ブラームス 悲劇的序曲、ハンガリー舞曲 Brahms: Tragic Overture, Hungarian Dances

 ブラームス 悲劇的序曲
Brahms: Tragic Overture
ベルナルト・ハイティンク ボストン交響楽団 1990年
Bernard Haitink Boston Symphony Orchestra

ハイティンクの演奏は、渋くて硬め、お約束的な安定感がある。穏やかで地味だが熱い演奏だ。冒頭、「しっ ふぁぁっ・・・・」この2音は、ティンパニーの強い音が入り、しっかり余韻が震えて残る。無骨というありきたりな表現だが、ホント想定以上に硬い響きである。茶化して、直径何メートルのティンパニーを使っているんだと、訊きたいぐらい大きい響きだ。ブラームスの悲劇的って、相当に重々しいのだ。また、低弦の重みも、淡々としつつ、ぐっと沈み込む重量感がある。前回、ジュリーニとウィーン・フィル盤を聴いたが、ハイティンクさんは、やっぱ硬いです。木管の音色も金管も、柔らかい響きが、ほとんど感じらず、音質も地味なんです。ボストン響って、当時、こんなに硬かったんですね。
堅実路線ということかもしれないが、歌謡風のフレーズが入ってくるところも、いっさい色気なし。木質的だが枯れていて、人を寄せ付けない、脂の抜けきった老いた感じがする。「れ~ら れ れぇ~」と、心なしかホルンの音も乾いているように聞こえる。ヴァイオリンの弱音、木管も素っ気ないほど。まあ、淡々としたフレーズで一貫して演奏できるものだ。大きな器の風貌はしているが、風味が足らないと思ってしまった。全集BOXで聴いたが、交響曲第4番は良い印象を持ったが、ワタシ的には、この組み合わせは相性が悪かったようです。


 ブラームス 悲劇的序曲
Brahms: Tragic Overture
カルロ・マリア・ジュリーニ ウィーン・フィル 1989年
Carlo Maria Giulini  Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

ジュリーニさんの晩年の演奏で、歯切れの良さと歌いっぷりの良さが同居しているが、超スローテンポの演奏ではない。ジュリーニさんの悲劇的序曲の冒頭は、決して遅くないし、切れもそこそこにあってエネルギッシュだ。ティンパニーの響きが残り、低音の金管も、しっかり残響を残している。この楽曲では、ティンパニーの響きが重要で、インパクトを与えることが特徴だ。低音の響きが核を成し、弦のフレーズをしっかり下支えしていく。木管のフレーズで加速度をつけていく。重量感はあるが、フレーズの上り下りに応じて自然と重量を増して、「どっそっ」と落とすところが妙技だ。弦が弱音で、カシカシ。木管の長いフレーズが絡むと歌謡風のフレーズに突入。ここで、ジュリーニさんは、しっかりと歌いはじめる。ホルンの柔らかな響きが、チャーミングだ。とても魅力的な歌い方で、木管の艶のある甘美な音は、香りを立ちのぼらせる。
フレーズのテーマになっている2つの音。「そ~そ ら~ら」「どれっ みれっ それっ そしっ」という2つの音を、渡すというか、落として行くというか。ジュリーニ盤では、2つの音は、キャッチボールが行われているかのよう。弦の「れっし れっし そぉ~っど しぃ~」という切れのある音と長めの音。入れ替わる時の変わり身の速さ。テンションは高く音は熱いが、キツクなく、全体的な響きとして柔らかさを保つ。う~ん、さすがっ。
大学祝典序曲と対になって作曲されたという悲劇的序曲。暗く硬いだけの序曲ではなく、あくまでもソフトに演奏されているが、低い音量がたっぷり入っていて、音の重さを感じる。ゆったり演奏されているので、主題の違い、間合い充分に取っているので、メリハリのある主題として成立している。恰幅の良さを十二分に味わうことができた。


 ブラームス  ハンガリー舞曲
Brahms: Hungarian Dances
クラウディオ・アバド ウィーン・フィル 1982年
Claudio Abbado  Wiener Philharmoniker(Vienna Philharmonic Orchestra)

アバドの演奏は、ブラームス ハンガリー舞曲全21曲が収録されている。とっても流麗でで、モッタイナイぐらいに美しいが、整いすぎて、もうちょっと濃厚でも良かったのにと、無いモノねだりをしたくなるような感じだ。ウィーン・フィルと、ハンガリー舞曲っていう組み合わせが、う~ん。優美に過ぎるかもしれないと思う。恐る恐る聴いてみたが、やっぱり予想どおりでしたね。はれぇ~綺麗すぎて、別モノを聴いている感じ。ローカル色の強いロマ風とは言えないような気がする。拍子抜けするぐらい綺麗な快速な演奏で、ちょっと違うようなぁ~と首をひねりつつ、均整のとれた美意識を恐れ入りました状態で拝聴した。

瞬時に身をかわし、スイスイと曲線美を描く推進力あふれる演奏で、機能美の高い身のこなしだ。パリコレやミラノコレクションを見ているような感で、すらっとした美形のモデルさんが最先端のファッションを身にまとっている感じだ。計算された舞曲を見ている感じで即興性に欠けるし、あふれるような情熱さとか、媚びもなく、するりと駆け抜けて行って残らない。さっさと行かれちゃって、ハイ、全曲完走しました状態で終わってしまった。再度CDを聴いてみたが、う~ん。美人は3日見たら飽きる。翳りのあるフレーズも、タメ感なく行かれて、いたって均整の取れた快活な演奏で、前面に出ており、奔放な感じの演奏ではない。これはこれで最良の演奏だとは思うが、やっぱり癖の強い演奏も聴きたいですね。無いものねだりが始まってしまったようでスミマセン。


 ブラームス  ハンガリー舞曲
Brahms: Hungarian Dances
オトマール・スウィトナー シュターツカペレ・ベルリン 1989年
Otmar Suitner Sächsische Staatskapelle Berlin(Staatskapelle Berlin )

スウィトナーさんの演奏は、柔らかく爽やかで、木質的な響きがあって、適度な残響が心地良い。ロマの民族臭い粘りのある演奏を聴きたい場合は、他盤を選んでくださいという感じになるでしょうか。ブラームスのハンガリー舞曲は、出世作って感じの楽曲である。作曲したというより編曲したってことになっているようだ。盗作騒ぎに巻き込まれたためだと思うが、駆け出しの頃に各地を採譜してきた成果なのだろうと思う。ロマの民族的なフレーズが詰まっており、リストのハンガリー狂詩曲も有名だけど、ブラームスのハンガリー舞曲は、柔らかい流れるようなフレーズが彼らしく、ワタシは好きである。ピアノ連弾(4手のための)用に作られたが1番と3番で、ブラームス自身が、管弦楽版に編曲したのが10番。他は、多くの方が編曲している。
天邪鬼なワタシが好きなのは、1番。
「みぃ~れ みぃ~れ ふぁ~み しぃ~どらぁ~」「みぃ~れ みぃ~ふぁ ら~そ み~ふぁれぇ~」「ふぁ~み ふぁ~み みぃ~れ しぃ~どしぃ~」「ふぁ~み ふぁ~み みぃ~し れ~ど らぁ~」
弦のふわーっとしたフレージングで、パラパラパラ~っと入ってくる木管の響きなど、スウィトナー盤は、柔らかく軽めに演奏されていて、落ち着いた余裕がある。余韻を残し香りが高い。いわゆる泥臭く演歌臭くない演奏だ。腰の柔らかい芯のある音色、弦のフレーズがキツクないので聞きやすく、取っつきやすいモノとなっている。素朴だけど素朴すぎない。さりげない品格が出てるっていうか。スウィトナーさん引退直前のCDで、全21曲が収録されていた。

ブラームスのハンガリー舞曲は、全曲21曲あるが、第1集は、1から5番、2集は6~10番 3集は11~16番、4集は17~21番ととして段階的に「ジムロック」から出版された。後半は自作だとも言われているが、盗作騒ぎとなったので、編曲としたのかもしれない。(推測です)オケ版には、ドヴォルザークさんが編曲者に名を連ねている。ピアノだけではなく、ヴァイオリンで演奏されることも多いので、聴いたことがあるとおっしゃる方も多いはず。編曲者や経緯などは、専門的な他のサイトでお調べいただきたいが、前半が、有名曲が多く、聴きどころです。

5番がダントツで有名ってことになっているが、確かに名曲だ。2番は、小太鼓の畳みかけるような入りが印象的だし、タメの部分もあって舞曲風。3番は、木管がチャーミングに演奏され、スキップしているみたいな楽曲。4番は、「れみれ しぃぃ~ れみれ どぉ~ どれど ふぁ~ どれど しぃ~」「しらそ れぇ~ しらそ みぃ~  みれど し れ ら れ そぉ~」っていう有名なフレーズが流れてくる。有名な曲で、泣き節だが、スウィトナー盤は、爽やかに演奏されている。儚げで、感情豊かに演奏しようと思ったら、いくらでもどうぞって感じのフレーズだが短い。5番は、「みぃ~ら どぉ~ら そぉ~ らしら~ ふぁ~ そふぁみ~ れどど しぃ~みら~」っていう有名フレーズの曲だ。6番は、「みっ! しぃ~ し~らっし どっし みっし れっどぉ~ タララ ラッタ らっら そぉ~」フレンチカンカンのような、雰囲気の踊りが入ってくる楽曲だ。

1つ1つの曲は、大変短いし、スウィトナー盤は、あっという間に過ぎてしまう快速演奏である。シツコクなく、柔らかくて、さーっと爽やかな演奏に終始している。人によっては、臭くないやん。って怒っちゃうかもしれないけれど、あんまり、濃厚に、ためてためて~演奏されても、泣かれてもねえ~実のところ、ちょっと引いちゃうんじゃーないかと思う。または、毒気にあたってしまって、うなされてしまうか。アンサンブルは、自然派志向なのだが、硬すぎず柔らかすぎず、木質的で、さっぱりしているが、なかなかに、楽しげだ。 なんとも言えないが品格ある演奏だし。ワタシ的には好きである。もうちょっと、コクがあっても良いかとも思うが、重すぎるのも軽すぎるのも、また、俗っぽくなりすぎても、バランスの難しそうな曲である。個人の好みで左右され、受ける印象も違うようには思うが、スウィトナーさんの品のの良さが好きなので、愛聴盤となっている。あっ 音痴でスミマセンでした。



ブラームス 悲劇的序曲
1989年 ジュリーニ ウィーン・フィル G  ★★★★
1990年 ハイティンク ボストン交響楽団 Ph ★★★

ブラームス ハンガリー舞曲
1982年 アバド(全曲) ウィーン・フィル G ★★★★
1989年 スウィトナー(全曲) シュターツカペレ・ベルリン De ★★★★★
1992年 ガーディナー(9曲) 北ドイツ放送 G
整理中です。


 

YouTubeでの視聴

ブラームス 悲劇的序曲
Brahms: Tragic Overture, Op. 81
マックス・ホウバート - トピック Max Hobart - Topic  ハイティンク ボストン響
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=oLuvKy1rHYc


Brahms: Tragic Overture, Op.81
カルロ・マリア・ジュリーニ - トピック Carlo Maria Giulini - Topic  ジュリーニ ウィーン・フィル
Provided to YouTube by Universal Music Group
https://www.youtube.com/watch?v=iqa9PrZtLsw


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