「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

 R・コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」(シェヘラザード)
Rimsky-Korsakov: Scheherazade


デュトワ モントリオール交響楽団 1983年
Charles Dutoit
Orchestre Symphonique de Montreal
(Montreal Symphony Orchestra)

  

録音状態は良い。たっぷりと鳴り響く。ちょっとボリュームをあげて聴くと良いと思う。フレーズの長い、流麗な演奏だ。
カップリング:スペイン奇想曲

交響組曲「シェエラザード」
第1曲 海とシンドバッドの船 
第2曲 カレンダー王子の物語
第3曲 若い王子と王女 
第4曲 バグダッドの祭り〜海〜青銅の騎士の立つ岩での難破終曲 

「第1曲 海とシンドバッドの船」
冒頭は、まず、たっぷりとした金管が鳴り響きます。
「ふぁ〜どみ〜 れどれ〜 らど〜そ し〜ふぁ〜」 
王さまシャーリアル王のテーマの次に、細身の美女シェエラザードのヴァイオリンのソロ。
たっぷりと鳴っているのですが、あまり毒々しくなく、気品のある豊かな響きです。
テンポはゆったりめだが、流麗で、艶やかなシルク感覚・・・。
特に、ヴァイオリンの響きが良く、弦の鋭さ・切れも垣間見られ、単にテレテレした雰囲気ではありません。金管の音色は明るいし、木管は少し遠目から響いて、奥行きがあ ります。
リチャード・ロバーツのヴァイオリンのソロは、少し線が細いというか、もう少し前面に出てきてもいいかな〜っと思いますが、背景の弦が大きなフレーズ を描いており、波が砕けるところで、チューバの太い大きな音が、たっぷり〜 ヴァイオリンの繊細さを下から支えています。
素晴らしく安定しており、安心して聴ける盤でしょうか。
デュトワ盤は、ミュンフン盤とよく似てて繊細ですが、低音が充分に聞こえ、テンポが安定しているので、ゆったりと聴けます。

「第2曲 カレンダー王子の物語」
テンポは遅めです。ヴァイオリンのソロには、エロティックさやエキゾチックさは、少し欠けています。
スマートと言えばスマートですが、鼻につくような理知的さでもなく、ちょうと頃合いでしょうか。
ファゴットは、ちょっと、とろみを持って吹いており、ハープの音色と共にクラリネットが、ゆったりと吹かれています。そこから弦がフレーズを繋いでいくのですが、このあたりは流麗 。
フレーズ全体で、まぁ〜るい輪を描いているようで〜おもわず、すごっ。と息をのんでしまいます。
音が上にあがって、ふんわり自然の力で落ちてくるという、何とも言えないリズムがあり、トロンボーンの音色はまったり。トランペットは明るいストレート が出ています。また、打楽器類やピッコロが、キラキラした音を出しており、波間にきらめく光のように感じます。
それも色彩豊かで、デュトワ盤の白眉です。楽しい。すげっ。弾んでいる!

「第3曲 若い王子と王女」
ゆったり〜 まろやかに、まるで絵巻物が解かれたかのように、流れるように展開しています。
けっして速くなく、歌心あり。若さばかりの華やかさとは異にしています。
穏やかな表情づけと、中音域の厚みのある音とコクが特徴でしょうか。中高年の方でも、かなり満足いく音色だと思います。
私的には、にわかにモントリオールだとは感じられませんでした。コンセルトヘボウも顔負けの木質感ある暖かい音で、よく響いています。コンセルトヘボウとの音色が違うのは、その明るさ でしょうか。
なんとも、まろやかな金管なんだろう。こりゃ〜 まいった。
第2曲と、この第3曲、これデュトワ盤は絶品!
ヴァイオリンのソロ はかなげに聞こえますが、ホルン、トロンボーンが、こんなに、とろり〜と溶けるように吹かれると、ころり〜っと、まいちゃう。中年好みの大人の音色 です。

「第4曲 バグダッドの祭り〜海〜青銅の騎士の立つ岩での難破〜終曲」
ヴァイオリンのフレーズが終わると、祭りが始まります。エキサイトしてくれるのですが、その前段は、ためにためています。
舞曲風のフレーズが始まると、シンバルなどのパーカッションが、奥行きを与え、前にでて奏でている弦を支えています。音場の広がりが大きく豊かです。
テンポは、さほど速くないものの、各セッションの距離感が見えてくるようで、金管が絡んでくると密度が高くなってきます。

全体的に、各パートが鮮やかに録音されており、密度が高いのだが、見通しが良いようです。
トランペットのミュート付きの短いパッセージには驚かされました。各楽器の動きが、とても俊敏です。
泥臭くなく、混濁もせず、スマートに華麗で余裕シャクシャク。打楽器の音がクッキリして、銅鑼も良く聞こえますし、バランスがとても良いと感じます。
最後の締めのヴァイオリンソロは、細く高く長く〜 フレーズを奏でており、別世界に至ってしまうようだ。
こりゃ〜 天高く飛んでいってしまうわ。まるで、昇天シーンのようで・・・ すご〜っ。
最後の最後まで、余韻を含めて楽しめる盤となっていました。

マゼール ベルリン・フィル 1985年
Lorin Maazel
Berliner Philharmoniker
(Berlin Philharmonic Orchestra)

録音状態は悪くないのだが、奥行きや残響があまり感じられず、平板な感じがする。ワタシ的には、ちょっと中途半端な感じがしてしまった。

第1曲 海とシンドバッドの船
「ふぁ ど み〜 れどれ〜 らどっ〜そっ しっふぁ〜」
冒頭の金管は、しっかりと硬く、太く、ストレート気味に吹かれている。
シャーリアル王のテーマでは、マッチョで力強い筋肉質な王さま。
ヴァイオリンソロは、当時のコンマス レオン・シュピーラーさん。
ヴァイオリンの甘美なフレーズの美女のシェエラザードは、巧いんだけど〜 ちょいとコワモテの美女シェエラザードで、腰の細そうな、妖艶な感じ も、ちょっこっとするが、知的で気位高そう〜
この美女は、ちょっと苦手かもしれない。と感じてしまった。

テンポは遅め。ゆったり〜っという、波の揺りかご的な雰囲気があまりしない。
弦のボーイングが、心なしか最後の語尾がキツイ。こりゃ、船酔いしそう。ちょっと硬いなあ。というのが第一印象だった。
フレーズは流れてはいるのだが、流れるというより〜 フレーズとフレーズの間が、息継ぎのような間合いがちょっと感じられることと、文章に必要以上に句読点があるようで、つっかえてしまう。
流麗なデュトワ盤やコンドラシン盤を聴いてしまうと、ぶつ切り的に聞こえてしまう。
どちらが良いかと言われると、やっぱ、この楽曲では、流麗な方を取ってしまうのだが・・・。
これは好みの問題かも。
マゼール盤は、金管と弦との絡みが、イマイチ溶け合っていないような、、、、なんて言うんだろ。
クリーミーではないんだよねえ。どちらも主張が強すぎるような気がして。ちょっとツライ。
ヴァイオリンの音色は、ちょっと冷たい。ほんわかしておらず、クールな美女ですねえ。
夜な夜な、理知的な会話を続けられると、う〜ん。可愛くないっ。
大海原を描いているのは分かるが、テンポはゆるやかだが、意思の強さが前に出ているようで、貴方任せの帆船というより、鋼鉄の小さな軍艦っぽい。ガッツがある。

第2曲 カレンダー王子の物語
決して歌っていないわけではないのだが、たらん らたたぁ〜 たらら らっららぁ〜
このフレーズのタメが独特。
で、どことなく、ねちっぽい吹き方という気がする。あまり自然に聞こえない。
まったりフレーズを重ねようとしているのか、変なところにアクセントつけないで〜と感じるところもあり、途中で弾むようなリズムをつけてしまう ところもあるし、うはっ 速〜っ。と感じるところもあり。
なかなか、一筋縄ではいかない。
フレーズは、次々に、重なるように出てくるという感じがしない。
で、フレーズの最後が、どうしても間があいている感じがするんだよね。また、アクセントや最初のリズムが強くて、全体は、まろやかに 溶け合っていない感じがする。マゼール盤では、大きなうねりのあるセンテンスで1つに括る。という感じではないようだ。
メリハリがあるのはいいのだが、う〜ん。細切れ的に聞こえてくる。で、とろけてくれない。
まあ、硬いというか、筋肉質風なマッチョさで、ダイナミックなのだが。
第3曲 若い王子と王女
ヴァイオリンやチェロの弦の音色は、ほどよく甘く、キラキラした木管群が華やかだ。
テンポは遅めだが、これは聴かせてくれる。
ソロの部分が次から次へと出てくるので、これが聴きどころになっている。
この楽章では、マッチョな姿が無くなって、ちょっと甘くなっている。てれてれ〜の甘さではなく、芯はシッカリある。音は硬めなのだが、フレーズもたっぷりしているし妖艶 だ。
特にチェロ れみれ〜 しらそら〜 音が、かっしり。
その合間を、木管は、速めのトリルで、あちこちに走りまわっている。

第4曲 バグダッドの祭り〜海〜青銅の騎士の立つ岩での難破〜終曲
がっしりした音で冒頭が始まり、そこからヴィオラとヴァイオリンの音で、祭りが始まる。
う〜ん。音が割れているというか、擦れた弦の音色で、あまり綺麗じゃない。
トランペットのミュートをはめた短いパッセージと、弦との絡みは、まあまあ。
ちょっと初めは線が細くて、ギクシャクした感じがする。
大太鼓は、遠くで花火があがっているような、ボンボンという変な響きで鳴っている。
銅鑼のシャーンという音は、破壊力あっていいんだが、全体的に硬い響きなので、波の揺りかご的な雰囲気があまりしない。
マゼールのことだから、もっと最後は、破壊力たっぷりで鳴るのかと思ったのだが・・・
低弦は綺麗だし、ヴァイオリンも美しいのだが、う〜ん。
甘美でトロケルとはいかないし、心地良いとも言えないし、迫力満点とも言えないし、中途半端かな。

ミュンフン パリ・バスティーユ管弦楽団 1992年
Myung-Whun Chung
Orchestre de l'Opéra de la Bastille
(Bastille Opera Orchestra)

    

録音状態は良い。でも、最後は船酔い気分に・・・。
カップリング:ストラヴィンスキー「火の鳥」1919年版

「第1曲 海とシンドバッドの船」 
冒頭は、重々しい金管が豪快に鳴り響く。「ふぁ ど み〜 れどれ〜 らどっ〜そっ しっふぁ〜」
これが、怖い王さまシャーリアル王のテーマです。王のテーマ自体は堂々とした鳴りっぷりで、まずまず。
続いて、ヴァイオリンの甘美なフレーズは、美女のシェエラザードです。
王さまと美女シェエラザードが交互に出てきて、この楽曲のテーマ音楽になっているのですが、アラビアンナイトの物語の世界なので、やっぱねえ。
エキゾチックで、どろ〜っとした粘っこさが欲しいところです。
このミュンフン盤のシェエラザードは美しいのは美しいのですが、ちょっと細身で、グラマーな美女ではないのです。
理知的とでも言いましょうか、ミュンフン盤のシェエラザードは、全体的にさらり〜としているのです。
色彩は、さすがに華やかで、繊細で、きらびやかな音色ですが、低弦の響きが少し足らないのか、どことなく軽めで、ちょっと淡泊に感じてしまいます。
歌い方は、音の伸ばし方が絶妙で、たっぷり歌い、ふわ〜っと降りてきたと思ったら、すーっとのぼっていきます。テンポは、伸び縮み自在で、ガシガシ感は ありません。

「第2曲 カレンダー王子の物語」
甘いヴァイオリンのフレーズが奏でられて、まるで夢見ごちの世界に誘われます。
とろり〜っとするフレーズ ヴァイオリンのソロは、フレデリック・ラロクさん。
ヴァイオリンの音色は、ちょっと枯れている雰囲気があります。
木管の響きはまろやかで、弦やフルートが、波間に浮かぶフワフワ感を表出しています。
でもね。太さがちょいと足らないのです。録音のせいなのだろうか? う〜ん。これは困ったなあ。
適度な重量感がなきゃ、無重力空間で、ぷわぷわ浮かぶ感じになってしまうのですが・・・。
で、中間部分のトロンボーンとトランペットのフレーズでは、ちょっとテンポをあげてしまう。
カレンダー王子の波瀾万丈なシーンを描いているのだと思うが、冒険活劇ではないと思うんだがなあ。
まるで、砂漠を行進しているように聞こえてしまう。ちょっと軽いでしょうか。

「第3曲 若い王子と王女」
ヴァイオリンやチェロの弦の音色は甘く、ちょっと渋め。たっぷりのフレーズで奏でています。
弦の素早い動きの箇所があるが、ほぉ〜っ こんなフレーズがあるのかと気づかされました。
総じて、波を描くのが巧いなあ。って感心します。
弾むようなリズムが間に挟まっていますが、ここは軽妙。シャボン玉が弾けているように感じました。
中間部分の流れるようなフレーズには、うっとりさせられ、弦が、いいんだなあ。で、クラリネットが美音。
ヴァイオリンのソロより、クラリネットに、クラクラしてしまいました。
しかし、もちっと粘ってもよかったかも。

「第4曲 バグダッドの祭り〜海〜青銅の騎士の立つ岩での難破〜終曲」
ミュンフン盤は、この最後が、とても速いです。ヴァイオリンとビオラの絡みだと思うのですが、祭りのテンポが、はやくて目が回ります。踊りの速いこと。すばやすぎ〜っ。
もちっとエキゾチックに、ネチネチしてもらわないと・・・。腰をクネクネして、ゆったり煽ってくれ〜っ。
そんな風に感じます。
トランペットの短いパッセージと、弦との絡みが・・・ さらに加速し、あーっ。弦の美しいフレーズが短いっ。
出だしが速かったので、やばいっと思ったのだが、既に遅し。さらに加速して、気分が悪くなるほどです。
いや〜っ、熱いのは熱いのだが、これでは、楽しむ間合いがありません。
そんなに急がないで〜っと叫んでいる間に、横波をもろに受けたらしく、やっぱ難破しちゃったようです。
エキゾチック、オリエンタルな気分を味わうというよりも、最後は、船酔いした気分でした。

シャイー コンセルトヘボウ 1993年
Riccardo Chailly
Royal Concertgebouw Orchestra
(Amsterdam Concertgebouw Orchestra)

録音状態は、極めて良い。奥行きもホールトーンも充分だし、ソロも美音である。
カップリング:ストラヴィンスキー「幻想的スケルツォ」

第1曲 海とシンドバッドの船
なんとも堂々とした鳴りっぷりで、王のテーマが演奏される。コンセルトヘボウの音色の豊かさ〜 太さ。
まったり感。う〜ん。
そこに、ふわ〜っと、かぼそくヴァイオリンのソロが浮かび上がってくる。
なんとも。そこだけ輝いているような雰囲気で、美音すぎるほど美音で、きれい〜っ。と叫びそうになる。
テンポはゆったり。いや遅め。この楽章だけで10:35
せかせかしないで、あくまでも、ゆったり。まどろみの世界に誘われる。
オケの音色が、もともと木質で、渋いし、太めの豊かさがある。
また、ソロの音色が、渋い音色のなかから、カラフルに立ち上がってくるので、は〜ぁっと。溜息をつきたくなるほど、浮かぶんだよなあ。背景が渋いからこそ、明瞭で、くっきり立体的に浮かぶのだ。
このシャイー盤は、ヴァイオリンソロの演奏に、いちころになってしまう。

第2曲 カレンダー王子の物語
テンポは遅め。わざと遅めにしているように聞こえるが、緊張感は途切れない。
なんたって、ヴァイオリンのソロが美しい。
王子の冒険活劇風の物語 はじまり、はじまり〜っのトロンボーンのフレーズ。
たらん らたたぁ〜 このフレーズが、メチャ遅くて笑えてしまった。
ここは、普通、もちっと速いのに。トランペットも、たらん たたたぁ〜 
トランペットは短いパッセージだ。段々とテンポをあげていくので、最後には、普通のテンポ状態になっているのだが、この間合いの遅さは、何故なんだろう。不思議な感じがする。
何度も、繰り返されるフレーズで、ピッコロも同じフレーズを吹くし、カレンダー王子のテーマ曲になっているのだが、まあ。苦行の僧侶らしい人物なので、インディジョーンズのように格好良くはいかないのだろう。
軽いのだが、音色と響きに奥行きがあるせいか、決して軽すぎず。
またテンポが総じて遅めなので、エキゾチックに聞こえてくる。
ここまで遅くしないで、うねりが表現できたら、なお良かったのに。丁寧過ぎるかも。
最後は、テンポをあげて盛り上げて終わってくれる。

第3曲 若い王子と王女 
テンポが遅いので、ちょっとだれてしまった。
美音だし、さざ波がよく聞こえてくるのだが、大きなうねりが感じられない。
大きな波があって、その隙間に、さざ波が聞こえて欲しいのだが・・・ テンポが遅いためか、全体的に、大きな揺れを感じない。う〜ん。ちょっと残念。
リズミカルではないので、心地よさはイマイチ。この点、ミュンフンは絶妙なんだがなあ。
シャイー盤は、濃密なのだが、リズムがないような感じがする。
1・2・3の几帳面に振られたワルツでは、踊れないんだけど・・・ ちょっとなあ。
杓子定規に丁寧すぎて、フレーズの伸縮が少なく、遊び心が少ないのか、ちょっと身を任せるような楽しさや、開放感が少ない。チト残念。
第4曲 バグダッドの祭り〜海〜青銅の騎士の立つ岩での難破〜終曲
ヴァイオリンのソロは、綺麗だ。まるでコンチェルトを聴いているようだ。
で、リズミカルなフレーズは、これ楽しい。アンサンブルもみごとだし、小太鼓が小気味よく響いている。
また、大太鼓の音がクリアーで、下支えしたテンポに切れがある。
キラキラした・・・とは言えないけれど、タンバリンも、金管も、う〜ん、これは良いねえ。
ぎらぎら ネチネチとした感じはしないし、エキゾチックでもないんだけど、落ち着いた雰囲気で、安心して聴いてられるっていう感じ。パーカッション隊の巧さに、脱帽だな。
歯切れの良いこと。このうえない。テンポがあがっても、アンサンブルは乱れないし。
う〜っ巧い!

でも。なんか足らないんだよなあ。何なんだろ。
ひゅーっと風が起こっているところも描写があるし、転覆します。という描写もあるんだが。
なんだか、燃えないんだよねえ。(特に、この曲で燃えたいってワケでもないんだが・・・)
う〜ん。私的に期待しているのは、やっぱ、エキゾチックなエロティックさだろうか。 あまりに綺麗で、お品が良く、巧いって言っているのは、やっぱダメなんだろう。 
しかしながら、ヤープ・ファン・ツヴェーデンさんのヴァイオリンのソロは、絶品だった。

ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団
(現、マリインスキー劇場管弦楽団) 2001年
Valery Gergiev
Kirov Orchestra of the Mariinsky Theatre
 (St.Petersburg Kirov Orchestra)

   

録音状態はまずまず。妖艶でエロティックで、鼻血が吹き出してしまいそうな濃厚さ。これは強烈っ。
カップリング:ボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」、バラキレフの「イスラメイ(東洋風幻想曲)」とのカップリング

第1曲 海とシンドバッドの船
冒頭から、ぱ〜ららら〜っと、最初のトロンボーンの音が、なんともゴツイ。
すごく太くて、重くて、ずぼーっと出てきて〜なにせ音量が半端ではない。慌ててボリュームをさげる。
テンポは、相当ゆったりめ。ぱぁらら〜 ぱぁ〜ららら〜(間を取って) ぱあらら〜 って感じ。
金管って文字で書いたら「ぱーらら」なのだが、このゲルギエフ盤の出だしは、「ぱ」では表現しきれない。
「ぱ」ではなく、「ば」「ぼ」「ず」の間のような音なのだ。

で。すっかり〜 この冒頭の金管で、ロストロポーヴィッチ盤のように図太く、アクの強い演奏だろう。というイメージが出来てしまった。
かなり、野性的で、野太く、汗くさく、野性的。で、シャーリアル王が、脂ぎった王なんだから、美女シェエラザードは、そうとうエロティックな妖艶な方だろうと・・・。
ヴァイオリンのソロは、とろとろの甘美な声だろうと期待して待っていたのだが、はあ?
ちょっと〜 細身で、遠い。ええ〜っ うっそー。擦れた声のおばさんかよぉ〜っ。
最初のフレーズで、ヴァイオリンの甘美なフレーズを期待していたのに、かなりガックリしてしまった。
まあ。その後、ちょっと甘みや艶が出てくるのだが、それにしても、このヴァイオリンは変わった音色である。
ヴィブラートのかけ方が違うのか、小節まわしに特徴がある。短い音符が特に速い。
「たん たらら ららら〜らん」の「ららら」の部分が、やけに速いような。そんな感じ。

その後、航海のシーンが描かれるが、波の描き方は、やっぱ巧い。まあ〜ダイナミックである。
ざぶーん。ざぶーん! とはいかないが、荒々しい三角波を感じる。低音は幾分籠もっている。
抜けるような録音ではないようだ。木管が「ピーっ」と甲高い声で、背景で鳴っており、全体としての調和としては、私的にはイマイチ。金管の図太さ、高音のキツさが、特に、私的には好きではない。

第2曲 カレンダー王子の物語
この楽章のヴァイオリンのソロは、これは艶が、たっぷりあって妖艶である。
とろり〜っ とろとろに〜 比重の重い、ぼってりとした液体のように流れていく。
だが、金管のフレーズが、超遅い。はあ。なんで〜っ。ここでテンポが、がくっと落ちるわけ?
ファンファーレのような場面も、同様にテンポを落としている。
シェエラザードは、液体が主人公のようなフレーズが多い。フレーズが流れていかず、沈殿してしまった。
カレンダー王子のテーマが、スケルツォというか行進曲風に聞こえるところは、迫力があるし、ジャンジャンと鳴っているが、木管のフレーズになると、なんか、すかすかしているような気がする。
悠然とした響きというよりも、単なる分厚いだけ。金管が・・・という感じがする。中間部、特に、木管の音色が響いて聞こえず、すかすかしているし、全体的な厚みや丸みが少ない。
音のバランスや残響も、不可思議な感じがするし、私にはイマイチのように聞こえる。

第3曲 若い王子と王女
冒頭から、弦のフレーズにまいった。メチャ甘い。妖艶でエロティック。これは良い。う〜ん。とろけてしまう。
で、続くクラリネットが吹いているフレーズは、まるでジャズを演奏しているかのように吹いている。
これはスゴイ。
巻き舌で発音する文字があるんだろうか。すごい巻き舌攻勢にあってしまって・・・
これでは、舌が麻痺するぐらい。いやはや、とろける筈です。こんな小節回しにあうと、日本人は悩殺されるだろうなあ。なんとも心地よい響きで、ハハハ、これは苦笑いせざるを得ない。
唾を飛ばすぐらい勢いや、区切りのはっきりした発音、平板な発音から、比べてしまうと〜 むふふ。
なんともいえない転がるフレーズが続いて、ほくそ笑んでしまう。
この楽章は、独特の転がるこぶしまわしと、濃厚さで、悩殺されてしまい、ゲルギエフ盤の白眉となっている。これを聴いたら、他の盤で、この楽章は聴けないだろう。
あまりにもアッサリしすぎ〜ってことになる。
なお、これ以上書くと、下品になりかねないので止めておく。

第4曲 バグダッドの祭り〜海〜青銅の騎士の立つ岩での難破〜終曲
残響の多い金管の咆吼で、シャリアール王のイライラした表情が目に浮かぶ。
シェエラザードが、この王をなだめているようだが、ヴァイオリンの音色は、ささくれだっているようだ。
その後、堰を切ったように、暴走したリズムが流れ出てくる。
トランペットと小太鼓の掛け合いは、すげ〜速い。あまりの剣幕で、猛烈なフレーズ攻勢で、何が起こったのか、とっさに判断できない。
なんか、狂気じみていて・・・ 唖然としてしまった。
蜂がブンブンいっているような弦に、うるさいシンバル。そして吠えまくる金管に、耳に刺さる打楽器の派手な鳴りっぷり・・・いったい何なのだ。
同じ曲でも、もっと理性的に演奏している盤もあるのに、これだけドンパチされると、単なる破壊的な活動としか感じない。もう少し短い時間であれば、迫力がある。と高揚もしようが、これだけ長い時間、ぎゃーぎゃー奏でられると、苦痛極まりない。う〜ん。ホントに、エグイ演奏だ。
で、ゲルギエフ盤のとめどもない加速度的な暴走は、大波を被って難破。座礁して終わるらしい。
あんな猛スピードで運転してたら、激突して大破は、あたりまえでしょう。って感じ。自業自得だよねえ。という感想で終わってしまう。

シャーリアル王と、シェエラザードも、ゲルギエフ盤では、波を被ってオダブツらしい・・・という終わり方に聞こえてしまう。
後に残された妖艶なヴァイオリンの余韻が、蛇足になってしまって。なんとも悲しい。
3楽章で終わってくれたらよかったのに・・・。

1974年 ロストロポーヴィッチ パリ管弦楽団 EMI  
1979年 コンドラシン コンセルトヘボウ Ph  
1981年 プレヴィン ウィーン・フィル Ph  
1983年 デュトワ モントリオール交響楽団 L ★★★★★
1984年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI  
1985年 マゼール ベルリン・フィル ★★★
1992年 ミュンフン パリ・バスティーユ管弦楽団 ★★
1993年 シャイー コンセルトヘボウ ★★★
2001年 ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団 Ph ★★
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

Copyright (c) mamama All rights reserved