ベルリオーズ 序曲「海賊」 Berlioz: Overture “Le Corsaire”

 ベルリオーズ 序曲「海賊」
Berlioz: Overture “Le Corsaire” (The Corsair)
チョン・ミュンフン(ミョンフン)パリ・バスティーユ管弦楽団 1994年
Myung-Whun Chung Orchestre de l'Opéra de la Bastille(Bastille Opera Orchestra)

ミュンフンの演奏は、スピード感が抜群で、色彩感も高い。冒頭、ティンパニーが「どっそっ!」と叩かれた直後から、快速に走り出す弦と、コミカルに合いの手を入れてくる木管の勢い。その後、いったん鎮まってからの、ちょっぴり官能的なフレーズ。この両極端をあわせもったのが、ミュンフン盤の演奏だと思う。特に、叙情的にまどろみの世界に誘うかのような、息の長いフレーズが、なんとも言えない官能性を持って上昇して揺れ動く。ホント息が長い。自然に消えるのを待って、消える直前で次の音を出してくるような感じだ。デュトワ盤は、ふんわりとした曲線をつけて、優美にフレーズを持たせているのとは違う。この独特感が、ミュンフンさんの持ち味となっているようだ。あとは、天皇賞レースのように快速に飛ばして、ホント痛快。
ティンパニーの音が、しっかり硬めに叩かれて収録されていれば、言うことないのだが、なぜか、ティンパニーは埋もれがち。弦の方が前に出てきて、打楽器のリズムが奥にひっこんでしまっている。ポコポコ言っている木管も、もう少し音が出ていても良いかもしれないが~ 全体的には文句のつけようがないが、アラを探せば、弦が主体となっていること。木管のコミカルさ瑞々しさが、もうわずかに出てくればバッチリだった。刻みが少なく感じられるところが、ちょっと惜しいかもしれない。この曲は、世俗的だけど、ブンチャ ブンチャ・・・が無いと、あーっ もったいない。ミュンフン盤は、線の綺麗さはあるし、弾け方も綺麗だし、それに速く感じるし、煌めき度も高いし、8分41秒というクレジット以上に速く感じる。全体的に言うと、パイレーツ・オブ・カリビアンに出てくる、ウィリアム・ターナー・ジュニアとは行かず~ しなやかで、弾力性のあるエリザベス・スワンのような感じかなあ。男装の麗人って感じでしょうか。
カップリング:ベルリオーズ 歌劇「ベンウェヌート・チェルリーニ(ベンヴェヌート・チェッリーニ)」序曲、序曲「ローマの謝肉祭」、「海賊」、「イタリアのハロルド」ヴィオラ:ローラン・ヴェルネイ


 ベルリオーズ 序曲「海賊」
Berlioz: Overture “Le Corsaire” (The Corsair)
シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1987年
Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal(Montreal Symphony Orchestra)

デュトワの演奏は、録音状態が良く、極めてグッド。綺麗でクリアーで、透明度の高い煌びやかなサウンドだ。色彩感がすごい。出だし ティンパニーが「どっそっ!」と叩かれた後に、いきなり快速に走り出す弦と合いの手を入れる木管群。この曲の出だしは、まるで、天皇賞の競走馬のレースみたいで、いきなり、ゲートが開いて猛ダッシュ。このデュトワ盤の弦、凄いっ。すごい速い。この間に入ってくる木管のコミカルな音が、パパッ パパッと、水しぶきのように入ってくるのだが。ここの部分で、もう凄いっ。凄いのひとこと。綺麗にまとまっていて、前につんのめっていないのだ。う~ん。凄い。
この後のロマンティックで官能的な旋律は、ミュンフン盤のような息の長い演奏ではなく、意外と短めのセンテンスに区切って、センテンスを、ふわ~っと、ふわ~っと描いていく。どことなく浮遊感のある弦のフレーズで、まるでこれは、波間でのランデブー(← うわっ 古くさい言葉)である。揺らめき感のある演奏だ。そこから、またまた快速で、うはぁ~、これは~ まるで空中戦だ。マストからマストへ飛び移り、帆船のうえで、スパークしながら、チャンバラしているような、冒険活劇になっている。このあたりの、弦のフレーズのきめの細かい、密度の高いクリアーさは、メチャメチャ綺麗。凄いのひとこと。まるで、蚕が絹を吐き出しているかのような。うはふぁ~ 「ん~タラ ん~タラ ん~タラ ん~タラタラタラ ふぁみふぁそ ふぁみふぁそ ふぁみふぁそ・・・」ここのリズムが凄い。助走しているところで、ぐっとエネルギーをためるところが、ワクワクしちゃう。切っていく音の破裂音が、小気味よく響く。奥行きのある録音で、低音の木管もボコボコ言っているし、ペコペコと言っている木管も~良く聞こえる。弦の響きも明るいし、低弦の軋んだ音、チューバのごつい響きも、金管の華やかな音の響きも。バランスが良いことに加えて、リズムのよさメリハリのある躍動感。金管と打楽器が、ブンチャ ブンチャーしていながら、音の語尾を微妙に伸ばして、ぐわ~っとあげていくところなんぞ、これぞ役者だと思う。これは絶句。弦の綺麗なこと、金管の色彩感。いや~凄い。猛ダッシュのゲートから、あっという間の8分13秒、ぶっちぎりでゴールイン。お見事っ 拍手っ!


 ベルリオーズ 序曲「海賊」
Berlioz: Overture “Le Corsaire” (The Corsair)
コリン・デイヴィス ロンドン交響楽団 1965年
Colin Davis London Symphony Orchestra

ベルリオーズの作品復活に、C・デイヴィスさんの活躍はつとに有名だ。幻想交響曲だって、その昔は、コンセルトヘボウとのCDが名盤とされていたし~ ご高名は拝している。Wikipedia(ウィキ)には、ベルリオーズの作品は1960年代から1970年代にかけて復活を遂げたが、これはイギリスの指揮者コリン・デイヴィスの奮闘によるところが大きい。デイヴィスがベルリオーズの全作品を録音したため、従来あまり知られていなかった作品にも光が当てられた。歌劇「トロイアの人々」の録音は、最初の全曲録音であった。本作は、ベルリオーズの生前に完全に舞台上演されたことはなかったが、現在では復活を遂げ、定期的に上演されている。との記載があった。で、ここに記載されている成果の1つ、ロンドン響との序曲集を集めたCDがこれである。管弦楽全集になって、この演奏も収められたりしているが、ワタシは単発で、CDを購入していたものである。ベルリオーズの作品って、劇的な効果の高い楽曲が多く、ここでご紹介する「海賊」もその1つだ。リストの交響詩に負けないような劇的効果もあるし、近年の映画音楽にも遜色ない、いやいや元祖ではないかと思うほどの面白さもある。
ホント、演奏会の1曲目にとりあげてもらうと、とっても、ノリノリでテンションがあがる楽曲だとも思う。理屈抜きに楽しい、冒険活劇風の楽曲と、その演奏である。ワタシ的には、後年のカペレとの演奏よりも、やっぱりロンドン響~ この勢いある演奏が好きである。カペレ(シュターツカペレ・ドレスデン 97年)とのCDは、ちょっと遅いとコメントしているが、ロンドン響との演奏は、8分33秒というクレジットになっている。クーベリック盤は8分27秒、ミュンフン盤は8分41秒、デイヴィス盤は8分44秒(カペレ盤)である。やっぱり昔の方が速かったんだね。最近発売されている全集ものだと、マスタリングされていると思います。
カップリング:序曲「リア王」op.4、序曲「宗教裁判官」op.3、序曲「ローマの謝肉祭」op.9、序曲「ウェイヴァリー」op.1、序曲「海賊」op.21


 ベルリオーズ 序曲「海賊」
Berlioz: Ouverture “Le Corsaire” (The Corsair)
C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン 1997年
Colin Davis Sächsische Staatskapelle Dresden(Staatskapelle Dresden)

ドレスデンのまろやかで木質的な響きがベースにある。もっと、シャンシャン、ドンドンっと、色彩鮮やかに豪快に鳴ってくれる方が、ワタシ的には好ましいのだが、燻し金的で渋いおじさま向け。序曲としては、「ローマの謝肉祭」が有名どころだろうか。聴き始めると、ノリノリ感のある楽曲が多く劇的なのだ。幻想交響曲やイタリアのハロルドの余白に、おまけ的にカップリングされていることが多い状態で、貧弱な取り扱いをされている。初心者向きな楽曲かもしれないが、このC・デイヴィス盤を、久々に取りだして聴いてみたが、金管の押し出しが弱く感じてしまった。オチャラケ風で良いんだけど。冒頭、ティンパニーが、タ タンっと鳴って、弦が猛烈な勢いで飛び出してくる。ここに重なるフルートたちが、前につんのめるほど速めに鳴ってこないと後が遅れる。一陣の風が舞い起こり、さっそうと海賊が登場って感じなのだ。えっ!っと飛び跳ねているかと思うと、あっという間に逃げられてしまう。あっけに取られるほどのスピード、これが序奏。そこから場面が変わり、ヴァイオリンの甘い調べが流れてくる。
「ふぁ~どれ ふぁしらそふぁ みふぁ~れど し~そら~」と、ロマンティックに、ゆったりと歌われる。海賊の甘いお休み時間が終わると、フルートが吹かれて弦が弾んでくる。テーマ音楽のように、トロンボーン等の金管が鳴るところが、超格好いい。ティンパニーが鳴って最初は控えめに、「みっど ら~ふぁ れ~しっそふぁ~と」と、主題が鳴ってくる。弦のなかに埋もれそうになりながら、何度から繰り返すうちに、主役が登場なのだ。「そぉっれら~ ふぁっし~ そふぁみ ふぁそらしどれふぁ~」というのがテーマ音楽である。これが、8分程度の楽曲のなかに、何度か顔を出す。
まろやかな響きで、木質的な響きが大好きなシュターツカペレだが、豪快さが不足し、ハチャメチャ風にストレートで出てこいっ。と、言いたくなるほど。飛び出す絵本的に、痛快でちょい悪風に、ワクワクして来ないのが、かったるい。やっぱり、カペレは、品が良いのである。それがアダになっている。特に、ドンドン、バンバンっと、リズミカルになってくるティンパニーの響きが、柔らかくソフト。低弦の響きに重厚さが足らないし裏拍子が弱い。熱気があって、ぐわ~っと言いながら、さっそうと格好良く決めてくれないとなあ。庸に感じてしまいましたゴメンナサイ。カップリング:序曲「宗教裁判官」、序曲「ウェーバーリ」(ウェーヴァリー)、序曲「リア王」、序曲「ローマの謝肉祭」、歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲、序曲「海賊」、歌劇「ベンヴェヌート・チェルリーニ」序曲(ベンヴェヌート・チェッリーニ)


 ベルリオーズ 序曲「海賊」
Berlioz: Overture “Le Corsaire” (The Corsair)
アレクサンダー・ギブソン ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
録音年不明 Alexander Gibson Royal Scottish National Orchestra

ギブソンのCDは2枚あり、海をテーマにした楽曲、それも、イギリスの作曲家を主に取り上げているCDがある。オムニバス形式で聴くのも、結構、楽しい出会いがある。さて、当盤に収められた海賊は、最初の出だしは、勢いよく出てきて良かったのだが~ いっけん、ヨサゲに思えたものの、ちょっと速すぎて、尻すぼみ的なのか、ちょっぴりばらけ気味。あまり立体感に響いてこなくて、う~ん。今は、この音が鳴っている筈だ~って感じで、前に出てくる楽器は良く聞こえるのだが、後ろに下がっている楽器の音が聞こえず。極端に差があって、総じて鳴ってこない感じがする。これって編集だよなあ。ワタシ的には、ちょっと違和感がある。
せっかく録音状態は良いのに、もっと聞こえてきて良い、パコパコ パコパコっと吹かれている筈のファゴットの音のバランスが悪いとか~ 金管が勇壮に出てくるところとかは、さすがに迫力はあるのだが、木管群を、副えモノ的に扱わないでよぉ~って文句を言いたくなっちゃったデスね。まっ このベルリオーズの序曲「海賊」は、楽曲にメリハリがあり、大変、躍動感のある色彩的な演奏が、他にもあるので、う~ん。ごめんなさい。です。


 ベルリオーズ 序曲「海賊」
Berlioz: Overture “Le Corsaire” (The Corsair)
アレクサンダー・ギブソン ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1995年
Alexander Gibson Royal Philharmonic Orchestra

結構シャキシャキして拾いモノっと思った盤である。ホント、良いです。また、序曲「海賊」だけでなく、へえ~ ベルリオーズの序曲って、ホント爽快で、快活で活きのよい曲が詰まっているな~っと、認識を改めることになった盤 でもある。ワタシに、幻想交響曲だけじゃ~ないんだと気づかせてくれた感謝盤なのである。ベルリオーズの序曲集の盤は、意外と少なく、期待していたC・デイヴィス盤が、渋い演奏だった。ちょっとカラフルさに欠けているので、イマイチ感があったのだが、ギブソン盤は、アマゾンで買った安い輸入盤だったし、あまり期待したいなかったのだが、いや~良かったです。一気に聴かせてくれる盤で、ホント快感さが残る演奏で、気に入っている 。海賊も、出だしのティンパニーが「どっそっ!」と叩かれた後に、いきなり快速に走り出す弦のキレの良さ。「パッパら パッパら~ しっらら~れっ」と、合いの手を入れる木管の高い音、この活きの良さ。思わず唸ってしまう。ホント、う~ん。機械的かとも思えるほどの速さと、ピチピチとした音が、弾んでいる。
ロイヤル・フィルと言うと、馬鹿にしちゃうような廉価版っていうイメージがあったのだけど、いや~侮れないですねえ。官能的なフレーズは、ミュンフン盤のようにはいかないし、デュトワ盤のような華麗さも持ち合わせていないのだけど、一気に聴かせてしまう、さらり~っとした快感があって、後味は悪くない。高音域の透明度が高く、響きの良さはあるし、木管のポコポコした音色もバランス良く入っている。ちょっと、コクは少ないし、ブラス部分の輝きもあるものの、いやいや、それでも、このスピードで行かれると最後まで、爽快ですよ。

疾風怒濤の疾風感はあるが、コントラバスのマストがキシキシ音を立てているような、ガシガシした音色が薄めで、全体的には怒濤感の重低音感は少ない。リズム感としての粘り感も少なめ。でも、最後のブラスは、う~ん。良いです。「どっら みどらぁぁ~  ふぁみれっ らそふぁみれぇぇ~ しらそ れどしらそぉ~~」というフレーズなんか、結構、圧迫も持っていて、「しらそら しらそら れぇぇーっ。」と、見栄を切るところなんか、様になっている。バランスはちょっと高めだが、パパパっ~っという金管のキレの良さには、絶句してしまう。どっか味は薄めだが、しっかりしているし、ドンドンという音の音が薄いもの、音が全体的に、うえに弾んでいるという、楽しい、面白い演奏である。このCDにカップリングされている歌劇「ベンヴェヌート・チェリーニ」序曲を聴くと、ドンドン感もあるし、総体的に良いと思う。
まっ 序曲「海賊」については、デュトワ盤を聴いてしまうと、さすがに遅れを取っているかもしれないのだが、イマジネーションを湧かせてくれる要素も、 淡水画、パステル画風ではあるが~色彩的に淡いものの、流麗だしスマートだ。これは、これで拍手だと思う。この盤はロイヤル・フィルとの盤だが、他にも、スコティッシュ・ナショナル管弦楽団を振ったSHANDOS(シャンドス)盤もある。シャンドス盤の方は、ワタシは、廉価版を購入したが、オケや指揮者の名前にこだわらずに探せば、楽しいCDを発掘できるような気がする。
カップリング:ベルリオーズ序曲集 全6曲 輸入盤のHybrid SACDもある。歌劇「ベンヴェヌート・チェリーニ」序曲、序曲「宗教裁判官」、序曲「海賊」、歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲、序曲「ウェーヴァリー」、序曲「リア王」 全6曲


ベルリオーズ 序曲「海賊」
1962年 クーベリック バイエルン放送響(モノーラル)Orf
1965年 C・デイヴィス ロンドン響 Ph ★★★
1987年 デュトワ モントリオール響 Dec ★★★★★
1994年 ミュンフン パリ・バスティーユ管 G ★★★★
1995年 A・ギブソン ロイヤル・フィル RPO ★★★★
?  A・ギブソン スコティッシュ管 CHANDOS★★
1997年 C・デイヴィス カペレ・ドレスデン R★★★★


 

YouTubeでの視聴

Berlioz: Overture "Le corsaire", Op.21
チャンネル:チョン・ミョンフン - トピック
Myung-Whun Chung - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=_aQehuS9mSY

Berlioz: Overture "Le Corsaire", Op.21, H.101
チャンネル:モントリオール交響楽団 トピック デュトワ
Orchestre Symphonique De Montreal - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=A0LuTPRBDBQ

Berlioz: Overture "Le corsaire", Op. 21
ロンドン交響楽団 - トピック C・デイヴィス
London Symphony Orchestra - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=-xB3pAPnmCE


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