「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

 R・シュトラウス 交響詩「 ドン・ファン」
R. Strauss: Don Juan


クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 1960年
Otto Klemperer
Philharmonia Orchestra of London

録音状態は、まずまず。ちょっとヒスが感じられるが悪くない。
カップリング:交響詩「ティル・オイゲンシュピーゲルの愉快ないたずら」、歌劇「サロメ」〜7つのヴェールの踊り〜、交響詩「死と変容」(1961年)

たらら ら〜 ふぁっそら〜っ。冒頭の象徴的なフレーズは、ティンパニーが、ちょっと鈍くさい。
弦と木管は、ぱん。っとスムーズに出てきたのに、ティンパニーが「ドドッッ・・・」と遅れ気味に叩いており、えっ マズイで〜 この冒頭で遅れるっ。という感じだ。
ホント、きわどい危ない出だしで、いや実は、ちょっと、ずれ気味なのである。
金管の音色は、ちょっと擦れ気味で、ぶぁわ〜っと破裂気味吹かれており、これも味があるって言えば味があるのだが、いささか苦笑気味である。
まあ。クレンペラーさんの盤で、ドン・ファンというのも、オツなもので、なんだか微笑ましい。
全くイメージに合わない。

アンサンブルは正確であって欲しいのだが、機械的にやられると、ちょっと味気がないもの。
なんだか、この盤は、ライブ感覚で録音されているように感じられる。また、アナログ時代的で、ちょっとドンクサイところが微笑ましい感じがする。
クレンペラー盤は、スピードに勢いがあるとかではなく、気迫で押すって感じがする。
音の伸ばしと、音量は、ぐぐ〜っと、押しあげてくるが、テンポは、そんなに遅くない。
ちょっと硬めなのだが、主題が、小気味よく奏でられているおり、フレーズの語尾、「れどらっ れどらっ」っと鳴るようなところは、キレは抜群で豪快である。
女性的な主題に変わったところは、なかなかに想像以上に、しなやかで〜
「そぉ〜 みぃみぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」 ほぉ〜 意外と女性らしいやんと思わずニンマリ。
ヴァイオリンソロの音色などは、いささか古めかしいのは否めないが・・・。
恍惚感には至らないものの、まあ、可愛く鳴っている。
木管、特に、フルートがよく聞こえているし、クラリネットのフレーズも滑らかである。
ハープは、ちょっと遠いけれど、幻想的に聞こえてくる。混沌とした感じではなく、結構、見通しの良いバランスで、単に感覚だけでなく、各フレーズ は楽しめると思う。

で、ドン・ファンの第2主題が、ホルンで鳴らされるところ、
「らぁ〜らぁ〜〜  そふぁ〜みそふぁみ〜ふぁみしら〜」
「ふぁみ〜しら〜そふぁみふぁみっれ〜どれふぁらっしど〜」 
ここは、遠くからホルンが、まず鳴ってくるのだが、途中で音量が強くなって、また弱くなっている。
強い意志力は、あまり感じないのだが、弦の滑り落ちるようなフレーズも、相当に力強いし、金管と弦が、「れみふぁっ (れみふぁっ れみふぁっ) らららっそ〜」と、あわさっているところの弾むフレーズも、心地良い。 

主題が変わって、落ち込んでいる心情や、陰鬱っぽくなっているところの描写も、じっくり描かれている。
ドン・ファンの主題が、トランペットで吹かれているところは、結構、華やかであり、力強くもあるのだが〜
それよりも、陽と陰というか、多くの人に囲まれた華やかさと、ひとりぼっちに、物思いにくれているようなところの落差が、かなりあり、最後、驚くほど静かに〜 すっーっと終わるところの力加減が すごい。
このあっけない幕引きには、ホント、驚かされる。
ふむふむ。ドン・ファンとはいえ、寂しい幕切れなんだなあ。と、しみじみ〜。
いずれにせよ、今風ではなくスマートでもダンディでも、イケメン風でもなく、微笑ましい古さを感じる。

マゼール ウィーン・フィル 1964年
Lorin Maazel
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)

録音状態は良い。若く、ぎらぎらした煌めくドン・ファンで、少々エキセントリックな面も感じるが、この勢いは小憎たらしいほど。
79年クリーヴランド管弦楽団、95年バイエルン放送交響楽団との録音もある。カップリング:交響詩「ドン・キホーテ」 SHM-CDも限定で発売されている。

「み〜ふぁ〜 そらしっ ふぁっそら〜どぁ〜 ふぁっそら〜」
「どっどふぁ〜 そっらっ! ふぁられ〜 しふぁ〜 らしど〜」
小気味よい響きで、軽快に出てきて、テンポは速く、スイスイと進む。
ティンパニーも、タタタ タン! 
歯切れも良いし、重量感が無いものの、ホント小気味よく、煌びやかだ。
まばゆいほどの色彩感がある。
特に、ヴァイオリンの高音域の音色と、トライアングルや木管の響きなど、高音がすごく綺麗で、びっくりしちゃう。別の音楽を聴いているような軽妙さがあり、コミカルに近い、それでいてアンサンブルもみごと。
「れっ どっふぁっ!」と、クッキリ系で、あまりの勢いとシャープさに驚かされる。
甘美なフレーズは、もちろん良いが、メッチャ高い音のヴァイオリンソロで、ほそ〜く ひや〜っと、すぃ〜っと鳴ってこられ、背筋が、すすーっとするほどの音色だ。
テンポの速い、遅いが、めちゃついていること。
そして、高音の音色のぴ〜っと張りつめた音。
音の重量感や、太さ、深みには不足するものの、この高音のぴ〜んとした緊張感が、きりり〜とした造形美をイメージさせられるし、シャープな輪郭であると感じられる。
まるで、スケートで滑った跡のトレースのように縁取られている。
コントラバスやチェロの音域が、ちょっと足らないので、まるみや、おおらかさ、そしてダイナミックさは不足している。
これは録音によるのかもしれないが、いや〜 録音だけじゃないだろうが、立体感や奥行き感が、あまり感じられない。
シャープさ、エッジの鋭さ、勢いの良さが前面に出ている演奏だろう。
で、スマートで、ちょっとエキセントリックな、ドン・ファンの姿を彷彿してしまった。

これだけの勢いがあって、若く、セカセカして、スマートに決めて、煌めいている演奏は、他に、あまりないかも。 少し音が痩せて聞こえるのは致し方ない。この時代に(1960年)、オーバーアクション気味のロマンティックどっぷりの演奏ではなく、すっきりクール系に演奏しているとは。多少、鼻が高く伸びてて、エキセントリックな面もあるが、まあ。小憎たらしいけれど、許せちゃうかなあ。マゼールだったら・・・。
1960年代の若くて勢いのあるマゼールの姿を、そのままイメージさせられちゃう演奏である。

ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン 1970年
Rudolf Kempe
Sächsische Staatskapelle Dresden
(Staatskapelle Dresden)

録音状態は良いが、ちょっとキツク感じる。
猪突猛進型の一直線のところと、甘美で官能的なところがあり、ある意味怖い。
R・シュトラウス管弦楽作品全集 9枚組BOX

「・・・ み〜ふぁ〜 そらしっ ふぁっそら〜ど〜 ふぁっそら〜」
ぱぱっぱ ぱぁ〜 (ティンパニー タタタ タっン)
「どっどふぁ〜 そっらっ! ふぁられ〜 しふぁ〜 らしど〜」
優美な出だしを想像していたのだが、完全に裏切られて、メチャ速くて、ついていけない〜っ。
ひぃ〜 こんなに速いのぉ? シンバルが叩かれて、場面が急展開していく。
あっという間に、「らっらぁ〜 しらそれみふぁ〜  ん〜 たらぁ〜らっん」
しかし、木管も、コントラバスも、すごい音が入っている。で、いつの間にか、ヴァイオリンのソロに突入している。「そぉ〜 みぃみぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」

はあぁ・・・。気がつけば、夢見心地の世界に入り込んでおり、ラビリンス状態になってしまう。
恋に陥る瞬間っていうのは、こういうモノなのか。瞬時なんだなぁ。っと思った次第。
緩やかな主題では、弦と金管の融合って世界になっており、「そっみみ〜ふぁみれらしど〜」と、高揚していく。この高音域への伸びがすごく、天上に昇るシーンとしてもスピード感あり。
冒頭の勢いと、とろける世界の差が凄い。
で、充分に官能的な世界から出たあと、駿馬のように駆けめぐり、そして人生後半。
枯れ葉舞い散る、虚無感漂う世界へ踏み入れてしまう。

一直線型で、あたりを見渡す余裕がないほどの速い展開で、否が応でも引きずり込まれるという勢いが、まず用意されており、ブラックホールに入り込んだような緊張感の後に・・・。
色香が芳しい世界へ、突然迷い込んだ不思議なシアワセ感が待っている。
この甘美で、迷宮のような世界には、参ってしまった。

あ〜 こんな音楽を聴くと、なんとも自堕落になっていきそうで。
怖いような、気持ち良いような・・・。
ドレスデンの渋いながらも、パーカッション群の色彩豊かさ。
ダムさんの吹くホルン。まあ、文句のつけようのない世界なのだが、恐ろしく前のめりで走る勢いと、官能的なトロケル世界を用意しながらも、口調のきっぱりした毅然としたケンペ盤では・・・。
とろけるのが、恐ろしいような気がする。
猪突猛進型の一直線のところと、甘美で官能的なところがある。ある意味、ケンペさんって怖い人だな〜と思ってしまった。
生き馬の目を抜くような、油断のならない演奏である。

カラヤン ベルリン・フィル 1972年
Herbert von Karajan
Berliner Philharmoniker
(Berlin Philharmonic Orchestra)

録音状態は、リマスタリングされてて良い。カラヤンの美意識が、楽曲にマッチして相乗効果を生んでいるっていう感じがする。
カップリング:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、歌劇「サロメ」〜7つのヴェールの踊り〜

NHKの「N響アワー」のオープニングが、この「ドン・ファン」だったことがある。
で、このカラヤン盤は、圧倒的なスピードとパワーで、一気呵成に急上昇。
弦が滑るように、「・・・ み〜ふぁ〜そらしっ」 ぱぱっぱ ぱぁ〜 (ティンパニー タタタ タン)
「どっどふぁ〜そら〜ふぁられ〜 しふぁ〜らしど〜」
カラヤン盤は、華麗にして豪快っ。語尾が、ぐぐ〜っとのびるし音量もあげており、テンポも速い。
「らっらぁ〜 しらそれみふぁ〜  ん〜 たらぁ〜らっん」
恋に落ちるスピードって、こんなモノなのか。
バンジージャンプの反対バージョンで、巨大ゴムをつけられて空中に飛びあがったというか、ロケットにくくりつけられて宇宙に放り出されたような。そんな気分だ。
でも、一度聴いたら忘れられないフレーズで、よく、こんな冒頭を考えつくもんだなあ。
掃除機で吸引されたように、吸い込まれてしまう。
この冒頭、「快楽の嵐」って命名されているフレーズらしい。
で、この象徴的な旋律が終わると、無重力状態になって、ぷわぷわ〜する。
「そぉ〜 みぃみぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」
ヴァイオリンのとろけるフレーズが奏でられると、恍惚としてしまう。ドン・ファンに言い寄る女性の旋律なのだろう。ここは、さすがにカラヤンだけあって、も〜アカンっ。というほど甘美で陶酔的だ。
ヴァイオリンのソロや、ヴィオラとチェロの音色が、すごく良くって、レガートのかかったフレーズの綺麗なこと。
でも、これを遮るように、ドン・ファンの第2主題が、ホルンで鳴らされる。

「らぁ〜らぁ〜〜  そふぁ〜みそふぁみ〜ふぁみしれ〜 ふぁみ〜しれ〜」 
解説によると、これは、女を遮る主題らしんだが、う〜ん。
カラヤン盤だと、愛をありがたく、大いに受け入れますって。感じに聞こえるんだがなあ。(笑)
でも、この主題は、どうやらこのイメージとは正反対らしい。
ここらあたりが、ニコラス・レーナウさんという詩人が描いた「ドン・ファン」のイメージらしいのだが。
モーツァルトとは違って、ヘソマガリのR・シュトラウスでは、僕の求めている愛とは違う〜っ。ホントの愛が欲しい〜と叫ぶ、ドン・ファンらしい。
真実の愛を求める。そんな贅沢な葛藤を描いているとのことだが、それにしては、あまりにもカラヤン盤は甘美すぎて〜 真摯さが伝わってこないっ。にわかには、この考えには賛同しかねる。また、信じられないところがあるのだが、まあ〜 ドン・ファンとカラヤンだからねえ。まあ。こんな人もいるかな。

約17分前後の楽曲なのだが、いろんなフレーズが絡まり、ストーリーが凝縮されて、ぎっしり詰まっている。なにせ快速に走る楽曲なので、なかなか耳が各フレーズに追いつかず 。
主題をとらまえ、解説書を読みながら、かなり聞き込まないとダメ。
各パートの旋律を、耳に馴染ませ、イメージできるまで、何度か繰り返さないと〜 
う〜ん。これは、何も、R・シュトラウスの「ドン・ファン」だけではないが。
まあ。素人なりに聴いてて、快楽的に享受するには、カラヤン盤は、すこぶる良い演奏だと思う。

録音状態もバッチリ、ティンパニーと金管が、ホールの奥から聞こえてくるので、かなり立体的に聞こえる。それに、ソロのテクが抜群だと思う。
でも、「ドン・ファン」のどこに、焦点をあてているか。指揮者によって、アプローチの仕方が、違うため、この違いを耳にしていくと、面白いのかもしれない。
またその違いが、美意識や表現、生き方の違いに通じるのかもしれないと思う。
カラヤン盤は、主張の強い1枚で、ある極の頂点であるように思うので、また聴きたくなる1枚であるが、こればかり聴いていると、麻痺してしまうし。 困った1枚である。

ショルティ シカゴ交響楽団 1973年
Georg Solti
Chicago Symphony Orchestra

   

録音状態は、すこぶる良い。70年代の録音とは思えないほど、ダイナミックレンジで、柔らかく、残響もほどよく広がり、別の空間に放り出されような浮遊感、陶酔感すら覚える。
カップリングは下記のとおり。

ショルティ盤は、2枚組BOXになっていて、英雄の生涯、ツァラ、ドン・ファン、ティル、アルプス交響曲が収録されている。なんとも、お得な感じがする。

1 交響詩「英雄の生涯」 ウィーン・フィル キュッヘル 1977年
2 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 シカゴ交響楽団 メイガード 1975年
3 交響詩「ドン・ファン」 シカゴ交響楽団 1973年
4 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 シカゴ交響楽団 1975年
5 「アルプス交響曲」 バイエルン放送交響楽団 1979年

ここでご紹介する「ドン・ファン」は、冒頭から、いっきに走っていく超快速バージョンである。
よくまあ〜 こんなに速く演奏できるなあ〜と感心しちゃうぐらい、サクサク、テンポをあげてタタタ タンっ。と小気味よくティンパニーが入ってくる。
「どっど ふぁ〜 そっら〜 ふぁられ〜 しっふぁ〜らしどぉ〜 どれみっ そ〜ふぁ」
「どぉ〜っ そっど みぃ〜 タタ タンっ」
まあ、この出だしのスカッとした爽快な流れは、凄い。
他盤でも感じることだが、重たくならずに、一気呵成に流れてくるところが面白い。スポーツカーですなあ。これは、やっぱ。リズミカルで弾む、弾む。
録音状態も、とても良く、スイスイ流れていくのだが、硬質感がありながら煌めき度も高く、クールではあるが完全流線型である。ホント、何度聴いても、録音状態がすこぶる良い。
思わず、これ70年代でしょ。と、再度確認してしまった。う〜ん。すごいっ。この音響だけで、耳がピクピク立つし、ぐい〜っと引きこまれて、鷲づかみにされる。

それに、ソロ・ヴァイオリンが流れてくるフレーズに入ると、いっきにゆったりとしたテンポになって。
「そっ みぃ〜 ふぁみれらし そっ みっふぁみれ らしどぉ〜」
「そっ みぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」というフレーズにさしかかってくると、宇宙の神秘のような、水星にでも飛んでいってしまったような感覚になる。

いやー こりゃ、宇宙に放り出されて、無重力世界に放出されて〜
宇宙遊泳を楽しんでいるかのような浮遊感が出るのだ。ヴァイオリンのフレーズの柔らかくて硬質な感覚は、魅力的で、魅惑的で〜 木管のフレーズなんぞ、いや〜 巧すぎっ。
メチャメチャ オーボエの音色、クラリネットの音色には、うっとり〜
硬質感のあるオケのなかで、よく埋もれずに、とろり感を出してきてくれるなぁ。メチャクチャ感謝しちゃう、思わず手をあわせて、ありがと〜って感謝の気持ち湧いてしまうぐらい、やられる〜。

弦の畳みかけるフレーズと、金管の鮮やかで縦横に広がる音のノビ。
速くて、硬くて照りのある音で、上昇線を描かれる線と、縦横無尽に、ノビしろイッパイに、爆発的に広がる空間音楽なのだ。ホント、空間芸術ですね〜 この盤を聴いていると、そう感じる瞬間が多い。

感覚的には、横にも広がっているのだが、フレーズの上がりでは、いっきに上に持って行かれる。
このひっぱり感、誘導していくパワー、音響の広がり感、う〜ん 久々に唸ってしまった。
音響が良いだけでは、これだけの感覚は味わえないと思う。
奥行き感と、横の広がり感が半端ではないのだ。アナログの筈なんですけど〜 ホント、ダイナミックレンジが広い。みごとに広がる、巨大空間なのだ。
また、金管の高い音域でのノビ感と、「うぱぱ ぱぱぱ ぱぁ〜」という広がりのある音の間合いで、巨大空間のなかで、フワフワとしながら〜 泳ぐように遊ばせていただけちゃう感じがする。
「どどど どどど どどどっ〜 パッパパ〜っ」と鳴ってくる金管とティンパニーでは、宇宙遊泳用の命綱が、プチンっと切れました。って感じではあるんですけどね。

とにかく、宇宙遊泳をしているかのような、神秘的で不思議空間の広がる演奏である。
冒頭では、一気呵成のスピードと上昇気流で、まるでロケット発射という感じ。
間合い充分なとろみ感のある演奏では、宇宙に飛び出して、宇宙遊泳を楽しむ。って感じの、浮遊感があり〜 まっこと、ショルティ盤では、不思議な空間を体験できてしまう。

で、第2主題のホルン 「らぁ〜らぁ〜〜  そふぁ〜みそふぁみ〜ふぁみしら〜」
「ふぁみ〜しら〜そふぁみふぁみっれ〜どれふぁらっしど〜」
トライアングルも綺麗に入ってくるし、木管群の柔らかくも主張する音が、たっぷり収録されている。
ゴリゴリ感は少なめで、超重低音志向ではない。
金管の透りも柔らかく、残響もほどよく、いや〜 音響を楽しむには、うってつけっ。
R・シュトラウスの楽曲は、テカテカしてて派手な音楽だ。と思いこんでいたけれど、これだけ柔軟で、弾まれてしまうと、心が勝手にウキウキしちゃって〜
それに、一挙に、別空間にワープするような感覚を与えてくれる盤って、探したって、それほど無いのではないかしらん。と思えちゃう。

まっ そういう意味では、ドン・ファンという人間くさい演奏ではなくって、全く異次元的演奏で、いっきに宇宙的という感じの演奏で〜 すっかり別の楽曲を聴いている感じなので。
どうかな〜って思うんですけど。これはこれで、、、ワタシ的には拍手っ。音響レファレンスにも良い。

ドラティ デトロイト交響楽団 1980年
Dorati Antal
Detroit Symphony Orchestra

録音状態は良い。勢いもあり、内声部の響きも綺麗に入っており、多重的に響く楽しさ、各パートへ振り分けられたフレーズ。
これが楽しめる。
交響詩「ドン・ファン」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、「ツァラトゥストラはかく語りき」

勢いのよいスマートな演奏で、
「・・・ み〜ふぁ〜 そらしっ ふぁっそら〜ど〜 ふぁっそら〜」
「ぱぱっぱ ぱぁ〜」 (ティンパニー タタタ タっン)
「どっどふぁ〜 そっらっ! ふぁられ〜 しふぁ〜 らしど〜」
小気味よい響きで、軽快に出てきて、テンポは速く、スイスイと進む。
ティンパニーも、タタタ タン! 
歯切れも良いし、重量感もあるし、煌びやかで、いろんな音が聞こえてくる。
多重的なのだが、重くならず、シンバル、ティンパニー、低弦が、リズムを締めている。
また、フルートや鉄琴、トライアングルの響きが、みごとに調和して響いている。
これは、すげっ〜 マゼール盤に劣らず、おみごとに別の楽曲を聴いているような、響きが出ている。
すご〜く 綺麗な響きで驚いてしまった。弦のアンサンブルも、みごとに決まっている。

で、歌いっぷりも、たっぷり〜 ヴァイオリンのソロだけでなく、それを支える、他の弦のフレージングも、たっぷりしており、フレーズの膨らませ方が、みごと。
マゼール盤が寒色系なら、ドラティ盤は暖色系。このCDのジャケット写真そのまま〜って感じがする。
多彩な響きを出す弦が、たわわ〜に曲線を描き、そのうねりが木管や金管に、絡みついている。
ジーッという響きがするトライアングルの響きが、ちょっと気になるけれど〜 
テンポの良さと、柔軟性のあるフレーズに、めちゃのせられる。
気持ちよい、のび〜と、トレースのような内声部の響き、フルートとトランペット、クラリネット、バックの弦の響き。各パートのソロが、のびのび〜と奏でていながら勢いもあり。
う〜ん。ふわ〜っとした、まるみのある広がりを感じさせられた。
女性的なフレーズのところでも、緩くなりすぎずに緩くなっている。ドラティさんの演奏は、緊張を強いないところが、好きだ。

ドン・ファンの第2主題のホルン 「らぁ〜らぁ〜〜  そふぁ〜みそふぁみ〜ふぁみしら〜」
「ふぁみ〜しら〜そふぁみふぁみっれ〜どれふぁらっしど〜」 
ここは、遠くからホルンが、まず鳴ってくるのだが、途中で音量が強くなって、また弱くなっている。
柔らかいが芯のある、開放的でちょっぴり男っぽい。低音の金管の重みも適度にあり、また、トランペットの控えめに鳴るところが良い。
また、金管から、フルートと鉄琴、低い弦、主役が変わっていくフレーズの受け渡し、そして響きのバランス。このフレーズの流れの気持ちの良いこと。みごとっ。
まず、勢いが良い。内声部が綺麗に聞こえる。フレーズは、優雅だし品があり、柔らかい。
R・シュトラウスって、メチャ派手で、見栄っ張りで、ご大層な作曲家だと思っていたのだが、このドラティ盤を聴いていると、バンバン、ドンドンだけの旋律でないことがわかる。決して、勢いや迫力だけでなく、多重的、多層的に響くことが・・・ちょっぴり面白いと感じることができる。
で、なおかつ、この楽曲の多重的なところ、そして、各楽器のパートにふりわけられていくフレーズの流れ、これが、ステレオ的に響く楽しさ。う〜ん。私的には、このドラティ盤は、メインのフレーズだけを追いかけるのではなく、各部分を楽しむことを教えてくれた。
で、結構、楽しい楽曲なんだな。ということを教えてくれた貴重な1枚なのだ。
あっ そうそう。で、ドラティ盤のドンファンって、どんなイメージと言われても・・・。
これは、ちょっとイメージが浮かばないのだ。ちょいと、映像的なイメージが浮かんでこないのが欠点と言えば、欠点でございます。

ブロムシュテット サンフランシスコ交響楽団 1988年
Herbert Blomstedt
San Francisco Symphony

録音状態は極めて良い。明るく、爽快で、抜群の豊かな響きがある。演奏は、元気で明るく、清潔な感じのする醤油顔、今風に言うと、草食系の男性、ドン・ファンってところだろうか。
カップリング:「アルプス交響曲」

冒頭より、すごくヌケの良い録音で、煌めく水星のごとく登場っ。
「・・・ み〜ふぁ〜そらしっ」 ぱぱっぱ ぱぁ〜 (ティンパニー タタンっ)
「どっどふぁ〜そら〜 ふぁられ〜しふぁ〜らしど〜」
「どれみっ そ〜ふぁらっそし〜ら らしど〜ど〜みれっら しっ」
「ふぁらど〜 そどみ〜 ど〜そどみっ〜 み〜らどみら〜・・・」
気持ちよいぐらいに、滑るように繋がって音が出てくる。この滑り方が、抜群で、よどみもなく一気に鳴ってくる。変なアクセントもなく、がつがつしたところもなく、これホント滑るように流麗である。
サンフランシスコ響の煌めきのある音色が、とても特徴的で、う〜ん。明るく、艶ありすぎかな。と思う。
個人的には、ブロムシュテット盤だと、87年のシュターツカペレ・ドレスデンとの録音が好きである。
なんとも、ふくよかで、芳醇な響きを持つカペレの音が、なんとも絶品で〜
これに勝るものは無いってな具合なのだ。タカラモノである。
でも、このブロムシュテットさんのサンフランシスコ響との録音は、基本的になアプローチは、おそらく変わらないのだろうが、オケの音色が、まーったく違ってしまっている。
悲しいけれど、これは仕方ない・・・。
で、このサンフランシスコ響との録音は、軽快で爽快、柑橘系の香りがするドン・ファンである。
ブロムシュテットさんのように、ベジタリアンまではいかないけれど、今風に言えば、草食系のイケメン風ドン・ファンなのだ。まあ。身のこなしがスマートで、女には溺れない。
しっかり、几帳面に、丁寧に、繊細に演奏されており、細やかな音もないがしろにせず、綺麗に響き渡っている。細部まで見通しも良く、そして心地良い。
ただ〜 欲を言えば、もうちょっと色気が欲しい。ねっちり、ねっとり感も欲しいかなって思ってしまう。
ちょっと淡泊なのだ。特に、ヴァイオリンのソロには、色気は無い。
(↑ あ〜 また、無いモノねだりをしてしまった。色気なら、他の盤に求めましょう。ねちっこい、ゴテゴテ盤は他にあるんだから。)

ブロムシュテット盤は、金管のまろやかさ、低弦の響きの豊かさ、ホルンの音色だけでも聞き惚れる。
で、低音から中音域、高音域まで、めっちゃバランス良く、そして綺麗に録音されている。
ヴァイオリンの音色は、ちょいと薄口で、艶がないのが欠点なのだが・・・
それを補ってあまりある低弦の響き、ティンパニーの切れ、金管パワーがある。それに木管も・・・。
録音状態のことばっかり言ってしまったが、明るくて元気で、ハキハキと明解に受け答えできる、爽やかな青年ドン・ファンってイメージになるかと思う。

テンシュテット ロンドン・フィル 1989年
Klaus Tennstedt
London Philharmonic Orchestra

録音状態は、 まずまずだが、カサカサ感は否めない。
カップリング:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、「4つの最後の歌」

スピード感がある。せわしないほどに〜 ちょっと前のめり気味に始まる。
「どっどふぁ〜そら〜ふぁられ〜 しふぁ〜らしど〜」
で、スピードを落とさず、「たった〜 たらら らららっ」と序奏部分まで一気に走る。
この楽曲の冒頭は、速いんだ。熱いし、めちゃめちゃ 恋に落ちるスピードが速いというか。
あわてん坊というか。せっかちというか。神経質というか、テンションが、あがってるのがよく解る。

さすがに、ヴァイオリン・ソロの女性の主題に至ると、かなりテンポが落ちて、とろり〜。
こりゃ、参るねえ。甘美だ。
ただ、あまり録音状態が良くなく、美音ではないので損している感じがする。
もう少し、ティンパニーに力があって、低音が充分に響いていたら重量感が増していたのだろうが、腰高で、あわてん坊的に滑っていくので、軽い感じがしてしまう。
激しくスピードに乗っているところと、とろり〜と女性の誘惑されているのか、その差が大きすぎて。
私的には、ちょっと、ついていきづらい。
ドン・ファンのテーマが出てくるところだけが、なんとなく私の耳にはピントが合ってしまって。
これは、私の修業が足らないのだが・・・。

テンシュテット盤を聴いていると、曲が進むにつれて、段々と、主人公が年齢を重ね、ついには、死目前のおじいちゃんになっていくような気がするのだ。
なんだか悲しくなってしまう。
勝手に、テンシュテットさんの人生に被らせてるんだと思うんだが・・・。演奏自体は、スピード感あるれる出だし、後半は、枯れて来る心境で、その差が大きい。
人生を一気に駆け抜けた感じがして、聴いたあとには虚脱感に襲われる。

プレヴィン ウィーン・フィル 1990年
Andre Previn
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)



録音状態は良い。少しボリュームをあげて聴いた方が、迫力が出てくる。演奏はまろやかに響き、ソロ部分も丁寧に描かれている。
アクの強い「ドン・ファン」ではなく、紳士的で優しい。
カップリング:交響詩「ドン・キホーテ」

冒頭、華麗な滑り出し。テンポが速いし、口調もきっぱりとして、かなりリズミカルに走っていく。
「・・・ み〜ふぁ〜そらしっ ふぁっそら〜ど〜 ふぁっそら〜」
ぱぱっぱ ぱぁ〜 (ティンパニー タタタ タっン)
「どっどふぁ〜 そっらっ! ふぁられ〜 しふぁ〜 らしど〜」
リズムの刻みが、はっきりしていて、ティンパニーの音も良く聞こえてくる。
音としては、ふんわり気味なのだが、小気味よくテンポを刻まれて走っていく。
「らっらぁ〜 しらそれみふぁ〜  ん〜 たらぁ〜らっん」
カラヤン盤は、豪快で華麗だが、プレヴィン盤では、もう少し軽め。
ガンガン鳴るタイプではないので、派手さは少ないが、爽快で、音の感触が、幾分ふわ〜っとしている。
プレヴィン盤は、冒頭部分は、少し軽いかなぁ〜と思ったのだが、これが後半、ぐい〜っとパワーが伸びるタイプである。
のびの良さがあって、録音の奥行きがある。「らっら〜そらそ ふぁ〜らしど」と、よく、波打っている。
ヴァイオリン・ソロは、ライナー・キュッヒルさん。
綺麗な高音で、「れどし れみそ〜ふぁ ら〜 しらそ しどれ みふぁ〜」の声が、通っている。
弦の柔らかい「たらっら〜 ららら〜 らっらら〜」というフレーズには、ホントやられてしまう。
「そぉ〜 みぃみぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」 
ウィーン・フィルの艶やかで、まろやかなトーンが全体に広がっている。
ティンパニーの響きの大きさが、とても良い加減で、弦の「そみれっ〜 そみれっ〜」の間に、ボンボンと間に鳴っている。
ソロも間に入ってくるし。トータルバランスの難しい楽曲なので、聞き分ける方も大変である。
プレヴィン盤は、まろやかに響いて、ソフトではあるが、木管類(オーボエ クラリネット フルート)の響きがよく分離され、引き継がれて、ワンフレーズとして繋がっているのが、よくわかる。

丁寧に描かれた「ドン・ファン」だと思う。女性の描き方が精緻というか。よく、この女性が登場するところで、私には緊張感が無くなって弛緩しちゃうのだが、思わず、惚れ惚れと聞いてしまった。
特に、ホルンの音色が良い。「らぁ〜らぁ〜〜 そふぁ〜みそふぁみ〜ふぁみしれ〜」 
鉄琴の音も、よく聞こえるし、ハープの音色も・・・ 埋もれて聞こえてこないっていう盤もあるが、やっぱ、金管の音色も良いことと、ティンパニーの音がよく聞こえる 。
全体が、ふんわりしているものの、引き締まって聞こえてくる。
楽章最後の直前では、大迫力になっている。盛り上げるところが、よーく計算された演奏だ。

プレヴィン盤の「ドン・ファン」は、柔らかく、人当たりのソフトな男性のようだ。
色魔風の嫌らしさは出ていないし、激情型でもない。
女性がどうのこうのと、執拗に入れあげた男性の姿は出てこないし、女性に挫折している風でもない。
生々しい「ドン・ファン」ではなく、いたって紳士風。ってわけで、凄みのある演奏ではない。
さりげなく素直に、各ソロ部分も分離されて良く聞きやすく、ふつーの恋愛風という感じで、聴きたい時は良いのではないだろうか。えっ それじゃー「ドン・ファン」ではないって? 
う〜ん まあ。そうなるけれど・・・。

シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン 1991年
Giuseppe Sinopoli
Sächsische Staatskapelle Dresden
(Staatskapelle Dresden)

録音状態は極めて良い。雄大、壮大な「ドン・ファン」で、ゆったりと歌いあげる。これじゃー人間じゃないような気がするんだけど。
ヴァイオリン・ソロ:カイ・フォーグラー
カップリング:交響詩「英雄の生涯」

「・・・ み〜ふぁ〜 そらしっ ふぁっそら〜ど〜 ふぁっそら〜」
「ぱぱっぱ ぱぁ〜 (ティンパニー タタタ タっン)」
「どっどふぁ〜 そっらっ! ふぁられ〜 しふぁ〜 らしど〜」
かなりまとまりの良い、録音状態の極めて良い演奏である。優美 で華麗で、滑り出しもスムーズで、テンポも速いものの、しっかりタメもあり、しなやかにパワフルに描かれている。
パワフルさと、しなやかで優美さを兼ね備えた演奏は、なかなか見つからないのだが、シノーポリは良く歌っている。歌いながらも、ノビがあり、音の響きも良い。
残響も頃合いに入っており、のびるところは、伸びきっているほどだ。
「らっらぁ〜 しらそ れみふぁ〜  ん〜 たらぁ〜らっん」
木管の音の響きも良いし、弦の弾む音もあり、コントラバスも適度に響いている。
ヴァイオリンのソロ の高音域は、華麗さというよりも、ちょっぴり硬さを感じるが、しかし、このテンポにまいってしまう。「そ みっみ〜 ふぁみれ らしど〜」 「ど〜れみ〜 そみっみ〜ふぁみれ らしど〜」
「そぉ〜 みぃみぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」
たいていどの盤も、官能的なのだが、シノーポリ盤は、優美なテンポが頃合いである。
私的には、う〜ん。やられてしまった。ハープの音色にうっとりしてしまうし、大きな曲線を描いていることと、内声部の明瞭さ、歌いっぷりの豪華さ。
後半の木管の響きと、リズム感、テンポのゆるやかさ、緊張感よりも懐の大きさを感じさせる。
テンポが、ゆったりしているところ。この緩やかさが、良い方向に作用している。
結構、意外なのだ。緊張感が無くなり、冒頭だけが印象に残る盤が多いなか、へえ〜 ぴ〜んと張りつめたものがないくせに、なぜ、緩くならないのだろう。この木管が、抜群に巧いんだと思うが。
ホルンの「らぁ〜らぁ〜〜 そふぁ〜みそふぁみ〜ふぁみしれ〜」と歌うところも、巧いが、後半のメリハリのついたティンパニーの響きが効果的。で、頃合いの大きさで、よく響いている。

シノーポリ盤は、たっぷりとした奥行き感があることと、のびの良さと歌い方が、イチバン良いのではないかと思う。ガチガチにならず、ゆったり、おおらかに歌いあげる姿勢が好ましい。懐に余裕がある。
ひとことで言うと、大きなドラマが描かれているのだ。最後の盛り上げなんぞ、スケールが大きいっ。
大きすぎて、びっくりするほどである。
雄大で壮大な、まるで山を見上げているような雰囲気が漂う。
そして、なによりも、録音状態が良いこと。これは点数が高い。
そして、たっぷりとした鳴り方、器の大きさ。おおらかさを感じさせる1枚である。まるで、オペラだねえ。
まるで、パヴァロッティさんのように、でかくて、大声で歌う、男前のドン・ファンである。
繰り返し聞くと、ちょっと笑えてしまうのだが、いやいや、なかなか〜 ここまで壮大に歌いあげてくれる、ドン・ファンってないのだ。いささか、誇大妄想的ではあるが、それが、シノーポリのドン・ファンなのだと思う。

ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 2000年
David Zinman
Tonhalle Orchester Zürich
(Zurich Tonhalle Orchestra)



録音状態はまずまず。最近の録音のわりには籠もりがち。
見通しのよい演奏で、埋もれがちな木管や弦の細やかな動きがわかる。
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冒頭のフレーズは、細いが鋭く、テンポの良い演奏だ。
重量感がないことから、軽めの音に聞こえてしまうが、金管の明るくて、テンポのよい、広がりのある音色と、シンバルの鋭い響きが、ぼわ〜っとしがちな録音を締めている。
幾分ヴァイオリンの擦れた音が気になるが、ホント、切れは抜群。

オケの人数が少ないのかと思うほど、内声部、特に木管などのフレーズが良く聞こえており、見通しのよい演奏になっている。
普段、他の盤だと埋もれがちなフレーズや楽器の音色が、次々に浮かび上がってくる。へえ〜 こんな風に演奏されていたのかと驚くほど、弦の小気味よいフレーズや木管の短いフレーズなどが、耳に届けられる。
こりゃ〜面白い。
ごて〜っとした演奏に鳴らされている耳には、思いがけないご馳走だ。
一風変わったバランス感覚というか、普段、ごてごて、どっぷり型に馴れていると、多少違和感があるものの、へえ〜っと、思わず耳を澄ませて聴きたくなってしまうのだ。
私は、ジンマンさんの演奏に、ちょっと偏見を持っていたので、驚きのマナコになっていた。
その癖、甘美なフレーズになると、う〜ん。これまた、とろり〜とした、ぼわ〜っとした録音にも助けられた形で、陶酔的な雰囲気になっている。ほんわかした、まどろみ感覚にとらわれる。
フレーズの歌い方も、なかなかのモノで、特に、金管の音色が暖かく、ラビリンス状態にもなる。
金管なんぞ、ひえ〜 こりゃ、次、スクリャービンに挑戦してよぉ。と言いたくなってしまう。

「そぉ〜 みぃみぃ〜ふぁみれ らしどぉ〜」と、ティンパニーが鳴り、忙しく高揚してくるところは、う〜ん。
実は、いろんな楽器がご活躍のようで、なかなかに聴き応えあり。スピード感や勢いに押されて、単純に聴いてしまっていた楽曲なので、構成が、面白く見えてくるのは嬉しい。
へえ〜こんなところで、フルートが鳴っていたのか。と感心したり、意外と面白い。
でも、結構、この演奏、大きな音量で、鳴っているんだよなあ。きっと〜
凄い音量で鳴っている筈なのだが、録音によるのか、さほど立体的にも響いてこないし、奥行きもあるようで、無いようで〜 クリアでもないし、イマイチ録音で損している。

R・シュトラウスの楽曲のなかでも、この重量感のなさでは太刀打ちできない曲もあるだろうが、ドン・ファン程度の短めの楽曲だと、このジンマン盤は、良いのではないかと思う。
大編成の楽曲ではあるが、ジンマンさんの演奏だと、室内楽とまではいかないまでも、ご大層な楽曲には、聞こえてこない。すっきりとした構成の楽曲に聞こえる。
そして、いつも暑苦しい厚化粧した演奏、大風呂敷を広げて、大見得を切るタイプの演奏に慣らされていたんだな〜っと、感じさせられる。まあ、そんな感じで、楽曲の意外な一面を垣間見られる、面白い演奏ではないかと思う。
1960年 クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 EMI ★★★
1964年 マゼール ウィーン・フィル ★★★
1970年 ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン EMI ★★★★
1972年 カラヤン ベルリン・フィル ★★★★
1973年 ショルティ シカゴ交響楽団 ★★★★★
1980年 ドラティ デトロイト交響楽団 ★★★★★
1983年 カラヤン ベルリン・フィル  
1986年 テンシュテット ロンドン交響楽団 EMI ★★
1987年 ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン De  
1988年 ブロムシュテット サンフランシスコ交響楽団 L ★★★★
1990年 プレヴィン ウィーン・フィル Telarc ★★★★
1991年 シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン ★★★★★
2000年 ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 Arte Nova ★★★
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