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ベートーヴェン 序曲「フィデリオ」&「レオノーレ」序曲
Beethoven: Overture "Fidelio"&"Leonore"


ベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」(作品72)は、唯一のオペラです。

ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、原作は、ジャン・ニコラス・ブイイさんで、主人公レオノーレが「フィデリオ」という名で男性に変装して監獄に潜入し、政治犯として拘留されている夫フロレスタンを救出する物語です。
ベートーヴェンが構想したオペラには、他に「ヴェスタの火」というのがあるそうですが、未完になっています。
で、このオペラ、相当に難産だったそうで、何度も、推敲を重ねたため、「フィデリオ序曲」(あるいは「レオノーレ序曲」)としては4曲が書かれているそうな。

1つ目のものは「レオノーレ」第1稿の初演に使用された序曲で、現在「レオノーレ」序曲第2番となっています。
2つ目のものが「レオノーレ」第2稿の初演に使用された序曲で、現在「レオノーレ」序曲第3番となっています。
しかし、この版は、オペラへの序曲とするには、あまりにも音楽的な内容が濃密に過ぎて、この序曲は現在では演奏会用序曲として、オーケストラのコンサートなど、メインの楽曲の前に演奏されますが、イチバン有名なものです。
で、1807年、プラハでの上演の折りに、再び序曲を書き直した。これが「レオノーレ序曲」の第3稿で、現在「レオノーレ」序曲第1番となっているそうです。
最後の版は、「フィデリオ」のために作曲されたもので、これが現在の「フィデリオ」序曲となっています。

まあ、ちょっと、ややこしいのですが、レオノーレもフィデリオも、同じ人物だし、同じオペラのために作曲されたものです。

バーンスタイン ニューヨーク・フィル 1967年
Leonard Bernstein   New York Philharmonic



録音状態は、あまりよろしくない。
ワタシの所有している盤は、リマスタリングされていないようで、ハイ。音が痩せてます。(というか、67年だからねえ。これが普通なんですよね。きっと)カップリング:ベートーヴェン 交響曲全集より。
9番の「合唱」と、一緒に収められている。

序曲「フィデリオ」

「ふぁ〜っどどっ ら〜っふぁふぁ どぉ〜っらら ふぁっみっ! 」
「しぃ〜どぉ〜 どぉ〜らぁ〜  ふぁ〜 どぉ〜 ふぁ〜 れぇ〜」
「しぃ〜っふぁふぁっ れ〜っしし ふぁ〜れしっ ふぁっ。」
「み〜 どぉ〜 ふぁ〜 れぇ〜」 
「そぉ〜みぃ〜 ふぁ〜 らぁ〜 そぉ〜しぃ〜」 そして、しぃ〜 ドンドン ドンドン・・・とティンパニーが鳴ってきて、ティンパニーが、ドンドン ドンドン・・・ ドン ドン・・・どっど どっど どっど どっど・・・
冒頭のフレーズは、弦の強いタッチで奏でられ、そこにティンパニーの強打というのが、1フレーズ。
次に、ホルンの静かで消え入るような長音が、2つめのフレーズ。
これが交互に奏でられる。

「そしらそ ふぁらど そしらそ ふぁらど そしらそ ふぁらど〜」 
バーンスタイン盤は、さすがに録音が古めかしく、なんとも。これは、う〜ん。今更聞かなくても良いかも。
ホルン命ってな曲なのだが、イマイチなんだよねえ。
弦も硬いし。う〜ん。古いLPを聞いている、そのままって感じで、リマスタリング盤じゃーなかったのか。と、かなりガックリしてしまった。

弦の擦れた硬い音に、ティンパニーの通らない連打。 ホルンの「らーしら らーしら」が入ってくる。
やはり。相当古めかしい音なので、熱いんですけどねえ。 「そっそらそ〜 そーらそー らーしら どーれど」 ホルンの和音が綺麗に決まっていないので、熱くて、ガンガンに行ってしまっているようで・・・。勢いだけかい。

ご存知のとおり、ベートーヴェンのただ1つのオペラ 歌劇フィデリオ序曲は、レオノーレとセットと言っても良いかもしれない。主人公は、政治犯として捕まったダンナを助けようとする妻 レオノーレさんのである。
で、この妻、男装して牢獄に救い出す。で、男装していた時の名前が「フィデリオ」
えっ ややこしいって。う〜ん。男装時の芸名?が。フィデリオで〜 オペラの名前も、これに由来している。

現在、歌劇「フィデリオ」は、この序曲「フィデリオ」をまず演奏して、レオノーレ序曲が、第2幕と第1場の終わりに演奏されているらしい。(オペラを見たことが無いので〜 ワタシは、あまり偉そうに言えない)

だから、できたらセットで聞いて欲しいのだが、7分弱の演奏だが、確かにねえ。バーンスタイン盤は、勇ましいです。
バーンスタインさんは、2回、ベートーヴェンの交響曲 を全集で出しているが、ニューヨーク・フィルとは、1回目の全曲演奏である。後年、ウィーン・フィルとの全集が発売されているものの、まあ。そちらの方を聞いてみないと、何とも言えないが、録音状態は、ウィーン・フィルとの演奏は良いと思われる。
個人的には、いくら男装しているからって、こんなに逞しく、マッチョに、強引っぽく演奏しなくてもいいかなあ。と思ってしまった。かなり強引さを感じる。
まっ それにしても、フィデリオは素っ気ないほどの序曲なのだけどね・・・。レオノーレ序曲の方が、柔らかいし、劇的な効果もあるように思う。

バーンスタイン ウィーン・フィル 1978年
Leonard Bernstein    Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)

録音状態は、あまり良くない。 熱いし、劇的なのだが、う〜ん。私的には、えーっ ここまで濃くなくても、と、ちょっと引いてしまった。
演奏は、精緻さにはちょっと欠けてて粗い気がする。ライブならではの熱さなのだろうと思う。(ライブ盤)

序曲「フィデリオ」

ウィーン・フィルとの交響曲、序曲集からの1枚である。 ベートーヴェンが作曲した序曲は、全部で11もある。
ちなみに復習しておくと、プロメテウスの創造物、コリオラン、エグモント、アテネの廃墟、シュテファン王、命名祝日、献堂式、そして、歌劇フィデリオの序曲として作曲したレオノーレの1〜3番までの序曲と、このフィデリオである。
つまり、 歌劇「フィデリオ」には、4つの序曲があるってワケである。

まっ それはともかく、バーンスタインさんの演奏としては、ニューヨーク・フィルの旧録もあるけれど、ワタシが所有しているCDは、あまり録音が良くなかった。
で、後年録音された、ウィーン・フィルとのライブ盤である当盤を聴いてみたのだが、これが熱いっ。
なんって硬くて勢いがあって、熱いんだろう。
メチャ、せっかちなほど勢いがあるし、コテコテとまでは言わないけれど、冒頭のフレーズ、「ふっどどっ らっふぁふぁ ど っらら ふぁっみっ!」
まるで怒ってるみたいに、畳みかけてくる。
で、ホルンの部分は、静かに長いのだ。ちょっと極端だなあ。と思うほど。
緩急自在に投げ分けているというか、スピードが違う、
ティンパニーの ドンドン ドンドン ドンドン・・・と鳴るところは、普通だけど〜
「ふぁっどど ふぁっどど そしらそ ふぁらど そしらそ ふぁらど〜」
では、あまりノビがない。

この序曲で吹かれているホルンの音色が好きなのだが、う〜ん。
総体的に言うと、演奏は、熱いし、濃いんだけど、ワタシ的には、ホルンと、木管の軽めの明るい音色には、ちょっと付いていけないかも・・・。
録音的にも、ライブ盤ってこともあるのか、あまりバランスが良いとは思わない。
それに、緩急の落差が激しく、う〜ん。ホルンなどの木管楽器が、長い音がちょっとツライかもしれないですね。最後、めちゃくちゃ熱いんですけど。
かなりドラマティックで、きっと、コンサート会場で聞いたら、おおっ、熱いやん。と煽られちゃうと思うんです。映像付きで、歌劇が演じられていたら、きっと、拍手〜っと言っていたと思うです。
でも・・・ CDで聴いちゃうとなあ。音が、ちょっと軽いんですよねえ。それに、ワタシ的にはこの演奏は、粗いなあ。って思ってしまったのです。う〜 ワタシテキには合わないですね。 スミマセン。

レーグナー ベルリン放送交響楽団 1982年〜83年
Heinz Rögner    Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
(Berlin Radio Symphony Orchestra)

録音状態は良い。まろやかな響きがあって、適度に歌う。硬くもなく柔らかすぎず。自然に劇的な感じがして盛り上がる。いや〜やっぱプロですねえ。渋い、匠の技って感じ。
カップリング:コリオラン、エグモント、アテネの廃墟、シュテファン王、
命名祝日、献堂式、レオノーレ3番、フィデリオ、プロメテウスの創造物 全9曲 
「レオノーレ」序曲 第3番

レーグナーさんのベートーヴェンって、特別に格好良くもないし、いたって普通っぽい。
柔らかすぎず硬すぎず、適度に安定しているというか。
特別に録音状態が良いわけでも、歌うわけでもないのだけど、どこか、構築的に響いているし、どこか、しっとりしてて、まろやかに響き、低弦の響きも、楽想に応じて、しっかりした硬さも持ってくる。

それに、このレオノーレ序曲を聴いていると、シーンに応じて、力の入れ方が見事に変わるのである。
冒頭、ゴツンっとティンパニーが叩かれて、「らーーぁ〜 ら〜そ〜ふぁ〜み〜れぇ〜ど〜し〜ら〜」と、気がついたら音が、自然に消えていく。
ふわっとした、音の波があって、どういえばよいのか、音の力が一様ではないというか、均一的、均質的に鳴らない。力の抜き加減が、なんか絶妙なのだ。

で、フレーズは、音が舞っているわけではないのに、どこか浮く感じがして、どこか液体っぽい。
ヴァント盤は、どこか硬くて硬質的、鉱物資源のような感覚なのだが、ワタシ的には、レーグナーさんって、液体っぽいというか、柔らかな波があって、静かな海の潮目を観ているような感じ。
なーんか、気がついたら、姿が変わっているような〜 そんな感じがする。

このレオノーレもフルートの綺麗な音が、透明もあって音質的には、柔らかくて、呼吸している木質的な感じを受ける。低音の響きも良いし〜 やっぱ、ドイツのオケは良いねえ。と妙に納得させられる。
派手さはないんだけど、ゴンゴンした感じの推進力があって、ガンガン ガンガンっと、低弦とティンパニーが壮大に鳴っている。
特別に畳みかける勢いはないし、まっ 優美なエレガントなレオノーレじゃないんだけどね。
こりゃ〜固いなーと思うフレーズと、メチャ、エレガントなフレーズが、まあ、見事にサンドされてて、特に、フルートは女性的で、こりゃ絶品っ。
また、トランペットが鳴ってくるところは、バンダだろうなあ、奥まったところから、柔らかく、高らかに鳴ってくるし、音響効果抜群で、場面転換がお見事っ。
ホント、視覚的に訴えてくるし、、、(←変な表現だけど) さすがに、劇的だ。う〜ん。さすがっ。

いっけんして、パッと見栄えのよい演奏ではないけど、地味だけど、やっぱ手堅い。
ホント、どこで潮目が変わっていくのか、気がついたら変わってるんですもんねえ〜 いや〜 ワカラン。
何度聴いても、あれっ。1音で変わるのかなあ。
ホント、いや、手堅いどころじゃないですね。玄人好みっていうか、渋いっ。
地味だけど、何度聴いても、う〜ん。やっぱ巧い。豪快でありながら繊細というか、男性っぽいのに女性的だし、う〜ん。この楽曲自体、ホント面白いんだけど〜
この演奏も、匠のワザって感じで、巧いって思う。

ピリオド演奏ではない、今となっては、昔風の演奏スタイルなのだが、う〜ん。レーグナー盤を聴いていると、ワタシ的には、はやくピリオド主流時代は終わって、こっちの懐かしい世界に戻ってきて欲しいデスね。
スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン 1984年
Otmar Suitner    Sächsische Staatskapelle Berlin (Staatskapelle Berlin

録音状態は良い。残響はちょと多めだが、爽やかで軽快。しなやかで、優美で品良く、大変美しいフィデリオだ。←ジャケット写真は交響曲全集 CD1枚モノの序曲集には、エグモント序曲(84年)、コリオラン序曲(81年)、プロメテウスの創造物(84年)、レオノーレ序曲(84年)、フィデリオ(84年) が収録されている。
「レオノーレ」序曲 第3番

「ふぁっ どどっ らっ ふぁふぁ どぉ〜っらら ふぁっみっ!」
スウィトナー盤は、極めて録音状態が良く、爽やかに始まる。そこからのホルンの響きも、まろやかで涼やかだ。
残響も良いし、はぁ〜良い音だこと。ほれぼれ〜っ。
「ふぁぁ〜 らぁぁ〜 しぃぃ〜 そぉぉぉ〜」「ドンドン ドンドン ドンドン・・・」と、初めは、ゆるやかにティンパニーが鳴ってきているが、段々に高揚してくる。
ここのティンパニーは、強烈って感じがしないのだ。重々しく、ご大層に鳴らない。
その点、もっと硬めに叩いて〜という方もおられるかもしれないが、いや〜 スウィトナー盤は、女性的で、しなやかで優美な盤である。

弦の響きが見通し良く、「ふぁ〜どど ふぁ〜どど そしらそ ふぁらどぉ。 そしらそ ふぁらどぉ〜」
ホルンの音色もバッチリ。勢いの良さを持ちながら、涼やかさと、まろやかさが、とってもバランス良く鳴ってくるので、すごく楽しい。
フルートの音色の可愛らしさといい、ルカ教会で録音されているのだと思うが、残響を伴って品良く鳴ってくるところが、ホント凄い。
リズム感が良いところに、響きが、次々と波動のように繰り出してくるところが、醍醐味となっている。
波打ってくる音の模様が、目で見えるほど感じられるぐらい。

ホルンの音と弦、木管の音質のバランスと、躍動感のあるフレーズ「そらそらそら そぉ〜」という語尾の爽やかなヴァイオリンの弾み感が満喫できる。録音も、残響は多めだが、ヌケが良く、籠もっていないし、重々しい感じがしない。
柔らかい残響を伴い、ほのぼのとしながらも、残響のなかで、躍動感が描かれているのだ。楽しさが、カラダイッパイに広がって〜 ホント広がってくる。
もちろん、ホルンも、ふんわりと重なってくるし、合間に、木管の爽やかな音が繰り出してきて、「ふぁどど ふぁどど そしらそ ふぁらどぉ〜っ」と、軽やかに、品良く、舞踏風のフレーズとして演出されている。
軽めだが、この躍動感にはやられる。弦の特に高音域の弦と、金管の鮮やかさも重なって、流麗だし。
ホント、ここのオケすごい。ホント美しいっ。こんな美しいベートーヴェンで良いのかしらん。って思うぐらい。
オケのバランスが良く、多彩な響きが、すごーく広がってくる演奏なのだ。
ひょ〜っ。こりゃ凄い。耳にご馳走〜だあ。 ホント、大変美しいフィデリオである。

テンシュテット ロンドン・フィル 1984年
Klaus Tennstedt    London Philharmonic Orchestra

まっ こんなモン

録音状態は良い。しなやかで推進力のある演奏で、意外と柔らかい。
カップリング:ベートーヴェン序曲集
フィデリオ序曲、レオノーレ序曲3番、プロメテウスの創造物序曲、序曲コリオラン、エグモント序曲 全5曲
「フィデリオ」序曲

テンシュテットさんの振るベートーヴェンは、どこか構えていなければならぬ。悲壮感の漂う演奏かな。と思っていたが、意外なほど伸びやかで、涼しげである。まあ、フィデリオだからかも。
フィデリオは、やっぱ冒頭の「ふぁ〜どど らぁ〜ふぁふぁ どぉ〜ららふぁ みっ」 と、遠くで響くホルンの音色だろうと思う。
で、弦の「しぃ〜ふぁふぁ れぇ〜しし ふぁ〜れれしっ らっ」
弦の歯切れの良さと、柔らかくて遠くで聞こえてくるホルンだし、続く、ティンパニーの音と「どどどどど・・・」と劇的な幕開け効果なんだろうと思う。

テンシュテットさんの冒頭は、弦を、さほどカッっと音を切って始まるわけではなく、むしろ弱いかな〜と思うほどで軽やかで、すっと入ってくる。ホルンの音色も、さほど巧いわけでもないし、自然というか普通かなあ。
ホルンの 「ふぁっどど ふぁどど そしらそ ふぁらど そしらそ ふぁらど・・・」
この簡単だけど、可愛いフレーズを繰り返して、段々と大きく、「そぉ〜らそぉ〜 ら〜しら〜 ど〜れどぉ〜」と伸びやかに軽やかにひろがって、草原のような光景に導いてくれる。スピード感があって、それに乗れる。

ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1985年・88年
Riccardo Muti    Philadelphia Orchestra

録音状態は、まずまず。重厚さよりも流麗さ。スマートに華麗に、派手めに演奏される。冒険活劇風にも聞こえてくるが、楽しいっ。
1985年〜88年ベートーヴェン交響曲全集より

フィデリオ序曲、献堂式も、85年の録音
レオノーレ序曲第3番は、88年の録音
「レオノーレ」序曲 第3番

ムーティさんのベートーヴェンって、昔は、評論家に酷評で、ぼろかすに言われていたような記憶がある。
確かに、重厚ではないし、全く違うアプローチで、華やかで、歌うようなベートーヴェンなのだ。
昔は、試聴して買うという習慣なんぞなかったし、なにせレコードもCDも高値だった。
評論家さんが幅を利かせていたし、専門家が良いというならば〜と、お薦めに従って買っていたように思う。で、ムーティなんて〜ダメだと思いこんでいた。
しかし、実際には聴いてみたら面白いんだよねえ。これがっ。

しかめっつらして、苦虫をつぶしているようなベートーヴェンばかり聴いていると、つまらない。なにも重厚なだけが、ベートーヴェンじゃないと思う。と、今は思える。
ムーティさんのブラームスだって、カンタービレ調で朗々と歌っている。これが楽しい。もっと早くに出会っていたら、もっとベートーヴェンが楽しめただろうに・・・。惜しいことをしちゃった。
評論家のセンセイに変な思い込みを植え付けられて〜選択の余地を狭められたように思う。

冒頭、「そぉ〜 そふぁみれどしらそふぁ〜」 弦に艶があるのは、もちろんだが、木管の美しい音が、ふわ〜っと吹かれている。
音の出し方が、そろり〜 太く〜 すぼめて〜 と、表情づけが濃い。
オーボエやフルートの呼応が楽しい。「みそど〜 そどみ〜 どみそ〜 どふぁら〜」なんて、単純な和音を吹いているのだが、これが活き活きしているんだよね。
で、弦も同じ。3音の和音を分散して弾くのだが、迸るかのように、速いスピードに乗って演じられる。
エンジンを踏み込んだような加速感があるし、その音量もダイナミックに広がっていく。
この音量の調節って、巧いんだよなあ。弦のクレッシェンドには、ホント感心させられちゃう。
身のこなしが華麗な〜と感じるほど、速やかに、ぐい〜っと強くなっていく。
弦のボーイングが、ゴシゴシじゃーない。シュルシュルシュルーっ!なんだよね。
また、低弦の響きも充分だし、まろやか。
それに、ティンパニーも間髪入れず打ち込んでくるし、この頃合いっていうのは天才的っ。そう思う。
小気味良いのだ。レーサー顔負けって感じのスリリングさ。むははっ。今聴いても、カッチョ良い。
一番耳に残るフレーズ「どみそ ら〜そ みどらそそっ」
この前に、執拗な助走部分がある。

これは、ベートーヴェン特有のしつこさがあるのだが、これが、ムーティ盤だと、あまりシツコク感じない。
ショルティ盤だと、いかにも〜 重厚なのだが(←重さはあるが、エッジが鋭いため鈍く感じない)、ムーティ盤はスピードが速くて、軽やかなので、する〜っと、テンションがあがって頂点に立っている感じがする。
澄ました顔で、いっきに頂点に立ってしまうのだ。

これが、嫌みか〜って感じがしないでもないんだけど。でも、するする〜っと、立ってるもんね。
初めは、えっ ウッソ〜 これドイツだよん。イタリア・オペラじゃーないんだぜぇ〜って思っていたのだが、このすばしっこさにやられます。(笑)
そのくせ、トランペットが奥から吹かれているシーンだと、テンポは、相当に落としている。
ノビの良さと、駆け上り、駆け下り、歌心。う〜ん。やっぱ好きだなあ。

単純で申し訳ないけど、素人には、このカンタービレ風の快活で闊達なところ。好きですねえ〜
すげ〜っ メチャ面白いっ。あはは〜 あっぱれっ。さっすが〜 派手っ。伊達男っ!
こんな楽しくて、面白い序曲が流れてきちゃうと、オペラが幕開けから、ワクワク ドキドキだろうね。
楽しめるっ。もっとも、ちょっぴり冒険活劇風にも聞こえちゃうんですけどねっ。
ベートーヴェンなのに、ワクワクちやう。えっ これってマズイですか? イタオペ(イタリアオペラ)さながらに聞こえちゃう〜って感じだけど・・・。


フィデリオ序曲

フィデリオも、レオノーレも同じオペラのために作曲されたもので、姉妹品とでも言える作品である。
ムーティ盤は、ノリが良く、華麗かつ流麗なフレーズになっている。
「ふぁ〜っどどっ ら〜っふぁふぁ どぉ〜っらら ふぁっみっ!」
残響も美しいし、ホルンの和音も美しく間合い充分で、じわじわ〜っとティンパニーの叩きを含めて弦が音量を上げていく。フィラデルフィア管の色彩感、ホルンのまろやかさ。
木管が特に、美しい音質を持っているので、楽しいし、キビキビした感覚がたまらないです。
「どぉ〜 どぉ〜 どぉ〜」と繰り返す重いフレーズも、間延びしない。
ホルン、木管の主題を繰り返すところも、ティンパニーの重さを心地よく感じられる。
活き活きとしているのが、ホルンの「そぉ〜ら そぉ〜 どぉ〜れ どぉ〜」というノビのある音も美しく感じられる。

ショルティ シカゴ交響楽団 1988年
Georg Solti    Chicago Symphony Orchestra

録音状態は良い。活気あふれ、活劇を見ているかのようなキレのある格好の良さと、重低音が響く立派な風格がある。
1986年〜90年に録音されたベートーヴェン交響曲全集より 80年代に録音された新盤の方。
「レオノーレ」序曲 第3番

ショルティのベートーヴェンって格好がよい。剛毅で、威勢がよく、溌剌としている。
このレオノーレ序曲の3番も、イカツイけれど、立派な風格を持って演奏されている。特に、弦のキレが抜群なのだ。
「ふぁそら〜ふぁそら〜 どみそ〜 どみそ〜」
桜 桜〜と呟いているかのような、優しいフルートが鳴ってくると、ほっとさせられる。
木管の響きって、こんなに優しかったっけと思わせる冒頭で、重さから解放されて、すーっと立ち上ってくる雰囲気が好きだ。特に、フルートとオーボエの音色が美しい。
オペラ「フィデリオ」のために書かれた作品だけど、ベートーヴェンが何度も書き直している。
最後に出来たのか、いや、これより後にも書いていたっけ。なにせ、やり直してばかりの産みの苦しみを味わった楽曲である。う〜ん。完成度は高く、この3番が、良く演奏される。
「ふぁし〜れ しれ〜そ しれ〜そ しれ〜そ しれ〜そ そぉ〜」と、執拗なぐらいに助走を繰り返した後に、「どみそ ら〜そ みどらそそ どそふぁみみ〜そみれどら そふぁみ・・・」と、タララ ラララ ラララと奏でてくる。
このパワーも凄いけど、ためていた助走部分がこれまた凄い。
このパワフルさが、ショルティ盤の真骨頂って感じがする。もちろん、キレがあって、すっぱり行かれるのだが、内声部の木管に透明度があるし、穏やかな弦の響きも美しいし、いつもならゴツゴツしていると思うヴァイオリンの高音の音色が洗練されてて、「どみっ どみっ れふぁ れふぁ・・・」「っらっそ〜ふぁみ〜」と弾んだフレーズが、ことのほか洗練されてる。
「らっそ〜ふぁ〜みれどししし ら し そ」 奥のホルンの音色なんぞ、うわ〜っ。惚れ惚れしちゃう。
最後のトランペットが、遠くから優しく響く。

男装して獄中に乗り込んでいく、夫を助けに向かうレオノーレさん。
オペラの名前は「フィデリオ」だから、ちょっと名前がヤヤコシイけれど。
(妻レオノーレが男装して、フィデリオと名乗って夫を救出に向かうというストーリー)
なんとも勇ましい。勇ましいけれど、女性らしさもあって・・・。なかなかに良いっす。
弦のしなやかなフレーズと、金管の勇ましさが、交互に登場してくるところが、なかなかに聴き応えがあり、展開のスピード感にあふれるショルティ盤が好ましい。ちょっと、二流になっちゃうと冒険活劇風になっちゃいそうなモノだが、いやいや〜この演奏は立派で、風格たっぷり、活気あふれる演奏だ。

ヴァント 北ドイツ放送交響楽団 1990年
Günter Wand    Hamburg North German Radio Symphony Orchestra
(NDR Sinfonieorchester Hamburg)

録音状態は良い。透明度が高く、緻密で堅牢で、ぴしっとした楷書体で、格調高く鳴っている。その反面、柔らかく、のびやかで歓びあふれる場面もあって、すごいっ。
カップリング:ベートーヴェン 交響曲第4番、5番、6番
「レオノーレ」序曲 第3番

ヴァントさんの演奏って、ちょっと近寄りがたいほど、完璧さが存在しているような気がする。
ブラームスの交響曲第1番を聴いた時、メチャ怖くて、背筋が凍る思いをしたことがある。
冷たすぎて〜とても苦手だった。
で、ベートーヴェンも、なにやら冷たく、厳めしく、カチカチなのだろうと思っていたのだが、レオノーレ第3番に関しては、かっしりした構築性は感じるが、ほのかに熱い。
ってなことを言ってても、冒頭から、張りつめた空気感があり、余韻がいたづらに残らない。ぴしっとした音が出てくる。
最後まで残ったフルートの音色をベースにして、ヴァイオリンが出てくるが、余計なモノがないって感じが、すご〜くする。曖昧さが無いというか、無駄がないというか。短めにフレーズを区切って、木管の響きも、すっと終わる。和音が分散的に吹かれているところだって、音量を抑制し、音を区切って置いていく。
1つの音自体が、すきっとしているので、フレーズがすっきり端正に響く。これが、無駄がないように感じられるのだろうか。もちろん、音は美音。フルートなんぞ、ほほ〜っと思うほど美しい。
で、ティンパニーが合わさって、弦が渦を巻くように、それみ それみ〜っと繰り返すクレッシェンドだって、むやみに膨らませたりしてないし、ぴりり〜と鳴っている。
この点、ムーティ盤を引き合いに出して悪いが、全く違うアプローチである。表情豊かに、色づけを濃くして歌わない。かといって、甘さも適度にあって、美音のまま保たれている。
オーボエも、ホルンもまろやかに響く。キリキリ〜と胃が痛むような厳しさではなく、まだ優しさが残ってて〜
音の響きは、端正だけど美しい。
「どみそ ら〜そ みどらそそ みそ〜どれ〜ど そみれどど れふぁ〜し〜どし ふぁしれ〜みれ〜」
さりげないところで歌ってくる。
で、執拗に繰り返して、低音がごぉ〜という凄い音を立てて盛り上がっていく。地響き的に鳴るのだ。
ホルンが吹かれた後は、なかなかに歌っている。へえっと驚かされるほど、豊かで表情が細やかだ。
奥から鳴ってくるトランペットでは、場面転換となるポイントだが、テンポはゆったりおり、バンダの奥行き感がよく感じられ、まるで舞踏会のように響いている。で、フルートが可愛い。
その後、弦のキレが抜群。ショルティ盤のように、太くごつくはないが、強くてしなやか。 
最後は、リズミカルな弾み方といい、ホルンをはじめとした金管や木管が、とても柔らかく、そして外に広がっていく。
この、のびやかな開放感と、歓びが満ちあふれて、自然と歌っているところが、とっても好ましく、嬉しく感じられる。う〜ん。すげっ。

レオノーレ第3番ってわずか15分程度の楽曲だが、ヴァント盤で聴くと、精緻に出来ているためか、この楽曲のいろんな構成部分が感じられて、有機的に繋がっているらしい〜と感じることができる。
もっとも、素人なので、感じるだけで〜 譜面を見て、アタマで構成を考えている訳ではないが・・・。
しかし、ホント、もっとながい楽曲のように感じられて、聴き応え充分である。
う〜ん。ホント凄いと思う。多彩な面を見せるオケで、これは、すごいっと思ってしまった。

1967年 バーンスタイン ニューヨーク・フィル SC ★★
1978年 バーンスタイン ウィーン・フィル ★★★
1983年 レーグナー ベルリン放送管弦楽団 DS ★★★★
1984年 スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン De ★★★★★
1984年 テンシュテット ロンドン・フィル EMI ★★★
1985年・88年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 EMI ★★★★
1988年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★★
1990年 ヴァント 北ドイツ放送交響楽団 ★★★★★
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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