「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

チャイコフスキー マンフレッド交響曲
Tchaikovsky: Manfred Symphony


シャイー コンセルトヘボウ 1987年
Riccardo Chailly
Royal Concertgebouw Orchestra
(Amsterdam Concertgebouw Orchestra)



録音状態は良い。コンセルトヘボウだけあって、柔らかく、クリーミーな響きが充満している。派手な楽曲だが、品よくまとまっている。

 

「ふぁ〜 どれみ〜 しどれ〜 低弦の下降線(ファレドシラソファ・・・) しそふぁ〜れし〜」
ファゴットの主題が表れるが、下降線を辿る低弦の響きにつられて落ち込んでいく。
冒頭から、う〜ん。柔らかくてシッカリ芯のある低弦の響き、木管のシルキーな響き。これにうっとりしてしまって、苦悩?という状態ではないんだけど。(笑)
「らぁ〜しどれ み ふぁ〜そふぁ らぁ〜しどれみ ふぁ〜 そふぁ」
超低音の響きは、大太鼓と思うんだが、この響きが、お腹にぐぐ〜っとくる。

1楽章は、「アルプスの山中をさまようマンフレッド」というサブタイトル になっているが、この山中とは、ユングフラウである。これを知って、えっ。昔、行ったことがあるんだけど・・・。
スイスの有名な観光地で、クライネ・シャイデックから、アイガー北壁を見上げて、ユングフラウヨッホまで電車で登れる。
なぜか、展望台の名前は、スフィンクスというのだが、そこから、アレッチ氷河を一望にすることができる絶景のところ。アイガーと連なっているアルプスの山々は、壮大で一大パノラマである。
シャイー盤は、優美である。苦悩を描いたものというよりは、オーケストレーションを優美に描いており、楽曲としての品を保ってくれており、とても嬉しい気がする。
まっ なにせ、バイロンがスイスを放浪して書いてくれた劇詩が、元になっていることは間違いなく、それに影響を受けた次世代の芸術家が、気宇壮大なロマンティックな音楽を作り上げたわけだが、この苦悩って、いったい何なのか。これが難しいっ。

1人の人間のちっぽけな悩みではなく、哲学ぽい分野のお話になるのだと思う。
人として、どう生きるべきか〜 なーんてことがテーマになって、過酷な自然のもとを彷徨し、愛や死、夢や幻から逃れ、罪の意識からの救済を求めていくようである。重いテーマなのだ。
単に浪漫派という言葉だけで片付けちゃうのは、どうかと思うのだが、こういう楽曲って、どうも音だけでは難しく、作品のバックボーンを知っていないと難しい。ましてや、違う国の神話や宗教、時代背景が絡んでくると、難しい〜 アタマを抱えてしまいがちだ。
バイロンの作品を読んでいるわけでもないし、イメージもイマイチわかっていないのに、コメントするのも、どうかと思っちゃうのだが・・・。でも、まあ今は、とにかく、楽曲がわかるかどうかより、雰囲気をつかめて嬉しいかな。って思う。

ロメオとジュリエット、ハムレットなどのように、私たちに馴染みのある劇のようにはいかない。
プロットがあるようで無いみたいだし、それに、ダイナミックすぎ壮大すぎて、ちょっと、ついていけない楽曲なのだ。
同じアルプスが舞台でも、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」は、山をのぼり、くだってくるなかの自然描写だが、そこに、人が悩み彷徨する様をプラスして聴いてみても面白いかも。
まっ、それでも、ついていけないんだけど・・・。
が、まあ、雰囲気は出ていると思うし、演奏自体は、シモノフ盤のような、破天荒、ベタな演奏タイプじゃない。もちろんシモノフ盤よりも、品があり、豪快で鳴らすところは鳴っている。太くて逞しく、優美だ。

音楽だけでなく、絵画の世界や劇詩を含めた文学の世界が、オーバーラックしてくると面白い。
この楽曲も、その1つのパーツなのだ。この楽曲、CDが、あまり出ていないので、貴重な1枚。
豊かなホールのなかで、劇を見ているような気分になってくる。

ユーリ・シモノフ ロンドン交響楽団 1989年
Yuri Simonov
London Symphony Orchestra



録音状態は良い。ねちっこく、タメにためて泣き節が奏でられ、鳴り物が、ど派手響き渡る壮大スペクタル絵巻。
ベタな演奏だけど。これぐらい鳴ると、お腹いっぱい。
カップリング:チャイコフスキー序曲「1812年」 アレクサンダー・ギブソン/ロンドン・フィル

マンフレッド交響曲は、交響詩のようなストーリー性を持った楽曲だ。一応、交響曲ってことになっているんだけど、あえて言うなら、ベルリオーズの幻想交響曲に似ている。標題音楽である。
「バイロンの劇的詩による4つの音画の交響曲」・・・これが正式らしい。
で、各楽章はそれぞれサブタイトルがある。
1楽章は、「アルプスの山中をさまようマンフレッド」、2楽章は、「アルプスの仙女」
3楽章は、「村の生活の情景」、4楽章は、「アリマンの地獄」となっている。

ちなみにアリマンとは、マンフレッドさんの恋人の名前である。リストの交響詩「前奏曲」みたいに英雄譚ってことではないが、悲劇ではあるが、ある意味、尊大な男の苦悩なのだ。
バイロンの詩にインスピレーションを感じて作った長大な交響曲で、バラキレフさんが、この題材をチャイコフスキーに持ち込んでいるようである。
ちょいと、チャイコフスキーさんには冗長すぎるかもしれない、いや、オーケストレーションを、もっと複雑にしてれたら良かったのに〜 あまりに旋律が甘く、多く詰めすぎて、長くなっちゃたのだろう。うぷぷっ〜

1楽章 「アルプスの山中をさまようマンフレッド」
シモノフさんの演奏は、爆演型だと思っていたのだが、意外とそうでもなかった。(最初は)
「ふぁ〜 どれみ〜しどれ〜(ファレドシラソファ・・・) しそふぁ〜れし〜」
「どみふぁ〜ら〜 そそぉ〜」
「れ みふぁそら し〜どし れみふぁそら し〜」「ふぁそらしど れ〜みれ ふぁみふぁそら し〜」
ファゴットの主題が表れるが、下降線を辿る低弦の響きにつられて、メチャ落ち込んでいく。
クラリネットの普段明るい音色ではなく、ぐわ〜んと頭を殴られて落ち込んでいるかのような苦悩。
かなり劇的な幕開けだが、流麗なフレーズが続いて出てくる。
ティンパニーのロールで、幕開けが壮大なのだが、まずまずの録音状態だし、丁寧に弦が刻まれているように思う。
ことさらに弦が艶っぽい音を出しているわけでも、木管の音色が良いとかは、感じないし、主題が壮大すぎて、いかにも落ち込んでます状態の、悲痛な面持ちは少ないけれど、そつが無い。
この1楽章は、「アルプスの山中のマンフレッド」というサブタイトルがある。
盛り上がってくる場面が、「ど〜そぉ〜 どれみ らしど〜 そ〜ら〜し〜 どれみ〜ふぁみ」
「そぉ〜どれみ〜 らしど〜 そらしどれみ ふぁみ ど そ〜らしど そ〜どれみ〜 ソドレミ」
凄い音で、金管が咆吼する。
この咆吼場面が、ちょっぴり直截的すぎるので、イマイチ 激しいのはわかるけど・・・ シンバルに大太鼓の鳴り物が、ジャンジャンっ。ジャジャン・・・ へぇ〜 なんじゃ。
まあ、シモノフ盤では、爆演、怪演かと思っていたのだが、まあ。鳴り物が派手なことは、この楽曲の特徴だけど、スピードがさほどなく、エキセントリックにもならず、落ち着いている。
確かに音量は充分ですけどね。笑えるほど充分です。

フレーズがテーマ性を持っているのだから、もう少し、歌ってくれても良いのだが、線の流れや流麗さは、あまり感じない。もう少し、スマートに、スピードがあればよいんだけど。
甘いオセンチなフレーズ、木管と弦で奏でられる、「どしど そ〜ふぁ どしど そ〜ふぁ」という女性的なフレーズが、「どれみ そ〜ふぁ」が、クライマックスである。
また、その後に、悲劇のヒロインさながらのフレーズがあり、弦がユニゾンで壮大に演じてくれる。
なにせ、ハープ付きで、ため息交じりで、「どしど そ〜ふぁぁ〜 どしど そ〜ふぁあ〜」
「ふぁそらしらそふぁみれどし〜 らそふぁ みれ〜 れど〜 そふぁ〜」
ひぇ〜 蜂蜜と砂糖をまぶしたようなケーキ状態で、ここまでやりますかというほど、通俗的になってしまっているのだ。ところどころ、金管、ティンパニーが鳴り響いているが、もはや、真剣には聴いていられない。
映画音楽さながらの、とろとろミュージックだ。いや、今時、こんな映画ないぞ。
シモノフさんの演奏も、まあ。ひと昔、ふた昔前の映画音楽っぽいが・・・まっ いいかぁ。突き抜けておりまする。
最初は、ロメオとジュリエットのような感じで聴いてて、ちょっぴり苦笑いだったのだが・・・
1楽章の最後まで持たず、腹を抱えてわらけてしまう。やりすぎじゃーっ。
なんつぅー 交響曲なんだ。シモノフさんの演奏も、最後、タメがめいっぱい、これでもか〜と目を剥いて金管とティンパニーの鳴りものたちが一斉に奏でてくれる。
安物臭いが、まっ。

2楽章 「アルプスの仙女」
バレエ音楽のように、可愛いフレーズがイッパイちりばめられている。仙女って言葉、古めかしいが。
妖精でもよさげだと思うが、かなり甘いフレーズがパッキングされている。
ハープ付きで、弦や木管で、「そふぁし〜そふぁみ〜れどふぁ〜 どらふぁ〜どみれ〜みれそ〜」
ふふふっ。可愛く、ここだけのフレーズで有名曲になれそうなのに。チャイコさんの頭から甘いフレーズが湧き起こって、とめどもなく流れてきてくるんだろうなあ。すごいっす。
変奏曲風に次から次へ出てきいて、演出能力も素晴らしい。すっかり夢の世界へ誘われる。
マンフレットのテーマ音楽が流れてきて、夢の世界は消えちゃうのだが、相当に、名残惜しそうだ。
「そ〜らそ ど〜れど ら〜しら ふぁ〜そふぁ・・・」
1楽章は飛ばして、この2楽章だけ、恋人と一緒の時間にBGM的に流すには良さそうだ。

3楽章 「村の生活の情景」
「み〜ふぁっみれど しらしふぁれ〜 し〜どれ しふぁみ〜」
オーボエとホルンで奏でられる牧歌的な楽章で、かなり安定して小市民的な幸福感が満ちあふれている。平凡だけど下草の香りがするような、アルプスの風景が広がっている。
ホルンの音色が柔らかく、またフルートが「み〜 ふぁっみれど しらしふぁれ〜」と、柔らかい陽射しを感じさせるフレーズを吹いてくる。この描写って巧いよねえ。風景や光景が、ふわ〜っと広がってイメージされてくるもの。で、「そそっ ど〜れみ〜れふぁ〜そみれ〜みど〜(どどど・・・)」低弦が入ってくると、少し不気味な雲がよぎる場面に展開するが、再度、ホルンとフルートで牧歌的なフレーズが入って、元の世界に戻ってくる。最後、村の教会の鐘が鳴らされている。ホルンとフルートに拍手という楽章である。
主人公のテーマ音楽が、時折登場するところがオペラ的であるが、この楽章は、かなり、のびやかに歌われている。
まるで、映画「サウンド・オブ・ミュージック」みたいなんだけど・・・ 歌詞をつけて歌いたいぐらいで。
なかなかに美しい。

4楽章 「アリマンの地獄」
「どれみふぁ そらら れっれ〜 ふぁそらし どれれ〜 れっれ〜」
木管と金管の和音、タンブリン、低弦、低ブラスで豪勢に鳴り始めて、壮大なスペクタルの終幕章に入っていく。和音は確かに美しいし安定感があるが、ちょっぴり執拗なんだろうな。
チューバの音が相当に大きく入っているし、迫力には事欠かない。
ティンパニーのドスン、シャンというシンバル、大太鼓のドンドンという響き、ハイ、音響スペクタル状態で、鳴り物がイッパイ詰まっている。弦もピチカートもあるし、激しく上下して弾ききっている。
シャンシャン、ジャンジャン、シャキシャキ〜 チャンチャカ チャンチャン チャーん、である。
中間部分では、ハンガリー系の舞曲風になっている。笛はぴーひゃらとなるし、打楽器群も忙しいし、チャンチャラ チャンチャラ・・・ タンバリンが鳴ってくると、慌ただしい。
そのうちに、銅鑼は鳴るし。この楽曲、大人数を要したオケでないとダメなのだ。
まるでロメジュリのような激情あふれる、チャンチャン バラバラ風の決闘状態になっている。
これじゃ、苦悩を描くというより、チャンバラ劇なのだが・・・。ホント、大袈裟すぎるんで悩んでいられない。思考能力が停滞しちゃうのだ。

深淵を覗く風ではなく、復讐劇でも始まったかのような、怒りが満載で、外向的で〜。
もう少し構成をタイトにして、フレーズを間引いてくれたら良かったのに〜と言いたくなるが、甘美なフレーズを、おしげもなく使ってしまったチャイコフスキーさん、お疲れさまでした。
最後に、パイプオルガンの華麗な響き〜 締めにはふさわしいと思います。
シモノフさんの演奏は、ベタなのりで演奏されている。
それにしても、演奏するのも馬力が要りそうだし、聴いている方も、辟易しちゃうぐらい疲れる。
なんと言っても長いっ。豪快だし、メインディッシュを、全て食べろと言われているようで。お腹が、はち切れてしまうぐらい。しかし、これぐらい力を入れて、豪快に豪勢に鳴って演奏してもらうと、ありがとうございました。という気分になることも確かである。
いずれにしても、お疲れさまでした。

それにしても、交響曲にした理由がイマイチわからない。劇場版に仕上げておけば良かったのに。
まっ チャイコフスキーのある意味、旋律美が、単調に終わると、こうなるのかしらん。という結果を見たような気がする。結構、粘着的で、シツコイし、シモノフさんも、粘っこく演奏しておりダイナミックだ。
弦の響きが厚いうえに、金管の鳴りっぷりが大きい。そこに粘りけを加味すると、なかなかのもの。
ところで、この楽曲、交響曲4番と5番の間に書かれている。へっ〜 この後に、あの傑作5番が生まれるとは。別人が書いたものじゃーないの? って感じで、俄に信じられなかった。
1981年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 EMI  
1987年 シャイー コンセルトヘボウ Dec ★★★★★
1989年 ユーリ・シモノフ ロンドン交響楽団 Collins ★★★
所有盤を整理中です。

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