バーバー 弦楽のためのアダージョ Barber: Adagio for Strings

 バーバー 弦楽のためのアダージョ
Barber: Adagio for Strings
セルジュ・チェリビダッケ ミュンヘン・フィル 1992年
Sergiu Celibidach Münchener Philharmoniker(Munich Philharmonic)

チェリビダッケの演奏は、音が出てき途端、思わず息を止めて、そして、何もかもが消えてしまうような怖さがある。少なくとも、息を呑み込んで張りつめたなかで聴くことになってしまう。思わず歩みを止めてしまうのだが、それが強制でもなんでもなく、自然なことのように感じるのだから不思議だ。チェリさんの魔力である。
プレヴィン盤では、旋律を流れとして聴き、膨張感や収縮感を楽しむことができる。音の流れが、膨らんだり萎んだり、それに乗れる心地良さがある。でも、チェリビダッケ盤を聴くと、流れが堰き止められている気がする。とても不思議な時空間が広がるのだ。時間が止まってしまったかのような錯覚。音色とかフレーズを聴き込む気にならず、あ~あ、やられたなあと聞き終わってから、息を大きく吐き出して、これはレクイエムなのだと感じた。

フレーズのなかでの音の厚みは薄め。テンポも大きくは変わっていない。弦の音が淡々と流れていくが、高い音に移行するときも、盛り上がることなく移動しており、でも、気がついたら頂点に立っている。下降線を辿る時も、放物線のようなカーブを描いて落ちるという感じがない。チェリビダッケの演奏は、高みにとどまったまま立っている。音は上り下りをしていたのだろうか、後ろを振り返っても認識できず、ある意味怖い演奏だった。初めと終わりが感じられず、拍手が聞こえないと終わったと思えないぐらい不思議な演奏なのだ。人生の節目、あった筈だった始点と終点が消えているようで、最初っから、そんなモノ無かったですよ~っと言われているようで。ひぃ~ 何もかもが消えていくようで怖い。拍手入りのライブ盤で良かった。拍手で生き返れます。


 バーバー 弦楽のためのアダージョ
Barber: Adagio for Strings
レナード・バーンスタイン ロサンジェルス・フィル 1982年
Leonard Bernstein Los Angeles Philharmonic Orchestra

バーンスタインの演奏は、ライブ盤なのだが録音状態が良く、ゆったりしたテンポで奏でられる。鎮魂歌(レクイエム)としてのアプローチで特有のねっとり系の演奏だ。ほとんど切れ目を入れず、フレーズにうえに次のフレーズが覆い被せてくる。人のぬくもりを感じさせる温かみから悲しみが滲み出てくる。フレーズの振幅はさほど大きくなく、低めの水平レベルで張り付いたような面もあり、綺麗だとか美しいという言葉では表されない沈み方で、お言葉のかけようも御座いませんという感じ。余計な言葉は要らない。言葉をかけてはマズイという感じが漂っている。それにしても、CDを聴いていると、明るい曲の間に挟まれて、アダージョの居心地が悪い。弦楽のアダージョの次に、バーンスタイン「キャンディード序曲」が始まる。これには思わず苦笑。ちなみに、カップリングは、コープランド「アパラチアの春」、W・シューマン「アメリカ祝典序曲」、バーンスタイン「キャンディード序曲」となっている。1971年、ニューヨーク・フィルとの録音もある。


 バーバー 弦楽のためのアダージョ
Barber: Adagio for Strings
アンドレ・プレヴィン ロンドン交響楽団 1976年
André Previn London Symphony Orchestra

プレヴィン盤は、映画「エレファント・マン」に使われていたらしい。映画は見たことがあるものの忘れている。映画「プラトーン」にも、この楽曲が使われていたらしい。誰の振った盤なのかも知らない。どのシーンで使われていたのかも忘れているぐらいで、記憶に残っていなかった。いずれにしても、穏やかで鎮魂歌的に響いてくる楽曲である。プレヴィン盤は、響きに厚みがあり、聞きやすく癖があまりないように思う。大衆的って言えば大衆的かもしれないが、でも聞きやすい。「たらら たらら たらら~」と、続く波が心地良く、適度に厚みがあって速さも頃合い。特に、低弦の響きが深く、甘めの音色なので、低音域の響きが心地良い。チェロの甘い声とシンプルな音型で繰り返され、転調していくヴァイオリンの響きが、絡みあって上昇し下降していく様が、綺麗だと思う。自然なペースで頂点に持って行かれて、その後、ひと呼吸入れて下降していく。頂上の「らら し~ ら~っ」高音域の声が、キンキンに響かず、絶望的な様相も示さず、力がすっと抜けたように、ふ~っと落ちていくところが好きだ。落ちかけの「し~ら~ ら~そ~ ど~ふぁ~」の響くところで、やられたと感じる。バーンスタイン盤は遅めでじっくり。マリナー盤は擦れた薄め風味。深夜に、どっぷり浸かりたいときはバーンスタイン盤。昼間に聴くのであれば、深刻になりすぎないプレヴィンの演奏が、適度で喜ばしい。



バーバー 弦楽のためのアダージョ
1975年 マリナー アカデミー室内管弦楽団 Ph 未聴
1976年 プレヴィン ロンドン交響楽団 EMI ★★★★
1981年 レヴィ アトランタ交響楽団 Telarc 未聴
1982年 バーンスタイン ロサンジェルス・フィル G ★★★
1992年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI ★★★★★

サミュエル・バーバー(Samuel Barber)は、1910年生まれのアメリカの作曲家です。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、同世代のパリに留学したコープランドやカーターなどとは違い、モダニズムや実験的姿勢に走らず、和声法や楽式において、伝統的でな作風で、豊かで華麗な旋律が特徴的です。作品としては、この弦楽のためのアダージョが、イチバン有名だと思いますが、もとは、弦楽四重奏曲第1番の第2楽章を編曲したもので、1938年、トスカニーニによって初演されています。この曲が有名になったのは、ジョン・F・ケネディ大統領の葬儀で使用されてからだそうで、そのため、訃報や葬送などでの定番曲のように使われるようになったそうですが、作曲家ご本人は、葬式のために作った曲ではないと不満を述べておられたそうな。しかし、すすり泣くような旋律、中間部終わりの激しく突き上げる慟哭のようなクライマックスは、う~ん。やっぱり人の涙を誘います。映画「プラトーン」や「エレファント・マン」などにも使用されており、みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。10分程度の楽曲です。


 

YouTubeでの視聴

バーバー 弦楽のためのアダージョ
Barber: Adagio For Strings, Op.11 (Live)
チャンネル:LA Phi  バーンスタイン ロサンジェルス・フィル
https://www.youtube.com/watch?v=CLIqcBu7ASs


Barber: Adagio for Strings Op. 11
セルジュ・チェリビダッケ - トピック
Sergiu Celibidache - Topic  チェリビダッケ ミュンヘン・フィル
https://www.youtube.com/watch?v=GbtCChVk0lA


Barber: Adagio for Strings Op. 11
チャンネル:アンドレ・プレヴィン - トピック
André Previn - Topic  プレヴィン ロンドン響
https://www.youtube.com/watch?v=uMr-WNV0tlw


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