「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

レスピーギ ボッティチェッリの3枚の絵
Respighi: Trittico Botticelliano


レスピーギは、イタリアの作曲家です。近代イタリア音楽における指導的な一人で、ローマ3部作と呼ばれる交響詩、ローマの噴水、ローマの松、ローマの祭りが最も有名です。
でも、ここでご紹介するのは、1927年の作品「ボッティチェッリの3枚の絵」・・・
レスピーギの「ボッティチェッリの3枚の絵」は、みなさんもご存じのルネッサンス時代に描かれた、とっても有名な絵画をテーマにした曲で、レスピーギに選ばれた絵画は次の3つです。では、絵画鑑賞と共に音楽鑑賞を楽しみましょう。

1 春 La Primavera
2 東方博士の礼拝 L'Adorazione dei Magi
3 ヴィーナスの誕生 La nascita di Venere

  クラウディオ・シモーネ イ・ソリスティ・ヴェネティ  1987年
Claudio Scimone I Solisti Veneti

ほぉ〜良いヤン


録音状態は良い。色彩的には鮮やかではなく、幾分渋め。もう少し、ノビ感があっても良いかもしれない。
カップリング:レスピーギ ボッティチェリの3枚の絵、組曲「鳥」、リュートのための古風な舞曲とアリア(第1組曲、第3組曲)
1〜4 リュートのための古風な舞曲とアリア 第3曲

5〜9 組曲「鳥」
10〜12 ボッティチェリの3枚の絵
13〜16 リュートのための古風な舞曲とアリア 第1曲
1 春
冒頭は、細かい木管群の、ピチピチした音から始まる。
で、春の兆しを告げるかのような、植物や鳥の鳴き声がするなか、ホルンが奏でられる。
「ふぁどぉ〜 ふぁどぉ〜 ふぁどぉ〜  られぇ〜 られぇ〜 られぇ〜」
「どふぁっ〜 らぁ〜 どぉ〜 れっ! どどぉ〜しらそふぁぁ・・・」
トライアングルの響きのなかで、「ら〜し どど どらそっ ら〜し どど どらそっ」と、小さく踊り出したくなるフレーズが続く。

2 東方の三博士の礼拝
ファゴットの沈んだフレーズと、そこに絡むオーボエが、えっ と思う旋律で奏でられる。
普通、ここで半音あがる? えっ ここで半音落ちるの? って感じで驚かされる。この音の配列は聴いたことがない。
「れふぁら らぁ〜 そしら そふぁふぁ〜そらふぁれふぁそみれど どれぇ〜」
教会旋法なのだろうが、何旋法なのか、素人のワタシには、ちょっとわからない。
アラビア半島のどこかに立っているかのような気持ちにもなるし、クラリネットの「たぁら たらららら らぁ〜」っていう旋律が気持ち良く、これに吹かれたら、春風の心地良さに身を任せて、どっかに飛んで行きたくなってしまう。
あっ この曲は、礼拝でしたっけね・・・。

弦楽器で、ぱらん ぱらん と奏でられ、クラリネットで、アヤシイ蛇使いのようなフレーズも出てくるし。
はあ〜 ワタシ、今、どこに立っているのだろう〜っ。と、迷える子羊状態となってしまうが、でも、なぜか落ち着くのだ。
この落ち着けるところが、レスピーギを好きな所以でもある。
シモーネ盤は、この東方の三博士の礼拝は、ちょっぴり速め。ヴァーシャリ盤と比べると、なんと2分も違っていた。

3 ヴィーナスの誕生
ぽつんと滴が落ちたような音から始まり、フルートの響きやクラリネットの響きが、水面を撫でる風のように吹く。
木琴と木管で、「しどれぇ〜 らしれ らしみ れぇ〜 らぁ〜れみふぁ〜」 (らしらし ふぁそふぁそ・・・ 泡なんだね)
「らしみぃ〜 らしれぇ〜 そられぇ〜 ふぁみれ〜 どれぇ〜」
「みらふぁみふぁ〜 そら みふぁらしどぉ そら れぇ〜」っと、斉唱される。
そう、ヴィーナスの誕生は神秘的であり、生命の不可思議さに満ちているのだ。

イ・ソリスティ・ヴェネティ(I Solisti Veneti)は、イタリア・ヴェネツィアを本拠地とする弦楽アンサンブルである。
59年に、このCDの指揮をしているクラウディオ・シモーネさんにより設立されたとのこと。
ボッティチェッリの3枚の絵は、ヴァーシャリ盤に比べると、幾分、色彩が渋く、中庸である。
その分、落ち着きがあり、しっとりと聴かせてくれる雰囲気は感じられる。室内楽的で、静かな美術館で、ひとり絵画に向かって鑑賞しているような雰囲気もある。フレージングは、どこか、もうひとノビ〜というノビ感が少なめというか、膨らみきらず平板な感じがする。拍感覚も、どこか杓子定規的には聞こえ、けっこう、あっさり弾かれている。
イタリア本場の演奏団体なので、これが、日常茶飯的で、普通なのかもしれないが・・・。

  シモーネ盤   ヴァーシャリ盤
1 春 6:04 5:31
2 東方の三博士の礼拝 6:35 8:34
3 ヴィーナスの誕生 4:22 4:31
 

  タマーシュ・ヴァーシャリ ボーンマス・シンフォニエッタ 1990年
Tamas Vasary  Bournemouth Sinfonietta



録音状態は極めて良い。明るくて色彩的で、厚ぼったくもなく、さらっとした感覚だが、ゆったり感もあり、良い雰囲気が醸し出されている。
カップリング:レスピーギ 組曲「鳥」、日没、アダージョと変奏曲、ボッティチェッリの3枚の絵
1〜5 組曲「鳥」 Gli Uccelli
6 日没 Il tramonto メゾ・ソプラノ:リンダ・フィニー(Linda Finnie)
7 アダージョと変奏曲 作品番号133 チェロ:ラファエル・ウォルフィッシュ(Raphael Wallfisch)
8〜10 ボッティチェッリの3枚の絵
ワタシは、ボッティチェッリではなく、ボッティチェルリと、学校で教えてもらったような気がする。
もちろん、ビーナス誕生のあの有名な絵と共にである。
で、多感な思春期に、あんな丁寧に美しく描かれた美女を観るのは、ある意味、アカデミックすぎて刺激的だった。絵画となると、あれぐらい格調高く、高貴に描かれないとイケナイものなのだと、また、女性に生まれたからには、あのプロポーションにならねば、 かくあらねば〜と思ったものである。

改めてウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら・・・
サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)は、ルネサンス期のイタリアのフィレンツェ生まれの画家で、ボッティチェルリ、ボッティチェリ、ボティチェリ、ボティチェッリなどと表記されることもある。
初期ルネサンスで最も業績を残したフィレンツェ派の代表的画家で、フィリッポ・リッピの元で学び、メディチ家の保護を受け、宗教画、神話画などの傑作を残した。
ギリシャ文化に純粋に傾倒したと見られる「春」「ヴィーナスの誕生」を描いた。その後、400年にわたり忘れ去られてしまい、やっと受け入れられるようになったのは19世紀末だった。
それまでヨーロッパはボッティチェリを受け入れるだけの多様性の素地に欠けていたため、その名はあまり知られることはなかった。19世紀イギリスのラファエル前派に注目されたことから、名声が広まったという経緯がある。・・・とのこと。

えっ〜 400年忘れられていたってぇ〜 学校で学ぶ、あのボッティチェッリさまがぁ〜!
思わず、嘘でしょ・・・。(あぜん、驚愕・・・)

ラファエル前派って、19世紀中期のイギリスで流行った画家のグループで、ロセッティとか、エドワード・バーン=ジョーンズ、ウィリアム・モリスとか、ミレイとか、他にも多々おられる。
神話や伝承から題材を得て、緻密な描き方をしておられる方が多いように思うが、絵画も音楽の世界も、双方に影響を受け、ヨーロッパ一帯周辺を巻き込んで、神話の世界を初めとして懐古調に、古典主義に戻るような風潮があったのだ。
そんな風潮のなか、イタリアって・・・ どうだったの? もしかして、取り残された?
イタリアで、頑張っていたのがレスピーギ。もちろん、カゼッラの名前も浮かぶが、そこからは、う〜ん、あまりお名前が出てこない。

改めてウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら・・・
イタリアでは、モダニズムとしての典型的な新古典主義音楽は、パリでストラヴィンスキー体験をしているアルフレード・カゼッラや、ジャン・フランチェスコ・マリピエロによって推進された。
しかしながら一般には、むしろレスピーギやピツェッティらの、ロマンティックで復古主義的な作品(レスピーギの場合は、特に編曲)が有名である。
前2者に比べて後2者の「新古典主義」的な作品は、直截に過去の文化遺産(グレゴリオ聖歌やルネサンス音楽、バロックの舞曲など)に依存しているためもあり、調的に安定し、息の長い歌謡的な旋律と魅力的な和声が際立ち、きわめて親しみやすい。 結果的にこの2人は、リズミカルで不協和なカゼッラや、極度に対位法的なマリピエロとの作風の違いを示している。・・・とあった。

ふむふむ。そりゃ イタリアですもん、自分の国のなかに、自分たちのご先祖さまたちが築いてくれた宝モノが、わんさとあるもんねえ。で、レスピーギが戻ったのは、プリマヴェーラやヴィーナスの絵画なのだ。
ワタシどもの国で例えると、どうなるのか? 雅楽の世界や、浮世絵に戻ろうということになるのだろうか。

レスピーギは、この3枚の絵画を、ものの見事に音化している。
1915年〜16年に、「ローマの噴水」を作曲しているが、その延長線のイメージに感じられるほど、瑞々しい。
特に、春の冒頭や、ヴィーナスの誕生は、華麗なる音で満たされていく。
このCDは、ピアニストのヴァーシャリさんが、ボーンマス・シンフォニエッタを指揮している。
個人的には指揮なんかしないで、いつまでも現役のピアニストでいて欲しいとは思っていたが、良い録音で、レスピーギを聴かせていただきホント感謝である。

  オルフェウス室内管弦楽団 1991年
Orpheus Chamber Orchestra

ほぉ〜良いヤン

録音状態は良い。繊細でカラフルな音質で、適度に軽めで音が立ってくるような感じで、キラキラしている。2枚組BOX
カップリング:
CD1 1〜12 レスピーギ ローマ3部作(噴水、松、祭り)
CD2 1〜5 組曲「鳥」、6〜9 リュートのための古い舞曲とアリア 第1組曲
    10〜13 リュートのための古い舞曲とアリア 第3組曲
    14〜16 ボッティチェルリの3枚の絵 1〜16オルフェウス室内管弦楽団の演奏
1 春
キラキラした音で、とてもカラフルで軽やかだ。たらら〜 たららっ〜っと、音が水しぶきのように立って、踊っているかのような描写は気持ち良い。金管のリズミカルさ、甲高いと感じるほどの金管のフレーズ、そして、木管の音も通りがよく、透明度が、とても高い。
「ふぁどぉ〜 ふぁどぉ〜 ふぁどぉ〜  られぇ〜 られぇ〜 られぇ〜」と、とっても勢いが良く、ホルンが奏でられる。
「どふぁっ〜 らぁ〜 どぉ〜 れっ! どどぉ〜しらそふぁぁ・・・」
「らし どっどどら どぉっ らそ らしどぉ〜 らし どっどら そっ」と、とても弾んでいる。
オルフェウス室内管弦楽団の演奏は、とても活気があり、ウキウキしちゃう感じがする。
木管も繊細で、不思議な和音が穏やに調和している。東洋風というか中近東風の息吹が感じられる。
「らっ らぁ〜ど れどら れどらっ らぁ〜  どれ みっみ みみみみ みみみみ みどら〜し〜」というようなフレーズは、さらっと描かれているが、コクがあり、風が舞起こる雰囲気が、とてもリアルだ。 

2 東方の三博士の礼拝
ファゴットの沈んだフレーズやオーボエが、とても不思議なフレーズを描いていく。
木管フレーズは、安定しているのだが、ちょっと浮いた感じのリズムがあり、中世なのか、それとも、もっと以前なのか〜
イタリアとは思えないほどに、アジアに近くなってくるフレーズで、鈴の音色も聞こえてくるし、巡礼の旅人が通り過ぎていくような音画の世界となっている。
よくまあ、イタリア人のレスピーギが、こんなフレーズを描いてくるなあ〜と、とても驚かされるのだが、中近東の旋律のようでもあり、アジアの端っこのような感じもするし、今、どこに自分が居るのか、不思議な気持ちにさせられる楽曲である。
不思議な神聖さ、ミステリアスな静謐な音で彩られている。

ボッティチェッリ(ボッティチェルリ)の3枚の絵は、ボッティチェッリの三連画(Trittico Botticelliano)とも表記される。

1 春 La Primavera (Allegro vivace)
2 東方博士の礼拝 L'Adorazione dei Magi (Andante lento-Poco più mosso)
3 ヴィーナスの誕生 La nascita di Venere (Allegro moderato)

この3曲とも、立ち位置が違うように思う。ワタシの勝手なイメージだが、春は、北イタリアっぽいし、東方博士の礼拝は、ずーっと、アラビア半島に近いし、ヴィーナスの誕生は、南欧で暖かさを感じるし〜

東方の三博士は、新約聖書に登場し、イエスの誕生時にやってきてこれを拝んだとされる人物である。
キリスト教では、クリスマスのシーズンには、飾り付けのなかで、馬小屋の模型(プレゼピオ)に、よく贈り物を携えた三博士の人形が飾られているという。
まあ、遠路はるばる、イエスの誕生を祝いに賢人たちが集まってきた〜というわけである。そのため、この遠路はるばる〜というイメージが醸し出されるように、ローカル色の強いものにしているのだろう。
チェレスタやトライアングル、ハープなどで奏でられ、巡礼の旅人が歩いているようなシーンのなかに、自分も潜んでいるかのように聞こえてくる。どこから、レスピーギは、こんな旋律を見つけ出したのだろう。

3 ヴィーナスの誕生
ぽつんと滴が落ちたような音から始まり、フルートの響きやクラリネットの響きが、水面を撫でる風のように吹く。
「しどれぇ〜 らしれ らしみ れぇ〜 らぁ〜れみふぁ〜」 (らしらし ふぁそふぁそ・・・)と続いていくのだが、ユニゾンのように奏でられていくので、大変力強い。
そう、絵画のように海の泡からヴィーナスが誕生していくわけだ。
色彩的で、生命力を感じさせるように、煌びやかな音がわき起こっている。音が、水性化しており、揺れるというか、立つというか、縦横無尽に広がり、立ちのぼっていくさまが、こんなにリアルで音で描かれていると、とても不思議な感じがする。
淡い朝の陽を浴びて、静かに、光が立ちのぼっていくかのようでもあり、やっぱり、神秘的である。

ビジュアル的という言葉を、遙かに超えちゃっているような楽曲だ。ウフィツィ美術館での絵画を、実際に見て、レスピーギは作曲したんだろうなあ〜と、イメージを膨らませつつ聴いた。
オルフェウス室内管弦楽団の演奏は、軽めの色彩感で、煌びやかだ。
ちょっぴり、快活すぎるかな〜という気もするし、息づかいが深いわけではないので、ちょっぴり軽量級。
歴史的建造物のような、重厚な美術館での〜というイメージは、あまり感じない。
もう少し、陰翳のある深み、渋み、重みがあってもいいのかもしれないが、色彩的に訴えてくる力があるように思う。
1976年 マリナー アカデミー室内管弦楽団 EMI  
1987年 クラウディオ・シモーネ  イ・ソリスティ・ヴェネティ ★★★
1990年 ヴァーシャリ ボーンマス・シンフォニエッタ Chandos ★★★★★ 
1991年 ロペス=コボス ローザンヌ室内管弦楽団 Telarc  
1991年 オルフェウス室内管弦楽団 ★★★★
所有盤を整理中です。

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