バルトーク 弦チェレ Bartok: Music for Strings Percussion and Celesta

 バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
Bartok: Music for Strings Percussion and Celesta
ジェームズ・レヴァイン  シカゴ交響楽団 1989年
James Levine Chicago Symphony Orchestra

バルトークの弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽、略して、弦チェレ。
バルトークって、闇夜に浮かぶ怪しげな月、魑魅魍魎とした悪魔と、無邪気に遊ぶ子供って感じがする。ブキミな存在だ。この弦チェレも、真夏の夜に聴くと超怖い。悪魔が寄ってきそうでなので小春日和の昼下がりに聴くような楽曲でもない。半音の不安定なフレーズが続き、音が採れず、書きようがないって感じの半音つづら折り状態だ。
レヴァインの演奏も、録音状態が生暖かい空気が漂い、もわぁ~っとしている。空気が重く沼地のような感じで、底にもわ~っと、ぬめっとした感覚がたまっている感じがする。そこに低弦が表れ、燻されるかのようなスモーク状態。
第1楽章の出だしは、弱音器のついたヴィオラだが、隣り合わせの音でモゴモゴ弾いていたのに、そのうち、勝手に弦が音域を広げながら異なるフレーズを描いていく。段々と怪しげな世界が広がり、いよいよ魔王さま登場かというシーンとなると、打楽器がドスンっと叩かれる。
怖いモノ見たさの心理が見抜かされ、を試されているかのような楽曲で、怪しい雰囲気を恐る恐る覗く。垣間見たくなる心境に誘われてしまうのだが、いひひぃ~っと歯の抜けたオバアに誘われているような気持ちに。真夏の肝試しに使うと即採用のBGMになると思う。CDの収録に、何故かシカゴ交響楽団がよく使われているが、ショルティの演奏が乾いた大地のようだったのに対し、レヴァインの演奏は、沼地に佇む妖怪。ぬめっとした低弦の混濁した響きを聴いているうちに、もわ~っと腐った匂いが漂う。うへっ。


 バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
Bartok: Music for Strings Percussion and Celesta
ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団 1989年
Georg Solti Chicago Symphony Orchestra

バルトークの楽曲って、難しい曲が多い。この弦チェレは、ショルティ盤で聴くと、タイトで彫りの深さがあり、筋肉質、ぞっとする底知れぬ恐怖感にかきたてられる。いつものショルティさんの豪快でパワー溢れる演奏とは、ちょっと異にしており、第1楽章は、鬼のように迫ってくる。また、かさついた乾いた音がして、弱音から始まりコントラバスの音の響きに支配される。
この楽章は、変拍子のフーガで規則正しいといいつつも、トコロテンの押し出しみたいに押されて圧迫される感覚。幽霊のようなかすれた震えた音が、次々に登場しては消えていく。この消え方が、次の強めの音に吸収され、また大きくなってくるので、気味が悪いのだ。大きくなるなら、段々大きくなって欲しいのに、大きく上昇したかと思うと急激に萎む。形が歪んで聞こえ、揺れた感覚が生まれ、音がぐるぐる回る。三半規管が変になったのかと思うほど。

泥臭くて、ニオイがキツイし、妙にティンパニーが、元気で響きがリアル。明るい音のピアノとかチェレスタは、音が通っているものの煌めき感としては薄い。音の濁りが独特で、これが民族的に繋がっている気もする。第3楽章は、拍子木の澄んだ音が、打ち鳴らされ、ぼぉ~ぉん。ぼぉ~ぉんという打楽器が、間抜けた響きを打ちだしてくる。空気が生暖かい。肝試し大会のようでもあるので、面白いと言えば面白いのだが、チェレスタが出てくると、これまた幽霊で、ひぃ~ほぉ~ しぃゆぅ~っという音が、小声で奥で鳴ってくる。ひえぇーっ、これは怖い。チェレスタは綺麗なのだが、火をおこして煽るような弦があり、崖っぷちに追いつめられて、ドスンドスンという打楽器がダメ押しして、突き落とす。泥沼のなかでもがき、崖に登らせておいて追いつめ、突き落とす。まるで鬼だ。第4楽章は、弦が熱く飛び跳ね、乾いた大地の踊りが始まる。まるでストラヴィンスキーの原始的な音楽にも聞こえるのだが、もっと土俗的で熱い。灼熱の大地の踊り、フライパンのなかで、ポップコーンが弾けているかのような感じだ。恐ろしいほど明晰で、狂気じみ怒りを感じる。ワタシには、熱くて乾いた大地が悲鳴を上げているかのように聞こえる。すっかり干からびてしまったひび割れた大地。ショルティ盤は、昔から名盤と言われているが確かに。踊るというより逃げまどうって感じが近いかもしれない。干上がってヒリヒリするほど熱くて、豪快な演奏だ。 押しも強く鬼のように迫る。1963年、ロンドン響とも録音しているが、いや~このシカゴ響で十分だと思います。


 バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
Bartok: Music for Strings Percussion and Celesta
シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1987年
Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal (Montreal Symphony Orchestra)

デュトワの演奏は、柔らかくソフト。ぎりっとした苦みは少なく、明るい開放的な色彩感があって勢いの良さがある。えっ、それでは、バルトークではないのでわ。バルトークの作品は、総じて難しく、聴いてて楽しいっていう楽曲ではない。晦渋さがあり、嫌みなほどに心理的。第1楽章は、変拍子のフーガで、難しい数式、フィボナッチ数列で創られたかと思うような音符が並んでいる。拍子が変わり、音が不安定な連なりをもって膨らんで、緊張感を強いてくる。まるで、ホラー映画のようにブキミ。音符が規則正しく並んでいるようには思うが、音符の並びが気持ちよく耳に届くとは限らず、涙目になって馴染めないまま終わる。

ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、第1楽章は、変拍子の変則的なフーガ。静穏な中に高い緊張を感じさせ、弱音器つきのヴィオラの半音階的な主題から始まる。続いて5、13、27小節目に完全5度ずつ上で主題が登場する。また、8、16小節目に完全5度下(変則的なのはここで、通常のフーガなら、まず主調の完全4度下である)に主題が登場し、弦楽器群は次第に音域を扇のように広げていく。34小節目に、ティンパニが登場。55から56小節目に、変ホ音のクライマクス。88小節で開始と同じイ音で静かに閉じる。以上に登場する8、13、21、34、55といった数字はフィボナッチ数列に現れるとあった。もう、ええ加減にせんかい!
この数式は、理数系の方にお任せするとして、青春時代に、ワカランと言いつつ無理して聴いた。背伸びしたい年頃で、いかにも堅物ぽく振る舞っていたが、やっぱり、いつまでたってもわからないまま今に至る。
デュトワの演奏は、第2楽章が綺麗。打楽器の響きがとても綺麗で、夜空に拡がる花火のよう。色彩感、奥行きの広さで聞かされてしまう。柔らかく、しなやかにたわんだ響きが、極上サウンドだ。不気味さは軽減され、神秘性があって美しい。
4楽章は、スペインのようなカラフルな舞曲だ。(ハンガリーの筈だが)一種の変奏曲のようだが、明るく、かんかん照りの太陽のもとで繰り広げられる熱っぽい舞曲だ。最後に第1楽章の冒頭で登場した、くねっとした蛇のような音が再現されるが、すぐに消えていく。総体的にデュトワ盤は、カラフルでしなやか。最初に聴くには聴きやすい演奏だ。


 バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
Bartok: Music for Strings Percussion and Celesta
ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1969年
Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker (Berlin Philharmonic Orchestra)

バルトークの傑作だという弦チェレだが、この面白さがわからないままだ。冒頭から、恐がりのワタシは、びびりまくりでホラー映画さながらの情景が浮かぶため、聴く気持ちが萎える。怖ろしくて聴こうという気が削がれる。カラヤン盤は、まだ取っつきやすい演奏だと思うが、特有のレガートが怖さに輪をかけて、もわっとした空気の漂うシーンに、髪の長い女性が登場しそうなのだ。で、第1楽章は飛ばして第2楽章から聴きたい弦チェレである。(もちろん後日、全楽章聴いたが)
第2楽章は、アクション映画さながらに、ティンパニーの歯切れの良い音が聞こえリズミカル。スピードは速いし、アンサンブルは精緻だし、ピアノの音も弦の弾きも綺麗に入っている。低弦の響きから軽やかなステップを踏む高音域の弦、木琴、ピアノやチェレスタなど多彩な楽器が、そこかしこで踊っている。第3楽章の拍子木が鳴ると、日本の音楽を聴いている気分に。ただし、なだらかな曲線美が致命的というか怖すぎ。こんな曲は、真夏に聞くモノではない。背筋が、ホント凍る。弦の掠れた切れそうな長い糸が、絡んで、柳が風に吹かれて揺らいでいるというか。すぅ~っ しゅぅ~ ひゅぅ~っ。
カラヤンの演奏で、なんたって第1楽章と第3楽章の緩楽章では、危うい風のそよぎを感じ、弦の揺らぎが絶妙で、ひぃ~っ。
髪の長い女性が登場して、何やら数えているようである。背筋が凍りついてしまいます。


 バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
Bartok: Music for Strings Percussion and Celesta
フリッツ・ライナー シカゴ交響楽団 1958年
Fritz Reiner Chicago Symphony Orchestra

昔から有名な盤で、1958年の収録だがリマスタリングされているので、録音状態はまずまず。すごく訴える力のある演奏で、のっけからぐいぐい引き込んでくる。表面的にはクールだが、丁寧に奏でられ、チェレスタの音も綺麗に聞こえる。録音年から半世紀以上経っているが、今でも充分に通用するスピード感があり、キレがある。特に、アレグロの2楽章は、とっても速めでキレキレのきわどさがあり、ギザギザとざらついた感覚を持ってくる。それと共に、チェレスタの光が、まるで鋭い光を放って放物線を描いているようで勢いよく進む、金属のてかり、艶やかなシャープさを感じる。例えが悪いが、手作りされた未来型のカッコイイ、スポーツカーのような車のフォルムを見ているかのような感じだ。鋭いが、滑らかな曲線を描いた、磨かれたフォルムを見ているようで、うわぁ~と歓声をあげたくなってしまう。音は、硬直化しているわけではないし、細身でもなく太すぎず中庸なのだが、地熱のように熱い演奏だと思う。


バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
1958年 ライナー シカゴ交響楽団 R ★★★★
1969年 カラヤン ベルリン・フィル G ★★★
1983年 ドラティ デトロイト交響楽団 Dec 未聴
1987年 デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★★
1989年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★★★
1989年 レヴァイン シカゴ交響楽団 G ★★★★
1994年 ブーレーズ シカゴ交響楽団 G 未聴


 

YouTubeでの視聴

バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
Bartók: Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz. 106
シカゴ交響楽団 - トピック Chicago Symphony Orchestra - Topic

第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=l4cq8y64Tgs
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=p6QDuWgjtZc
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-Wtu_i-CDiQ
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=etddhWGXJW4


Music For Strings, Percussion And Celesta
フリッツ・ライナー - トピック Provided to YouTube by IIP-DDS
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=1yDxHMNDIxo
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=mVuHAyNXMVU
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=bdJp9jGhznM
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=2lru6NdURzY


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