「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ラフマニノフ 幻想曲「岩」
Rachmaninov: The Rock


マゼール ベルリン・フィル 1984年
Lorin Maazel
Berliner Philharmoniker
(Berlin Philharmonic Orchestra)




録音状態はまずまず。場面場面で速度を変え、アクセントをつけて機能的に動いている。さっぱり系の演奏だけど、メリハリが出ているところが面白い。
カップリング:ラフマニノフ 交響曲第1番、岩、アレコ、ヴォカリーズ

マゼールさんとラフマニノフ とのイメージが、さっぱり合わないだろうな〜と思いながらも、オケが、あのベルリン・フィルだと言うので買ったCDである。
ゴツゴツした岩だろうと思っていたのだが、さっぱり気味の幻想曲「岩」 になっていて、あまり余分な情緒が入っていない。
まあ、それにしても、幻想曲「岩」・・・ ネーミングが悪い。
岩ねえ〜 岩って言われても、んじゃ〜聴きましょうか。って感じには、ならないのデワ?

別の盤で、マゼールさんの振る交響詩「死の島」を聞いた時は、さっすがに、ぞーっとした。
不気味で、底知れぬ鋭いクレパスが、ぽっかりと目の前に広がるようだったのだが、この岩は違います。
カリンニコフの交響曲でも聴いているかのような、ほんわか〜としたモノになっている。
フルートの旋律、「し〜らっそ ふぁど そ〜ふぁれっど ふぁ〜そら られみっふぁそらっ」 が、極端に伸びてて、巻き舌風に1音目から2音目にあがるところが、強めに高めにアクセントが付いてて、転がっている感じが強調されている。
ハープの鋭い音が入っているのと、木管の音質感が、くっきりしているかな。
あっ タムタムかしらん。ポンポンっという音が、時計の振り子のようだ。
木管の音にノビがあるのと、アクセントが、しっかりついているのが耳に残る。この木管群は、さすがに綺麗な音で、小気味よく、小股が切れ上がっているかの ような、キレのあるものだ。
(あ〜っ シッカリ音の採れない、凡庸なワタシの耳が恨めしいっ。とっても悲しく歯がゆい。)

テンポを、スイスイっと進めていくところと、フレーズを大きく、音の流れが、波のように、くっきりと描いているところ、波のように刻むリズミカルな節回しが特徴かな〜と思う。
ちょっと前に、つんのめった感じがするところもあるが、弦のピチカートや打楽器が、まるで時を刻むかのように刻まれているし、舞曲風になっているところや歌謡風のところは、シャンシャンと速度を速めて 、走馬燈のように流れてくる。
と、思いきや、思いめぐらすかのような、逡巡さを表すようなフレーズでは、心情的な雰囲気が出ている。

速度、リズムで、時間経過を表しているようで、これも一つのストーリーを描く要素だな〜っと思った。
テンポの揺れが想像力を促し、弦の細かな刻み、綺麗で細く揺れる音と、そのうえに乗っかってくる木管たちのノリ感が良い。ジャーンっと金管が入ってくるところは、 そんなにドラマティックには描いていないのだが、大太鼓のドスンっと言う重低音が入ってくるところは、録音のせいか、どん詰まり的で、ちょっと悲しいが、、、まっ それでも、さすがに計算されつくした感じがする。

のっぺりした感じではなく、場面展開でテンポの取り方が違うな〜っと。そして、木管のアクセントのつけかたが、面白いな〜と思った盤である。
さっぱり系で、余計な情緒の無い演奏なのだけど、さほど劇的には演奏してないくせに、なーんか、しっかりと積み上げて来ている感じで、メリハリがあり、構築性を感じる。
ざっくりしているようで、目が詰まっている感じだ。妙に納得させられちゃった。

スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1995年
Evgeni Svetlanov
The State Academic Symphonic Orchestra of Russia
(Svetlanov symphony orchestra)



録音状態は 良い。柔らかい、さらり〜っと描かれた若い男女の出会いのような演奏。
カップリング:ラフマニノフ 交響曲第2番、幻想曲「岩」

この「岩」とタイトルされた楽曲は、スヴェトラーノフさんの演奏では、A・デイヴィスさんの演奏と比べてみると、とても柔らかく、小春日和のような感じがする。
冒頭の低弦の響きは太めで柔らかい。ホント、ソフトでまろやか。
「そぉ〜ふぁ れぇ〜〜 どぉ れぇ〜〜 どぉど れぉ〜 ど」「そぉ〜ふぁ れっれ れ〜ど」
金管の咆吼は控えめで、そこに、柔らかいフルートが被さってくる。
「し〜らっそ ふぁど そ〜ふぁれっど ふぁ〜そら れみっふぁそら」
この速いフルートのフレーズだが、耳もとで、妖精が羽ばたいているような、ふんわりした快感がある。
まるで草原でヒバリが鳴いているかのような、のどかさがある。
これじゃー 岩ではないやん。と思うが。すぐに、歌謡風のフレーズに、するりっ、と早変わりするのだ。
「みぃ〜れ〜しぃ どれみぃ〜 どぉそふぁ〜 そふぁ みどみぃ〜 」
「らぁ〜そ〜み ふぁそら〜 ふぁ〜し〜 らみら〜」
「どぉ〜し〜そ らしど〜 らみれ〜みれど そ〜」 
のどかな歌謡風フレーズを、思いっきり歌う。 とろみのついた官能的でさえある歌になっていて、フレーズがまろやかで、とろっとしている。使われている楽器が木管なので、執拗でもないし。
スキップするようにフルートが再登場して、華やかでさえある。

あらら〜ずいぶんと、A・デイヴィス盤と印象が異なる。
ハープの響き、柔らかいホルンのフレーズ 「しぃ〜ら〜ふぁ そらしぃ〜 しぃ〜ら〜ふぁ そらしぃ〜」
「大いなる岩の胸に黄金なす雲のかかりて」というレールモントフの詩も、ベースになっているらしいが、まるで砂浜の松に、羽衣が掛けられているかのようで、ふふふっ。えらい印象が異なっている。
シャンシャンと鳴ってくるところは、ちょっと速めのテンポに変わっているが、ゆったりとした幅のある音で、やっぱ官能的で、大いなる岩どころか、天上風なのだ。
金管が鳴って、嵐のように黒い雲が立ちこめ、弦が上昇して、ティンパニーも重い金管の咆吼も入ってはくるけれど〜
若い男性のエネルギーが、じわじわ〜っと湧き起こり、ちょっと頑張るぞぉ〜っと言っているみたいな程度で。あれれ〜 とっても悲劇的とは思えない。

改めてウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、・・・ラフマニノフの着想の源泉となったのは、レールモントフの詩そのものではなく、同じくこの一節をエピグラフとして掲げた、アントン・チェーホフの短編小説「旅中」に霊感を得て作曲されたものである。とのこと。
で、このチェーホフの短編は、人生に疲れ切った中年の男と、旅中にとった宿屋で出会った若い娘との交流を描いている。男が熱っぽく身の上を語るうちに二人は互いに打ち解け、共感が芽生える。

ところが朝になり、男がこれから流刑地のような炭鉱へ赴任するところだと知ると、娘は取り乱しやめるように説得する。
しかし、人生に達観したかのような男は平然とそれを断り、娘はなおも何か言いたそうにしながら自分の行き先へと旅立って行く。娘の乗ったそりの姿が見えなくなっても 、なお見送り続ける男に雪が降り積もる。その姿をチェーホフは「断崖」(もしくは「岩」)にたとえている。・・・とのことだった。

う〜ん。そうだったのか。
小春日和のようだったのは、愛が芽生えたところで〜(いや共感が芽生えたのだった。)
嵐のようだと思ったフレーズは、きっぱり旅立つ意志だったのね。

う〜ん。それにしても、このスヴェトラーノフさんの演奏では〜 あまり真摯な出会いって感じでもなさげ。
さほどロマンティックでもなく、ちょっとした通りすがり程度だったようで。情感は、さらりとしている。
A・デイヴィス盤の方は、風景描写のようだし、主題が場面として、章のように区切られているし、楽器の音色が、まるで線画のように、くっきりと明瞭に浮き出ており、メリハリが大きかった。
どっちが良いとか言いづらい。比較できないぐらい、アプローチの違いがある。

とりあえず、ワタシ的には、あまり「岩」というタイトルで、イメージされなくても良いなあ〜と思う楽曲だ。
タイトル悪すぎ〜 それにしても、若い男女の、ちょっとした出会い。というなら、この演奏で良いんですけど。高倉健さんのような映画をイメージしちゃうと、これまた、全く違うのだ。無骨な男の浪漫=岩だとすると〜 どっちかと言えば、A・デイヴィス盤かしらん。と思うが。ハテサテ。
この曲で言うと、男に、どこまで真摯さがあるのか。(← えっ そこまで追求するかぁ。ワカランよ)
曲を語るには、やっぱチェーホフの小説「旅中」って、本を読まないとダメなようです。
で、男の方の印象と女性のワタシでは、結末の印象が大きく異なるかもなあ。って思います。
とりあえず、お預け。(苦笑) スヴェトラーノフ盤は、ちょっと緩めで、情感あっさりめ。

A・デイヴィス ロイヤル・ストックホルム・フィル 1997年
Andrew Davis
Stockholm Philharmonic Orchestra



録音状態は良い。透明度が高く、高い岸壁の周りを鳥が飛翔しているかのような繊細さがあり、まるで水彩画を見ているような感じがする。カップリング:ラフマニノフ 幻想曲「岩」、「交響的舞曲」、交響詩「死の島」

ラフマニノフが、若い時に作曲した交響詩のような幻想曲「岩」
えっ 岩? って感じなのだが、実際には断崖という訳の方がふさわしいらしい。なんとも地味なネーミングなのだが。出だしは、暗いっ。
低弦の擦れた遅めのフレーズで、「そぉ〜ふぁ れぇ〜〜 どぉ れぇ〜〜 どぉどれ〜 ど」
と始まる。ひぇっ 死の島のような不気味なフレーズなのだ。
そこに、金管が被さり「れぇれぇ〜ど」と鳴りながら、明るい上昇の弦の響きが重なったと思ったら、フルートが気持ちよく爽やかに吹かれる。
「し〜らっそ ふぁど そ〜ふぁれっど ふぁ〜そら られみっふぁそらっ」
なかなか、この速いフルートの音は、ワタシの耳では追いつかないのだが、コロコロと回転して落ちていくようなフレーズが出てくるのだ。
ワタシには、まるで高い岸壁の周りを鳥が飛翔しているような爽やかさを感じるし、鳥が翼を回転させてふわーっと海面に向かって降りていくような、スピード感と軽やかな飛び方に感じられる。
まっ どんな印象を受けるのかは、聴かれる方にもよるのかもしれないが。

A・デイヴィスさんの演奏で聴くと、重々しさのなかから、すーっと風が舞い込んで、気ままに動いていく、風のような、鳥の飛翔のような動きが出てきて、まるで風景画を見ているような気持ちになる。
とっても、印象派のように、表現が軽やかで自由な感じがして、あまりとらわれることがない。特に、木管の響きが透明度が高く、フルート、オーボエ、クラリネット等の木管が、ころころ〜っと転がって、そして飛翔していくので、とっても色彩的に豊かだ。
「し〜らっそふぁ」「らぁ〜そっふぁどっら そ〜ふぁれど ふぁ〜そらっ ら〜っそふぁっれ」
「そぉ〜ふぁ みっど〜らっらっら」 
えぇ〜 結構、この楽曲面白いやん。弦が添え物のようになって、木管たちが大活躍なのだ。
ハープも入ってくるし、優美だし、線の細い糸が、たなびきながら紡がれていく。
その後は、ロシアの歌謡風のフレーズも見え隠れし
「みぃ〜れ〜し どれみぃ〜 みぃ〜れし どれみぃ〜ど ふぁ〜み〜どみ〜
「みぃ〜れ〜し どれみ〜 どそふぁ〜そふぁれ みどみ〜 」
「ら〜そ〜み ふぁそら〜 ふぁ〜し〜 そみそ〜」
「どぉ〜し〜そ らしど らみれ〜みれど そ〜」 ロシア風の半音のイッパイ突いた歌謡風フレーズ。

また場面が変わって、シャンシャンと短い舞曲風のフレーズが出てくる。
シャンシャンというのが、トナカイの首についた鈴みたいなんですけどねえ。
まっ この楽曲は、フルートのフレーズが命ですかねえ。「たぁ〜ら たった たぁ〜ら たった」というシンプルなフレーズが装飾的に彩られ、軽やかさと透明度と、音色の良さ。

最後には、「れ〜ど らふぁっ れ〜ど しっふぁ ら〜そ ふぁれっ ら〜そ ふぁっどっ」
パパッと金管が吹かれ、「そそぉ〜 ふぁぁーみふぁっ」と、どす黒い金管のフレーズ、弦の「ふぁ〜れど ふぁ〜そ そふぁ〜 ふぁれ〜れど」っと、風が舞うような、ロマンティックな香りのする弦のフレーズ。
う〜ん。結構、多彩なのである。
最後には、黒々とした巌のなかで嵐のような風が舞い、ティンパニーも、重い金管の咆吼が入るし、上昇していく流れと、低い弦と金管の咆吼が混じって、えっ 悲劇だったの?
えっ いきなり強引な幕引きだよねえ。と、思わず呟きたくなってしまうが、ホント、いきなり、オチが出てくるところが凄い。
だって、奈落に落とされるかのような、チャイコの悲愴みたい、いや、4番の出だしのように〜 金管の悲鳴音が鳴るのである。
あれまっ。短い15分ちょっとぐらいの楽曲なのだが、このなかに、ストーリー性が、たっぷり詰まっているような短編小説のような、イメージが交錯するような感じと言えば良いだろうか。

まっ 幻想曲って言いつつ恐らく交響詩だが。とらえどころのあるような、無いような不思議な印象がパッチワークのように繋がり、展開していく。う〜ん。詰め込みすぎなのかしらん。
ラフマニノフの若い時の作品だが、ワタシのなかでは、まるで、ドビュッシーのような夢幻的表現というか、印象派のような感じを受けたが、A・デイヴィス盤は、どちらかというと水彩画風である。

楽譜には、エピグラフとしてミハイル・レールモントフの詩から、「黄金色の雨雲が一夜を明かした 巨人のような断崖の懐で ・・・」と引用されているそうだが、チェーホフの短編小説「旅中」にインスピレーションを得たとも言われているようだし。
作曲の動機については、よく解りませんが、まっ 地味な存在の楽曲だが、交響詩「死の島」に通じるモノも、ちょっぴり感じられる。しかし〜 タイトルが「岩」じゃーねえ。あまり、ぱっとしませんよねえ。
アルプスの山々に挑み、ロッククライミングしているような断崖絶壁のような岩でもなさそうだし、原始人のように、洞窟に籠もって修業しているわけでもなさそうだし。ワタシ的には、A・デイヴィスさんの演奏を聴いている限りは、海辺の突端の崖みたいですけど。
さて、皆さんのイメージは、いかがでしょうか。現在は、Apexから発売されているが、元々はFinlandiaから発売されていたCDです。

他の盤と比べて聴くと、楽器たちが活躍しているのだが、音が、細い糸のように見える。
木管たちは、もちろん頑張っているし、打楽器だって頑張っているのだが、ちょっぴり楽器たちが、有機的に繋がっていないような気がしちゃうのだが、どうだろう。
1984年 マゼール ベルリン・フィル ★★★★
1995年 スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 CANYON ★★★
1997年 A・デイヴィス ロイヤル・ストックホルム・フィル  Apex ★★★★
所有盤を整理中です。

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