「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

R・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」
R. Strauss: Ein Heldenleben


R・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」(作品40)は、7作ある交響詩のラストの作品で、1898年に作曲されています。。R・シュトラウスは、1864年生まれなので35歳頃の作品となります。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、演奏するには105名の4管編成のオケが必要で、オーケストレーションが頂点に達し技術的にも難しい曲だそうです。6つの部分から構成されていますが、実際には切れめなく演奏されます。

1 Der Held (英雄)
前奏はなく、いきなり低弦とホルンの強奏で雄渾な英雄のテーマが提示されます。これは、英雄の情熱・行動力を表す重要なテーマで、英雄のテーマは力を増していき、その頂点で突如休止します。

2 Des Helden Widersacher (英雄の敵)
スケルツォに相当し、木管群により、嘲笑するような動機が提示されます。これは、シュトラウスに対する先輩や評論家などの非難を表し、敵の非難は勢いを増し、英雄は一時落胆するが、やがて力強く再起するものです。

3 Des Helden Gefährtin (英雄の伴侶)
緩徐楽章に相当し、独奏ヴァイオリンが伴侶のテーマを提示します。英雄は、次第に彼女に心惹かれ、伴侶のテーマも英雄に惹かれたり、英雄を拒否するようなそぶりを見せたりするものの、壮大な愛の情景が描かれます。
敵のテーマが回帰して英雄を嘲笑しますが、愛を得た英雄は動じないというもの。

4 Des Helden Walstatt (英雄の戦場)
展開部に相当し、舞台裏からトランペットが鳴り響き、敵との戦いが始まります。敵を表す金管群・木管群は、舌鋒鋭く英雄を非難しますが、英雄(低弦とホルン)は雄々しく戦い、伴侶である(ヴァイオリン)も英雄を支えます。
これまでのテーマ、動機が登場して展開され、ティンパニ、バスドラム等の乱打がすさまじい戦いのシーンを描きます。英雄の自信に満ちた行動に敵は圧倒され、華々しい勝利が歌いあげられます。英雄と伴侶は、手を携えて登場します。

5 Des Helden Friedenswerke (英雄の業績)
再現部とコーダの前半部分に相当するのので、ホルンにより交響詩「ドン・ファン」のテーマが、弦により交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」のテーマが奏され、引き続いて「死と変容」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 「マクベス」「ドン・キホーテ」など、それまでのシュトラウスの作品が回想されます。

6 Des Helden Weltflucht und Vollendung der Wissenschaft (英雄の隠遁と完成)
イングリッシュホルンによる牧童の笛が鳴り響き、田園の情景が描かれます。「ドン・キホーテ」終曲のテーマが引用されて年老いた英雄の諦念が表されるもので、田舎に隠棲し、自己の内部に沈潜し、年老いた伴侶に看取られながら、静かに世を去るというものです。

まあ、40歳にもならないのに、よくまあ〜これだけ壮大に、英雄になぞらえ、人生を振り返ることまでを含めて描けるものだと、呆れつつも感心してしまいます。ご本人は、これ以降も元気で、1949年(85歳)まで長生きされています。
これだけ壮大だと、良い音響で、派手に鳴らしてもらわないと〜 不満が残るという楽曲になるでしょうか。

メータ ロサンゼルス・フィル 1968年
Zubin Mehta
Los Angeles Philharmonic Orchestra
ヴァイオリン:デイヴッド・フリーシナ David Frisina



録音状態は良い。リマスタリング盤。ヌケはさほど良くないが、たっぷりとした低音が鳴り響く。映画館の最前列で、SFX映画でも見ているかのような迫力がある。
カップリング:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、交響詩「英雄の生涯」

1 英雄
冒頭、低弦とホルンの「どぉ〜 どふぁらどれ〜 ふぁどぉ〜 らそふぁら」
「どふぁ〜 み〜れ どれらそふぁみ〜 み〜れど らそふぁ〜」 
この1文のフレーズの迫力だけでも、結構ゴツイ描き方をしてくる。
それに、68年の録音とは思えないほど、クリアだ。かぶりつきで最前列で映画を見ているような感じ。
迸るように鮮烈で、ぶっとい音が厚く、ガンっと出てくる。
そのくせ、旋律は柔らかいんだよなあ。これが不思議なところで、メータらしいところだ。
弦の歌わせ方が、しなやかで、金管の分厚いサウンドから、するする〜っと、弦の頭が出てくるのだ。
低弦の響きのなかから、「らっらそ〜 ふぁっふぁみ〜 みふぁそ そふぁみれ どっどし〜」
「れみふぁ〜 そ らしど〜れ〜 みっふぁそ〜」 はあ、巧いよなあ。
まるで競馬レースのゴール寸前を見ているようで。しなやかに、足が伸びてくるのだ。
単に、ごついって感じの演奏ではなく、ブラス部分でも低い音と、高い音。弦のなかでも、低い音と高い音と、しっかり整理されていて、役割分担がしっかりできているような感じがする。
アクセント的に音が入っているところ、旋律として歌う音では、かなり違うように思う。

2 英雄の敵
木管の短いフレーズが、みふぁそ らっそふぁっみっ・・・パパパ パッパッパッパッ・・・
ミュート付きのトランペットが、ファッっ。ボコボコ、パコパコ、いろんな金管・木管が、英雄の悪口や噂を言っている感じで、ふん。口さがのないやつ〜という感じだが、肝心の英雄は憂鬱さが漂っている。
ことさらに歯切れ良くやっているという感じはしない。

3 英雄の伴侶
「ふぁみれど どれどら らっそふぁみ〜 らっそふぁみ〜」
「れ〜どし〜らしどし らそふぁみ〜」 ヴァイオリン・ソロが英雄の妻役で、お慰めしちゃうと、英雄クンは俄然、おとなしくなっていく。ソロのヴァイオリンに、あまり艶はないのが寂しいけれど。

4 英雄の戦場
バンダのトランペットが、奥からファンファーレを出している。
「ど〜 みそ〜みふぁれみ みふぁみれみ〜」和音の美しさと、低弦のたっぷりとした豊穣な音。
この掛け合いが面白い場面である。和音の崩れた音が、低弦のゴンゴンとした響きがすごくする。
「そふぁみ〜そふぁみ〜そふぁみ〜」
小太鼓が入ってきて、木管が口々に吹かれて、低弦と金管が合わさって〜するり〜とヴァイオリンのフレーズに変わる。この入れ替わりが面白いのだが、ごっつい分厚い低弦とヴァイオリンのフレーズの絡め方が、シュトラウスの面白くも難解なところ。 一聴くするとバラバラなんだけど、英雄のフレーズでまとめてくるんだよなあ。ガッチャ ガチャ ガチャ〜 みっふぁれ〜どっれら〜 あらゆる楽器が、テンデバラバラ風なのだが、チューバのド迫力低音が宇宙的に響く。はあ。この楽章は、 さすがに聞き疲れちゃうが、4管の馬力ここにあり〜という感じで、英雄に屈服してしまう。

5 英雄の業績(英雄の平和時の仕事)
「らぁ〜 そ〜ふぁ〜み〜 み〜れし〜」「しれふぁど〜ふぁっみれど〜」晴れやかなフレーズが満載で、ハープまで入ってきて、華麗に奏でられ偉業達成って感じだ。
ここには、「ドン・ファン」や「ドン・キホーテ」「マクベス」「ティル」などの主題が、ゴッタニになって入っているというが、、、あまりR・シュトラウスを聞き込んでいないため解らない。これが分解できれば、もっと楽しめるのだろうが。 いずれにしても、それぞれの動機、テーマが、わかっていないと聞きづらい楽曲である。
う〜ん。昔から聞いているわりには、聞き込んでいないため(分解して)、よくわからない。
う〜ん。これじゃダメじゃん。さすがに、ドン・ファンは解ったけど〜
メータは、若くてエネルギッシュで、たっぷりと演奏してくれている。若い男の、雄叫び風っ。うふぁふぁ〜

6 英雄の引退と成就(隠遁と完成)
弱音で低弦が蠢いており、ゲンダイオンガクに近く感じる。
「それそ〜 らふぁ〜そ」「それそ〜 らふぁそぉ〜」「それそ〜 らみら〜」
「ど そどみそ〜 れみそどど〜 ど〜れ みふぁふぁそ〜 みふぁそ らそみそ ふぁれっみれ〜」
「どしど れみそ ふぁみふぁ どっしれ〜」
どっかで聴いたことのあるような和音だなあ。と思いながら、ヴァイオリンの甘美なフレーズに巻き込まれる。まるで、星空を見ているようなチンクルチンクル・・・状態に。
バンダで、「らふぁれ〜 それそぉ〜」 う〜 どっかで聴いたテーマ。
激しい下降線を描きつつ、3つの和音が逞しく奏でられる。「どふぁら〜 みそし〜 らみっど〜」
この分散和音の奏で方と音量は、やっぱり圧巻っ。よく低音が響くなあと感心してしまうほど、重低音が入っている。堂々としたモノで、悲しみや諦め、諦念というような気配は、あまり感じない。
このあたりは、指揮者の年齢にも重なってくると思う。甘美な面の方が勝っているんだよね。ふふっ。
まだまだ、若いっデス。

全体的には、60年代後半の録音とは、およそ思えない低音が入っており、聴き応えは今でも有る。
若くしなやかに歌い、溌剌としている。幾重にも旋律が重なり、フレーズの役割を知っていないダメな、とてもムズカシイ楽曲であるが、難解なオーケストレーションを、メータ盤は、わりと解りやすく整理していたようには思う。 まっ それでも、ワタシ的には聞き疲れちゃうんですけどねっ。

マゼール指揮 クリーヴランド管弦楽団 1977年
Lorin Maazel
The Cleveland Orchestra
ヴァイオリン:ダニエル・マジェスケ



録音状態は極めて良い。77年の録音とは思えないほど。
緻密だが窮屈ではなく、ふくよかでホールトーンのある、とっても瑞々しい、潤いのある演奏だ。後年1996年、バイエルン放送交響楽団との録音がある。
2枚組BOX
1 英雄
まず、冒頭から流れてくる低弦の響きからして録音状態が良いので、とっても驚いてしまった。
「ふぁぁ〜 どふぁらどれ〜 ふぁどぉ〜 らそふぁれらぁ〜」
「どふぁ〜み れぇ〜 どれらそふぁみ〜 みぃ〜れど どぉ〜らそふぁ〜・・・」 
豊かなホールトーンがあり、生の演奏会を聴いているような雰囲気があり、メチャクチャ瑞々しいっ。

両翼スタイルで、めいっぱい音が鳴っていても、まったくうるさくならない。低弦のキレ、ヴァイオリンのキレも抜群で、音が震えているレアな雰囲気があり、77年の録音とは、およそ思えないぐらい〜
また、マゼール盤とは、ちょっと信じがたいかも。もっと派手にジャンジャン鳴ってくるのかと思いきや、瑞々しい音で、ふくよかに響いている。これはすごいっと、まず、冒頭のフレーズだけで、唸るように絶賛してしまいそうだ。
低音の響きとホルンの柔らかい音色のなかで、ヴァイオリンが分散和音を奏でられながら、リズミカルに弾んで行く。
木管の聞こえも良いし、金管のパッセージも、細部にわたって見通しも良い。
低弦がまろやかに後ろの方から聞こえてくるという感じで、強奏の場面でも、ふくよかに響いて〜 タイトで、せまっくるしく、平面的っというモノではない。なかなかに立体的に響いている。 

2 英雄の敵
哄笑されているという木管も、おおっ〜 みんな聞こえてくるやん。という感じで良く聞こえる。
が、哄笑・・・という感じではなく、ここは英雄を嘲笑しているような、いひひぃ〜というような、悪意で、揶揄したモノではなく、鳥のさえずりのように、品があって、まろやかで穏やかさを感じる。
なんだか意外だよねえ。これってホントにマゼール盤? 

3 英雄の伴侶
ソロヴァイオリンは美音で、品良く、キュートにオケと呼応する。官能的な演奏もあるのだが、この盤では、爽やかで艶もあり、スマートでテクニシャンだな〜と思いつつも、嫌みなく耳が吸い付けられる。
ハープの音色も、さらーっと入ってくるし、クラリネットの甘いフレージングも、ヴァイオリンに絡んできて美しい。ホント、綺麗にハープが、これだけ聞こえてくるとは〜嬉しい限りだ。この楽章は8分4秒のクレジットがあるのだが、たっぷり歌って、緊張感を適度に維持して飽きさせない。

4 英雄の戦場
舞台裏から聞こえてくる美しいトランペットのファンファーレ・・・。
「どぉ〜 みぃ〜 みふぁみふぁみどみ〜 みふぁみふぁみど みふぁみふぁみど みふぁみふぁみ そ〜」
「そそらそ ら〜 そそらそらそら〜 しどぉ〜」 
バンダの効果が、いっそう際立っており、すごく精緻でm遠近感があって美しいハーモニーを聴かせてくれる。
また、戦場っていうだけであって、小太鼓が激しく鳴らされているのだが、とっても軽快で甘美であり、勢いがあるくせに密度が高い。これだけの音を綺麗に入れてくるなんて〜すごすぎ。
もう少し低い音が、ごっつく厚めに入っていても良いかな〜と思っていたのだが、小太鼓で、れっれっ れっれっ れれれ・・・っというところのリズム感は、驚異的な刻みで、まるでロックみたいで驚かされる。
うわっ なんていうノリ感なんだろう。フルートも尻上がりに鋭く吹かれているし、刻み方はシャープなので、ここだけでも耳のご馳走状態になっている。
めまぐるしく拍子は変わるし〜 超難しい楽章を精緻にこなしていく。
すごく精緻なのこと強いパワーと、推進力で圧倒された。

5 英雄の業績
英雄の主題が、カラフルに金管付きで歌われ、次々と交響詩の断片が表れる。
ドンファンに、ツァラ、死と変容、ドンキホーテ、マクベス、ティル、楽劇「グラントラム」、歌曲の「たそがれの夢」が登場するのだが、ワタシの知らない曲が・・・ また、先日聴いた、交響詩マクベスの、どの部分が登場するのだろう〜 と、一応聴いてみたのだが、えへっ わからないやん。(この前に聴いたところだったのに・・・汗)

6 英雄の隠遁と完成
残響を残しながら、鋭く弦が奏でられ、ティンパニーが静かに叩かれる。
鼻にかかったようなコーラングレの響きがもの悲しく、ふぁれし〜 そみどぉ〜 どそどぉ〜って感じで響く。
チェロとヴァイオリンの少し甘いフレージングが、安寧を感じさせ、とても穏やかな斉唱のような歌い方になって、響きが広がって行く。最後にはオペラの終わりのようで〜 うっとり、ほれぼれ。
いや〜 ものすごく、のめり込んで聴いちゃいました。この曲、こんなに良かったっけ。
いろんな要素をパッキングされて、おせち料理のように詰め込まれ、美音で、精緻で、勢いがあって、高級感まであって〜 良かったです。この多彩な楽曲だったとは〜 マゼールさんの棒さばきの才能を見直しちゃいました。感服っ。
ちなみに〜 クリーヴランド管は、77年マゼール盤の次に、84年のアシュケナージ盤が登場するが、CDジャケットに甲冑が登場する。全身から、左手だけになっているのだが〜 これはどういう意味っ? なんだか意味深なんだけど、踏襲されているのだろうか(笑)

アシュケナージ クリーヴランド管弦楽団 1984年
Vladimir Ashkenazy
Cleveland Orchestra
ヴァイオリン:ダニエル・マジェスケ



録音状態は良い。瑞々しく端正だが、戦場になると、メッチャ派手な音圧で豪快に攻めまくりで、ちょっと唖然とするほど。
← R・シュトラウス管弦楽曲集 4枚組BOX
カップリングは、
CD1 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、交響的幻想曲「イタリアより」
CD2 交響詩「ドン・ファン」、交響詩「ドン・キホーテ」、7つのヴェールの踊り
CD3 交響詩「英雄の生涯」、交響詩「死と変容」
CD4 アルプス交響曲、交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

録音年 ツァラ:1988年、イタリアより:1990年、ドンファン:1990年
ドンキホーテ:1985年、7つのヴェール:1985年、英雄:1984年
死と変容:1989年、アルプス:1988年、ティル:1988年
1 英雄
まず、インパクトのあるジャケットで、なんとなく憧れて買った記憶がある。
甲冑の手の癖に、なんか変に女性的な手首と指で〜 中性的で、なよっとしており、英雄の奥さんも甲冑を身につけるのかと思ったモノだ。
今、改めて聴くと、録音状態は良いが、少しボリュームをあげて聴きたい。
冒頭、低弦とホルンの力強いパッセージは、どんよりともせず、明晰で、スピーディでスマートだ。
ダンディだとも言える。
特に、低弦とホルンのフレーズが終わった直後、ヴァイオリンが合わさってくるのだが、この弓の返しが鮮やかで、波打つようなキレがある。
「タララララ ら〜 タララララ ら〜 タララララ ら〜」 
このフレーズでのヴァイオリンの柔らかくもキレのあるのには、ちょっと舌を巻いてしまう。
こりゃ良いわと、冒頭、ものの数秒で、ほほぉ〜 
弦が良いなあ。やっぱり。血しぶきをあげそうなくせに、柔らかくて、弾力があって飛び跳ねてくるような活きの良さを感じる。 そう〜 ジャケット写真のように手首が柔らかそうなのだ。(例えだが〜)
アシュケナージ盤とは、ちょっと想像できないところが、いかにも・・・なのかもしれないけど。
はぁ〜 この「英雄」の最初は、とびっきり良いと思う。
いかにも駿馬という感じで、ワタシ的にはヴァイオリンすごいと思う。

2 英雄の敵
木管群が、意地悪そうな評論家の口々に、しゃかりき喋っている様を描いているシーンで始まる。
「みふぁそ らっそふぁっみっ・・・」 ペコペコ ピチピチ トゥルル パララ〜・・・
勝手気ままに吹かれているのだが、ここの木管群は、ピチピチ新鮮だ。で、クラリネットの「しらし どれど しらし どれふぁど〜」とコロコロ転がっている様が面白い。ダルマさん転んだ〜風情だ。
嫌みなおしゃべりなのだが、ねちっこく鳴らないで機能的。低俗な評論家集団というより、巣の中でツバメが、口を開けてエサをねだっているように可愛い。

3 英雄の伴侶
ソロのヴァイオリンは、楚々としているが艶っぽくもあり、気丈な貴婦人という感じがする。
結構、スマートで機能的だけど、色っぽさもあって才色兼備風。
オケが、この美女にお尻を叩かれて、頑張っちゃう〜という感じがして、ちょっと微笑ましい。
バックが、何度もヴァイオリンのフレーズに急かされて、「ふぁ〜し〜れどし れどしふぁ〜」「そぉ〜 ど〜 みそみふぁ〜ふぁそら〜」「どふぁ〜 ど〜 ど〜」「ど〜ど〜 そどみ〜」
「どぉ〜ど そ〜どどれみ〜 そ〜 どどれみっふぁらっそ〜 ど〜」と、モチベーションを段々に高めていくのだが、その描写が面白い。
もちろん楽曲構成が面白いのだが、呼応してくる動きが、ちょっぴりリアルなのだ。
ソロ・ヴァイオリンが機能的で、大きな動物を揺り動かすかのような、くすぐり〜 なだめすかし〜 それに呼応する金管、そして、艶っぽいオケの響きに変わるところにインパクトがある。
流れが、相当に艶っぽく変わるんだよねえ。ハープの波打つグリッサンドも、よく聞こえてくるし、オケ全体の音色までが、変わっていくような楽しさが味わえる。
スマートで、楚々として細身型。ぼったり、たっぷり系の官能美やエロティックではなく、今風である。

4 英雄の戦場
バンダのトランペットは、さすがに、すっぱりと機能的でスマート。トランペットが巧いねえ。
スマートで終始するのかと思ったが、小太鼓が細やかに入ってきて、流れが大きくなり、驚くほどの大音響で奏でてくる。
この小太鼓の細やかなリズムに続いて、重低音が立体的に響く。えっ。凄いっ。ミリタリー調の恐ろしい響きが、メチャリアルで立体的に響いてくる。
えっ この楽器は何、何が響いているんだ? 大太鼓か? ドンドン バンバン、スネアの小気味よいリズム、うは〜 この戦場場面の音響効果は、こりゃ〜すごい。この盛り上がり方は、いったいどうなってるんだろう。まるで戦場じゃん。
やっ〜 すっげえ〜 火薬が、あちこりで爆発して右往左往しているような状態である。
えっ 騎士道の世界じゃーなかったのぉ? ジャケット写真、甲冑だぜ。一騎打ちでしょうが〜 
えっ 違うの。ナポレオンの世界かよぉ。カノン砲が打ち鳴らされて、ひゅぅ〜 ドンっ バンっ。バンっ。
ひぃー なんで、突然に〜こんな馬鹿でかい音圧で迫ってくるの。

5・6 英雄の業績〜英雄の引退と成就
「らぁ〜 そ〜ふぁ〜み〜 み〜れし〜」「しれふぁど〜ふぁっみれど〜」
晴れやかなフレーズが満載で、華麗に奏でられる偉業達成を壮麗に奏でる場面なのだが、スペクタル的な大音響が、まさか、クリーヴランド管から発せられるとは、ちょっと意外だった。
いや〜 ものすごいインパクトありますよ。やっぱり。
セル時代からのアンサンブル重視のオケだと、勝手にイメージしてて、かなりイメージで聴いてますからねえ。それが、ショルティ+シカゴ響顔負けのスペクタルな大音響、録音状態のリアルな演奏で、それも、メッチャ爽快に、スマートに、派手にやってしまうんだもん。
いや、これはやられましたね。冒頭にボリュームをあげて聴いていたものだから、相当な音量で、びっくり。
華やかさの後の終息感も、歌うんですよねえ。
華麗な経歴、パワーあふれる英雄が、堂々と花道を自分で作って引退しちゃうかのような、引き際の鮮やかさ。疲れ果て、やつれて引退じゃーないんですね。
また、途中で投げ出す引退風情でもないし、スマートだけど、決してヤワなヤツでもなさそうです。最後までダンディです。

尻上がりに、録音状態がレアに聞こえてくる。冒頭から、もう少しレベル高い方が、ホントは嬉しいし、その方が、バランスが良いように感じるが〜 どうなってるんでしょね。

シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン 1991年
Giuseppe Sinopoli
Sächsische Staatskapelle Dresden
(Staatskapelle Dresden)
ヴァイオリン:カイ・フォーグラー



録音状態は、極めて良い。スペクタル性を持ちつつ、かなり細部まで聞こえ、それを織りなし息の長いフレーズを作り上げる。う〜ん。耽溺型だけど、ここまで演奏されると、あっぱれ〜 拍手!
カップリング:交響詩 「ドンファン」、「英雄の生涯」

1 英雄
シノーポリ盤は、なんといっても録音の良さが第1にあげられる。
冒頭、低弦とホルンの「ふぁ〜 ふぁらどふぁれ〜 ふぁ〜どぉ〜 らそふぁれら〜」
「どふぁ〜 みぃ〜 れぇ〜 どれっふぁっそふぁみ〜 み〜 れど〜 らそふぁ〜」
シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)の木質系の柔らかい、伸びやかな音の質感が、う〜ん。たまらん。という感じで、奥ゆかしさを持って出てくる。
この冒頭の一節だけで、う〜ん。やられたっ。
オケの音色って、同じ曲を比べてみると〜 うん。やっぱり違うんですよね。
柔らかく、ノビがあるくせに、なんて腰があるんだろ〜 
日本人の大好きな、讃岐うどんのモチモチ感に似ている。あはは。すごい例えですけど・・・。

金管がうるさく鳴らず、そのくせ、地味でソフトなのに、華やかだ。(←矛盾しているけど)
低弦が、奥ゆかしく「ボンっ」と鳴っているし、低弦のピチカートが柔らかいアクセントを添えている。
旋律だけでなく、中音域の奥ゆかしくも幅のある響きが、すごい下支えになっていて気持ちがよい。
タメも、充分すぎるほど充分なのだ。
「どぉ〜 らふぁれ〜 しぃ〜らふぁれ〜 ・・・ど〜 らぁ〜そふぁぁ〜〜」
「どらふぁられ ふぁらっっど らふぁふぁ ふぁれ れれぇ〜〜」
「そらしど れえええ〜 ふぁらしど そららぁ〜〜」
「れみふぁど どれれ れ〜〜」
最後の音まで持っていくまでのタメと、最後のだめ押しタメ。
すげ〜長い音のノビで、本当ならば、やりすぎじゃん。と思うほどの、すご〜い ルバートだと思うんだけど・・・。でも、このシノーポリ盤だと、おおっ。ここまで、やってくれるか。ありがたいっ。という気分になるから不思議。 きっと、オケがうるさく鳴らないからだろうねえ。

2 英雄の敵
ピーチク パーチクと、うるさい噂話に花を咲かせるところは、木管群が柔らかく吹いている。
派手さはないし、ヒソヒソと噂しているが、まあ、文句程度で静かだ。ぎゃーぎゃー言うタイプではない。
アシュケナージ盤は、小うるさかったけどねっ。
ドレスデンが奏でると、やっぱり、控えめなんですね。
英雄の憂鬱さも、静かに悩んでいる感じで、インバル盤のように鬱っぽく、ジメジメとはなってない。

3 英雄の伴侶
ソロのヴァイオリンは、楚々としてて、糟糠の妻って感じ。
ちょっと、奥ゆかしすぎじゃ〜ないだろうかと思うほどで、英雄の妻としては、う〜ん。押しが足らないというか、なよなよしているかもしれない。
気丈な女主人という感じではないことと、少し艶が無いように感じられるが・・・。
これは、聴く人の好みに左右されちゃうかもしれない。
ワタシ的には、お尻を叩かれ頑張っちゃう英雄像の方が好きだし、憂慮している英雄にも、覇気がないというか、元気がないので、もっと頑張れ〜っと、思わず聴いてて、カツを入れたくなってしまう。
(まっ これは勝手なイメージですけどね。)
カイ・フォーグラーのヴァイオリン・ソロは巧いんだけど、ちょっとワタシ的には、音が柔らかいかなと思う。
英雄の妻としては、ちょっと、柔らかいかも。
いやいや、この柔らかさが、このオケの柔らかさに等しいんだと思うので・・・ 痛し痒しってところです。
とにかく、柔らかく、優しい音、フレージングの柔軟さ、ノビの良さがあり。美しすぎる〜っ。絶句。 思わず、天使、マリアさまに抱えられて、昇天しちゃうかのような雰囲気になっている。 う〜ん。耽溺型ですねえ。やっぱ、シノーポリ盤は。すごく長大な楽章になっています。
もう少し現実的でも良いかもしれないんだが、既に、ちょっと〜英雄の最後のような雰囲気となってしまっている。(笑)

4 英雄の戦場
残響の良いルカ教会で奏でられる、美しいトランペットのファンファーレ・・・。
「どぉ〜 みぃ〜 みふぁみふぁみどみ〜 みふぁみふぁみど みふぁみふぁみど みふぁみふぁみ そ〜」
「そそらそ ら〜 そそらそらそら〜 しどぉ〜」 
う〜ん とっても綺麗だ。バンダの効果が、いっそう際立っているように思う。
いや、綺麗ですねえ。ホント。
で、つづくフレーズからは、ど派手な楽章なのだが、たっぷりには鳴っている。
たっぷり鳴っているが、小太鼓の鋭い音が手前で、大太鼓は奥から鳴ってくるし、金管の傍若無人的なフレーズも、綺麗に組み合わされていて・・・。木管は、うん? 手前で鋭く鳴ってくるし。
う〜ん。こんな細かなフレーズまで聞こえるものだろうか。
なんだか、人工的じゃ〜ないの?と、難癖をつけたくなるほど、すごい3次元的な、いや4次元かと思わせるほどだ・・・。(唖然)
いや、ホント、大音響の坩堝に放り込まれたような、不思議さを感じる響きの空間になっている。
メチャ、立派な音響空間で唖然としてしまったが、ダイナミックでありながら、鋭さと、細かさ、そしてフレージングの長さがあり、たっぷり感が、こりゃ〜凄いわ。
いったい、どれくらいの楽器が鳴っているのやら〜 すごい世界が広がり、こりゃ〜醍醐味かなあ。

5・6 英雄の業績〜英雄の引退と成就
前楽章が、ドンドン バンバンとやらかした後、晴れやかで、すわ〜っとした開放感が滲み出ている。
ティンパニーが硬めに響き、これがドレスデンか?と疑いたくなるような弦に艶が出て、金管の上品なファンファーレが響く。
しかし、難しい楽曲だなあ。
弦が、何層にも積み重なってて、ワタシの聞き取りの能力を、遙かに超えてしまっている。
それに、業績の回想シーンでは、R・シュトラウスの数々の作品の主題が入れ替わり立ち替わり聞こえてくるというが、う〜ん。まだ聴いてない曲もあるし・・・(苦笑)
さすがに、沈静感はあるのだが、シノーポリ盤では、しみじみして旋律の息が長い。

これが、自己陶酔型っぽく聞こえてくるのだが、これは、ご愛敬かなあ。
引退しても、まだまだ艶っぽいし、キレもあるし、諦め切れていない感じもする。英雄の各動機が、短く回想されてくるものの、穏やかだし、ホント息が長い。
最後は、昇天です。美しい。美しすぎるわ〜 (拍手)

シノーポリ盤は、気宇壮大な絵巻物語りを見せられているようで、ドラマティックで、大スペクタルの様相がある。しかし、元々、木質的なオケの響きがあるためか、うるさく、耳をつんざくような激しさはない。
また、かなり細かく聞こえてくるし、穏やかさもあり、耽溺気味のようでもあり・・・。
う〜ん。かなり多彩である。
各場面での変わり身の速さ、いや、各場面を描ききる能力の高さと言えるだろうか。多彩=多才ってことかしらん。一生を描くわけだから〜 
各場面に応じて、自分を変化させる、それを描ききる能力を、ワタシは買いたい。

インバル スイス・ロマンド管弦楽団 1995年
Eliahu Inbal
Orchestre de la Suisse Romande
ヴァイオリン:ジャン・ピゲ

録音状態は、少しヌケが良くない。マイクが、少し遠いような気がするので、ボリュームをあげて聴きたいが〜 やっぱマイクは遠かった。地味で、闊達さや、威勢の良さが削がれてしまっている。
カップリング:交響詩「英雄の生涯」、交響詩「ドン・ファン」

1 英雄
冒頭、低弦とホルンの「どぉ〜 どふぁらどれ〜 ふぁどぉ〜 らそふぁれら」
「どふぁ〜 み〜れ どれらそふぁみ〜 み〜れど らそふぁ〜」
インバルさんの英雄の生涯は、スイス・ロマンド管である。
スイス・ロマンドと言えば、むっかしのアンセルメさんの振っていた時代しか知らないし、あまりにも強烈なイメージが残っていて、そう、遙かかなたのLPレコードでしか聴いたイメージしかない。 ジョルダンとスイス・ロマンド管のCDは、あったとは思うが・・・ う〜ん。考え込んでも、あるのかないのか、さっぱり? あったとしても、強烈なインパクトの残るCDでは、なかったような〜  まっ とにかく、このインバル盤は、メータ+ロス・フィル盤のような、マッチョな英雄ではない。しょうゆ顔とでも言えば良いのか、あまり脂ぎった意欲的な英雄ではなく、繊細で神経質そうな感じがする。
そのため、豪奢で、複雑なオーケストレーションである「英雄の生涯」としては、見渡しが良い演奏になっている。(変な言い回しだけど)
力強い演奏ではないし、ごつくてアクの強い英雄ではないが、等身大、まっ 普通に聴けて(良い意味で)、しっかり描き込まれた盤かな。ただ巧いかと言われたら、う〜ん。どうかな。たっぷりとした音響で聴きたいのであれば、 う〜ん。これはお薦めできない。アンサンブルも、なんか、出だしが揃わず、ばらけてるやん。と思うところも何カ所かあるし。音色としても、う〜ん。多少は明るめで、色彩的とも言えるだろうが、英雄に色彩を求めるかと言われたら、 う〜ん。違うかもな〜と、ちょっと考え込んでしまう。
でも、歌い方としては巧いと思う。

2 英雄の敵 〜 3 英雄の伴侶
豪快なフレーズで、力強い描き方をして欲しい場面では、モノ足らないのだが、金管や木管が、ペコペコと、英雄の悪口を呟いて文句タラタラ言っている箇所では、ふむふむ。なかなかに雰囲気が出ているのだが、う〜 もっと派手でも良かったかも。
ヴァイオリンのソロも、音色に艶こそないけれど丁寧。色っぽさには欠けてる英雄の奥さんで、素朴な感じで誠実そうだ。ただし、硬いけどね。英雄、色を好むって感じはなく、耽溺できないところは悲しいが、旋律の膨らませ方は、まあまあ。 いや、ちょっと旋律が長めすぎるほどだ。いかにも、悩める英雄の表情が見えてきそうで、その点は、さすがにインバルさん。暗くて、じめ〜とした感じがして湿気がたっぷり。
はあ〜。やっぱ鬱々としている。

4 英雄の戦場
こんなにジメジメしてて戦えるのかしらん。バンダの音から、金管が吹かれてくるところ、うっ。
派手にやらかしているようなのだが、音響としてはイマイチだし、豊穣感に欠けてて。威勢が良くない。
楽器のバランスが悪いのか、フレーズとしては見通しは良いのだが、どことなくモノ足らないのは、何故なんだろう。弦が、前に聞こえてこないみたいだし、奥行きが平板に感じるというか、マイクは、上に吊ってあるのかしらん。立体的に響いてこないんだよなあ。
やたら、金管のうるさい系の音が、耳に届くんだけど・・・。団子みたいに、くるん〜として聞こえちゃう。

5 英雄の業績(英雄の平和時の仕事)
精一杯、やらかして派手にしている感じがするが、これで精一杯かあ。

6 英雄の引退と成就(隠遁と完成)
やっぱ、インバル盤としては、この最後が聴きどころでしょう。ため息まじりというか、力尽きました。という雰囲気が、なーんとも言えない雰囲気を出している。見通しも良く、金管が引っ込んでくれた分、弦のフレーズが主に、前に出てきて、 木管とブレンドされた音色は渋いながらも、いぶし銀的に光ろうとしている感じがする。弦の鳴らし方は、たっぷり〜と膨らませて、懸命に歌おうとしているし、その意図が、ものすご〜く感じられる。でも、折れてしまうのだ。
響きも、まろやかさはあるのだが、耽溺するほどまでには至らず、嘆くワケもないし、耽美でもないし、う〜ん。ちょっぴり、クールさを感じてしまう。悲しさ、虚無感、覚めた感覚が、客観的に感じちゃう。第三者的って言う感じだろうか。
R・シュトラウスの描く、人間くささ、官能美が、どこか抜け落ちちゃっているような。もっと、臭くても良いかな。そんな気がする。まあ、それでもインバルさんの演奏としては、トリスタンのイメージに近いんだけど〜 

まっ 全体的に、線が細く聴きづらいことと、暗く、じみっ。である。
それに、実質的には6つに場面が分かれているが、当該CDのインデックスは区分されていない。この点、繰り返して聴く時には、とーっても不便である。ムズカシイ楽曲で、とっつきづらいのだが、旋律としてはわかりやすかった。 でも、音響もイマイチで、インデックスも無いし、あまり手がのびない盤である。
1957年 ベーム シュターツカペレ・ドレスデン  
1968年 メータ ロサンジェルス・フィル Dec ★★★
1972年 ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン EMI  
1977年 ショルティ ウィーン・フィル  
1977年 マゼール クリーヴランド管弦楽団 SC ★★★★★
1984年 アシュケナージ クリーヴランド管弦楽団 ★★★★
1984年 ブロムシュテット シュターツカペレ・ドレスデン De  
1985年 カラヤン ベルリン・フィル  
1988年 プレヴィン ウィーン・フィル Telarc  
1991年 シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン ★★★★★
1995年 インバル スイス・ロマンド管弦楽団 De ★★★
2001年 ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 Arte Nova  
所有盤を整理中です。

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