交響曲 変ホ調 1980年
5〜8 シンフォニア・セレーナ 1980年
  ヴァイオリン:ラルフ=カーステン・ブロンゼル Ralf-Carsten Bromsel
  ヴァイオリン:ウォルター・ハーロウィッチ  Walter Hartwich
  ヴィオラ:ヘルベルト・シュナイダー Herbert Schneider
  ヴィオラ:ゲルト・グロッチェル Gerd Grotzschel

1楽章「天使の合奏」
録音状態はまずまずなのだが、少しもわっとしていることと、と奥行き感が少なめで、ペタンっとした感じがする。
で、歯切れ良く、スイスイと進んで行くのだが、オケ全体の響きに、まろやかさが少ない。
で、暖かみが感じられないというか、祭壇画を拝見したような感動が、ふつふつと湧いてくる〜などというものは感じられないし、弦の動きがとても楽しい楽曲なのだが、弾力性がない。
ずーっと、カッチリした感じで、カシカシカシ・・・と動いていくのだが、動きそのものが、感じられないというか。
いろんな旋律が、幾何学模様のように組み合わされてはいるのだが、やっぱり、オケの力量不足なんだろうか。
組み合わせていく、楽しみみたいなものが感じられないというか、う〜ん。
演奏しながら歩くマーチングバンドのように、きっちり〜決まって欲しいのだが、なぜか、俯瞰して見ている感じがしない。

2楽章
この2楽章「埋葬」は、イーゼンハイムの祭壇画最下部の「キリストの死への哀悼」をイメージしたものだろうと思う。
沈痛な響きに満ちあふれているシーンだが、大きな盛り上がりをみせるところで、金管が吹かれるのだが、う〜ん 汚い音なのだ。もっと、巧く吹いてよぉ〜 木管のフレーズもキツク感じられる。

3楽章「聖アントニウスの誘惑」
不協和音の音階が、うねるような弦で表され、金管とシンバルが、シャーンっと鳴る。
やっぱりオケの質なのだろうと思うが、異様なほどに、音が飛びだしてくるし、派手な金属音なのだ。
「れ〜ふぁら〜そどし〜どれそ〜ふぁら〜」 (弦 チャチャチャ・・・) このチャッチャッチャ・・・というところのフレーズは、硬くて、弾力がなく、いやーっ、やっぱりねえ。カチンカチンである。
まあ、金属片的というか、あのぉ〜吹奏楽ではないんですけど。という感じで、かなり力任せかもしれない。
もう少し緻密さや丁寧さが欲しい。
総体的には、美しい合奏ではなく、これでは魑魅魍魎とした、怪物的合奏集団のようで、ちょっとお粗末。
ブロムシュテット サンフランシスコ交響楽団 1987年
Herbert Blomstedt    San Francisco Symphony

いかすぜっ

録音状態は良い。演奏は、ちょっとスマートすぎるかな。軽めのフレージングで、流れていくが、音質の明るさがあって〜 ふわっとした重量感である。
カップリング:ヒンデミット「画家マチス」、葬送音楽(ヴィオラと弦楽合奏のための)、「ウェーバーの主題による交響的変容」 
1楽章「天使の合奏」
冒頭より、細めのスマートな演奏だ。木管の音色は、透き通って明るい。
腰のある柔らかなトロンボーンが主題を吹く。「れれれ〜 れ〜ど しれど〜どしれどらふぁ〜」
この主題を邪魔しないように、弦が、ふかぶかとした息づかいながらも、「らふぁれ そーみ しどそ らーみ れーし れーみどふぁれ・・・」と奏でてくる。
金管が、鉄琴と共に大きな音で吹かれ煌めくが、一瞬で輝きを抑えている。ブロムシュテット盤では、音量の変化が大きい。
その後、テンポがあがって、さらさら〜っとフレーズが流れていく。う〜ん。わりと軽快で、腰が軽め。
ドライでもクールでもないんだけど・・・。テンポを揺らしながら、3人の天使が歌を歌っているらしい。

金管のフレーズがアクセントになっているし、弦の跳ねているさまや木管の音が、鳥をイメージさせる。
この鳥が、イーゼンハイムの祭壇画の「天使の合奏」・・・チェロのような楽器を演奏する大天使をイメージしているのか、背後に描かれているブキミな天使たちなのか、はたまた、大天使の左後ろの彫像のような羽根を持った怪物的な悪魔(だと思う)なのか。
う〜ん。まあ、羽根があるから天使とは限らないしなあ。悪魔も羽根を持ってるし・・・。

このマティアス・グリューネヴァルトが描いたとされる祭壇画を、本やサイトで拝見していると、かなりリアルで、えぐい。吐きそうになるほど・・・。
夢のような理想とはほど遠いベクトルで描かれているもんで〜 なかなかにブキミだ。
で、ブロムシュテット盤は、快速バージョンで、フレーズが飛んでいく。はあ。速いっ。
この天使の合奏は、そのまま受け取っていいんだろうか? それとも、受胎告知と関係があるんだろうか。う〜ん。よくワカラナイ。
まあキリストの降誕を喜びを表現しているのだろうが、それにしても・・・。楽器を奏でている大天使が、う〜ん。ちょっと、ウサンクサイんだが。(笑)
しかし、ブロムシュテット盤では、この1楽章は、不気味さが感じられないので、素直に受け取っておこう。

2楽章「埋葬」
この2楽章「埋葬」は、イーゼンハイムの祭壇画最下部の「キリストの死への哀悼」をイメージしたものだろうと思う。
沈痛な響きに満ちあふれている。 まろやかでもなく、ほとんど無機質とも言える響きが、余計に沈痛さを表しているようで・・・。 余計な感情を入れていないところに、共感を覚える。

3楽章「聖アントニウスの誘惑」
不協和音の音階が、うねるような弦で表される。で、金管とシンバルが鳴らされ、ただごとではない緊張感が走る。
魑魅魍魎とした世界の幕開けだ。 
ブロムシュテット盤だと、おどろおどろしい、和風の妖怪が登場するような雰囲気ではない。
ちょっとスマートな感じがする。
トロンボーン 「れ〜ふぁら〜そどし〜どれそ〜ふぁら〜」 (弦 チャチャチャ・・・)
ブロムシュテット盤を聴いているうちに、こりゃ〜「アントニウスの火」と呼ばれる伝染病が発生したのか、まるで、パンデミックが起こったかのような様相を呈してくる。

化け物の描写というよりは、ツツツン ツツツン・・・と、繰り返されるリズムによって、心理的な圧迫感がある。何かに突かれているような、つきあげをくらっているような。
聖アントニウスが、いたぶられている・・・と感じられる雰囲気となっている。
ジャケット写真にもあるように、この楽章は、聖人アントニウスを誘惑する悪魔の出現で、髪は引っ張られるし、鳥の化け物に棍棒で殴られそうになっている。
化け物の描写はリアルだが、コミカルでもあって・・・ 化け物姿のイメージの底辺には、鳥や熊や狼という動物のイメージがある。全体的にはグロテスクではあるが、とてもイメージしやすく、わかりやすい。
聖から、邪の世界に取り戻そうとする誘惑。
で、ここに描かれている誘惑は、怪物たちの暴力による誘惑なので、その点・・・ う〜ん。
ブロムシュテット盤は、そんなパワー(暴力的)や、脅かされている恐怖感もあまり感じない。破壊的でもないし。演奏が、あまり動的じゃーないんだねえ。

北方ルネッサンスの独特のくらーい、克明に描き込まれた細密画のような緻密さ。これは抜群に感じられるんだが・・・色としての暗さは、サンフランシスコ響だからか、ちょっと少ないかもしれない。
あまりにも、余計なモノをそぎ落とした、音の響きだけになっているような気がする。
それはそれで、良いとは思うのだが。
最後のコラールが、さらり〜っと演奏されていて。う〜ん。これは唸ってしまった。
死によってしか得られない開放感なのか?  う〜ん。それだとしたら、このさらり〜は正解なのかも。
レヴィ アトランタ交響楽団 1988年
Yoel Levi    Atlanta Symphony Orchestra

ばっちグー!

録音状態は良い。教会のなかの演奏のように、まろやかに響く。
カップリング:
ヒンデミット「画家マチス」「気高き幻想」「ウェーバーの主題による交響的変容」
1楽章「天使の合奏」
冒頭、オルガンの和音に出てきて〜 うわ〜っと驚いてしまった。
ふわ〜っとした音がでている。
この楽曲、音を取るのが難しくって・・・ 文字で表すのは至難の業。というか無理なんだよな。
で、全体的にレヴィ盤は、まろやかな「画家マティス」になっており、弦と木管のハーモニーが大変美しい。
柔らかなトロンボーンで、「れれれ〜 れ〜ど しれど〜どしれどらふぁ〜」と、主題を吹いている。
また、弦が副旋律を奏でているが、それが大変聴かせてくれる。
「らふぁれ そーみ しどそ らーみ れーし れーみどふぁれ・・・」と、ふわ〜っとした音階を奏でており、まるで光が射し込んだ雰囲気だ。
ここら辺りは、もう絶句で口があんぐりしちゃうほど。絶品じゃーっ。
弦の響きも柔らかく、残響もある。木管、特にフルートの音色が暖かい。
う〜ん。天使の合奏とのタイトルどおりのイメージかなあ。すでに、数分でやられました。
この画家マティスは、リディア旋法という独特のヨナ抜き音階なので、教会の雰囲気が漂っている。
なんとも言えない、不思議な旋律なのだ。
レヴィ盤は、「たーら らったたぁ〜ららら〜ら」のリズムが、柔らかい。
クッキリと高音を強調して、きりり〜っとキツメに奏でてくる盤もあるが、レヴィ盤は、しなやかで、ちょっと太めの音響である。
「そそ〜そ そふぁみそ ふぁみふぁ〜 しれみれ しそしれ〜」
もりあがってくるところもスムーズで、派手さはないが、シンバルが短く入り、弦が下降線をたどる。
最後、木管が出てくるが、これがまた、オルガンの音色に近いっ。
ブロムシュテット盤が、すっきりした端麗辛口系の演奏とは、まったく異にしている。

2楽章「埋葬」
弦が、寂しげなフレーズを弾いている。
そこに、木管が軽やかに絡んで、「らしど〜 し〜ら そふぁみ〜 らそど〜」と沈痛なフレーズが続く。
埋葬というイメージは、あまり具体的なイメージが膨らまない。
木管が、語りかけるような呟き的なフレーズを吹き、弦がピチカートで伴奏している。
「みーみーれみそ そ〜らしど しどれ〜みれみそ〜 そそ〜 らしど〜 し〜ら」
フレーズのパート(例えばトロンボーン)が和音をつくり、その間を弦が抜けていく。

3楽章
「ら〜〜 そしれふぁそし〜らふぁ〜ふぁし〜 れらそ〜ふぁみ〜」 
↑ こんな音じゃーないんですけど。半音階ばっかりで音がとれない。弦が深々〜っと底からのぼってきて、上の音でトリルになっている。
んじゃじゃー らしっ〜(小太鼓が響く)
このフレーズの緊張感というか、何が始まるんじゃー。と不気味な雰囲気に、思わず身構える。
「らしれふぁ〜みし〜」不協和音が続いているんだが、この後、おどろおどろしい魑魅魍魎とした世界が広がるんですわ。で、
トロンボーン 「れ〜ふぁら〜そどし〜どれそ〜ふぁら〜」 (弦 チャチャチャ・・・)
パパパ・・・と金管がテンポを刻みながら、不気味なマーチが奏でられる。
「ららぁ〜らららぁ〜ららぁ〜」金管の和音が響く。途中、大太鼓が雷鳴のように鳴り響く。
このあたりは、鳥肌が立ってくる。

いったん静まるのだが、「らそ〜ふぁみ らそ〜ふぁみ」と、コラールのような雰囲気となる。
厳粛さと共に、奇妙なベルリーオズの断頭台への行進曲風にも聞こえてくる。
まあ。幻想よりは、もちっと現代的で複雑なんだが、意気高揚とするモノでもないし、渋く光っているだけで・・・。圧迫感は少ないものの、弦の不気味なマーチが、気色の悪さ、おぞましさがある。
迫力満点で、ぐぐ〜っとハートを鷲づかみにする楽曲ではないんだがねえ。しぶーっ。ホント渋いんだよなあ。底知れぬ不安さと、化け物出現というという恐怖感だろうか。
でも、独特のフレーズで半音階の不安定さがありながら、耳にわりと馴染みやすい音階でもあり、つかみどころがないながらも、馴染みがでてくる。
グロさに馴染むかあ・・・と思わず苦笑いさせられる。ホント、最初は、なんじゃーこれ? 状態なのだが、段々と、変に耳に残るってくるのだ。

で、レヴィ盤・・・ 弦の高音域の悲鳴にも似た旋律、掻きむしられているような気配がする。
また、この重い湿気を含んだ空気感がたまらん。
再度、短いパッセージでトロンボーンが、「らそふぁみ〜」を繰り返して、複雑に入り乱れながらも、おどろおどろしい主題が戻ってくる。
弦の「そそそ らそふぁ そらふぁみれ・・・」← 綺麗なフレーズじゃない。
木管が、「られみ〜れ〜そふぁみ〜 れ〜」「みそれ〜しどしらし〜」← はあ? これホント木管のフレーズかあ?
頭んなかが、ハテナマークで占領されてしまうのだが、ここは、木管が主旋律で、弦が不安定な短めのフレーズを、カシカシカシ・・・と奏でているのだ。
まるで、擦れた声で、甘く、ニヤリ〜と笑いながら誘惑してくるような。気色の悪さだ。

最後のコラールは、いきなりやって来る。最後は、ようやく安定した長調で・・・
「どれ〜み れみれど〜みそ〜ふぁみそ〜 ら〜」
「そらし〜そ ら〜 れ〜みふぁそふぁみれみ〜 み〜れ〜」 ようやく救われるのだ。
それにしても、最後まで、う〜っと唸りそうな展開で、レヴィ盤は大変まろやかなのだが、この楽章だけは、もちっとクールにしてもらわないと。痒みが止まらない〜、ぎーっと悲鳴をあげて掻きむしってしまいそうな。そんな苦痛に苛まれてしまう。

レヴィ盤は、音に丸みがあること。残響が心地よいこと。特に、1楽章のまろやかさは絶句する。
そのくせ、リズムが、正確に刻まれており、このリズムが心地良い。
他の盤は、ドライに仕上げているが、レヴィ盤は、オルガン的な和音の響きが心地よいのだ。まるで、教会のなかの演奏のように感じられる。 しかし、「イーゼンハイムの祭壇画」の雰囲気から考えると、あまりにも楽天的というか、悲壮感やリアルさが感じられない。 う〜ん。そこがなあ・・・。ワタシ的には1楽章は良いと思う。
でも、最終楽章は、う〜ん。もう少しドライさが欲しいかなあ。
イルジー・ビェロフラーヴェク チェコ・フィル 1992年
Jiří Bĕlohlávek    Ceska filharmonie
(Czech Philharmonic Orchestra)

こりゃ良いわ〜拍手

録音状態は極めて良い。録音状態が良いので、主となる旋律の裏で奏でられている旋律が良く聴ける。すーっと、弦のカシャカシャという音が、綺麗に入ってきて、ものすご〜くヒンデミットの特徴がよくわかる演奏になっている。こりゃ拍手っ。
カップリング:
1〜3  ヒンデミット「画家マチス」
4〜6  木管とハープのための協奏曲
7〜11 弦楽と金管のための協奏音楽(作品50)

1楽章「天使の合奏」
ゆったりとした和音が美しい。 豊かで、柔軟で、しなやかで、ふわーっとした神々しい空気感が漂う。
主題が、まるで、神のお告げのように聞こえてくる。
「れれれ〜 れ〜ど しれど〜どしれどらふぁ〜」
この冒頭にやられてしまった。すげっ すごっ。 弦が、ふかぶかとした息づかいをしており、まろやかな金管が寄り添ってくる。
「らふぁれ そーみ しどそ らーみ れーし れーみどふぁれ・・・」
音色が、まず柔らかく、木質感にあふれていて、瑞々しい。
ブロムシュテット盤が、すーっとした線の細さを感じさせ、レヴィ盤は、録音状態による残響があったが、このビェロフラーヴェク盤は、ホールトーンが良く、ほどよく残響がある。
いや〜っ この渋いくせに、神々しい音に聞こえるところが、ホントすごい。 硬くもなく重くもなく、かといって軽すぎず・・・ 無機質にもならず。もりあがってくるところの迫力といい。 う〜ん。完全にやられた。
鳥の鳴き声の木管も、う〜ん。ホント天使の声に聞こえてくる。とても繊細で、旋律の絡みぐあいとかが、見えてくるかのように聞こえてくる。金管が鳴っているが、手前の弦のフレーズが、かすかにきこえてきたり〜 録音の良いが、とっても嬉しい。これこそ、ヒンデミットのおもしろさが堪能できるっ! う〜ん 快感っ。
太い金管の響きも、素晴らしいっ。うっとりしながら、聴ける。

2楽章「埋葬」
フルートの音色の太さと、逞しさが、すごい。
「らしど〜 し〜ら そふぁみ〜 らそど〜」と沈痛なフレーズなのだが、とても柔らかい。
で、人肌の暖かさがある。埋葬シーンを描いているモノとしては、暖かみがありすぎかもしれないが・・・
死体のような冷え切った盤もあるが、ビェロフラーヴェク盤は、周囲の哀しみを描いた盤のようだ。

3楽章「聖アントニウスの誘惑」
ぶきみさも適度にあり、不協和音の音階が、うねるような弦で表される。
厚みのあるオケの音が、大蛇のごとくうねっている。かなりの音量で、金管とシンバルが鳴る。
神の警告のような雰囲気があり、雷にうたれたような衝撃が走る。
バリバリ・・・ 怒りに触れたような感触だ。
トロンボーン 「れ〜ふぁら〜そどし〜どれそ〜ふぁら〜」 (弦 チャチャチャ・・・)
ここからは、おぞましい魑魅魍魎の世界が広がるが、深い森のなかで、いっきに不安になっているような、そんな心理状態だ。
自分のなかの幻想と闘っているような雰囲気がする。化け物世界を描くというリアルさではない。
圧迫感や切迫感は、あまり感じないし、おどろおどろしいリアルさという点も、あまりない。
厳粛さと荘厳な響きがあるので、教会のなかで、絵画を見て受ける印象という雰囲気がする。
どちらかと言えば、自分の頭や心のなかで、反芻し、構築された心理描写的。
あまり直截的に訴えてくるモノではないようだ。

しかし、音量と、金管のパワフルさには、圧倒される。 重厚さがたっぷり。 大太鼓の響きと、バン バン と鳴るところなんぞ、ホント迫力あり。残響も気持ちが良い。
そのくせ、裏の旋律が、ものすごく聞こえてくる。そのため、 弦の細かいフレーズは、不安な心境をかき立ててくるし、ぶっとい底力のある低弦と、金管の響きは、これは文句のつけようがないほど、厳粛に諫められ、自然と頭がさがる。
オケもアンサンブルもみごとだし、フレーズ間の間合いも充分で、静謐さと荘厳さが同居しながら、人肌の暖かさもあり、それらが微妙なバランスで整っている。
自然に沁みてくるような、受け入れられやすさもあって、かといって、さらり〜と聞き流すには、惜しいし。
適度にスピード感もあり、ホント、バランスが整っているように思う。
う〜ん。これは、何度聴いても、おそらく飽きない。いや、スルメのように味わい深く聴けると思う。
当初、期待せずに、ナクソス・ミュージック・ライブラリー (NML)で聴いてみたのだが、こりゃ凄い演奏だと思って、CDを購入したもの。

1980年 ケーゲル ドレスデン・フィル DS ★★
1987年 ブロムシュテット サンフランシスコ交響楽団 Dec ★★★★
1988年 レヴィ アトランタ交響楽団 Tel ★★★
1992年 イルジー・ビェロフラーヴェク  チェコ・フィル Chandos ★★★★★
1994年 サヴァリッシュ フィラデルフィア管弦楽団 EMI  
1995年 アバド ベルリン・フィル  
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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