「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」
Prokofiev: Scythian Suite "Ala and Lolly"


アバド シカゴ交響楽団 1978年
Claudio Abbado
Chicago Symphony Orchestra

録音状態は極めて良い。重低音抜群の豪快な演奏である。
カップリング:プロコフィエフ カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」交響組曲「キージェ中尉」 リマスタリング盤

 

スキタイ組曲「アラとロリー」
1 ヴェレスとアラへの崇拝
2 邪教の神、悪の精霊の踊り (チュジボーグと悪鬼の踊り)
3 夜
4 ロリーの進軍(出発)と太陽の行進 (ロリーの輝かしい出発と日の出)

スキタイ組曲「アラとロリー」は、初めバレエ音楽として作曲されたらしいが、取り上げられず、後に管弦楽組曲として再編成されたものらしい。で、スキタイ人の太陽信仰を表したものだという。

1曲目は、凶悪な部分は太陽神ヴェレスを、柔和な部分は娘アラを表す。
2曲目は、スキタイ人がアラへ生け贄を捧げていると、7匹の悪魔に囲まれた邪神チュジボーグが踊る。
3曲目は、夜 邪神チュジボーグがアラを襲い、月の女神がアラを慰める。
4曲目は、勇者ロリーが、アラを救い出す。太陽神と勇者ロリーが、邪神を打ち負かして日の出となる。
というストーリーらしい。 「ウィキペディア(Wikipedia)より抜粋」

第1曲 「ヴェレスとアラへの崇拝」
日本神話の天照大神のお話とは、違って〜 めちゃめちゃ激しく、荒々しく、猛々しい。
「そ〜み そ〜み そ〜み そら そら そみ みし〜 チャッチャ チャッチャ・・・」
「しどそら ふぁそみみ ふぁそどれ みどしし」 
「ファファファ〜  そそ〜 ふぁそ ふぁそ ふぁそ ふぁそ・・・」
テンポの速い、慌ただしい序奏部分の後、「そぉ〜ふぁ〜(ドン) そぉ〜ふぁ〜(ドン)」
「らしど〜れ ど〜れふぁそそ そ〜そそ〜そ〜」
「みしら〜 みしら〜 ふぁ〜れしら〜 ら〜そ ら〜そ しどれ〜みれ〜みれ〜 ふぁどし〜どれ〜」
すげ〜音である。音の洪水で溢れ帰っている。
シンバルは鳴るわ、トランペットとトロンボーンの凄い音、ティンパニーの音、ジャンジャン バリバリ、ドドド ドンっ。ンッジャジャ ンジャジャ・・・

不協和音の洪水で、すげ〜太陽神である。太陽っていうより、荒ぶる神スサノオさまのようだ。
その神を崇拝するようなのだが、う〜ん。こりゃ恐れ多くもかしこくも。じりじり、後ずさりしたくなるような。
お出ましである。で、いったん静まったあと、娘のアラさまは、フルートで、お出ましになる。
「れみ〜 しどれふぁ しどれふぁ しどれみ・・・ ふぁ〜ふぁそ〜 ふぁ〜ふぁそ〜」
幻想的な和音で、ふぁどし〜 れ〜ど よくわからない、つかみどころのないお姿である。
冒頭、あっけにとられる洪水で毒され、美女の姿は、よくわからない状態だが、それでも神秘的だ。
アバド盤は、みごとに重低音を駆使して、ローマ軍のように猛進している。泥臭い土俗性はちーっとも感じないが、アラさまの神秘性も出ているし〜 それにしても、これが、当初バレエ音楽とは・・・
ちょっと想像できない。ヒイテシマウ。

第2曲 「邪教の神、悪の精霊の踊り (チュジボーグと悪鬼の踊り)」
この楽章が一番インパクトの強い。 
ティンパニーが叩かれたあと、シンコペーションでトランペット、トロンボーンによる印象的なファンファーレ。
「ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ」
「ふぁ〜みふぁーふぁ ふぁっ どふぁれ〜 ふぁ〜みふぁ〜どふぁれ〜」
「みーみし れ〜どし〜・・・ そみそみ そふぁみれ」
一聴すると、まるでレスピーギのように聞こえるが、ブラス部分が終わると・・・
「みそみそみそ ふぁみそみ らっしれっ みっ ふぁっ・・・」短い弦のフレーズが重なって出てくる。
鉄琴「ふぁみふぁみ れどれど どれみふぁ そみそみ」
オーボエの東洋風のフレーズ、鉄琴のグリッサンド。
短い楽章だけど、うふふっ ここには、しっかりプロコの色彩感覚が形成され、確立されている。
オチャラケ風の弾む痛快なリズム、パーカッションの豊かさ、ワクワクしてしまう。
こりゃ〜 よいわ。邪悪な神と言われようが、楽しいモノには変わりない。
チャンチャカ チャンチャカ チャカ チャカぁ〜!
このフレーズに毒される。ピアノ協奏曲とも似た雰囲気を持っている。
アバド盤では、わりと規則正しく描かれており、ローマ軍の行進のように聞こえてしまい、邪悪さが少し欠けているかもしれない が、荒々しいというより猛々しい、ド迫力に圧倒される。
鉄琴の弾む音、ブラスの重厚さは楽しいが、ちょっと重量感に押され気味。
あまり規則正しく鳴るのは、ちょっとな〜もったいないかも。もっと傍若無人でも良いかもしれない。

第3曲 「夜」 
「しらそみ ふぁどしふぁ そしどふぁ みし しらそふぁ どしふぁ しどふぁみ し〜」
↑ 適当な音を書いちゃっている。
普段、聞き慣れない音の続きで、途中で、跳躍しているのだ。1オクターブ以上離れている。
で、チェレスタの響きが美しい。夜はチェレスタが登場しないと〜
弦、ハープ等が、不可思議な旋律で鳴っているし、夜の静けさが描かれているものの、ひんやり感はイマイチかもしれない。
亡霊が登場する雰囲気 は、あまりしないし、叙情性や神秘性という雰囲気も、どこか透明度が低いためか、ちょっと雰囲気が違うような気がする。
ぼわ〜とした、夏の砂漠の蜃気楼のようだ。夜ジャーないでしょ。

第4曲 「ロリーの進軍(出発)と太陽の行進 (ロリーの輝かしい出発と日の出)」
フルートが短くいななきのように鳴っている。アラさまが、逃げまどっているのかなあ。
勇者がクラリネットで登場するらしい。変わったフレーズだ。
マーチ風なのだが、東洋風というか大陸的というか。独特すぎて〜 ついていけない。
「しらそふぁみ〜 そふぁみっ れらしふぁ〜 そっそそ〜 そっそそ〜 どれふぁ〜み」
なかなか凝ったフレーズが続いており、聴くには飽きないが、解きほぐすのも難しい。
ミュート付きのトランペットが、「ふぁふぁふぁっ。ふぁふぁふぁ〜」
まるで、鶏が鳴いているようで、コケコッコーのように聞こえる。
笑えるなあ。この描写っ。
嵐のような風が舞うが、そのうちに、日の出となるようだ。
どっそ〜 どっそ〜 幻想的なフレーズが連綿と続き、蜃気楼のように立ち上る空気感がある。
ちょっと長すぎ〜って感じだが、シャーンとした響きのなかで終わる。

アバド盤は、リマスタリングされており、ヌケが抜群に良く、音響効果も素晴らしい。
シカゴ響ならではのパワーもばっちり。音は土俗性は感じるけど、雰囲気的には土俗性には欠けている ように思う。重低音は抜群だけど、土俗性とは無縁って感じだろうか。とにかく、アンサンブルもみごとで、音量が圧倒的。拍手喝采ってところだろう。
まっ 低重音のドスンドスンという地響きパワーで、持って行かれる。

マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1991年
Kurt Masur
Gewandhausorchester Leipzig
(Leipzig Gewandhaus Orchestra)

録音状態は良い。奥行きの広い響きで、重低音から超高音域まで広がってくる。適度に鈍重さがあるためか、土俗性が感じられ、イマジネーションが広がる。 ライブ盤
カップリング:カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」

第1曲 「ヴェレスとアラへの崇拝」
けたたましく、騒々しい派手な冒頭だが、マズア盤も鳴りっぷりが良い。語尾の切れも良いし、前につんのめるような勢いがあるし、金管も荒々しい。
シンバルの「しゃらら〜らん」という音が、良く入っているので、効果的だ。シャンシャン鳴っているのが、なかなかに良いなあ。と思う。録音はTeldecなので良いし、ダイレクトなビンビン、ジャンジャン、バリバリ型の録音ではない。
不協和音攻勢で、「そぉ〜っ ふぁ〜 そぉ〜 ふぁあ〜」「みしら〜 みしら〜」と、怪獣が歩いているような、軋んだ音が鳴った後、ドシャンと雷が落ちたような重低音がある。
すげ〜迫力なのだが、わりと通りが良く、まろやかに響く。
↑ もしかしたら、耳が慣れただけかもしれないのだが。 いやいや、やっぱり相当な重低音だけど。
マズア盤は、アバド盤と比較すると、確かに重めだが、ちょっぴり泥臭さがあって、濁り部分が出てているので、期待していたより、ずーっと良い。
アラさまのお出ましのようなフルート部分は、幻想的な和音に彩られているが、適度に残響があるためか、緩くなっており、これが曲想にあっているような感じがする。
バックの弦、木管の動きも入ってて、弱音のなかで、ぼわ〜っとした空気感のなかで、旋律が蠢いている感じが、よく伝わってくる。 これは、ぼわ〜とした雰囲気で得したタイプかな。
第2曲 「邪教の神、悪の精霊の踊り (チュジボーグと悪鬼の踊り)」
ティンパニーが叩かれたあと、シンコペーションでトランペット、トロンボーンによる印象的なファンファーレ。
「ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ」
「ふぁ〜みふぁーふぁ ふぁっ どふぁれ〜 ふぁ〜みふぁ〜どふぁれ〜」
「みーみし れ〜どし〜・・・ そみそみ そふぁみれ」
アバド盤がキレが良かったのだが、う〜ん。マズア盤は、イマイチ歯切れが悪い。
でも、足腰のごつさ、粘りけがある。もう少し、トロンボーンが抜けていれば良いんだが、ティンパニーの響きも、几帳面かな。テンポを、もう少しあげてくれたら。
この前の部分が終わると、蠅が飛んでいるように、「みそみそみそ ふぁみそみ・・・」と弦がすばやく動き始めるのだが、ちょっと鈍重っぽい。邪悪さ加減というよりも、アクの強さは、まあ。そこそこ。
鉄琴の「ふぁみふぁみ れどれど どれみふぁ そみそみ」 や、「たらら〜たたた たらら たたた」のリズムは遅めだが、力強さはあるし、スマートではないが、泥臭さ、アクの強さがあって、楽しげだ。

第3曲 「夜」
プロコフィエフ特有のエキゾチックな音の連続だが、なかなかに、想像以上にムーディだ。
それに、金管の重低音がしっかり刻まれており、不気味さも加味されており、ひんやり感もありながら、生ぬるい感じもしている。録音状態に、結構、依存しているのかもしれないが、じと〜っとしてくる、足元が靄に包まれているかのような様相がする。
チェレスタの響きが、さほど通らないのだが、それがかえって良いのかもしれない。
トロンボーンの響きがでてくると、この靄が晴れてくるし、シンバルが、シャ〜んと響き、蠢きが大きくなるのだが、この蠢く動物的な感覚が、ぞ〜っとする。
霊が漂っている雰囲気がしてきて、真夏の夜に聴くと、かなり不気味かも。

第4曲 「ロリーの進軍(出発)と太陽の行進 (ロリーの輝かしい出発と日の出)」
短いフレーズが連なって、押し寄せてくる波のように迫ってくる。
「れど〜っ れど〜っ」と金管が鳴り、フルートが短く 、鳥のけたたましく逃げまどう声、ティンパニーのロールによって、邪悪なモノが、黒い羽根を広げて、空を舞っているような気配がする。
ミュート付きのトランペットが、「ふぁふぁふぁっ。ふぁふぁふぁ〜」と鳴っているが、フルートとチェレスタの絡みが、可愛く鳴っている。
このフレーズの不思議さ、色彩感覚は、プロコフィエフのお家芸のようだが、いや〜 なかなか、みごとにマズアさんが再現してくれている。木管の響きが、綺麗に聞こえて、微笑ましいほどに、日の出前の透き通った空気感、楽しげに明るく期待が持てそうな雰囲気が、喜びに期待する気持ちが湧いてくる。
太陽の光を表す鉄琴と、チェレスタ、弦の響きがブレンドされて、みごとに広がって〜っ 伸びてくる。
う〜ん。これは、みごとにやられたかも。

マズア盤は、驚くほどに映像的で、イマジネーションが広がる。
録音状態が良いこと、奥行きがあり、重低音と超高音域のレンジ幅が大きいこと、パーカッションや木管の見通しの良いこと。重低音に不足がないこと。いや〜 なかなか良い。
テンポは、冒頭は速め。2曲目は、そこそこだったけれど、いや〜 ゴメンナサイ。マズアさんには、さほど期待していなかったんですけど、これは良かったです。ホント。
アバド盤のシカゴ響のブラスセッションに比べると、確かに、金管は迫力が出てない。でも、細かい内声部の動きっていうのは、う〜ん 空気感とか、「夜」の怪しげな、霊的な蠢き度という点は良いように思う。
最後の日の出のシーンは、特に良く描けているように思うし。ホント映像的である。
これは、繰り返して聴かせていただきます。ハイ。

ラトル バーミンガム市交響楽団 1992年
Simon Rattle
City of Birmingham Symphony Orchestra

録音状態は良い。勢いが良くスピードで、持って行かれる。
硬質感のある演奏で、リズミカルだし、フレーズが交錯しているのが見えてくるようで、これが面白い。ストーリー性とか土俗性とかは無縁。カップリング:プロコフィエフ 交響曲第5番

第1曲 「「ヴェレスとアラへの崇拝」
ラトル盤のテンポは、メチャ速い。いきなり息もつかせず、猛烈な勢いで音が、迸って出てくる。
「そ〜みそ〜みそ〜み そら そら そみ みし〜 しどそら ふぁそみみ ふぁそどれ みどしし」 
「ファファファ〜  そそ〜 ふぁそ ふぁそ ふぁそ ふぁそ・・・」
「そぉ〜ふぁ〜(ドン) そぉ〜ふぁ〜(ドン)」
あっという間に溺れ、流されてしまう。その勢いの良いこと。堂々と鳴っているというよりは、セカセカしてて慌ただしく、高血圧なら倒れちゃうかもしれない勢いである。
冒頭より、次々にテンポアップしていく感じがする。
それに、シンバルの音が、パチパチしてて、目の前で火花が散っているって感じだ。
シカゴ響のアバド盤も、すごかったけれど〜 あっちのパワーは、土石流って感じ。どろどろとした粘りけがあり、ぶっといブラスの音で地響きが鳴り、低音域パワーが凄かった。
このラトル盤は、その点、ストレートで硬質で、シャンシャンしている感じがする。乾いているだけに発火しやすいようだ。ブラスの鳴りっぷりも良いけれど、ドスン ドスンという、ごっつい迫力感 もあるし、それより、いや〜 スピードがあり、猛烈な勢いの良さがある。
他の盤は、「そ〜ふぁぁ〜 そ〜ふぁぁ〜」というフレーズを重々しく、上から下へ振り落としているかのような運動型の演奏なのだが、このラトル盤は、最初の勢いそのままで、まるで鉄の玉を、水平に振り回しているかのような破壊力を感じる。
いや〜 勢いが、まったく落ちないのだ。落ちるどころか、テンポアップじゃ。すげっ。
で、あっけにとられている間に、序奏部が終わると一気に終息し、しーっん。
熱い火花から、お星様が煌めくような夜空が広がってくるという感じで、すごい場面展開である。
ホント、シーンとしてしまい、スピーカーから音が鳴ってこなくなって不安になるほど。
暴力的、破壊力、原始的なフレーズが消えて、無重力の神秘の世界に放り出されるのだが、弱音すぎるほどで〜 フルートの「ふぁ〜どし ふぁ〜」
耳を澄まさないと聞こえないやん。う〜ん。あのぉ〜ちょっと困るんだけど・・・。
もっと聴きたいのだが、ボリュームをあげれないところがツライ。
しかし、まるでオーロラを見ているかのような、透明度の高い空気感と、揺れ動くさまが綺麗である。
で、弱音に、ぶつぶつ言っている間に、2曲目のまた、すげーっ音が鳴る。

第2曲 「邪教の神、悪の精霊の踊り (チュジボーグと悪鬼の踊り)」
ティンパニーが叩かれたあと、シンコペーションでトランペット、トロンボーンによるファンファーレである。
「ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁ ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁっ〜」
「ふぁ〜みふぁーふぁ ふぁっどふぁれ〜 ふぁ〜みふぁ〜どふぁれ〜」
ここも、すげー音が鳴り始める。
しかし、土俗性よりも、ずっと澄んだ音で機能的だ。う〜ん。勢いがあって、テンポアップされている。
また、金管の鳴りっぷりが、奥行きが広く、一段高いところから鳴っているようだ。立体的で、唸るような素晴らしい甲高い音色が響く。また、弦の素早い動き〜
う〜ん。すげっ この揃った音色と動きに、やられたっ。
鉄琴の音が、少し奥まったところから響いて、細かく、パラパラ パラパラ・・・ 最初は小さい音で、パラパラしているが、そのうち強打され、金属のようにキラキラ輝いている。
音色が素晴らしい装飾に彩られ、木管のフレーズが、まるでレースのように揺れて美しい。
すごく速いので、ついていくのが大変なのだが、これが快感っ。
アバド盤が、ごっつい古代ローマ軍の行進のように聞こえていたのだが、ラトル盤は、もっとスマートで硬めで奥行きがあり、付点のリズムが素敵だ。打楽器の彩り、メチャ速いアンサンブル。
目が覚めるかのような鮮やかさで、う〜ん。サイコウっ!

第3曲目 「夜」 
ラトル盤では、弱音で奏でられるところが、ホントに綺麗である。
透明度が高く、ひんやりしており、弦とチェレスタなど、不思議なフレーズが連綿と続く楽章に引きこまれてしまう。
1音1音が丁寧に奏でられ、規則正しく音が並ぶが、流れるフレーズと木管の残響に取り込まれて、1つの音が、空中で上下左右に動き、自由な方向へ飛んでいくかのような感覚がする。
このラトル盤は、口では説明しづらいのだが、テンポを揺らさないのに、各楽器のパートが1つの生命体のように動いているような気がする。
生暖かく感じる盤もあるのだが、弦のす〜っと流れる響きのなかで、規則正しく鳴る音があり、う〜ん。
透明度の高い、しっかりとした硬い音で、素早く動くフレーズと、リズムの異なる茫洋としたフレーズと、不思議に交錯しているところが、めちゃよく聞こえる。
単なる茫洋とした感じではない。
鋭さと茫洋さ、残る響きと、すぐに消える響き、相反するモノが整然と、幾何学的に組み合わさって並んでいるような。それでいて抒情的で、う〜ん。とっても不思議な感覚だ。
マズア盤は、霊が存在するかのような、うごめく雰囲気があったのだが、ラトル盤は、理知的で、素晴らしい機能美を感じることができる。

4曲目 「ロリーの進軍(出発)と太陽の行進 (ロリーの輝かしい出発と日の出)」
「しらそふぁみ〜 そふぁみっ れらしふぁ〜 そっそそ〜 そっそそ〜 どれふぁ〜み」
なかなか凝ったフレーズが続いており、聴くには飽きないが、解きほぐすのも難しい。
「れど〜 れど〜」
ミュート付きのトランペットが、「ふぁふぁふぁっ。ふぁふぁふぁ〜」
いろんなリズムが交錯しており、それでいて、滑稽だ。
元がバレエ音楽だと言うことなので、ずーっと他の盤では、自分なりにイメージを描いて、この楽曲を聴いてきたのだが〜
このラトル盤は、イメージ描写じゃないような気がする。ストーリー性を、あまり感じないのだ。
オケのあちこちに広がる楽器が、横に、縦に広がって、それぞれ、目の前で、さまざまな形に動くパーツのようで〜 それも、あちこちに素早く動いて〜 まるで自動に動くチェスゲームのようだ。
想像を逞しくすると、ロビン・ウィリアムズ が主演していた映画「ジュマンジ JUMANJI」のよう。
(双六のようなボードゲームで、投げたサイコロの目だけ数を進み、止まったところに書かれた文字が、実際に起こるという、お子ちゃま向けのようなSFX映画 象が走ってきたり、ジャングルに迷い込んだり、ちょっと奇想天外なストーリーだが、ボンボコ ボンボコ〜という太鼓の音が鳴っているところも笑える)

う〜ん。いずれにしても、あっと言う間に終わってしまうのが、モッタイナイ。
何度繰り返して聴いても、当分、飽きない。面白い楽曲で高揚させられる。

ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団 2002年
Valery Gergiev
Kirov Orchestra of the Mariinsky Theatre
 (St.Petersburg Kirov Orchestra)

  ← もっと気合い入れてくれ〜

録音状態はイマイチ。2002年の割にはダメ。テンポも遅く、テンションあがらない。土俗性や邪悪な雰囲気も無い。期待はずれ。
カップリング:プロコフィエフ カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」

第1曲 「「ヴェレスとアラへの崇拝」
冒頭のテンポは、ゲルギエフ盤は、少しゆったりめ。
アバド盤の方が、慌ただしく、けたたましく、過激である。
序奏部分の後、「そぉ〜ふぁ〜(ドン) そぉ〜ふぁ〜(ドン)」
「らしど〜れ ど〜れふぁそそ そ〜そそ〜そ〜」「みしら〜 みしら〜 ふぁ〜れしら〜 ら〜そ ら〜そ しどれ〜みれ〜みれ〜 ふぁどし〜どれ〜」
意外と、テンポが遅く、土俗的でもなく、重量感も無いので、いささか拍子抜けしてしまった。
シンバルは鳴るわ、トランペットとトロンボーンの凄い音、ティンパニーの音、ジャンジャン バリバリ、ドドド ドンっ。ンッジャジャ ンジャジャ・・・
不協和音の洪水で、アバド盤では荒ぶる神のような感じがしたのだが、ゲルギエフ盤は、迫力に欠ける。
おっとりした神さまで、歯切れがよくない。ティンパニーも、凡庸に響いている。
え〜うっそ〜 ゲルさまの本領が発揮されていない。
荒ぶる神=ゲルさまだと、思っていたのに。こりゃないでしょ。丁寧に演奏しすぎなのか、ふわ〜っとした雰囲気があるものの、奥行きが不足しているのか。いや、録音状態だけではなく、演奏にも、モノ足らないと感じるのは、酷かしらん。
娘のアラ神への信仰の方が、強いのだろうかと思ったが、そうでもない。

第2曲 「邪教の神、悪の精霊の踊り (チュジボーグと悪鬼の踊り)」
ティンパニーが叩かれたあと、シンコペーションで、トランペット、トロンボーンによるファンファーレ。
「ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁふぁ〜ふぁ〜ふぁ〜ふぁ〜ふぁ〜ふぁ〜ふぁ〜ふぁふぁふぁ〜 ふぁ〜ふぁ〜ふぁ〜」
このフレーズのなかの、ティンパニーの入れ方は気持ち良い。
「ふぁ〜みふぁ〜ふぁ ふぁっどふぁれ〜 ふぁ〜みふぁ〜ふぁ ふぁっどふぁれ〜」
「み〜みれ〜み〜 しどそ〜らどふぁ〜みっみ〜」
土俗的な響きに聞こえるが、ブラス部分がちょっと不安定に感じる。安定していないというか、どっしりしている感じがしない。低音の迫力も。う〜んイマイチ。
弦の擦れた音、粗さ、太さが、なかなかに雰囲気を伝えるが、精緻かどうかは、ちょっと疑問。
もう少し、テンポアップしてもらうと痛快なのだが、やや重い。
渋いのだが、巧妙で、ニヤリと笑える部分が少ない。
ブラスの部分になると、活気が戻るが、それでも、パッカカパーと響くだけで、イマイチかも。
第3曲 「夜」 
「しらそみ ふぁどしふぁ そしどふぁみし〜 らそみふぁ どしふぁそ しどふぁみし〜」
フルートが不思議な東洋風のあがりくだりを吹いた後、二声となり、チェレスタの通る声が続く。
このフレーズのインテンポ具合が、かえって綺麗に感じる。
その後の、揺れるフレーズが、波打っており、フルートと低音の木管が、幻想的に響く。
ふぁ〜そ そ〜ら ら〜そ ふぁ〜 艶めかしいとまでは言わないまでも、生暖かさが出てくる。
シンバルが小さく鳴ると、雰囲気が少し変わるが、何か霊が登場したらしい。
オーボエの音色に、少し妖艶さが感じられる。
チェレスタの音が、透明感を醸し出すし、そこにピアノとハープの音色が絡む。

第4曲 「ロリーの進軍(出発)と太陽の行進 (ロリーの輝かしい出発と日の出)」
テンポは、ゆったりめ。どろり〜っとした雰囲気がでている。
バズーンなのか、ホルンと たらっら〜っ吹かれているなか、フルートが叫びをあげる。
ティンパニーが鳴って、勇者のようにロリーさんが進軍してくるのだろうが、進軍という感じではない。
マーチ風にはならない。勇壮的にならず、テンポが遅いためか、ゆったり。
へんてこりんな踊りのようで、手足がバラバラで踊っているみたいに感じる。
う〜ん。で、嵐のような雰囲気がするが、穏やかですな。
摩訶不思議感がないなあ。ぬるま湯的で、神秘的ではない。う〜ん。  

アバド盤が、格好良くスマートな演奏だったので、対抗馬としてゲルギエフ盤に期待していたのだが。
う〜ん。どーしてぇ〜と、叫びたい気分。
不気味さや邪悪神、ストーリー性や土俗色、バーバリズムのノリノリ感も、これじゃ無し。
ぬるま湯的で、鈍重で、スリリングさのカケラもない。切れも悪いし、テンポも悪いし、録音もイマイチ。
あ〜っ なんだよぉ〜 ゲルギエフ盤には、みごとに裏切られた。ガックリ・・・。
もっと気合い入れてくれぇ〜!
1978年 アバド シカゴ交響楽団 ★★★★
1991年 マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 Tel ★★★★
1992年 ラトル バーミンガム市交響楽団 EMI ★★★★★
2002年 ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団 Ph ★★
所有盤を整理中です。

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