ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」、序曲「宗教裁判官」

 ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
Berlioz: Overture "Le carnaval romain"
シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1995年
Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal(Montreal Symphony Orchestra)

序曲「ローマの謝肉祭」(Le Carnaval Romain)作品9は、1844年に作曲されています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、ベルリオーズは、1838年にイタリアのルネサンス期を代表する彫刻家 ベンヴェヌート・チェッリーニを主人公としたオペラ「ベンヴェヌート・チェッリーニ」を作曲しているのですが、あまりにも才気ありすぎて、聴衆向けにならず、斬新すぎたことと劇場運営の根回しベタが原因で、不評だったようです。しかし、これで終わらないのが天才のなせるワザ。このオペラの主要旋律を再構成して、コンサート向きに改編して、大成功したというのが当曲になります。だから、オペラ「ローマの謝肉祭」というのは存在しません。構成としては、「謝肉祭」の主題による序奏後、コーラングレが、アリアの主題を演奏し、サンタレロのリズムによって、オペラのカーニバルシーンを組み合わせているようです。特筆するのは、序奏部に続いて登場するコーラングレのソロになるでしょうか。このアリアの主題には、誰もがうっとり~。デュトワ盤は、とてもカラフルで、活気ある演奏だ。フレージングも流れるような膨らみがあって、各楽器の見通しも良い。弦と木管の絡み、旋律が交差するところも綺麗だし、パーカッションの彩りも美しい。チューバも力強いし、全奏でバーンっと出てくるところも迫力あって、華やかさ、派手さに申し分なし。教会で録音されているためか、奥行き感があるのが嬉しいところ。今聴いても、とっても聴き応えがある。

カップリング ベルリオーズ序曲集 8曲
序曲「ローマの謝肉祭」(1~6 1995年録音)、歌劇「ベンヴェヌート・チェルリーニ」序曲、序曲「ウェーバーリ」、歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲、序曲「リア王」、序曲「宗教裁判官」、歌劇「トロイ人」~「カルタゴのトロイ人」前奏曲~1993年録音、序曲「海賊」1984年録音


 ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
Berlioz: Overture "Le carnaval romain”
ズービン・メータ ロンドン・フィル 1993年
Zubin Mehta London Philharmonic Orchestra

メータの演奏は、力強く、色彩的で開放感あふれる演奏で、とっても楽しい。序曲「ローマの謝肉祭」は、歌劇の序曲ではない。単独の楽曲である。1838年に初演したオペラ「ベンヴェヌート・チェッリーニ」が失敗に終わったので、主要な旋律を引用して単独の管弦楽曲へと編曲しており、アリアの主題と「ローマの謝肉祭」の主題を引用したものである。序曲の出だしは、同じベルリオーズの序曲「海賊」みたいに、トランペットの威勢の良い音が鳴り響く。そこが一体しずむと、優美なコーラングレのソロが始まる。この主題が、とっても楽しい。「らぁ~み~ そらど れっど そぉ~み どしらそっ・・・」 パパパ パパパ・・・パッパ パッパ パぁ~「どぉ~ みぃ~ そぉ~ み~」「 そぉ~そ そし~ら そふぁ みぃ~れ どど」「どふぁ~みれ れ そぉ~み ど らそ そふぁれみふぁそらしど~」これが、コーラングレの主題である。この主題は、このオペラのアリアだったらしい。

ベルリオーズって、ホント、楽しい出だしで、勢いのある楽曲が多い。アミューズメントパークなんぞ、当時なかっただろうに、この楽しみ方を良くご存じである。この飛び出し方、冒頭のつかみは、本当に天才だわ~と、そう思う。で、おちゃめに飛び出しておいて、なんとも優美で綺麗な主題を提示してくるのだろう~と、これまた舌を巻いてしまう。この主題を提示する、すごい変わり身は、歌舞伎を見たこともないだろうに、変わり身も天才なのだ。主題を転調しながら、弦が受け継いでいく。う~ん。凄い。
奏でられる音の綺麗なこと、ヴィオラとコーラングレの中音域の柔らかい穏やかな音色、 そして、打楽器が入ってきて、チャカチャカ チャンっと、飾り付けながら、リズムを刻んでいく。 これまた、ニクイ演出である。光と影と明暗に分けて、底抜けに明るすぎず、暗すぎず、ハートをがっちり、とらえて離さない。旋律美にかけてはチャイコも素敵だと思うが、この弾むイタリアンな明るさは、やっぱベルリオーズだろう。また、メータ盤も太い音色で、弦の響きが優美だ。明るくて、色彩的で、キラキラとした金管の音色と独特の華やかな打楽器、タンバリンの鈴のシャンシャンと弾む音で、 とても開放感あふれる響きが、 柔らかく、しなやかな弦と絡んで、色香を放ち、聴いてて楽しいノリノリ感のある楽曲となっている。
そして極めつけは、やっぱりコーラングレの音色だ。ホント素敵な楽器ですねえ。うっとりしちゃう。コーラングレやコルネットを含めた木管の層が厚いのと、トロンボーンの音色、大太鼓やタンバリンが、シャンシャンやってくれるのが、やっぱ理屈抜きで楽しいですよね。やっぱり、このメータ盤は、管楽器の豪勢な煌びやかな音でしょうねえ。これはオケでしょう。ロンドン・フィルの持っている音の華やかさ、開放感が、直接楽しさを振りまいてくれます。ホント、とっても楽しくて~ うふふ。
カップリング:ベルリオーズ 幻想交響曲、序曲「ローマの謝肉祭」、歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲


 ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
Berlioz: Overture "Le carnaval romain”
マリス・ヤンソンス コンセルトヘボウ 1991年
Mariss Jansons Royal Concertgebouw Orchestra

まあ、ヤンソンスさんのロシアテイストも追加されているのだろう、品の良さと賑々しさが、絶妙のバランスという感じで、スピーディーに、一気に聴かせてくれる。コンセルトヘボウというよりは、勢いのあった頃の色彩感のあるフィラデルフィア管のように聞こえるが、なかなかに、細かいフレーズも、副旋律も浮かびあがって美しい。シャンシャンと賑やかには鳴っているが、まずは品良く、物腰の柔らかいフレージングで歌う。しかし~ 金管が、このスピードで突入するかって感じの勢いで、吹かれており、一瞬、わわわ・・・っと、青ざめ、焦ってしまった。ハイ、なんとか無難に通過していきましたが。まあ、もう少し落ちついて、愛の語らい二重奏のコーラングレを、じっくり聴きたかったのですけどね。コンセルトヘボウが、煽られ、猛烈な勢いで、アグレッシブな演奏をしていることに感心しちゃいました。こうやって聴くと、アンコールピースに良い楽曲かもしれませんね。


 ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
Berlioz: Overture "Le carnaval romain
チョン・ミョンフン パリ・バスティーユ管弦楽団 1994年
Myung-Whun Chung
Orchestre de l'Opéra de la Bastille (Bastille Opera Orchestra)

ミュンフンさんの演奏は、ちょっと線が細いかな~とは思うが、とても軽やかでスピーディである。コーラングレは、もう少し太めで、歌っていただけた方が嬉しいかもしれないが、弦のフレージングが豊かだ。それと、すごく軽妙で、尻上がりに音が昇って、ふわっと終わる語尾に特徴があるというか、で、速いっ。音の繰り出しが速いのだ。シャッシャシャ・・・と出てきて、シャカシャカ・・・と打楽器が入ってくる。リズムの処理が速くて、めまぐるしいほどに短いパッセージが入ってくる。タンバリンの鈴なのか、後方で鳴っているし、気持ちが良い。残響が幾分多めなので、輪郭線は明瞭ではないが、勢いのあるフレージングで、軽さが生命線って感じの演奏となっているようだ。彩度の強いコントラストのある演奏ではないので、ヌケるような青空のもとでの舞曲って感じではないが、乳白色系の煌びやかさというのかな~ 派手さは後退するものの、味の濃厚なイタリアンではなく、爽やかなフレンチって感じだろうか。歯ごたえはないが、ぬめっとしておらず、シャカシャカとした食感が楽しめる。
コーラングレの甘い旋律には、誰もがうっとり。彫刻家チッコリーニと、彼の恋人との二重奏を元にしているので、甘くて、切なくて、美しすぎるという罪深いフレーズになります。賑々しいカーニバルの主題と、とろけるような愛の語らいの二重奏、これがサンドウィッチのようになって、繰り返して演奏されるものですから、クラクラ、とろけちゃうってわけです。また、コーラングレの音色には、痺れちゃいますね。コーラングレは、ベルリオーズの幻想交響曲第3楽章、当曲、イタリアのハロルドの第3楽章にも使われていますが、オーボエよりも低い声で、愛を語られたら・・・ むふふっ状態になってしまいます。甘くて、渋い音質をもった素晴らしい楽器です。 では、賑やかな舞踊サルタレロのリズムによって、恋を燃えあがらせてください。


 ベルリオーズ 序曲「宗教裁判官」
Berlioz: Overture "Les Francs-Juges"
C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン 1997年
Colin Davis Sächsische Staatskapelle Dresden(Staatskapelle Dresden)

序曲「宗教裁判官」を聴いてみたのだが~  結構、金管が活躍する親しみやすい曲である。序奏部分は、弦でちょっと暗めに出てくるが、弦が高みに昇ったところで、すぐにブラスが出てきて勇壮さが出てくる。ずっとメインの旋律を吹いてて、大活躍なのだ。ここだけで、結構聴き応えがある。この金管の渋いフレーズは、う~ん。燻し銀って感じなんですけどね。爽やかさとか、ファンファーレとはほど遠く、フレーズのキレ目で、シャンっと鋭いシンバルが入っており、歴史的なワケありの背景を醸し出している。宗教裁判って、想像を逞しくすると異端裁判っぽく鳴っている。どこか、オリエンタルな感じもするんですよ。この序奏の後、弦のスピードが増して、「海賊」のフレーズの一部ぽっく、くるくるっと落としてくる場面もあるし、続いて、マーチングバンドのような軽やかなフレーズもあるし、なかなかに、楽しいフレーズが詰まっている。
弦が爽やかに、「みっみ らぁ~ みらど どぉ~し しっし れぇ~ どしら そぉ~」「みっみ らぁ~ みどみ みふぁ~ れどれ しぃ~ れどれ み~」続いて、フルートが同じ旋律を吹いてて軽妙なのだ。はぁ~場面転換が巧い。フレーズが終わると、アヤシイ天気に早変わりしていくし。金管が登場すると、いかにも~って感じの、ドラマ性が高くなるのだ。フルートの二重奏のフレーズ「そらぁ~ ふぁ~み~れ みふぁ~ そぉら~」ってところなんぞ、奥でティンパニーと大太鼓が、そろっと入ってきて、ドンっと怪しげな音を叩くんですが、瞬間的な使い方。う~ん。このあたり、幻想交響曲っぽくなっているが、ホント、短いのだ。また、マーチングバンドのフレーズが挟まってくる。いや~ 展開が早いですよ。約12分半ほどの楽曲だが、この展開のスピード感には、やられてしまう。
幻想交響曲の4楽章って言えば、「断頭台への行進曲」だが、この宗教裁判官のフレーズが転用されているという。まっ 完全に転用されて、そのまま詰まっているワケでもないし、全く違う展開になっているのだと思う。だって、この宗教裁判官は、明るい旋律で奏でられている。楽天的に明るい。最後、金管の倍音の綺麗なこと。れみふぁ~ ふぁそらぁ~と、最初のブラスフレーズに戻ってくるが、そこでも、明るさを放って終わる。C・デイヴィス盤は、総体的には、奥行きのある演奏だし、厚みがあり、雰囲気がとっても良く出ている。特に、金管は艶消し状態だが、この艶の消した倍音の響きが、とっても良い。宗教的であり、イミシンな、深みのある、渋い響きの良さが、まろやかで~ 厳かな雰囲気が、とーっても良く表されているのだ。

序曲「海賊」では、ちょっと渋すぎて冒険活劇風の要素が足らないと思ったけれど、曲目が変わると、渋いつや消し音が、しみじみ~と響き、また、ちょっとくぐもった空気感と、間合いたっぷりなところが、良さに転じているようだ。旋律が入れ替わり立ち替わりで、展開の速い劇的な楽曲だが、この変わり身が、よくわかるのと、金管の艶消しした倍音の響きがとっても良い。 ワタシは、冒頭でやられました。宗教裁判官は、とっても満足しちゃいました。


 ベルリオーズ 序曲「宗教裁判官」
Berlioz: Ouverture "Les Francs-Juges"
シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1995年
Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal (Montreal Symphony Orchestra)

デュトワさんのベルリオーズの楽曲は、「幻想交響曲」、「レクイエム」、「イタリアのハロルド」、オラトリオ「キリストの幼児」、歌劇「トロイ人」、劇的物語「ファウストの劫罰」がCD化されている。廃盤状態のものもあり残念だ。序曲集の存在だけでも嬉しい限りで、軽快で痛快な演奏で随分楽しませていただいた。軽やかに弾むリズム、カラフルな色彩感。ベルリオーズの序曲集もロッシーニの序曲集も、デュトワさんのタクトは、軽快このうえない。とても洒落てて、格好の良い演奏で、運動機能が抜群で爽やかだ。キビキビしててそのくせ、どっかオシャレなのである。ワタシ的には、デュトワさんの振ったリストの交響詩全集も出して欲しいのだが~(↑ 結構、ハマルと思うと、勝手なことを言っている)
さて、この序曲「宗教裁判官」は、オペラとして作曲したが頓挫。そのため序曲のみ残っているが、深刻なストーリーだったら、マズイのだが~ 先日、シュターツカペレ・ドレスデンを振ったC・デイヴィス盤を聴いたが、比較すると、デュトワ盤は、軽い音作りになっている。確かにオケが違うだけでも音質は、かなり変わるもの。冒頭の思わせぶりなフレーズから、金管までは、カペレが雰囲気抜群なのだ。金管は、カペレの方が美しい音色だし、きちんとした音づくりで、ものすごく丁寧で品がある。ホント、金管のまろやかさは、確かにシュターツカペレの方が良いし、弦の響きはくすんだ響き、劇的な雰囲気は、カペレですよ。
しかし、録音状態を比較すると、デュトワ盤の方が優秀だし、ヌケが良いし、シャンシャン鳴っていてかなり華やかである。ベルリオーズの暗めのフレーズは、カペレだけど、爽やかで、スイスイ行っちゃうマーチングバンドさながらの軽妙さは、ハハハ、こりゃ比較にならないほど、デュトワ盤の方がノリノリ、躍動感ありなのだ。
ティンパニーの叩き方や、劇のストーリー性は?と、聴かれちゃうと困っちゃうんですが~デュトワ盤は、あまり、イミシンな雰囲気、劇的な要素はありません。でも、ハイ、楽天的すぎかもしれませんが、楽しさにかけては抜群に良いです。アッハハ~ 初心者的コメントですみません。デュトワ盤は、ベルリオーズ序曲集として発売されていたもので、ご機嫌の8曲がたっぷりと収められている。今は廃盤状態になっていると思うが、え~なんでぇ~ こんな楽しくて、良い録音モノが廃盤?  ワタシ的には、超モッタイナイと思う。
1 序曲「ローマの謝肉祭」
2 歌劇「ベンヴェヌート・チェルリーニ」序曲
3 序曲「ウェーバーリ」
4 歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
5 序曲「リア王」
6 序曲「宗教裁判官」
7 歌劇「トロイ人」~「カルタゴのトロイ人」前奏曲~ 1993年録音
8 序曲「海賊」 1984年録音
で、このCDには、序曲「ロブ・ロイ」が入っていないのだが、(交響曲「イタリアのハロルド」にカップリングされている )全8曲でトータル75分なので、きっと、はみ出しちゃったのだろう。


ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
1991年 ヤンソンス コンセルトヘボウ EMI ★★★
1993年 メータ ロンドン・フィル Teldec ★★★★
1994年 ミュンフン パリ・バスティーユ管 G ★★★★
1995年 デュトワ モントリオール響 Dec ★★★★★

ベルリオーズ 序曲「宗教裁判官」
1995年 デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★★★
1997年 C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン R ★★★★★


 

YouTubeでの視聴

Berlioz: Overture "Le Carnaval Romain", Op. 9, H.95
モントリオール交響楽団 - トピック デュトワ
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=o4YkiZFYw-w

Berlioz Le Carnaval romain, Op. 9, H 95
ズービン・メータ - トピック
Provided to YouTube by Warner Classics International
https://www.youtube.com/watch?v=7xV_NK0smI0

Le Carnaval romain, Op. 9, H 95
マリス・ヤンソンス - トピック Mariss Jansons - Topic
Provided to YouTube by Warner Classics
短い楽曲だが、3つに区分されている。
https://www.youtube.com/watch?v=3AThEluzkV8
https://www.youtube.com/watch?v=jqWOmQY-4g8
https://www.youtube.com/watch?v=0H0z6iIMp8A

Berlioz: Overture "Le carnaval romain", Op.9
チョン・ミョンフン - トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=NMeoc5-1YuU

Berlioz: Overture "Les Francs-Juges", Op.3, H.23 宗教裁判
チャンネル:モントリオール交響楽団 - トピック Orchestre Symphonique De Montreal - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=OP8our0iKus



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