「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

R・シュトラウス アルプス交響曲
R.Strauss: Eine Alpensinfonie


メータ ロサンゼルス・フィル 1975年
Zubin Mehta
Los Angeles Philharmonic Orchestra

録音状態は、リマスタリングされているようで、結構クリアだし、かなりダイナミックで、活気があり爽快な演奏である。

 

アルプス交響曲は、下記のとおりの構成となっており、日の出前から山に登って〜くだっていくという、各シーンが音によって描かれている。
1.夜 2.日の出 3.登り道(登山) 4.森に入る 5.小川に沿って歩む 6.滝にて 7.幻影
8.花咲く高原にて 9.高原の牧場にて 10.藪と林を過ぎて道に迷う 11.氷河にて
12.危険な瞬間 13.頂上 14.景観 15.霧が立ち昇る 16.太陽が次第に薄れる
17.悲歌 18.嵐の前の静けさ 19.雷雨・下山 20.日没 21.終結 22.夜

「夜」「日の出」
うごうご もごもご言っていた「夜」が終わると、爽快に朝を迎える。爽快というより、すでにビッグで豪快な状態です。その鳴りっぷりはすごい。猛烈っ。明るいし、底抜けに活気が あり、そりゃ〜これだけ雄大な景色を見たら爽快だろう。という、なんとも羨ましくなるような気分だ。
なんとも、若々しい演奏で、こりゃ「英雄」と同質の豪快さだと思う。メータ盤は、スカッと、すがすがしい空気感が満喫できます。 今では、肥満オジチャンって感じになっているが、若い時のメータは凄いのだ。

「登り道(登山)」
メータ盤では、山登りも、いたって爽快なスポーツ感覚。これは楽しい。
コントラバスが小気味よく、ホント、あのボコボコ言う楽器が、軽快に弾いています。こりゃ驚き〜
で、ホルンを伴って、さらに爽やかに登っていきます。やっぱ、足腰が軽快で、若いっ。
このテンポの良さと、コントラバスの底の「たらん〜」が、特に軽快で、ティンパニーやトロンボーンも底力が強く、その底から、のびやかに、しなやかに、トランポリンのように弾んでい くのだ。
この弾み方は、ショルティ盤のように、全体的に一気呵成でもなく、一歩一歩という踏みしめた感覚でもなく・・・さあ〜行くぞ。という意気揚々とした若い男性の登山のようで、見ていても気持ちが良く、フレッシュ さにあふれています。ホント快活。

「森に入る」「滝にて」 
じゃーん。低音がよく響いて、滝に至ると、鮮烈さが出てきます。
滝って、上から下に落ちてくるのですが、ここでは、まるでローマの噴水のようで・・・ハハハ・・・
トレビの泉なみに、下から吹き上がっている感じがします。高音域に幾分、硬さを感じますが〜。

「花咲く高原にて」「高原の牧場にて」
老練なおじちゃんたちの盤だと、ここで、まったり、くつろいでしまうのですが、メータ盤は、ささ〜っ と過ぎてしまう。
若い時には、どんな良い景色でも浸って見てませんねえ。休憩時間無しって感じで、上に向かって歩くことしか感心がないみたい。幾分苦笑気味だが、伸びやかさもあって、爽快さ があるものの〜 ちょっと休憩して〜という方には向いていないかも。ハイ、さっさと行かれて追い抜かされてしまいます。

「藪と林を過ぎて道に迷う」「氷河にて」「危険な瞬間」
あれま。ドンドン先に行ってしまうから、迷ってしまったジャン。
氷河や危険な瞬間は、スリリングさを感じる。ちょっと、背筋が寒くなるが、打楽器類や金管類の短いパッセージと、 休止部分の間合いがよく、不安な気分を描いている。

「.頂上」「景観」
こりゃ頂上というより、頂点でしょう。って感じ。「英雄の生涯」のようで、威風堂々。どうだ、やったぜ。って言っているように感じる。圧倒的なパワーと自信がみなぎっており、登り切ってきたという、達成感と満足感を感じさせる 。
まあ。若いくせに、これほど堂々としていて良いのかとも思うが、それはやっかみかな?
メータ盤は、ほほ〜っ オヌシ。なかなか やるな〜という、良い意味での、羨望のまなざしで見てしまう。
これだけ、明快だと、さっぱりしてて気持ちが良いかも。
決して軽薄な感じは受けないし、金管のパワーと、低音の響きがゆったりあるので、懐の深さがある。
わりとマッチョな筋肉質的な英雄みたいだが、ホントあくどくなく、健康体で嫌みがない。

「霧が立ち昇る」〜「嵐の前の静けさ」「雷雨・下山」
雨の音が、ひんやり〜聞こえて、金属的な響きの雷鳴音は、凄い。雨の速いこと。
雷鳴のシンバルの硬い音とオルガンの重低音と、畳みかけるパワーと速度は、う〜んやっぱ強烈。
相当リアルで仰天させられます。オルガンの音もティンパニーの硬いロールも、よく響いているし、おおっ こりゃヤバイと、緊張感は走るものの、まだまだ体力もあり、自信は揺らいでいないようで・・・。
この嵐に打ち勝とうとする強い意志を感じる。
登り道(登山)の逆バージョンに、慌てず騒がず、堂々として降りてきます。これには参った〜。
ショルティ盤のように、一気呵成に登って、転がり落ちるかのように下ってくるという感じではない。
なんとも心憎い演出で、この登山者は、若いくせに冷静な人物です。

「日没」「終結」「夜」
祈りのような、感謝の気持ちを表したような演奏ではない。汗をぬぐって、爽快に、山の風景を見上げている。あ〜 帰りは雷雨にあって大変だったが、また、再度登りたい〜そんな気持ちになっているよう だ。
メータ盤は、こちらも活気にあふれ、自信に満ちてくる演奏だと思う。

小澤盤は、自然描写 自然の変化そのものの描写という雰囲気があるが、メータ盤では、単なる自然描写というより、ある主人公を通してみた情景という要素が強いように 感じる。その違いは、何?と言われたらツライが、ストーリー性、1本筋が通っているのです。一人称的な演奏に徹しているようです。
自信にみなぎるパワーのようなモノがあり、感情移入がしやすいんだと思う。
んじゃ〜 どこで、そのパワーを感じたかというと、やっぱ、最初の「登り道(登山)」のコントラバスを主体にしたフレーズでしょうか。ワタシ的には、この楽章が、相当大きなウエイトを占めるんじゃーないだろうかと思 う。いろんなアルプス交響曲を聴くとき・・・ この楽章で、登山する人の人物評価ができるかもしれませんねえ。
もちろん、ここの振り方で、指揮者の性格判断もできるかも。このメータ盤では、ワタシ的には、英雄の生涯の人物のように感じたし、だから、最後まで、堂々としてて文句のつけようがない英雄 いやアルプスになっている ように思う。(笑)

ショルティ バイエルン放送交響楽団 1979年
Georg Solti
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
(Bavarian Radio Symphony Orchestra)

録音状態は79年とは思えないほど良いのだが、幾分高音がきつめ。描写がリアル。
カップリング:「英雄の生涯」ウィーン・フィル77年、「ツァラトゥストラはかく語りき」シカゴ響75年、「ドン・ファン」シカゴ響73年 、「ティル」シカゴ響75年

「夜」
「夜」の暗闇で、うごめく弦と管が、ショルティ盤だとよく聞こえます。
しかし、あまりにも低い音なので、冒頭などは何の音なのか、さっぱりワカラナイ状態です。
フルートが小気味よく夜明けを告げると、ひんやりした空気が漂い、まぶしい光が射し込んできます。
展開がはっきりしており、ショルティ盤は、小気味よく感じます。
ハイティンク盤だと、モゴモゴが大変長く、弛緩してしまいましたが、大きなアルプスの山を下から見上げ、壮大な風景が目の前に広がっているのが 、この盤では、リアルに感じられます。

「登り道(登山)」のパッセージの速いこと。これは、すげ〜っ!
ショルティ盤は、ゆったりと歩かず、いっきに登ってしまって唖然・・・ コントラバスとチェロも、スゴイ勢いでボーイングしており、こんなに速く、コントラバスって弾けるの?  とにわかに信じられませんでした。
らしど〜 れみふぁ れみど ふぁそら〜 ふぁそら そらふぁ そらしらしど らしど・・ 
コントラバスは必死だろうし、ホルン軍団は、きっと、舞台裏で目を剥いて、ファンファーレを吹いているにチガイナイ。そう思います。
なんとも強気一本で、征服してやる〜っという意欲満々で、かあーっ!と駆けのぼるため、メチャ テンションが高く、聴いている方も息があがります。

「森に入る」は、落石でも起きたのかと思っちゃうほど。
なんだ〜これ。めちゃ怖い演奏だ。鳥肌が立つ。しばらくすると・・・小鳥たちの声も聞こえるし、ちょっと平安な気分に落ち着きますが、かなり怖いです。弦の細やかな動きのなかで、ホルンの山の動機が合わさって 演奏されます。

「滝にて」では、山の頂から、落ちてくる飛沫の飛翔が感じられます。ハープとチェレスタの音色らしいが、これは、マイナスイオンそのものでしょう。
「花咲く高原にて 」「高原での牧場」は、ちょっと穏やかにさせてくれる。
ホルンのと鈴のカウベルが、のどかに聞こえ牧歌的な雰囲気を出しています。
旋律が微妙にあわさって、次の楽章が繋がっていくので、よく聴いていないと楽章の切れ目がわかりづらいです。
「藪と林を過ぎて道に迷う」では、本当に迷った気分になるし、「氷河」「危険な瞬間」は、今どこを歩いているのか、解説書のナビが必要なほど。(笑)
最初この交響曲を聴いた時には、「頂上にて」の場面しか、描写がわかりませんでした。

ショルティ盤では、壮大な感じは十分しますが、なにせ忙しい登山で、ヘトヘト・・・。
頂点に達するまでも忙しいし、下るのも速い。十分に景色は見たの?と言いたくなります。
展開が速いので、のんびりしてられません。壮大すぎて・・・。驚きの連続です。

「霧が立ち昇る」「太陽が次第に薄れる」では、天候が一気に変わり、やばい。という気配が。
「嵐の前の静けさ」は、ぽつりぽつり〜と雨が降ってきます。雨が木管で、ヴァイオリンの音がやばいんじゃ〜という心境を表しています。
これは、クラシック音楽というより映画音楽的で、ショルティ盤はリアルです。ちょっと安物臭いけれど・・・。

「雷雨・下山」でのウィンドマシーンの音も恐怖ですが、けたたましく忙しいフレーズが重なっています。
登山の時のフレーズが逆回転となっており、慌てて駆け下りていくのがわかります。
稲妻が走っているのだが、これもスゴイ音。
まるで冬山のようで、真っ白い雪山の頂きで、雷に打たれているかのようです。
音量もスゴイが、スピードの速さについていけないことと、ちょっと甲高い響きに悲鳴が出そう。
それに、あまりにリアルなため心臓によろしくない。

「日没 」「終結」「夜」では、生きて山から下りてこられたことに、安堵します。
ショルティ盤では、弦の響きの方が勝っていて、オルガンの響きが埋もれていますが、なかなか心の底から安心した気分にさせてくれないのです。最初のフレーズである「夜」の場面となって、初めてほっとする 状態でしょうか。
あーっ 疲れた。こんな登山は一度でたくさん!こりごり〜という感じです。
スリルを味わいたい方には、お薦めです。

ハイティンク コンセルトヘボウ 1985年
Bernard Haitink
Royal Concertgebouw Orchestra

録音状態は、フィリップスにしては幾分こもりがちで、残念
コンセルトヘボウの音が残響豊かに響く、まろやかなアルプスだ。
カップリング:R・シュトラウス「アルプス交響曲」、「死と変容」

 

「夜」「日の出」
冒頭の「夜」は、ものすごい低い音で、何かが、うごめいているのですが、何が鳴っているのか?
皆目見当がつきませんでした。モゴモゴモゴ・・・。
調べてみたら、コントラファゴットらしいのですが、 これほど低いと、ちょっと聞き取れません。
アルプス交響曲を初めて聴いた時、冒頭のフレーズが聞こえないためボリュームをあげていたら、いきなり「日の出」 となり、大音量でびっくり仰天した経験があります。
「夜」の描写が続いた後、「日の出」を迎えるのですが、ハイティンク盤は、長い夜です。
初めての人は退屈して、「日の出」まで、もたないかもしれません。

ただし、朝を迎えたハイティンク盤は、大変まろやかな響きで、優しい情景が広がっています。
大きな山を見上げているようで、壮大な、まどろみのような山です。
低音から高音まで幅の広い楽曲で、いろんな楽器も使われているようで、(実際には見たことも、聴いたこともない楽器ばっかりデス)
テンポはゆったりしており、大きな胸を膨らませて、堂々と山を登っていきます。
録音は、ちょっと残念なことに霞がかかっているようです。

「花咲く高原にて」「高原の牧場にて」は、のんびりしすぎて〜 ちょっと眠くなってしまいますが、その後の「頂上にて」に至るまで、高音域の伸びきったトランペット・ホルンなどが活躍し、迫力があ ります。
ハイティンク盤は、真っ向勝負的な演奏です。でも、この楽曲自体が、大ゲサなので・・・
あまりに壮大になると、「風と共に去りぬ」のタラのテーマに似てしまって危険です。
旋律は複雑に絡んでおり、決して一本調子ではないのですが、派手なので、どこのパートを優先させるのか難しいと思います。

「雷雨・下山」は、雨のヴァイオリンの音と、ウインドマシーンが派手に活躍するので壮絶極まりなく、「日没」「終結」は、木管の音色と弦に伸びと艶があり、透明感が出てきます。
他の盤と比較して、ダイナミックさにひけをとっているわけでもないし、奇抜にもなっていません。
しっかり落ち着いて安定して、のびやかに歌ってくれているから、そう感じるのでしょうか。

日没・終結・夜の最後が、ハイティンク盤の白眉です。
嵐が過ぎ去って、山から無事に降りてきて、ほっとひといき。
「夜」のフレーズが、ハイティンク盤では、静かに瞑想し、自然を畏怖し神へ感謝する。
なんとなく、祈りにも似た心境を描いているように感じられました。

ホルスト・シュタイン バンベルク交響楽団 1988年
Horst Stein
Bamberger Symphoniker - Bayerische Staatsphilharmonie
(The Bamberg Symphony)

録音状態は良い。まろやかで重厚な響きを感じることができる。
いささか残響が多く、古式ゆかしき〜という雰囲気がしないでもないが、アナログ的良さがある。まるでレコードを聴いているようだ。

「夜」
深々と息をしながら、底の方で、弦がうごめいています。金管と木管が、そのなかから誕生。
ピーンとした音色が鋭く響くと、うねっているリズム感が目覚めたようで、膨らんできます。
シュタイン盤の音色は、太く分厚いものです。しかし、太いくせに、しなやかに揺れています。
まるで、大自然のなかに包まれている雰囲気がします。

「日の出」では、シンバルが強く叩かれ、山の斜面を射し込む強い光の描写のようです。
ホルンの音色は、まろやかでありながら力強く堂々としており、後ろで、ティンパニーが時を刻むように聞こえてきます。

「登り道(登山)」
しなやかなコントラバスとチェロが、弦の和音を綺麗に揃えて、無理のない上昇をしています。
ほぉ〜っと、おもわず息をのんでしまいました。
なんと。これは、登山というより大河の流れのようではないか・・と、とても驚いてしまったのです。

シュタイン盤の演奏は、険しい山を必死になって登っていくという感じではありません。
余裕があって、人生を慈しんでいるような、まるで恋人に囁くような雰囲気さえ持っています。
ショルティ盤なんぞ、豪快に征服するぞ〜っと言わんばかりに駆け上がって行くのですが、全く違うアプローチで、しなやかで柔らかく、優美ですらあります。
登山の描写だととしても、リタイアした老夫婦が、仲良く手をとりあって楽しみながら登っているという感じを受けます。温かい愛情たっぷりのフレージングで、微笑ましい。

「花咲く高原にて」「高原の牧場にて」
まるで天国的な空間が広がっています。空を見上げて、タップリと息を吸い込んで〜シアワセを満喫している様子が伺えます。自然のなかの豊かな満ち足りた時間 ・・・。
聴き手である私ですら、イメージが広がって、深呼吸をしたくなってくるほどです。

「頂上にて」
トランペットは、いささか甲高いのですが、ホルンと弦が、曲線を描くようにフレーズを奏でます。
そのフレーズに膨らみがあり、深々と歌うので、う〜ん絶品だねえ。と感心しました。
心理的に充分な余裕があって、シアワセを分かち合いたいという気持ちじゃないと、演奏できないような気がします。他の盤が、なんだか、独りよがり に聞こえますねえ。

ホルンの短い太いパッセージがリズミカルで、これスゴイです。まるで、音が踊っている。
力強いし、ウインナーホルンの音色も、ふふっ。色っぽいです。
頂上にて。というより、天上・楽園にて。の方がふさわしいかもしれません。
山の雄大さを、満喫できる一枚で、う〜ん。他の盤と器が、違うねえ。大きい。大きすぎるほど大きい。そんな風に感じました。
このシュタイン盤は、この「頂上」が白眉です。ここで音楽が終わるって感じ。めいっぱい響いています。
「雷雨・下山」
多少、アナログ的な雰囲気が漂っていますが、迫力は充分です。
低音が充分にあり、デジタルとは違う良さがあって面白い。テンポも速く雷の音もすごく響いており、底力を感じます。
ぴゅぅ〜〜っ。ふゅゅぅ〜〜っ。うぅぉ〜〜っ。ふぉぉっ〜〜っ。
なんだか余韻の微妙なところが面白いです。晴れてくるところの変わり方、ヴァイオリンの生一本的なフレーズ。そろいすぎ〜って言いたくなるほどの真面目な音色。
オルガンの音色は、ちょっと古ぼけた田舎風だが、これまだ雰囲気がありまして、クリスマスツリーが飾ってあるようなシアワセ的な雰囲気です。
不協和音的な要素は感じられず、覆い隠されているようで・・・
歌わせ方は、かなり浪漫的で、たっぷり〜っ。後期浪漫派的でしょうか。(笑)

小澤征爾 ウィーン・フィル 1996年
Seiji 0zawa
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)

録音状態は良い。
カップリング:R・シュトラウス「アルプス交響曲」、ウィーン・フィルのためのファンファーレ、ヨハネ騎士修道会の荘厳な入場

 

「夜」
小澤盤の「夜」は、低い息づかいが、よく聞こえます。金管の和音が、クリアーで、ほほ〜っ。
楽器は、コントラファゴットらしいのですが、本当に低い低い音で、他の盤だと、モゴモゴしてて靄にかかっているのですが、録音年が新しいだけあって鮮明です。
トランペットの音色は、まろやかで透明度が高く、低い和音のうえに、ふわ〜っと乗っています。

「日の出」
きらり〜っとした光が射し込んでくる様子がダイナミックに描かれています。
キンキンせず、大変まろやかで、低弦が頑張っているため、重厚で重層な響きとして聞こえています。

「登り道(登山)」
コントラバスの演奏が力強いです。録音ポイントが、心持ち遠い気もしますが、チェロがあわさってくると、のびやかに豊かに聞こえてきます。
ショルティ盤のように、一気に駆け足で登るわけでもなく、かなり落ち着いた登山で、ちょっと素っ気ないかな〜っと思ったのですが、金管が添って歩いてくれていると華やか で、晴れやかな気分になります。
う〜ん ここのトランペットは、巧い。舞台裏から響くトランペットなんぞ、奥行きの深さと、まろやかさと、伸びやかさ。そして、ファンファーレの綺麗なこと。う〜ん。ウツクシイ! これは絶品 です。
道理で、トランペット軍団ご活躍の曲がカップリングされている筈だ。大いに納得。

「森に入る」
かなり堂々としており、歯切れも良く、恰幅もあります。その後、ダイナミックだけでなく、息も長く繊細な楽曲に変化しており、この変わり方は絶妙です。
木管のきらめきのある音色、バイオリンにヴィオラの音色のきらめき。この部分だけ聴いていると、フランス音楽に近い、キラキラした音色と共に、ふわ〜っとした軽やか 。幻想的な雰囲気が漂っています。

「小川に沿って歩む」も、これが、R・シュトラウスの楽曲かと驚かされます。
他の盤だと気づかなかった音色がぎっしり詰まっていて、旋律の美しさに惚れ惚れ。
つい、大袈裟な旋律ばかりを追いかけて、弛緩してしまう部分なのですが・・・すご〜っ!

「滝にて」なんぞ、レスピーギの「ローマの噴水」ばりで、滝というより噴水ですわ。繊細で、かつ勢いが良く、ほとばしっている。「幻影」も、ホントきらめいてい ます。
「花咲く高原にて」も、幻想的で揺らめいているし、楽しげ。
「高原の牧場にて」も、カウベルの音色の変わった音色が楽しい。奥から聞こえる音に耳を澄ませてみると、すごく奥行きが広がっていることがわかります。草原が見渡せるよう 。
「藪と林を過ぎて道に迷う」
「氷河」は、トランペットが絶品で、ストレートに吹かれています。でも決して冷たくならず、ホルンも不協和音のなのですが、まろやかで・・・ 
なんだか不思議な世界に突入。スゴイ。ここも聴きどころでしょう。

「頂上」〜「霧が立ち昇る」
これは聴かないと損をしちゃう。トランペットがスゴイ。巧すぎ。弦より、金管が前面に出てきており、透き通る音色で圧倒されてしまいました。
山の頂上で「バンザイ〜っ」と叫んでいるようです。晴れ晴れとした感じや、堂々とした感じは良く出ていると思う。

「太陽が次第に薄れる」あたりから、テンポが遅くなってきます。
もう少しテンポアップしてもよかったかもしれません。
「嵐の前の静けさ」では、雨が降っているのはわかるのですが、ちょっと頂上で遊びすぎ。
雷も鳴ってくるのですが、えらいこっちゃーっという、慌ただしさがあまり感じられないのです。
小澤盤は、オルガンもよく聞こえてくるし、風の猛烈さも充分に感じられるし、ダイナミックさも文句なし。
でも、肝心のせっぱつまった・・・という、迫力・リアルさが少し欠けていると思います。
ウィンドマシーンの迫力が真に迫ってくるという感じではなく、畳みかけ来る怖さがない。
まったりしすぎたかもしれませんね。
この慌ただしい心境には追い込まれないため、ちょっとオモシロクナイ。と思うのでしょう。
余裕がある下山で、山の天候の恐ろしさが感じられません。
頂上から、一気に転がり落ちてくるショルティ盤が、この下山のシーンでは最有力候補です。
あんな怖い盤はない。それに比べると〜 どうしても、のんびりしすぎ。
山をくだってからの「日没」は、息がかなり長いです。ヴァイオリンの高音の音色も良いし、マーラーかと思わせる部分もあります。
オルガンの音色が、教会のなかに居るかのような錯覚を与え、祈りの心境に近くなります。
ハイティンク盤にも、よく似た感覚を持ったのですが、小澤盤は、より自然に対する賛歌のような雰囲気を漂わせて終わります。
テンポが緩やかになるため、ちょっと冗長的に感じてしまうことは否めない。

「雷雨・下山」を楽しみにして聴く場合は、大見得を切らず、大袈裟・ド派手ではないため、モノ足らない。高原の軽やかな雰囲気や、頂上での爽快さ。日没から終息部分は、かなり雰囲気が出ているし、他の盤より、ずーっと良いと感じ ました。
登りの楽しさはよく描けているんだが、下りがねえ・・・ 
イマイチ迫力に欠けて、後半は、面白くないというのが正直なところでしょうか。
1971年 ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン EMI
1975年 メータ ロサンジェルス・フィル De ★★★★★
1979年 ショルティ バイエルン放送交響楽団 De ★★
1980年 カラヤン ベルリン・フィル
1985年 ハイティンク コンセルトヘボウ Ph ★★★★
1988年 シュタイン バンベルク放送交響楽団 ★★★★
1989年 プレヴィン ウィーン・フィル Telarc  
1996年 小澤征爾 ウィーン・フィル Ph ★★★★
2002年 ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 Arte
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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