ブラームス 大学祝典序曲、セレナード第2番 Brahms: Akademische Fest-Ouverture

 ブラームス 大学祝典序曲
Brahms: Akademische Fest-Ouverture
リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1988年
Riccardo Muti Philadelphia Orchestra

ムーティさんの演奏は、流麗すぎて、おほほっという感じでマダムが笑っている風だ。なんとも品の良い演奏。スケールが大きい。
まるで、イタリア歌曲を聴いているかのように錯覚しちゃうほど。穴蔵のようなビアホールで、ビールを飲んで賑やかに騒いでいる感じはしない。陽気な学生歌というよりは、華麗なる一族のお坊ちゃまが、カンツォーネでも歌っているかのような風情なのだ。
弦が主体の演奏で、流れる美しさ、祝祭的に堂々と、朗々と歌いあげていく。いや、ここまでしなくても、充分にブラームスの感謝の気持ちは伝わっていると思う。曲が進むにつれて、華麗なファンファーレ風というか、最後になると、学生歌というより、ワーグナーの楽劇でも聴いているかのような、すごいスペクタル風スケールの大きさ。お口が、ぽっかーん あっけにとられてしまった。
ブラームスは、確か「学生の酔いどれ歌のひどくがさつなメドレー」を作って「大学祝典序曲」と名づけたと言っていたらしいのだが、ムーティ盤は、華麗にスペクタルに盛り上げて行く。なにせスケールが大きい。

ちなみに、アバドの演奏を聴くと、まるでオペレッタを聴いているかのよう。シャイーは、ラヴェルの楽曲のようにキラキラした演奏だった。で、ムーティの演奏は、スペクタル映画さながら。すごすぎ。ブラームスもびっくりしてるかも。


 ブラームス 大学祝典序曲
Brahms: Akademische Fest-Ouverture, Serenade No.2
リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ 1987年
Riccardo Chailly Royal Concertgebouw Orchestra

シャイーの演奏は、録音状態も極めて良く、豊かなホールトーンで、軽やかで煌びやか。まるで、オペラの序曲を聴いているかのような至福の時となる。この大学祝典序曲は、ブラームスの楽曲のなかでも、ウィットに富んでいる楽曲で、学生の歌だった旋律を採り入れている。冒頭こそは、モゴモゴと低音で入ってくて、大太鼓が叩かれ、ボンボコ ボン ボンボコ ボンという響きのなかで、「ららしそ ららしそ」と、刻みがある。クラリネットで、風が舞うようなフレーズもあるし、 コラールのような響きも流れるなか、巧いフレーズの繋ぎがあって、トランペットで朗々と歌われる。「僕らは立派な学び舎を建てた」という学生の歌のフレーズ。
このシャイー盤は、金管の軽やかで華やかなこと。恐ろしく、煌びやかで明るくて、すわーっと広がる音の広がり感が、とても爽快だ。テンポ良くサクサクと進んでいくのと、軽妙で、音が羽根を生やして飛んでいくよう。これは唸ります。だってホントに、この曲を初めて聴くと、重くて渋いというブラームスの楽曲とは思えない。なんて、爽快で軽やかな大学祝典序曲だろう。仰天っ!
ファゴットで吹かれるフレーズも、えっ これ確かにファゴットだよねえ。最後、ティンパニー、大太鼓が入ってきても、まったく重量感を感じることなく、 柑橘系の香り、草食系でスポーティで、キラキラした音が上に広がっていくようで、そう、花火のように綺麗な演奏だ。

フランスものに近い楽曲というか、デュトワとモントリオール響のラヴェルの演奏みたいで、まるでベツモノ。コンセルトヘボウ特有の木質感のある音質だが、そこに軽やいテイストが入って、無重力空間に放り出されたような感覚で綺麗なサウンドが広がる。シャイーさんに限らず、アバドもムーティも、相当に流麗な演奏だ。好みは分かれるが、ワタシ的には至福の時が過ごせる。


■ ブラームス 大学祝典序曲
Brahms: Akademische Fest-Ouverture
クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 1987年
Claudio Abbado Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

アバドの演奏は、録音状態も良く華麗な演奏でオペレッタを聴いているような雰囲気だ。コミカルで軽妙でありながらも、硬めで重心は重め。カッチリした演奏である。大学祝祭序曲は、なんでもブラームスが、ブレスラウ大学というところから名誉博士号を授与された代わりに、作曲されたものらしい。ブラームスらしくないというか、はあ。ド派手な、チャイコフスキーの序曲みたいだけど。いや、イタリア・オペラか? 明るめの、ドタバタ、オペレッタか?

祝祭的なフレーズねえ~っと首を傾げていたら、元は、学生の歌だった旋律を引用しているとのこと。あらら~ なるほどねえ。演奏家によっては、アメリカっぽい、ブラスバンドっぽい音楽のように聞こえてしまっていたんだけど。
この曲は、4つのパーツに分かれているというが、それぞれに、引用があるらしい。特に印象に残るのは、「ららしそ ららしそ ららしそ らぁ~」ファゴットで奏でられるフレーズかな。で、「れれしそれっ れれしそれっ」 トランペットで朗々と歌われるフレーズだ。「しれら~ ふぁ~ふぁ~そみふぁ れれし~ れしら~ ふぁ ら ら~そみふぁれ~っどれしど」これは、「僕らは立派な学び舎を建てた」というフレーズらしい。まあ、他にも歌謡風のフレーズが、入れ替わり立ち替わり表れる。ファゴットの「らららら ら~し どどどど ど~れ みみみふぁ みれれ どみ~どしし」のフレーズが、やっぱ、耳に残るオチャメな曲である。

アバド盤は、さすがに上品というか、巧く流している。木管も艶やかだし巧い。フルートが、アメリカ西部のような歌謡風フレーズを奏でていくものも面白い。もちろん、作曲家のフレーズの繋ぎが 、とっても面白く、巧いわけだけど~「ららしそ ら~ ららしそ ら~」ファゴットを使っているのが面白いかなあ。呟きのような、口笛のようにも聞こえるし。酔っぱらいの若いお兄ちゃんが、小躍りしているかのようにも聞こえるし。最後、ティンパニー、大太鼓付きで、最後、オペレッタ風に華やかさも醸し出してて、大円団、大賑わい。宴もたけなわ~という感じで終わる。ブラックユーモア的な祝祭、華やかに「れれしそれ~ れれしそれ~ ふぁ~みどれっ」ジャンジャン ジャジャジャン・・・  
アバドが振れば、間違っても、ブラスバンド曲には感じないんですけどね。しかし、これブラームスとは、ちょっと思えないほど、明るくノー天気ですが、上品にまとまっていると思います。ミラノ・スカラ座じゃーないの?とは、思っちゃたけど。いやいや、流麗さでは二番手かもしれませんが、カッチリした構成は、忘れてません。
カップリング:交響曲全4曲、ハイドンの主題による変奏曲、悲劇的序曲、大学祝典序曲、アルト・ラプソディ、運命の歌、悲歌、運命の女神の歌


■ ブラームス 大学祝典序曲
Brahms: Akademische Fest-Ouverture
ロリン・マゼール クリーヴランド管弦楽団 1975年
Lorin Maazel Cleveland Orchestra

マゼールのブラームス。バイエルン放送響との録音もあるが、クリーヴランド管との演奏は、ガツンっと一発怖いティンパニーが叩かれたりして交響曲は、寒々しい演奏に近いのだが、この大学祝典序曲は柔らかい。端正で推進力もあって、ぴしっと襟を正しての演奏だが、弾力があってスマートなのである。均整のとれたアポロ的な演奏だと思う。「れれしそ れれしそ れっどしら ふぁそ ら~ ふぁそ ら~」「ららしそ ららしそ ららしそ・・・ ららしそ ららしそ ららしそ らぁ~」という、ファゴットで奏でられるフレーズと、低弦の響きは、ちょっとゴリ気味だが、しっかりと硬いくせに弾力がある。ホルンと木管の雰囲気が良く、低弦の響きが効果的に響く。ジャジャ ジャジャ ジャジャ ジャジャっという歩みを奏でる弦のキレも良い。特に、金管で朗々と歌われる フレーズが、神々しい。弦と木管、金管のバランスが良いというか、ガシっとしているところと、柔らかいところの妙というかなあ。メリハリがすごくあり、やっぱ巧い。やっぱ凄い。1970年代中期なので、録音状態は良いとは言えないけれど、入れ替わり立ち替わり現れてくる歌謡風のフレーズが、もののみごとに彫像が建ち並んでいるかのように聞こえてくる。交響曲のなかの1つの楽章のように仕上げてくる力量に脱帽。ワーグナーの序曲みたいな演奏で、単なる小品の演奏ではない。圧巻。拍手っ~!


■ ブラームス セレナード第2番
Brahms: Serenade No.2
イシュトヴァン・ケルテス ロンドン交響楽団 1967年
Istvan Kertesz  London Symphony Orchestra

ブラームスのセレナード第2番は、ヴァイオリンのいないセレナードで、優しい軽やかな楽曲です。第2番(イ長調作品16)は、ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、1959年に作曲されており、ブラームスが20代の作品。5つの楽章から構成されていて第1楽章 アレグロ・モデラート イ長調 2/2拍子 ソナタ形式
第2楽章 スケルツォ ヴィヴァーチェ ハ長調 4/3拍子 三部形式
第3楽章 アダージョ・ノン・トロッポ イ短調 8/12拍子 パッサカリア風三部形式
第4楽章 クアジ・メヌエット ニ長調 4/6拍子 三部形式
第5楽章 ロンド アレグロ イ長調 4/3拍子 ソナタ風ロンド形式

オケの構成は、 ヴィオラ、チェロ、コントラバス ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、というメチャ珍しい構成。そう、ヴァイオリンがいないのだ。で、ピッコロが大活躍する楽章もある。ブラームスというと渋い重厚な楽曲というイメージが、こびりついているが、ここではまるで別人。
第1楽章は、セレナードという雰囲気よりも、草原で、のんびり寝そべりながら、ピクニックを楽しんでいるかのような雰囲気があり、若々しい。弦のピチカートや、なだらかな旋律のなかで、オーボエとクラリネットが心地良いフレーズを奏でている。木管が重要な役割をしており、弦のうえで自由に遊んでいるし、まるで、遊びすぎてエネルギーを使い果たした若者が、午睡を食んでいるかのように微笑ましい。

第2楽章は、華やかな楽曲で舞踏風だ。フルートをはじめとする木管群が綺麗に踊っている。ヴァイオリンがいないため、中低音域の弦の響きが中心を占め、木管群の響きが際立っている。吹奏楽のように聞こえなくもないのだが~ いやいや、そこはブラームス。軽やかではあるが、しっかりとした透明度のなかに、弦の下支えを埋め込んでいる。木管だけが浮くということもなく、ケルテス盤も、まろやかに演奏されており、大変聴き応えがある。

第3楽章のアダージョにおいても、ヴァイオリンが存在しないので、フルートの響きが生命線のように響いている。中音域の弦の響きが柔らかく、ふわっとしている。コントラバスの急を告げる音が入ってくるが、すかさずホルンの響きでかき消され、再度、フルートが舞いあがっている。この劇的な効果も面白い。フルートが大活躍である。

第4楽章は、メヌエットの楽章で、今まではフルートが目立つ存在だが、中音域のヴィオラの存在が薄いと思っていた。このメヌエットは、あまりメヌエットという雰囲気がしない。もう少しテンポが速めでも良い気がするが、リズム感に乏しいため柔らかく優しいものの平凡な感じがする。

第5楽章は、開放的な明るいフレーズのロンドだ。ホルンが参加してくるので厚みが増す。弦とホルンがテーマを、金管がリズミカルなフレーズで絡んでいる。ピッコロが大活躍しており、跳躍を繰り返し、さらに開放感が増していく。ホルンの存在って、いいよね~ 牧歌的で。後に書かれるブラームスの交響曲のなかでも、ホルンの使い方は絶妙だし、この作品を書いている頃からその才能は萌芽していたのかも。

あまり演奏頻度も高くないようで、収録された媒体さほど多くないようだ。ケルテスとロンドン響の演奏は、セレナードの第1番と第2番で、1枚のCDとして発売されていたようだが、ワタシが所有していたのは交響曲第2番にカップリングされていた。ヴァイオリンが登場しないという、オケの編成が珍しい楽曲である。ブラームス20代の習作と思っていたが、聴き応えのある楽曲だと思う。特に、木管の存在が大きく、中音域の弦との絡みが優しい響きを醸し出している。
カップリング:ブラームス 交響曲第2番(ウィーン・フィル 1964年録音)、セレナード第2番 (ロンドン響 1967年)




ブラームスは、演奏会用の序曲を2つ書いています。大学祝典序曲(ハ短調 作品80)は陽気な楽曲、「悲劇的序曲」(作品81)は、文字通り、悲劇的な楽曲です。対照的な楽曲なのですが、ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、1879年、ブレスラウ大学(ポーランドのヴロツワフにある大学)から名誉博士号を授与されたブラームスは、感謝状を書いただけで満足していたのですが、もっと盛大な感謝のしるしを示すものだと説得され、80年夏に、本作を作曲しています。引用された学友歌と、自分で書いた主題を繋いだ作品で、演奏時間は約10分となっています。

ハ短調 2/2拍子の第1主題で開始され、ヴァイオリンが歯切れの良いリズムを奏でます。次に、全合奏でスタッカートを用いた経過句となり、ティンパニの連打に乗って学生歌1を引用します。また、頂点で、第1主題となり壮大な行進曲を、次にヴァイオリンの経過句を経て、学生歌2を引用します。コデッタは、ト長調2/4拍子で、学生歌3を引用し、祝祭的な雰囲気を出してコーダ学生歌4を引用します。引用された学生歌は、"Wir hatten gebauet ein stattliches Haus"(『僕らは立派な学び舎を建てた』、民謡に基づく) "Landesvater"(『祖国の父』)"Was kommt dort von der Höhe?"(『あそこの山から来るのは何』、狐乗り (Fuchsritt) の歌)"Gaudeamus igitur"(『ガウデアムス』、ラテン語で「いざ楽しまん」)とのこと。

ブラームスは、「学生の酔いどれ歌のひどくがさつなメドレー」を作って「大学祝典序曲」と名づけ、自分の任務(感謝の気持ちを表するもの)を果たしたと語っているそうです。まあ、ユーモアがあるというか毒舌家なのかはともかく、作品自体は、やっぱり立派なので、苦笑しちゃいます。


ブラームス 大学祝典序曲
1975年 マゼール クリーヴランド管弦楽団 scribendum ★★★★
1987年 アバド ベルリン・フィル G ★★★★
1987年 シャイー コンセルトヘボウ Dec ★★★
1988年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 Ph ★★★★

ブラームス セレナード第2番
1967年 ケルテス ロンドン交響楽団 Dec ★★★


 

YouTubeでの視聴

ブラームス 大学祝典序曲
Brahms: Academic Festival Overture, Op. 80
チャンネル:フィラデルフィア管弦楽団 - トピック  ムーティ フィラデルフィア管弦楽団
The Philadelphia Orchestra - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=uh8And6KfOc

Brahms: Academic Festival Overture, Op.80
チャンネル:Concertgebouworkest   シャイー コンセルトヘボウ
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=qsfg280-Sc8

Brahms: Academic Festival Overture, Op. 80
チャンネル:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック  アバド ベルリン・フィル 1987年
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=Be94pUSGVtg


ブラームス セレナード第2番
Brahms: Serenade No.2 in A, Op.16
ロンドン交響楽団 - トピック  ケルテス ロンドン響
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=e-AYH8_rdh8
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=IAIYfcn02NE
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=A3zX9Ku1fgU
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=yXDV5ODRzJU
第5楽章 https://www.youtube.com/watch?v=zeR_1MQLAnQ


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